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ラーメン憩い 五日目
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五日目。
「ママ。ジャム取って」
それを言ったのは美鈴だ。窓から差し込む朝の太陽の日差し。マンションの35階の一番端に住んでいる為、カーテンは無く、窓が閉められている。リビングのテーブルに座って、焼けたパンに塗る為の苺のジャムの瓶を求めた。
「はい」
「ありがとう」
それは鈴の近くにあった為、それを差し出した。
「京牙(きょうが)も付けな」
それを言ったのはナガレだ。白鳥夫婦には、8歳の娘と7歳の息子がいる。
「バターが良い」
京牙はジャムよりもバター派らしい。
「バターが良いの?」
鈴は立ち上がり、キッチンへ行ってバターを取りに向かう。
「パパ上。今日こそラーメンの手伝いを」
美鈴は『パパママ』と呼ぶが、彼の場合、『パパ上ママ上』と呼ぶ。
「洋と和が混ざってんだよな?ははは!」
「良い?」
パパママの手伝いがしたくて、京牙はウズウズしていた。
「学校が終わったら行くか?」
「行く!」
ラーメン憩いと自宅は、歩いて10分程度。とても近い。
「良いの?」
「良いよ良いよ。じゃあ京牙。今日はよろしくな?」
「うん!」
コクッと頷き、笑った顔はとてもナガレにそっくりだ。
「パパ!私も行きたい!」
そうしたら当然美鈴も行きたくなる。
「今日のバイトは誰がいるの?」
バターと言うより、マーガリンのチューブを持って来て京牙に渡した。
「今日は夢が居なくて、尊と純也が居る」
「じゃあ、手伝ってもらおうかな?」
「やったぁ!」
「お手伝いする!」
「その代わり、良い子にしてるんだぞ?」
「うん!」
「ラーメン運ぶ!」
パパとママのお手伝い大好き。学校から帰って来たら楽しみだ。
ジリリリリリリ。定時、十七時半を回り、終わりを告げるベルが鳴る。
「お疲れ様です!」
美幸は走ってラーメン憩いへと向かう。
今日はどんな出会いがあるんだろう?
どんなラーメンと巡り会えるんだろう?
それを見ていた大空千尋は、最近彼女が元気に出勤して怒られても清々しく仕事をしているのを見て、気になっていた。
「美幸さん。何だか元気になりましたよね?」
「男でも出来たんじゃねえ?」
そんな話しが、社内では出ており噂されていた。
「………………………………………」
そんな中瀬田は、屋上でタバコを吸っていた。
島谷。
変わってるよなぁ?
俺の誘いを断る女は。
今まで居なかったのによぉ。
「チッ」
むしゃくしゃしてダァン!とベンチを蹴り飛ばせば後ろに倒れてしまう。
ムカつくぜおい。
少し優しくすれば女何か付いてくる。そうやって遊んで来たのに、彼女だけは自分の虜に出来なかった。だからこそ、むしゃくしゃするくらいに悔しくて仕方がなかった。
「こんばんは~♪」
ガラガラ。引き戸を引くなり
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ!」
チビナガレと、チビ鈴がキッズ用の黒い腰エプロンをして出迎えたのだ。
「えっ?」
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃい♪」
「いらっしゃいませ!」
そして、いつものように夫婦とバイト2人も迎える。
「あれ?」
「娘の美鈴と、息子の京牙です!」
「えぇ~!?娘さんと息子さん?」
そっくりだ。この夫婦にとても似た美人な娘と、イケメンな息子だ。
「空いてる席にどうぞ!」
8歳の美鈴はしっかりと声掛けが出来ている。そんな中京牙は
「空いてない席は寧ろ無い!」
「喧しい!」
