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第三章 ドロタン
ドロタンに落ち着く暇はない 2
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気がつくと日が沈み、空はオレンジの淡い光しか残っていなかった。
けど人の目は悪くないらしく、俺らがベランダを走っていると外にいる探偵役共に気がつかれてしまった。
「おった! 囲んで挟み撃ちだ!」
外から聞こえてきた作戦。
状況は芳しくない。後ろからも一人の男子生徒が追いかけてきている。
それに下からは十人くらいいるな。赤帽子の人間は見当たらない。もう大半の泥棒側の人間は捕まったのか。
「どうする? 分かれる?」
並走するカジは、いつも話しかける感じで提案をしてくる。
「分かれてもな? 実際どうなんだ? 正直、隠れていたほうが良いはずだよな」
「それはそうだけど、それは面白くないんじゃない?」
「お前、さっきまで怖がっていただろう」
「あれはさっき言った通り、ちょっと気が動転しただけだし、鬼ごっこはフツーに好きだよ」
「そうですか」
俺も鬼ごっこが嫌いではないが、ちょっと面倒という気持ちもある。とはいえこのまま捕まりたいとは思わない。
バタバタと鳴る足音がやけに響く。
「正直、俺はスリルを楽しむ人間でも、熱くなる展開を望んでいるわけではない。正直勝てる作戦があればそれでいい」
「体力馬鹿じゃないの?」
「体力馬鹿だが。スリルはしんどい。というか体力あるからと言って好きではない」
「えー。じゃあどうしよう? さっきみたいに生き残っている人に押し付けていく? ぶっちゃけ最後まで誰かひとりと言っていたし」
平然と他人に容赦ない作戦を引き出してくる。
「実際あと何人残っているかによる。下を見る限り、もうそんなに生存者はいない気がする」
「じゃあ。帽子を外して鬼側に混ざる!」
「ルールを重視している奴がそれを許すと思えない」
「せめて復活システムとかあれば」
「あるにはあるらしいが……」
あれこれ考えていたら、正面から複数の人影が現れた。
「いたぞ!」
前から迫ってくる俺らとは質の違うバタバタとした足音。
もう上がってきたのか。案の定挟み撃ちか。
「どうするの?」
カジに焦りの表情をみせる。このまま単に捕まるのは御免だ。右側に見える窓群を確認する。
「カジ止まれ!」
「へ?」
カジの腕を掴んで無理やり止まらせて、もう片方の手でパッと一つの窓の縁を掴み、ガタンと窓を強く上下させる。そして思いっきり横に引っ張るとガラッという音と共に、スライドして窓が開いた。
「開いた?」
「早よ入れ!」
カジの驚きをスルーし、カジを部屋に押し込むような形で教室に入れた。俺が入ると背後にすぐ鬼の腕が伸びていた。慌てて腕ごと挟む勢いで窓を閉めて鍵をかけた。同時に探偵役の男子生徒が両手と歪んだ顔に鼻を豚みたいな形にしてビタッと窓に貼りつき、俺たちを睨んだ。
「おっかねえな」
他の奴らも同じように外から鍵を開けようとしたがうまく行かず諦めて、後ろに回り込めと指示を出して走り抜けた。
「響ちゃん強引! それにどうして開いたの?」
「しゃあねえだろ。窓はどうもこうも、いくつかガタがきている窓があって、ガチャガチャすると鍵が緩い奴は開く。まあコツはいるし、今回はたまたま一発で開いたが」
「へー。それはあれかな。過去に何度かそんなことしたのかな? 夜の校舎に忍び込むとか」
「別にいいだろ」
「はいはい」
にんまりとして直視してくるカジ。ホント緊張感のない奴だ。何をそんなに楽しんでいる。
「つうかそっち人いるか?」
引き戸を開いて廊下に顔を出して左右を二度見て確認するカジ。
「いないけど、もう来るよね?」
「とりあえず上に逃げるぞ! たぶん下は無理だ」
「でも上に逃げても追い込まれるだけじゃない?」
相変わらず口の切れっぷりだけは変わらない。
