江戸の『鬼』

小豆あずきーコマメアズキー

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か ご め

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かごめで遊ぶと、「鬼」が来る。

『かごめ かごめ』

5人くらいの、自分と同い年程の男女が手を繋いで、真ん中でしゃがみ込んで顔を伏せているブロンドの短い髪の、黄色い着物を身に付けた女の子は、歌っていた。

『籠の中の鳥は いついつ出会う 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面 だぁれ』

彼女は、後ろにいる相手を考えた。

『ふみ(ふみちゃん)』

顔を上げると、目の前にも左にも右にも誰も居ない。

『………………………………………』

ふと後ろを見ると、黒髪で、高身長のイケメンの風貌の主である男が子供たちの顔を脇に抱えて、似合わない笑みを浮かべていた。

『無念(残念)』

『!!!!!!!!!!!?』

体中の血液が逆流するほどの恐怖に目を見張り、じわ~ッと、失禁してしまう。

『はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ』

腰を抜かし、地面を這う。

『助けて!助けてぇ!!』

『いづこへ参上する?貴様の退却する場所はただにひいつ。来られよ(どこへ行く?お前の帰る場所はただ一つ。来い)!』

ガッ!とスラリとくびれた脚首を掴み、引き摺り歩き出したのだ。

『あぁっ!うたてし(いやあああああぁ)!』

冷たい川が流れる橋の下で体育座るのは、鮮やかな水色の肩にかかるくらいの髪に、高身長で細身な上に筋肉で引き締められたその肉体美は、男も女も酔わせ、男が見ましても吸い付いてみたいほどの初々しい美形。だが、どこか変わっている一面もあり、村の人たちからは『変わり者』扱いされている。崗絛。

「かごめ かごめ 籠の中の鳥は」

布団の上で着物を開(はだ)けさせて後ろ手にされたその華奢なくびれた両手首から肘の関節まで赤い縄で縛り付けられているブロンドの短い髪の、13の女、愛道鈴の上に覆い被さる、黒髪で、高身長のイケメンの風貌の主である男、鬼賀乃仁導は、筋肉で引き締まった実年齢である51とは思えない程の肉体美を晒し、大きい陰茎を膣に差し込んでバコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!と、子宮を何度も突き上げていた。

「んっんっんっんっんっんっ!」

それに加えて猿轡を嵌められており、片方の手でふっくらとした形の綺麗な大きな胸を鷲掴まれ、もう片方の手で首を軽く締め付けられており、彼女はガクガクとなかなかお目に掛かれない綺麗な形のほっそりした脚を震わせ

「んぅ!んっ!んううぅ!」

快楽の海に溺れて這い上がる事が出来ず、体がバラバラになるほど愛され、一度からだにこびりついた快感はどこにも出ていかず、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流してビクビクと腰を痙攣させてプシャッ!と軽く達し、愛液が糸を引く。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ女ぁ!」

唾液を垂れ流し、突き昇ってくる熱の魅力に抗えず、欲望を燃え上がらせどくどくと全身の血が滾り、締め付けられるその快感に身体がゾクッとし、勃起して太く猛々しくそびえ、びくんびくんと脈打つ陰茎から、ビュクビュクと我慢汁が溢れる。

「夜明けの 晩に」

彼女を抱きながらゴロンと仰向けになれば

「んんっ!」

鈴はその上に跨るようにして座ると、奥深くまで差し込まれていく。

「んっ!んううううぅ!!」

天井に顔を向け、着物が腰まで開(はだ)け、彼は骨盤を掴んで下から上にバコッ!バコッ!バコッ!バコッ!と突き上げる。

「んぅ!んっ!んっ!んっ!んっ!んっ!んんんんー!」

その振動で胸が揺れ、腰を痙攣させたまま軽く達し続ける。

無用(ダメ)!

達すのが、止まらず(イくのが、止まらない)!

心地良く(気持ち良くて)!

死、ぬぅ!

