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10 終
しおりを挟む……女神だからといっても人間のように脆い部分があるのか。
深く、深く、幾度もプライドを傷つけられ侮辱を受け続けたのだ。悪夢を永遠に見なければいけない世界でキミは……、
「よく頑張ったな! 偉いぞ!」
『……、なっ!? なにをするのだ!? 慰めなど要らぬ……くっ。ひっく……』
俺の身体と両手は無意識に、彼女の上半身しかない背中を抱え込んでいた。
はじめは殺された怒りで、身勝手なくそったれだと思ったが。いま目の前でさらけ出している姿こそ紛れもない彼女の真の姿なのだ。
それは、とても眩しくて可憐だった。
女神だというのに、人を愛する前に憎んでしまったのだ。
俺が神ゲームのルールを知ろうとしたから、犯したことへの罪悪感からか生き抜く気持ちを手放してしまったのか。
中二の女神という彼女の全身がもう消えかかっている。
少年の姿にされたまま追放を受けた。神界から離れた為か、消えゆく為か、元の姿を取り戻してきたのだ。
俺なんかじゃ何もしてあげられないから、抱き寄せてみた。幼子の世話くらいいつもしているからな。
「俺に望むものはなんだ? 仕返しなのか」
『もう……良いのだ』
切なすぎる音量の台詞が耳をつき抜けて、その震えた唇をいま雨が濡らし始めている。
『──お前ならそこへ行ってもきっと歓迎されるだろう。私の授けたギフトがあれば神を必要とせずに描いたものを具現化できるから……もうお前の幸せのためだけに使えば……いい』
俺は作者になれる側? だから、歓迎されるというのか。
まあ、それくらいの恩恵がなくては割に合わない。
ギフトの使い勝手が良くわからなかったが。
ありがたい、それはそうさせてもらうよ。
だけど──。
「お前、お前って呼ぶな。俺の名を一度くらい呼んでいけ。俺は──」
『名か。そうだな、ならばレオと呼ぼうか』
「なんで、レオになったんだ?」
『俺を……裏返しただけだ。レオも転生するんだから今の名など……捨てろ』
俺は名を名乗りたかっただけだ。キミに聞いて欲しい──。
「んん……!?」
消えかかっていても美人だ。その女神の彼女が今俺の──。
『レオ。キスは初めてだったのか?』──俺の唇をその口で塞ぎながら。
待ってくれ。まだ行かないでくれ!
キミの名を聞かせて欲しいんだ。キミの存在をいまは必至に探す俺の気持ちなど知らぬまま。
「そんな、いやらしいことしていくな! 最後なのにがっかりさせないでくれよ。まだそっちの名を聞かせてもらってないぞ! 神なら礼儀くらい尽くしていけ──」
──最後に彼女の声が脳内に届いて来たのは、彼女が完全に消失したあとだった。
『私の名をその胸に刻めば、レオが私の恩恵者だと知られてしまう。私が殺めた者達もそうして捕えられ、抹消された……レオは……生きて……おねが……いよ』
★
雨に打たれながら、女神が俺の前から完全に消失した。
あとから脳内に微かだったが、知識が侵入してきた。
女神がまるごとギフトになった例がない。
中二の女神の要望は、俺が破廉恥と悪人じゃなければ満足のようだ。
本当は、受けてきた仕打ちに少しでも逆らって欲しかったのだな。
──
「これから異世界に配置されに行くよ。とにかくやって見るしかない」
神ゲームを作りに神界へ転生します。
俺は、中二のレオ。
女神なんかに心を奪われて、みっともないったらありゃしない。
了
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