「じゃあノリでプールにでも飛び降りるか? でも下は下でわんさかいると思うぞ?」
「んー。それはそれで面白いけど、そもそもあと何分逃げればいいかで立てれる作戦は変わってくるのだけど?」
「そうだな……」
時計を確認しようとスマホを見よとした時、上からザーッという砂嵐っぽい音が流れる。ガタゴトッと物音が二回鳴った後に覇気のある元気な声が聞こえた。
「のこり十五分です! 泥棒側のに人たち頑張ってください!」
傍観側のせいか知らないが呑気な声でエールを送る佐嶋。
「ちなみにもう八割くらいのチームが捕まっています。残っているのはですね。野球部さん、らっきょうダイヤモンドさん、薄味派さん、うどん好きさん、そば嫌いさん、創作部さん、オカルト研です」
ガチャンと切れて音が消えた。
しーんと静まったあと、隣のカジが腹を抱えてしゃがみこんだ。
そしてプルプルと震え始めた。
普通の人なら体調を壊したのか気にかけるところだが、そうではないと俺は知っている。
「ぷッ。プッ。アハハハ。チームの名前めっちゃくちゃウケるんだけど」
本当にこいつのツボは全体的に浅い。俺も謎のセンスだなと感じたが、カジの抱腹絶倒の姿を見ると逆に冷静になった。
十五分か。思ったより時間が経っていないな。その上生存者は残り僅かか。たぶん今いる面子はどこかに隠れてやり過ごす組だろ。野球部以外のチームは一人か二人だったはずだ。
となるとこれは逆に囮になったほうが良いか。
めんどくさいな。
タッタッタッ。
「ハア。ハア。ハア」
足音と息遣いが近づいてくるのが分かった。近くの渡り廊下から聞こえていた。横で蹲っているカジを引っ張る。
「おい。カジもう来ているぞ」
「わかった。わかったけど、ちょっと面白過ぎて力が入らない」
「んな。アホな!」
もう数秒したらこの廊下に追手が来るというのに、緊張感がなさ過ぎる。というかもう来るって。
「手間のかかる奴だな」
カジを抱えて後ろの背中に無理やりのせて、走り始める。
「って、あれ? 何でいるの?」
後ろから走ってきたのは、ケロッとした顔をし、妙に紫の髪が上なりにハネているホシだった。
というか何故ここで、その上今までどこに行っていた。
「って、何二人揃ってイチャついてんの?」
「ちゃうわボケ」
「あんたに言われたくない!」
「アタイがいつそんなことした!?」
顔を合わせたらこの応酬、相変わらずである。
「響ちゃんとりあえず下ろして! もう動けるから!」
「へいへい」
ホシのせいで、いやホシのおかげで俺は背中の束縛から解放された。というのもカジを背負った瞬間、さりげなくガシッと俺の背中をホールドしていたから、とても気持ち悪かったというのが事実だ。
「つうか、ホシ今までどこにいた?」
「いやー。何か血が滾るというか、燃えてきたというか、ケイドロにテンションが上がったから、それで一人で突っ走っちゃった」
悪びれもない笑顔で言う姿に、途轍もなく苛立ちを覚えるものの、とりあえず戦力が増えたので、物理的な面を考慮して怒らないようにする。
「あれ。ソラ君は?」
「ソラは囮になった。自らの意思で」
「え? ええええええええ!」
数秒前の笑顔から一転し、ホシはこの世の絶望と言わんばかりにひどく青ざめた。本当に感情表現豊かだな。
「何で、ソラ君にそんなことをさせたの!?」
「ソラの意志だ。お前が一人先走ったあと、やばい状態になってな。そしたら自らソラが言ったんだ」
「どうして止めなかったの?」
「止められる状況でもなかった。それにこの勝負は一人でも残れば勝ちだ。共倒れになるよりはいいというソラの判断を重んじた」
「あんたが先走らなかったら、ソラが囮にならずに済んだかもね」
カジが皮肉たっぷりの声で、ホシにガンを飛ばすと、彼女は口を堅く縛り、目を閉じて脚を止めた。
「わかった。私があなた達の囮になって、ついでにソラを助けに行く!」
「ん? マジで?」
「うそっ!?」