元々が、誰もが満足の行く大きさであり、それが興奮して勃起する事によって更に人間離れした大きさになる。それで突き上げられているので、大いに体が満足する。

「んんんんんん!」

いま無用(もうダメ)!

達す!達す!達すううぅ!

「女ぁ!かはそれがしと貴様を一所涯繋ぐ愛じゃ!子宮にて(これは俺とお前を一生涯繋ぐ愛だ!子宮で)、受け取れえええええぇ!!!」

腰を痙攣させ、年甲斐も無く多量の精を放った。射精は力強く、雄々しく、精液はどこまでも濃密だった。きっとそれは子宮の奥まで到達したはずだ。あるいは更にその奥まで。それは実に非の打ち所のない射精。

「んぅ!ん、んんんんんんー!」

失神しそうな程のエクスタシーが体を駆け抜け、ビクビクと腰を痙攣させ、体は快感のあまりにゾクゾクし、ブッシューーーーーーーーーッ!と、何メートルとも潮を吹き出した。

「ん……………………ッ…ふぅ……」

その際に、余分の脂肪の無い痩せて凹んだ腹部がボコッ!と膨れ上がり、子宮に熱湯が注がれたように熱くなり、唾液を垂れ流し、じょろっと失禁し、彼女は停電したようにプッツリと、意識を失なってしまう。

「はあああぁ~」

上体を起こせば鈴はドサッと倒れ、ヌプッと、抜いた。

「早ゐ所業授精しめねば(早いところ授精させなければ)」

スラリとくびれた脚首を掴んで持ち上げるなりぶらんと逆さまになる。膣に射精された精子が駆け抜け、子宮へと到達する。そして、卵管を通り卵子を待つ。卵巣から排卵が起こる。精子と排卵をした卵子が、卵管膨大部で出会い、受精をする。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通り、子宮内へ移動する。子宮に到達した受精卵は、子宮内膜に着床し、妊娠が成立する。その際、重力で猿轡が外れ、彼女は舌を出したまま意識が戻る気配はない。

「貴様とそれがしの子じゃ。貴様に似て美しき子が産まらるる手筈じゃ。貴様が美しけらば子も美しき。この世に、かようにも美しき女は存在致さぬ。一所涯それがしに尽くし、一所涯それがしを愛せ。貴様を深くお慕い垂き(お前と俺の子だ。お前に似て美しい子が産まれるはずだ。お前が美しければ子も美しい。この世に、こんなにも美しい女は存在しない。一生涯俺に尽くし、一生涯俺を愛せ。お前を深く愛してる)。鈴♡」

「あ………………ッ…はぁ……」

失神していながらも腰をビクビクと痙攣させて、ピュピュッ。ピュクピュクと潮が吹き続ける。ぶらんと垂れ下がった大きい陰茎から滴る精は、彼女の顔に掛かり、糸を引く。

「後ろの正面 だぁれ」

彼は俯き、仁導を思う。

仁、導…。

やがて彼女は、目を覚ました。自分は頭上に腕を伸ばして華奢なくびれた両手首から肘の関節まで赤い縄で縛り付けられて、天井の近くの壁に頑丈の釘が刺されており、その縄が括り付けられていて、ぶら下がっていた。

「………………………………………」

その時、襖が開き、鈴は顔を向けた。

「鈴」

中に入って来た仁導は襖を閉めると歩いて近付き、アゴを掴んだ。

「お慕い垂き(愛してる)」

キスをしようとしたその時

「×ね!」

彼女はつい、抵抗して暴言を吐き、蹴り飛ばしたのだ。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

彼はバランスを崩し、似合わない笑みを浮かべ、前髪の影から目が覗き見詰める。

「家に帰らばや!いまうたてし!監禁よすぎこそうたてけれ!母と父に会はせて(家に帰りたい!もうやだ!監禁生活はやだよ!お母さんとお父さんに会わせて)!」

「會わせてやる。直ぐにとはいえ。なれど、貴様はそれがしに逆らった。お仕置きが必定じゃ(会わせてやる。直ぐにでも。だが、お前は俺に逆らった。お仕置きが必要だ)」

刀を鞘から抜き

「!!!!!!!!!!?」

鈴はドキッし、戦慄が体を突き抜ける。

「御免たまへ。御免たまへ!御免たまへ!御免たまへ!御免たまへ!御免たまへ!御免たまへ!御免たまへ!御免たまへ(ごめんなさい。ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい)!」

