凍雨とあなた

しば漬け

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第1章

人違い

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「どうして休日ってこんなにも早く終わりを迎えるんですか…どうして…」

「知らないわよさっさと支度して仕事行ってきなさい!」

そんな他愛もない会話で月曜日がスタートした。
流石に仕事を始めて初めての休日、どこにも出かける気にならず部屋のベッドでひたすら伸びていた。

母がすぐ食べられるようにと用意したサンドイッチを頬張るとなんとなく金曜のあの出来事を思い出す。

「ねー、人違いってされたことある?」

「何よ急に」

「いや、この前人違いされたみたいで…しかも持っていた酒瓶を落として割っちゃうぐらいの衝撃だったみたいで」

「男?」

「うん、男」

「目が悪いのにコンタクトしてなかったんじゃないの?その男」

「なるほど…いやそんなことある?」

「にしても酒瓶落としちゃうなんて、相当想い入れのある人だったのねきっと」

母はそういった話が好きなので冗談を入れつつ考察を始めた。

「でもあんた男っ気ないから絶対人違いね」

「ええ、男っ気ないから“絶対”人違いでしょーね」

はいはいといった感じで返事をしてコーヒーを飲み、その後家を出た。

確かに母の言っていることは間違いではない。

ここ数年彼氏はいない。

いたとしても男勝りな私を見て幻滅していなくなる事がいつもの流れだった。


そんなことはさておき、先週のおさらいを脳内でしつつ通勤を開始した。






「この後社長来るんだって!」

「え!?じゃああの人もいっしょかな!?」

「やだメイク直ししなきゃ…!!」

お昼休憩中の休憩室ではそんな話で事務の人達が大盛り上がり。

「へー、社長ってそんなにかっこいいんですか?」

と何となく質問すると。

「んなわけないでしょ!!社長は初老よ!!!」

「私達が言ってるのは社長の秘書!!超イケメンなの…」

「優しくって、気さくで…スタイルも抜群で…」

先輩達の黄色い声が共鳴し始める。

「へー、へー」

聞いてみたものの実際には興味がないのでテキトーに返事を返し、気づかれないようにその場から立ち去った。

「社長が来るのか…緊張するなぁ…対応の仕方、後で先輩に聞かなきゃ…」

そんなことをぼんやりと考えながら一足先に受付へと向かう。

「先輩、休憩ありがとうございました。それとなんですけどこの後社長が来るとか…まだまだ分からないことだらけなので対応の仕方を…」

そう言い切らない内に先輩がサッと立って「お帰りなさいませ、社長」お辞儀を始めたので条件反射で真似をして舌っ足らずで挨拶をしてお辞儀をした。

「ご苦労さまだね」

そんな言葉を受けてゆっくりお辞儀を戻す。

「(これが初老の社長!!…ん???)」

「お疲れ様です………。!?!?君はっ…!!!!!」

「あっ…………」


社長の後ろには見覚えのある男が驚いた拍子に思わず声を漏らした。
そして同時に私も声を漏らす。


「人違いの人!!!」
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