流石のカジもこの返答には驚きを隠せなかったみたいだ。俺も同様にだ。
「って助けるって。どうやって? これ捕まったら終わりじゃないの?」
「ふふふ。知らないの銀髪娘。これにはね……」
「いたぞ!」
廊下の奥から追手が何人か現れた。ホシは言葉が遮られたことに不服そうにし、追手を睨みつけると、隣のカジは二ヒヒと口元に手を当てて笑う。
「こら待て!」
後ろからも複数人の追手が現れた。
「ヤバいって。このままじゃ挟み撃ちじゃない」
「横に階段があるから、そこを上れ」
すぐ近くにある階段を指さして走り階段を駆け上がる。
陸上部でもいるのか、一人ずば抜けて速い男子がいた。もう距離がない。
こっちは運動できるとはいえ女子二人のスピードではすぐに捕まる。何か方法はないかと考えていたら、階段終わりにあるものに気がつく。
「おい。おまえらアレ分かるか」
両隣のホシとカジに話しかけて視線を送る。
「え、嘘?」
「マジで言っている? けどアレ内扉あるからあんまり……」
「マジだ。アレ使う以外無いだろ。あと十秒囮頼むぞ」
「マジで? ええー。ソラ君のための囮だったのに」
「じゃあ。俺が囮になってもいいんだが」
「あいつと二人で逃げるのは無理!」
「こっちから願い下げ!」
全力で否定していがみ合う二人。でもとりあえず捕まりたくないという気持ちはは変わらないみたいだった。
階段を昇り切った後、俺とカジが右に行き、ホシが左に行き取っ手を掴んだ。
全力で取っ手を引っ張った。
「うおおおお!」
「待てえええ!」
下から何人も追手がゾンビみたいな顔で襲ってくるを見て何とか防火扉を閉めた。
「くぐり戸は、任せたぞ」
「ちょっとマジで言っている?」
「十秒稼げればいい」
「あー。もうわかった! アタイのフルパワーで稼いであげるよ!」
くぐり戸を足を床に踏ん張らせて引っ張るセーラー服のホシ。もう言動が女性っぽくない。
「あいつってあんなやる気ある奴だっけ?」
「知らない。まあ、今回は一ミクロメートルくらいは頑張ってるんじゃない」
カジの表情は依然怒ったままだが、声は少し丸くなったようだった。
けど人の目は悪くないらしく、俺らがベランダを走っていると外にいる探偵役共に気がつかれてしまった。
「おった! 囲んで挟み撃ちだ!」
外から聞こえてきた作戦。
状況は芳しくない。後ろからも一人の男子生徒が追いかけてきている。
それに下からは十人くらいいるな。赤帽子の人間は見当たらない。もう大半の泥棒側の人間は捕まったのか。
「どうする? 分かれる?」
並走するカジは、いつも話しかける感じで提案をしてくる。
「分かれてもな? 実際どうなんだ? 正直、隠れていたほうが良いはずだよな」
「それはそうだけど、それは面白くないんじゃない?」
「お前、さっきまで怖がっていただろう」
「あれはさっき言った通り、ちょっと気が動転しただけだし、鬼ごっこはフツーに好きだよ」
「そうですか」
俺も鬼ごっこが嫌いではないが、ちょっと面倒という気持ちもある。とはいえこのまま捕まりたいとは思わない。
バタバタと鳴る足音がやけに響く。
「正直、俺はスリルを楽しむ人間でも、熱くなる展開を望んでいるわけではない。正直勝てる作戦があればそれでいい」
「体力馬鹿じゃないの?」
「体力馬鹿だが。スリルはしんどい。というか体力あるからと言って好きではない」
「えー。じゃあどうしよう? さっきみたいに生き残っている人に押し付けていく? ぶっちゃけ最後まで誰かひとりと言っていたし」
平然と他人に容赦ない作戦を引き出してくる。
「実際あと何人残っているかによる。下を見る限り、もうそんなに生存者はいない気がする」
「じゃあ。帽子を外して鬼側に混ざる!」
「ルールを重視している奴がそれを許すと思えない」
「せめて復活システムとかあれば」
「あるにはあるらしいが……」
あれこれ考えていたら、正面から複数の人影が現れた。
「いたぞ!」
前から迫ってくる俺らとは質の違うバタバタとした足音。