ガッと、片方の膝に腕を通せばなかなかお目に掛かれない綺麗な形のほっそりした脚が持ち上がり、膝の上辺りに刃を当て、ノコギリのように斬って来たのだ。

「!!!!!!!!!!?」

声も凍る程の激痛に目を見張り、唾液を垂れ流す彼女は

「ぎゃああああああああぁ!!」

叫ばずには居られず、メリメリと肉と骨が引き裂かれて行く音が響き、血がぼたぼたと滴る。

「あぁ……………………ッ…あ……!」

舌を出し、白目を剥く。ボトッ。片方の脚が、落ちた。

「美しき(い)」

彼は膝を付き、その脚を抱いてキスをした。

「なぞ美しき、美術品じゃ(なんて美しいんだ。まるで美術品だ)」

唾液を垂れ流し、鈴に顔を向けた。彼女は天井に顔を向けており、じょろろろろろろろろと、失禁する。

「鈴」

立ち上がり、アゴを掴んで顔を向けさせ

「お慕い垂き(愛してる)♡」

口内に舌を差し込み、生き物のように暴れ回る。唾液が飛び散り、鈴はあまりの激痛に、停電したようにプッツリと、意識を失なってしまう。

どのくらい経っただろうか。

「あ……………………ッ…あぁ…」

自分は、両脚が無くなっていた。鈴は吊るされたまま震え、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流した。

「鈴!両親を連れて参った(来た)ぞ!」

襖を開けて入って来るなり、仁導は、母の生首を脇に抱えており、切断された父親の上体を片方の脇に抱えていたのだ。

「!!!!!!!!!!?」

不安と恐怖と絶望で首まで心臓が飛び上がったように息苦しくなり、頭も中がしびれて目の前の現実が受け入れられない。

「貴様とそれがしがどれ程愛し合とはゐるか、ご両親を平穏しめてやらねば(お前と俺がどれ程愛し合っているか、ご両親を安心させてやらねば)」

ドシャッと落とし、彼は後ろに回って着物を開(はだ)けさせれば、ふっくらとした形の綺麗な大きな胸を両手で鷲掴み揉み下す。

「鈴。それがしに逆らゑば、貴様の身の周りの大切な人間も、同じ道を辿る事になる。かまえて逆らうな。聞き従ゑ。一所涯貴様はそれがしを愛し続け、貴様のことごとくにてそれがしに尽くさねば、ゐずれ貴様は(俺に逆らえば、お前の身の周りの大切な人間も、同じ道を辿る事になる。決して逆らうな。聞き従え。一生涯お前は俺を愛し続け、貴様の全てで俺に尽くさねば、いずれお前は)、両腕を失う事になる」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

人差し指と中指の間でムチッとした愛らしいピンク色の乳首を挟み、こねくり回して弄ぶ。

「あぁ…………………ッ…あ……!」

父(お父、さん)!

母(お母さん)!

もう、何をしても逃げられない。抵抗するだけ無駄。ここにいる限り、絶望しか道は無い。

ダァン!警察長屋の居室で、緑色が掛かった黒髪の高身長で、性的魅力に溢れた男、白鳥ナガレは、脚の短いテーブルの前に胡座をかいており、拳を握り締めてテーブルを叩き付けた。