カウンターの後ろに立つナガレはついツッコミを入れてしまう。
「あはは!すご~い!お利口さんだね?」
いつもの席とは違い、真ん中の席に着いた。普段なら1番隅の席なのに、今日は真ん中だ。
「ありがとうございます」
彼女は褒められて嬉しいのか、頬を染めてしまう。
「えへへ!良く言われる!」
彼はとてもお調子者だ。
「美鈴ちゃん。おしぼり持って行ってくれる?」
「水は?」
「水は危ないから僕が運ぶよ」
そして、美鈴はおしぼり。純也はコップに水を注いで運び、彼は水を置いてから、彼女を軽々と抱いておしぼりを置いた。
「どうぞ」
「ありがとう♪」
子供からの接客を受けるのは人生で初めてだ。嬉しくなって笑顔になる。
「何する~?」
次は尊がメモ帳とボールペンを京牙に渡して、彼は待機する。
「えっと」
壁に貼られているメニューを見るなり
「石焼きチーズ激辛ご飯?」
「米を石焼きで焦げ目が付くまで焼いて、その上にとろけるチーズを乗せて、激辛スープを掛けたご飯となっております」
ラーメンばかり見ていて米類は見てなかった。まさかまだそんなメニューが存在するとは。
「じゃあそれで」
昨日と言い今日と言い、激辛尽くしだ。
「今日も辛いのいく?」
ナガレはそう聞くと、彼女はこう答えた。
「本当は今日休みだったのに出されたので、ストレス発散として食べます!」
辛いものを食べると刺激され、ストレス発散になる。
「良いねぇ!ストレス発散して行って!」
「3~28」
その隣で鈴は聞くなり
「いえ。一つ」
「すみません。辛さレベルを…」
「あっ」
思わず言った本人も笑ってしまう。
「あっはっはっはっはっはっ!一人で3~28はすごいよ!あはは!」
個数としてではなくて辛さレベルの聞き方のようだ。純也も『くすくす』笑っており、尊はその間に京牙に書かせていた。
「石焼き」
「石やき」
「チーズ」
「チーズ」
「激辛」
「げきから」
「ご飯」
「ごはん」
書ける漢字と書けない漢字がある。まだ7歳なので、それがまた可愛い。
「辛さは8で」
昨日の激辛を反省したのか、控えめだ。
「辛さ8!」
「辛さ8」
「からさ8」
書き終えた後
「ナガレさん!オーダーお願いします!」
「おう!」
「石やきチーズげきからごはん!からさ8!」
「はい喜んで!!」
息子がオーダーを伝えてくれた。そして、料理に取り掛かる。
「やったね京牙!」
「いえい!」
2人してハイタッチし、尊はほっこりする。
「美鈴。京牙」
その時、鈴は厨房から出て来てポテトと唐揚げをお皿に取り分けて娘と息子に差し出した。
「はいバイト代」
ママからのバイト代は子供が好きなポテトと唐揚げ。おつまみとして食べられるその唐揚げは、衣がとても綺麗であり、食べたら絶対に良い音がするはず。美幸はゴクッと息を飲む。
美味しそう。
「やったぁ!ママ上ありがとう!」
「ありがとうママ!」
水を口に含んだ美幸はつい、吹き出しそうになってしまう。
「ママ上?」
「息子は何だか『パパ上』『ママ上』って呼ぶんだよね?あはは!」
「ナガレさん。ご飯焼きます」
「よろしく!」
尊は石焼きにご飯を持って焼き始める。ガスバーナーで焦げ目が付くまで。
「頂きます!」
「いただきます!」
娘と息子はそれぞれ挨拶をしてから、割り箸を割って食べ始める。美鈴は先ず、唐揚げに手を出す。隣で食べようとするその唐揚げがどんな音を立てるのかが気になり、美幸は耳を傾ける。口に運び、噛んだ。その際。衣が弾けるサクサクサクサクと言う音と、肉の柔らかさが伝わる程の肉汁のジュワッと言う音。彼女は目を瞑ってその、肉汁のジュワッと言う音と、衣のサクサクと言う咀嚼音のハーモニーに、また虜になってしまいそうだ。
何て良い音なの!
食べてないけど。
音を聞いてるだけであの唐揚げの美味しさが伝わる!