もう上がってきたのか。案の定挟み撃ちか。
「どうするの?」
カジに焦りの表情をみせる。このまま単に捕まるのは御免だ。右側に見える窓群を確認する。
「カジ止まれ!」
「へ?」
カジの腕を掴んで無理やり止まらせて、もう片方の手でパッと一つの窓の縁を掴み、ガタンと窓を強く上下させる。そして思いっきり横に引っ張るとガラッという音と共に、スライドして窓が開いた。
「開いた?」
「早よ入れ!」
カジの驚きをスルーし、カジを部屋に押し込むような形で教室に入れた。俺が入ると背後にすぐ鬼の腕が伸びていた。慌てて腕ごと挟む勢いで窓を閉めて鍵をかけた。同時に探偵役の男子生徒が両手と歪んだ顔に鼻を豚みたいな形にしてビタッと窓に貼りつき、俺たちを睨んだ。
「おっかねえな」
他の奴らも同じように外から鍵を開けようとしたがうまく行かず諦めて、後ろに回り込めと指示を出して走り抜けた。
「響ちゃん強引! それにどうして開いたの?」
「しゃあねえだろ。窓はどうもこうも、いくつかガタがきている窓があって、ガチャガチャすると鍵が緩い奴は開く。まあコツはいるし、今回はたまたま一発で開いたが」
「へー。それはあれかな。過去に何度かそんなことしたのかな? 夜の校舎に忍び込むとか」
「別にいいだろ」
「はいはい」
にんまりとして直視してくるカジ。ホント緊張感のない奴だ。何をそんなに楽しんでいる。
「つうかそっち人いるか?」
引き戸を開いて廊下に顔を出して左右を二度見て確認するカジ。
「いないけど、もう来るよね?」
「とりあえず上に逃げるぞ! たぶん下は無理だ」
「でも上に逃げても追い込まれるだけじゃない?」
相変わらず口の切れっぷりだけは変わらない。
「じゃあノリでプールにでも飛び降りるか? でも下は下でわんさかいると思うぞ?」
「んー。それはそれで面白いけど、そもそもあと何分逃げればいいかで立てれる作戦は変わってくるのだけど?」
「そうだな……」
時計を確認しようとスマホを見よとした時、上からザーッという砂嵐っぽい音が流れる。ガタゴトッと物音が二回鳴った後に覇気のある元気な声が聞こえた。
「のこり十五分です! 泥棒側のに人たち頑張ってください!」
傍観側のせいか知らないが呑気な声でエールを送る佐嶋。
「ちなみにもう八割くらいのチームが捕まっています。残っているのはですね。野球部さん、らっきょうダイヤモンドさん、薄味派さん、うどん好きさん、そば嫌いさん、創作部さん、オカルト研です」
ガチャンと切れて音が消えた。
しーんと静まったあと、隣のカジが腹を抱えてしゃがみこんだ。
そしてプルプルと震え始めた。
普通の人なら体調を壊したのか気にかけるところだが、そうではないと俺は知っている。
「ぷッ。プッ。アハハハ。チームの名前めっちゃくちゃウケるんだけど」
本当にこいつのツボは全体的に浅い。俺も謎のセンスだなと感じたが、カジの抱腹絶倒の姿を見ると逆に冷静になった。
十五分か。思ったより時間が経っていないな。その上生存者は残り僅かか。たぶん今いる面子はどこかに隠れてやり過ごす組だろ。野球部以外のチームは一人か二人だったはずだ。
となるとこれは逆に囮になったほうが良いか。
めんどくさいな。
タッタッタッ。
「ハア。ハア。ハア」
足音と息遣いが近づいてくるのが分かった。近くの渡り廊下から聞こえていた。横で蹲っているカジを引っ張る。
「おい。カジもう来ているぞ」
「わかった。わかったけど、ちょっと面白過ぎて力が入らない」
「んな。アホな!」
もう数秒したらこの廊下に追手が来るというのに、緊張感がなさ過ぎる。というかもう来るって。
「手間のかかる奴だな」
カジを抱えて後ろの背中に無理やりのせて、走り始める。
「って、あれ? 何でいるの?」
後ろから走ってきたのは、ケロッとした顔をし、妙に紫の髪が上なりにハネているホシだった。
というか何故ここで、その上今までどこに行っていた。