「当時なん歳でござった(だった)?」

「当時漆歳でござる(7歳です)」

それを言ったのは大浦湊だ。シルバーの髪が目立ったイケメンな風貌の38歳の男。

「神隠しになり申してから陸年。何故でござる見付からなゐんじゃ(行方不明になってから6年。なんで見付からねんだ)!?」

娘が帰って来ないと、愛道夫婦が警察長屋に来てから訳6年が経った。ナガレは、片方の手で目を覆い肘をテーブルに付く。

「わらしたちの間にて流行したでござる戯れにて、『かごめ』と申す戯れが村に広まとはいたであろう(あの当時、子供たちの間で流行した遊びで、『かごめ』と言う遊びが村に広まっていました)」

「其れにて(んで)?」

「其れに合わせて、妙な噂も広まとはいたであろう(それに合わせて、妙な噂も広まっていました)」

「妙な噂?」

彼はそこで初めて、湊に顔を向けた。

「遊みてゐる間に『鬼』が来て、可愛ゐわらしを攫うと申す噂でござる(遊んでいる間に『鬼』が来て、可愛い子供を攫うと言う噂です)」

かごめと言う遊び自体も知らなければ、その噂も知らない。

「とはいえ、否定は出来ませぬであろう?神隠しに成り申したその子が『かごめ』にて遊みておりきとかは定かにてはありませぬが、うなの無い胴体のみにてのわらし達が輪になり申して倒れておりきのは発見させて候(でも、否定は出来ませんよね?行方不明になったその子が『かごめ』で遊んでいたのかは定かではありませんが、首のない胴体だけの子供達が輪になって倒れていたのは発見されてますから)」

「あぁあの由々しき事態はまことに妙な由々しき事態でござった。しかも犯人捕まとはなゐ。であるとしてちょーだいも、同ひい犯ならそやつは人間にてはござらぬ。『鬼』じゃ(確かにな。あの事件は本当に妙な事件だった。しかも犯人をまだ捕まえてねーしな?だとしても、同一犯ならそいつは人間じゃねえ。『鬼』だ)」

「鬼でござる!じゃから鬼の仕業なのだ(鬼です!だから鬼の仕業なんです)!」

「どなれど!鬼であろうと鬼にてなからふとも!取っ捕まゑてうな(んだがしかーし!鬼だろーと鬼じゃなかろーとも!取っ捕まえて首)を刎ねてやらぁ!」

その時、襖が開かれた。

「白鳥!愛道夫婦(めおと)の亡骸が見付かった!」

それを言い放ったのは、仁導だった。

「なにゆえ(んだとおおぉ)!?」

「!!!!!!!!!!?」

湊は目を見張り、瞳が、揺れた。馬に跨って向かった先は、土手だった。女の首が転がっており、男の上体が埋まっていた。

「酷ゐ(ひでぇ)」

「人間の仕業にてはありませぬ!ながれ殿!やはり『鬼』でござる!この村には『鬼』が在るみてす(人間の仕業ではありません!ナガレさん!やはり『鬼』です!この村には『鬼』が居るんです)!」

湊は、馬鹿馬鹿しい噂であってもこれが人間の仕業では無いと証拠まで見せ付けられ、弱気になってしまう。だがこれは恐ろしい事件として片付ける訳にはいかない。『鬼』の存在を証明され、怖気付くのも無理はない。

「狼狽ゑるな!鬼であろうとなからふと仲柄ござらん!取っ捕まゑてうなを刎ねるまにてじゃ!とっとと犯人を見付けなゐと、また被害が起きる!なんとしてちょーだいとはいえ食ゐ止めるんじゃ(ビビんな!鬼だろうとなかろうとカンケーねえ!取っ捕まえて首を刎ねるまでだ!とっとと犯人を見付けねえとまた被害が起きる!なんとしてでも食い止めんだ)!」

その後ろで馬に跨ったまま手綱を手にしている仁導は、前髪の影から除くその目は、笑みを浮かべていた。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

そんな中鈴は、見張りを置かれて監禁され続けていた。

「いとほしくぞ。あはれがりぬよかし。されど、なんぢが仁導に逆らはずは、五体満足に暮らされしものの(可哀想にねぇ。同情しちまうさね。けど、あんたが仁導に逆らわなければ、五体満足で暮らせたものの)」

