願いを叶える魔法の傷薬~俺の異世界転生に必要なスキルを72時間しか遊べない体験版ゲームで取に行くところです~

ゼルダのりょーご

文字の大きさ
36 / 70

036

しおりを挟む
 
 このまま、ゆるりと芝居見物をするつもりはない。
 駒次郎が宿へ向かって歩いていくのは確認済みだ。
 彼がこちらに疑念をいだく様子はない。

 俺の動向を見張るような素振りも見受けられなかった。

 盤次郎が席を外した理由を、駒次郎も知っているはずなのだ。
 道中、芝居を見学し終わったら、なんどきになるのかと尋ねた。
 約一時間くらいと知ることができた。

 盤次郎が離席したころ、さらに10分が経過したと思う。
 それで午後2時05分。芝居小屋までさらに5分。

 PLAY TIME  02:10:00

 さて、彼よりも先に宿へ帰るとするか。

 いくらか遅れて宿に彼が戻って来ても、遭遇しない自信はある。
 この忍びの聴覚で聞き分けるのだ。足音もばっちりとインプットしてある。
 もちろん、普通に帰るわけもない。
 木の上、家屋の屋根の上を飛ぶが如く、風のように駆け抜けていく。

 屋根の上から忍び入ってやるのさ。
 蔵なんて大きいものはすぐ見つけられる。
 問題は鍵の形状だ。

 江戸で主流だったのは、鍵を差し込んで回して開ける錠前だ。



 ◇



 足早に宿へ引き返した。
 屋根瓦の上を忍び足で走り、蔵の場所を特定した。
 上から見渡せば楽勝だった。

 だが一度、天井裏に潜んで様子をみる。ほかのねずみが潜んでいないか。
 ここで別の忍びや泥棒に出くわしたら大変だ。
 何事も慎重に、念には念を入れよだ。

「よし。誰もいない」

 いまは人が近づく気配はない。
 ここに誰かが前もって潜んでいる様子もない。よく観察し、視認した。
 そして宿屋の蔵の前に降り立った。

「案の定だな」

 このタイプは合鍵を準備する必要がある。
 この場で造るのは無理があるかな。

 蔵だと言うのに、ひっそりと奥まった所にあるわけではなかった。
 傍に見えている部屋は、奉公人の部屋のようだ。
 奉公人たちが朝から体操でもしていそうな庭に面して蔵が建っている。

 これにて夜間は関係者の目も、耳もあり、物騒な物音でもすれば眠気まなこの奉公人が起きて来そうだ。

 それが何よりのセキュリティになると俺は思う。
 警報機もカメラもない時代だからな。
 それでも泥棒たちが素人でなければ、忍び足でバレる可能性は低い。

 中庭のひらけた空間があたかもその錠前を見張るかのように広がっている。

 ロウで型を取り、をここでやってる暇はなさそうだ。
 それについては。
 さきほど奉公人の部屋に忍び入り、畳の上に横たわり耳を澄ましてみた。

 小鳥がさえずっていたので様子をうかがっていると、小さな枝をくわえ、飛び立とうとした。
 さらに上空で鳶が甲高くさえずった。
 小鳥がびくついて、くわえていた枝を落としたのだ。

 枝が庭の土の上に落ちる際に小石にぶつかった。
 そんなささやかな音でも、障子越しによく響いてきた。

 わりと至近距離だ。

 一人で部屋にいて窓を閉めていても、ベランダの物干しざおに鳩が止まってちょこちょこ移動すれば、カチャカチャという足音が室内にいても良く分かるんだ。
 また、フンを床に落としても、ペシャンっと水滴が壁面に跳ねる音が聞けた。

 もっとも泥棒は高い所からフンを落とさないけどね。
 開錠するのにここで時間を掛ければ見つかるリスクは高くなる。
 つまり鍵は事前に用意しなければ、ここの環境ではアウトだろうな。

 忍びの聴覚は最近身についたものだし。

 昔を思い起こせば、いくらでもそんな経験はある。
 現代人より昔の人の方が文明の利器がない分、感覚は研ぎ澄まされているのではないかと。

 夜間なら常人の耳でも異変に気づくことができるだろう。
 なにせ蔵の傍だ。
 蒸し暑い夏の夜に、雨戸まで閉めて眠るとも思えないし。

 ところで鍵師の知り合いでもいるのか。
 それとも、あいつらは裏家業でもとより手癖が悪いとか。

「はは…考えすぎか」

 駒次郎と接した分には、そこまでの悪徳さは感じられなかった。
 それに弱いふりをしていたとも思えない。
 街道のときは、心底震えていた。涙も本物だった。
 強いなら俺を巻き込む意味がわからない。

 俺はたしかに人生の経験は浅いけど、あいつが極悪人で俺のことを何から何まで欺いているとは、到底思えないから。

 それに蔵の鍵のことは見ればわかることだ。
 ひと月もここに居たんだからな。
 要するに、頼れる仲間が居ない証拠だと思うのだ。

 どちらにしたって、もたもたし過ぎだ。

 帰り道、宿の周辺も軽く捜索してみたが、お里らしき娘は見当たらない。
 この宿を気にしながら、妙に顔を隠したり人目を避けたりする人物で年頃の娘を重点的に注視するようにしたけど該当者はとくに居なかった。

 盤次郎がなにかを調べると言っていたが。

 主人の部屋でも嗅ぎまわっているのだろうか。
 鍵のありかを探るために。
 鍵も本物を盗んだほうが確実だからな。

 彼らの身の上を聞かされたから、根っからの悪人とまで言わないけど。
 ぬすっとの手伝いを、人助けとするのはどうにも気が引ける。

「……採択したいが俺にも相談者がいない。迷ってる時間はねぇのにな」

 いや、まだ彼らはぬすっとじゃない。
 金策の目途が立たないけど、やめさせるべきだ。

 運良く、誰にも見つからず大金を手に入れたとしても、後ろ暗い未来しか待ってはいない気がする。

 もっとも、彼らとそこまでの付き合いをする予定も、時間も俺には残されていないから気にする所じゃないのかも知れないけど。

 すっきりして終わりたいのだと、胸の奥で時代劇を見ていたころの俺が勇ましくささやくのだ。

 出会いも別れも、涙で飾らせるなと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

処理中です...