そして京牙はポテトを食べ出す。パリパリ。ポテトはカリカリ。だが中身はホクホク。良い揚げ加減だ。気付いたら美幸は、よだれを垂らしていた。ナガレは、2度見し、思わず吹き出しそうになってしまう。
「どうされました?」
鈴は、ガスバーナーで焦げ目が出来た米の上にとろけるチーズを乗せて聞くなり
「お客さん」
「?」
見るなり、目を瞑ってよだれを垂らしている彼女を見て、思わず2度見してしまう。
「どうされたんですか?」
「俺とお客さんは、同じ価値観を持ってるかもしれない」
要するに音。食べてないけどその咀嚼音でいかに美味しさを伝えられるか。それを美幸は、感じている。目を開け
「すみまけん!唐揚げとポテトも追加で!」
「はい喜んで!」
「畏まりました!」
思った通り。その音で誘われたようだ。彼はニィッと笑い、純也は唐揚げを揚げ、尊はポテトを揚げる。待ち遠しい。どちらも待ち遠しい。
「はい石焼き激辛お待ち!熱いですのでお気を付けてお召し上がり下さい!」
「!」
目を開けて見ると、蕩けたチーズの上に掛かる激辛スープ。ぐつぐつぐつぐつぐつ。石焼きなので常にスープがぐつぐつと煮たっている。それには京牙と美鈴も注目してしまう。
「いただきます」
レンゲを手に取り、先ずはスープから飲む。
「おああぁ~!」
つい、声が出てしまう。目を見張り、衝撃的な、刺激の強い絡みだ。昨日食べた激辛とはまた違う。ラーメンでは無く米なので、また辛さが違う。だが、美味しい。ヒリヒリするが、美味しくて辛いのはやはり最高だ。チーズと絡めてご飯とスープを掬って食べる。チーズのコーティングがこの辛さを押さえ付けている。それがまた良い役割を果たしている。顔から汗が流れる。額の汗を拭い、水を一切飲まずにがっつく。
「無料で替え玉も出来るけど、どう?」
「頂きます!」
ご飯じゃ足りない。そして彼はニヤッとし、替え玉の麺を皿に持って提供した。
「お待ち!」
「お待たせしました!唐揚げとポテトです」
そして尊は唐揚げとポテトを皿に乗せて提供する。
「ありがとうございます!」
麺を投入し、かき混ぜてズルルルルルルと啜る。米と違って麺は優しい。だが辛い。進む。ストレス発散出来る。美味い。レンゲでスープを掬って飲む。スープも美味い。チーズが絡んで美味い。進む。進む。進む。やがて
「はあぁ」
全て、飲み干した。ストレス発散が出来た。ホッとした所で先ずは水を飲み、唐揚げに手を出す。サクサクサクサクサクサク。と、噛めばこの唐揚げの音。肉汁が溢れる。唐揚げがこんなにもデザート感覚で食べれる何て、初めてだ。何だか懐かしい味だ。でも、食べたことの無い味。優しい味だ。太めのポテトにも手を付けた。外はパリパリ。中はほっくほく。塩が効いていて美味い。おつまみと言うよりかは、激辛を食べた後のご褒美。ラーメンと米を食べても、唐揚げとポテトの味は薄れない。生かされてる。皆、ラーメン憩いのアイドルたちだ。
「ふはあぁ~」
美味しかった。
また、虜にされました。
「美鈴ちゃん。京牙くん。またね~♪」
「まったね~!」
「またね~」
手を振る息子と娘。
「また明日来ます!」
「またお待ちしております!」
「またの起こしをお待ちしております!」
「また明日いらして下さ~い♪」
「またお越しください!」
ガラガラと引き戸を引いて店を後にする。
「ふぅ」
カツッカツッカツッカツッカツッカツッ。夜の街を歩く。
明日もまた唐揚げ食べよう♪
楽しみだなぁ~!
ラーメン憩い!
