凍雨とあなた

しば漬け

文字の大きさ
2 / 8
第1章

美酒

しおりを挟む


「はい、はい…あ!!!ありがとうございます!!もういつからでも働けます!!!」

上機嫌で電話を切り、両手を上にあげて喜びを表した。

「わーー!!!!やっと仕事決まったーーー」


大学卒業後に就職氷河期を迎えバイトをしつつ面接を受けまくる…そんな長い道のりは終わりを告げこれからの未来に明るい光を落とした。

「あんたやっとね…どうなることかと思ったわよ…」

母はテーブルの上でそら豆を剥きながら呟く。

「ほーんとお世話かけました」

浅くお辞儀しながら誠意を見せようとそら豆を剥くのを手伝うと、やれやれと言うようにため息を着く母。

「で、何をする仕事なの?」

「聞いて驚かないで…なんと…受付嬢!」

「まぁ、1ヶ月と1週間ってところかしらね」

「ちょっと、やめてよ!!」


そんな会話を繰り広げつつ、母は安心したように笑った。



そうして迎えた出社当日。

それなりに身なりを整え出勤し、慣れない業務をこなしていく。

張り付いた笑顔で受付をし続け、ついに金曜日。

業務内容?
そんなものは覚えていない…目の前のことをやりきる事でいっぱいいっぱいだった。
かろうじてメモは取れた。

「とりあえず、えなちゃんの歓迎会やるからねー!!ホントに1週間おつかれー!」

先輩がヒラヒラと手を振り夜の街に繰り出す一方、私は疲れた身体を引き摺ってコンビニで貪るように酒とおつまみをカゴに詰めていた。

「(だーーー疲れた疲れた!!今夜は飲む!!誰がなんと言おうと酒盛り!!)」

そう心で叫びながら次々に酒をカゴに入れる。

「美酒で酔おう~♪♪」

思わず声に出てしまった自身の十八番自作ソング。
酒を飲む時は何故か歌いたくなってしまうのだ。

「(やばい…思わず声に出しちゃった…まぁでも人少ないし)」


ガシャーーーーーーン

派手な音が聞こえたと思ったら足元にシュワシュワと音を立てて液体が流れてくる。


思わずその液体の元を目で辿ると辺りにはガラス片、そして誰かの足が見えた。そのまま顔まで辿る。

「(ん?サラリーマン…?)」


彼は目を見開いてこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...