「って、何二人揃ってイチャついてんの?」
「ちゃうわボケ」
「あんたに言われたくない!」
「アタイがいつそんなことした!?」
顔を合わせたらこの応酬、相変わらずである。
「響ちゃんとりあえず下ろして! もう動けるから!」
「へいへい」
ホシのせいで、いやホシのおかげで俺は背中の束縛から解放された。というのもカジを背負った瞬間、さりげなくガシッと俺の背中をホールドしていたから、とても気持ち悪かったというのが事実だ。
「つうか、ホシ今までどこにいた?」
「いやー。何か血が滾るというか、燃えてきたというか、ケイドロにテンションが上がったから、それで一人で突っ走っちゃった」
悪びれもない笑顔で言う姿に、途轍もなく苛立ちを覚えるものの、とりあえず戦力が増えたので、物理的な面を考慮して怒らないようにする。
「あれ。ソラ君は?」
「ソラは囮になった。自らの意思で」
「え? ええええええええ!」
数秒前の笑顔から一転し、ホシはこの世の絶望と言わんばかりにひどく青ざめた。本当に感情表現豊かだな。
「何で、ソラ君にそんなことをさせたの!?」
「ソラの意志だ。お前が一人先走ったあと、やばい状態になってな。そしたら自らソラが言ったんだ」
「どうして止めなかったの?」
「止められる状況でもなかった。それにこの勝負は一人でも残れば勝ちだ。共倒れになるよりはいいというソラの判断を重んじた」
「あんたが先走らなかったら、ソラが囮にならずに済んだかもね」
カジが皮肉たっぷりの声で、ホシにガンを飛ばすと、彼女は口を堅く縛り、目を閉じて脚を止めた。
「わかった。私があなた達の囮になって、ついでにソラを助けに行く!」
「ん? マジで?」
「うそっ!?」
流石のカジもこの返答には驚きを隠せなかったみたいだ。俺も同様にだ。
「って助けるって。どうやって? これ捕まったら終わりじゃないの?」
「ふふふ。知らないの銀髪娘。これにはね……」
「いたぞ!」
廊下の奥から追手が何人か現れた。ホシは言葉が遮られたことに不服そうにし、追手を睨みつけると、隣のカジは二ヒヒと口元に手を当てて笑う。
「こら待て!」
後ろからも複数人の追手が現れた。
「ヤバいって。このままじゃ挟み撃ちじゃない」
「横に階段があるから、そこを上れ」
すぐ近くにある階段を指さして走り階段を駆け上がる。
陸上部でもいるのか、一人ずば抜けて速い男子がいた。もう距離がない。
こっちは運動できるとはいえ女子二人のスピードではすぐに捕まる。何か方法はないかと考えていたら、階段終わりにあるものに気がつく。
「おい。おまえらアレ分かるか」
両隣のホシとカジに話しかけて視線を送る。
「え、嘘?」
「マジで言っている? けどアレ内扉あるからあんまり……」
「マジだ。アレ使う以外無いだろ。あと十秒囮頼むぞ」
「マジで? ええー。ソラ君のための囮だったのに」
「じゃあ。俺が囮になってもいいんだが」
「あいつと二人で逃げるのは無理!」
「こっちから願い下げ!」
全力で否定していがみ合う二人。でもとりあえず捕まりたくないという気持ちはは変わらないみたいだった。
階段を昇り切った後、俺とカジが右に行き、ホシが左に行き取っ手を掴んだ。
全力で取っ手を引っ張った。
「うおおおお!」
「待てえええ!」
下から何人も追手がゾンビみたいな顔で襲ってくるを見て何とか防火扉を閉めた。
「くぐり戸は、任せたぞ」
「ちょっとマジで言っている?」
「十秒稼げればいい」
「あー。もうわかった! アタイのフルパワーで稼いであげるよ!」
くぐり戸を足を床に踏ん張らせて引っ張るセーラー服のホシ。もう言動が女性っぽくない。
「あいつってあんなやる気ある奴だっけ?」
「知らない。まあ、今回は一ミクロメートルくらいは頑張ってるんじゃない」
カジの表情は依然怒ったままだが、声は少し丸くなったようだった。
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