バンザ~~~~~~イ!
「ママ。ジャム取って」
それを言ったのは美鈴だ。窓から差し込む朝の太陽の日差し。マンションの35階の一番端に住んでいる為、カーテンは無く、窓が閉められている。リビングのテーブルに座って、焼けたパンに塗る為の苺のジャムの瓶を求めた。
「はい」
「ありがとう」
それは鈴の近くにあった為、それを差し出した。
「京牙(きょうが)も付けな」
それを言ったのはナガレだ。白鳥夫婦には、8歳の娘と7歳の息子がいる。
「バターが良い」
京牙はジャムよりもバター派らしい。
「バターが良いの?」
鈴は立ち上がり、キッチンへ行ってバターを取りに向かう。
「パパ上。今日こそラーメンの手伝いを」
美鈴は『パパママ』と呼ぶが、彼の場合、『パパ上ママ上』と呼ぶ。
「洋と和が混ざってんだよな?ははは!」
「良い?」
パパママの手伝いがしたくて、京牙はウズウズしていた。
「学校が終わったら行くか?」
「行く!」
ラーメン憩いと自宅は、歩いて10分程度。とても近い。
「良いの?」
「良いよ良いよ。じゃあ京牙。今日はよろしくな?」
「うん!」
コクッと頷き、笑った顔はとてもナガレにそっくりだ。
「パパ!私も行きたい!」
そうしたら当然美鈴も行きたくなる。
「今日のバイトは誰がいるの?」
バターと言うより、マーガリンのチューブを持って来て京牙に渡した。
「今日は夢が居なくて、尊と純也が居る」
「じゃあ、手伝ってもらおうかな?」
「やったぁ!」
「お手伝いする!」
「その代わり、良い子にしてるんだぞ?」
「うん!」
「ラーメン運ぶ!」
パパとママのお手伝い大好き。学校から帰って来たら楽しみだ。
ジリリリリリリ。定時、十七時半を回り、終わりを告げるベルが鳴る。
「お疲れ様です!」
美幸は走ってラーメン憩いへと向かう。
今日はどんな出会いがあるんだろう?
どんなラーメンと巡り会えるんだろう?
それを見ていた大空千尋は、最近彼女が元気に出勤して怒られても清々しく仕事をしているのを見て、気になっていた。
「美幸さん。何だか元気になりましたよね?」
「男でも出来たんじゃねえ?」
そんな話しが、社内では出ており噂されていた。
「………………………………………」
そんな中瀬田は、屋上でタバコを吸っていた。
島谷。
変わってるよなぁ?
俺の誘いを断る女は。
今まで居なかったのによぉ。
「チッ」
むしゃくしゃしてダァン!とベンチを蹴り飛ばせば後ろに倒れてしまう。
ムカつくぜおい。
少し優しくすれば女何か付いてくる。そうやって遊んで来たのに、彼女だけは自分の虜に出来なかった。だからこそ、むしゃくしゃするくらいに悔しくて仕方がなかった。
「こんばんは~♪」
ガラガラ。引き戸を引くなり
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ!」
チビナガレと、チビ鈴がキッズ用の黒い腰エプロンをして出迎えたのだ。
「えっ?」
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃい♪」
「いらっしゃいませ!」
そして、いつものように夫婦とバイト2人も迎える。
「あれ?」
「娘の美鈴と、息子の京牙です!」
「えぇ~!?娘さんと息子さん?」
そっくりだ。この夫婦にとても似た美人な娘と、イケメンな息子だ。
「空いてる席にどうぞ!」
8歳の美鈴はしっかりと声掛けが出来ている。そんな中京牙は
「空いてない席は寧ろ無い!」
「喧しい!」
カウンターの後ろに立つナガレはついツッコミを入れてしまう。
「あはは!すご~い!お利口さんだね?」
いつもの席とは違い、真ん中の席に着いた。普段なら1番隅の席なのに、今日は真ん中だ。
「ありがとうございます」
彼女は褒められて嬉しいのか、頬を染めてしまう。
「えへへ!良く言われる!」
彼はとてもお調子者だ。
「美鈴ちゃん。おしぼり持って行ってくれる?」
「水は?」
「水は危ないから僕が運ぶよ」
そして、美鈴はおしぼり。純也はコップに水を注いで運び、彼は水を置いてから、彼女を軽々と抱いておしぼりを置いた。
「どうぞ」
「ありがとう♪」
子供からの接客を受けるのは人生で初めてだ。嬉しくなって笑顔になる。
「何する~?」
次は尊がメモ帳とボールペンを京牙に渡して、彼は待機する。
「えっと」
壁に貼られているメニューを見るなり
「石焼きチーズ激辛ご飯?」
「米を石焼きで焦げ目が付くまで焼いて、その上にとろけるチーズを乗せて、激辛スープを掛けたご飯となっております」
ラーメンばかり見ていて米類は見てなかった。まさかまだそんなメニューが存在するとは。
「じゃあそれで」
昨日と言い今日と言い、激辛尽くしだ。
「今日も辛いのいく?」
ナガレはそう聞くと、彼女はこう答えた。
「本当は今日休みだったのに出されたので、ストレス発散として食べます!」
辛いものを食べると刺激され、ストレス発散になる。
「良いねぇ!ストレス発散して行って!」
「3~28」
その隣で鈴は聞くなり
「いえ。一つ」
「すみません。辛さレベルを…」
「あっ」
思わず言った本人も笑ってしまう。
「あっはっはっはっはっはっ!一人で3~28はすごいよ!あはは!」
個数としてではなくて辛さレベルの聞き方のようだ。純也も『くすくす』笑っており、尊はその間に京牙に書かせていた。
「石焼き」
「石やき」
「チーズ」
「チーズ」
「激辛」
「げきから」
「ご飯」
「ごはん」
書ける漢字と書けない漢字がある。まだ7歳なので、それがまた可愛い。
「辛さは8で」
昨日の激辛を反省したのか、控えめだ。
「辛さ8!」
「辛さ8」
「からさ8」
書き終えた後
「ナガレさん!オーダーお願いします!」
「おう!」
「石やきチーズげきからごはん!からさ8!」
「はい喜んで!!」
息子がオーダーを伝えてくれた。そして、料理に取り掛かる。
「やったね京牙!」
「いえい!」
2人してハイタッチし、尊はほっこりする。
「美鈴。京牙」
その時、鈴は厨房から出て来てポテトと唐揚げをお皿に取り分けて娘と息子に差し出した。
「はいバイト代」
ママからのバイト代は子供が好きなポテトと唐揚げ。おつまみとして食べられるその唐揚げは、衣がとても綺麗であり、食べたら絶対に良い音がするはず。美幸はゴクッと息を飲む。
美味しそう。
「やったぁ!ママ上ありがとう!」
「ありがとうママ!」
水を口に含んだ美幸はつい、吹き出しそうになってしまう。
「ママ上?」
「息子は何だか『パパ上』『ママ上』って呼ぶんだよね?あはは!」
「ナガレさん。ご飯焼きます」
「よろしく!」
尊は石焼きにご飯を持って焼き始める。ガスバーナーで焦げ目が付くまで。
「頂きます!」
「いただきます!」
娘と息子はそれぞれ挨拶をしてから、割り箸を割って食べ始める。美鈴は先ず、唐揚げに手を出す。隣で食べようとするその唐揚げがどんな音を立てるのかが気になり、美幸は耳を傾ける。口に運び、噛んだ。その際。衣が弾けるサクサクサクサクと言う音と、肉の柔らかさが伝わる程の肉汁のジュワッと言う音。彼女は目を瞑ってその、肉汁のジュワッと言う音と、衣のサクサクと言う咀嚼音のハーモニーに、また虜になってしまいそうだ。
何て良い音なの!
食べてないけど。
音を聞いてるだけであの唐揚げの美味しさが伝わる!
そして京牙はポテトを食べ出す。パリパリ。ポテトはカリカリ。だが中身はホクホク。良い揚げ加減だ。気付いたら美幸は、よだれを垂らしていた。ナガレは、2度見し、思わず吹き出しそうになってしまう。
「どうされました?」
鈴は、ガスバーナーで焦げ目が出来た米の上にとろけるチーズを乗せて聞くなり
「お客さん」
「?」
見るなり、目を瞑ってよだれを垂らしている彼女を見て、思わず2度見してしまう。
「どうされたんですか?」
「俺とお客さんは、同じ価値観を持ってるかもしれない」
要するに音。食べてないけどその咀嚼音でいかに美味しさを伝えられるか。それを美幸は、感じている。目を開け
「すみまけん!唐揚げとポテトも追加で!」
「はい喜んで!」
「畏まりました!」
思った通り。その音で誘われたようだ。彼はニィッと笑い、純也は唐揚げを揚げ、尊はポテトを揚げる。待ち遠しい。どちらも待ち遠しい。
「はい石焼き激辛お待ち!熱いですのでお気を付けてお召し上がり下さい!」
「!」
目を開けて見ると、蕩けたチーズの上に掛かる激辛スープ。ぐつぐつぐつぐつぐつ。石焼きなので常にスープがぐつぐつと煮たっている。それには京牙と美鈴も注目してしまう。
「いただきます」
レンゲを手に取り、先ずはスープから飲む。
「おああぁ~!」
つい、声が出てしまう。目を見張り、衝撃的な、刺激の強い絡みだ。昨日食べた激辛とはまた違う。ラーメンでは無く米なので、また辛さが違う。だが、美味しい。ヒリヒリするが、美味しくて辛いのはやはり最高だ。チーズと絡めてご飯とスープを掬って食べる。チーズのコーティングがこの辛さを押さえ付けている。それがまた良い役割を果たしている。顔から汗が流れる。額の汗を拭い、水を一切飲まずにがっつく。
「無料で替え玉も出来るけど、どう?」
「頂きます!」
ご飯じゃ足りない。そして彼はニヤッとし、替え玉の麺を皿に持って提供した。
「お待ち!」
「お待たせしました!唐揚げとポテトです」
そして尊は唐揚げとポテトを皿に乗せて提供する。
「ありがとうございます!」
麺を投入し、かき混ぜてズルルルルルルと啜る。米と違って麺は優しい。だが辛い。進む。ストレス発散出来る。美味い。レンゲでスープを掬って飲む。スープも美味い。チーズが絡んで美味い。進む。進む。進む。やがて
「はあぁ」
全て、飲み干した。ストレス発散が出来た。ホッとした所で先ずは水を飲み、唐揚げに手を出す。サクサクサクサクサクサク。と、噛めばこの唐揚げの音。肉汁が溢れる。唐揚げがこんなにもデザート感覚で食べれる何て、初めてだ。何だか懐かしい味だ。でも、食べたことの無い味。優しい味だ。太めのポテトにも手を付けた。外はパリパリ。中はほっくほく。塩が効いていて美味い。おつまみと言うよりかは、激辛を食べた後のご褒美。ラーメンと米を食べても、唐揚げとポテトの味は薄れない。生かされてる。皆、ラーメン憩いのアイドルたちだ。
「ふはあぁ~」
美味しかった。
また、虜にされました。
「美鈴ちゃん。京牙くん。またね~♪」
「まったね~!」
「またね~」
手を振る息子と娘。
「また明日来ます!」
「またお待ちしております!」
「またの起こしをお待ちしております!」
「また明日いらして下さ~い♪」
「またお越しください!」
ガラガラと引き戸を引いて店を後にする。
「ふぅ」
カツッカツッカツッカツッカツッカツッ。夜の街を歩く。
明日もまた唐揚げ食べよう♪
楽しみだなぁ~!
ラーメン憩い!
バンザ~~~~~~イ!
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