目の前に座るのは、長い黒髪は腰まであり、凛としていて目鼻立ちのきりっとした高身長の女、八坂薌だ。

「我は逃ぐ!なにあふとも!かかる卑劣に薄汚れし物の怪とはいま居るまじ(私は逃げます!なにがあっても!あんな卑劣で薄汚れた化け物とはもう居たくない)!」

「いづれの口こそ言へれかし(どの口が言ってるさね)」

立ち上がるなり、彼女は腕を伸ばしてアゴを掴んだ。

「う……………………ッ…ぐ……!」

「なんぢいまだ分かりて無しめりかし。我と仁導は繋がれるぞ。なんぢの発言せる言の葉も、仁導の居ぬ間の趣も、さながら知らすべきぞかし(あんたまだ分かって無いようだねぇ。私と仁導は繋がってるのさ。あんたが発言した言葉も、仁導が居ない間の状況も、全て報告しないといけないのさね)。口の聞き方に気を付けな」

そう言い、スルッと離した。

「我には無かるべきに。いかで我なる?かくならば我など!生まれ来ずべかりしに(私じゃ無くても良いのに。どうして私なの?こうなるんだったら私なんか!生まれて来なければ良かったのに)!」

ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流し、自分が生まれてきてしまった事さえも憎み、後悔してしまう。13歳になって強制的に妊娠させられ、しかも娶られてしまった。こんな人生になるなんて誰もが思わない。

「悲劇の女主人公のごとき事を言ひて。仁導はなによりも『麗し』ものを好むぞ。物にあれ人なれ。なんぢを誘拐し来しほど、まづ我に言ひ来たりよかし。『この世に最も麗しき娘なり。生きたる世に、かかる麗しき娘は他に居ず。いや、あらず。十三になひしほど、我はかの娘を娶る』は。思ひし物を手放す事はせず。なにあふともおのれのものにし、飾りおく事に仁導は飽くぞ。おのづからなんぢなりとぞ事ばかりさ(ヒロインみたいな事を言って。仁導はなによりも『美しい』ものを好むのさ。物であれ人間であれ。あんたを誘拐して来た時、真っ先に私に言って来たさね。『この世で最も美しい娘だ。生きている人生の中で、あのような美しい娘は他に居ない。いや、存在しない。13になった時、俺はあの娘を娶る』って。愛した物を手放す事はしない。なにがあっても自分のものにし、飾っておく事で仁導は満足するのさ。たまたまあんただったって事だけさね)」

「さりとて(だからって)…」

「なんぢの脚の事も、ご両親の事もげにいとほしさぞ(あんたの脚の事も、ご両親の事も本当に可哀想さね)」

「分からぬくせになあはれがりそ(分からないくせに同情しないで)!」

「仁導にはえ逆らはずよかし!なんぢ良く分かれる事ならむ!?聞き従ふよりほかに生くる道は無きぞ!なんぢに与へられし道は!聞き従ひて仁導の死ぬるを待つや、聞き従はで体の一部を奪はるや!その道のほかに無しよかし(逆らえないさね!あんたが良く分かってる事だろう!?聞き従うしか生きる道は無いのさ!あんたに与えられた道は!聞き従って仁導が死ぬのを待つか、聞き従わないで体の一部を奪われるか!その道しか無いさね)!」

彼女が言っている事は、全てが正しい。だからこそ、何も言えない。言い返す事が出来ない。だとしても、13の自分には重たすぎる人生だ。これがずっと続くと思うと、これ以上に気が滅入ってしまい、おかしくなってしまいそうだ。

「薌お願ひなり。教へたまへ。自在になるには、いかがすべしや?をひとより、いかがせば少しにも程を置くべしや?いかがせば、逮捕に繋がるや?教へたまへ(薌さんお願いです。教えて下さい。自由になるには、どうすれば良いんですか?夫から、どうすれば少しでも距離を置けますか?どうすれば、逮捕に繋がるんですか?教えて下さい)」

限界が来ているのは分かる。薌は、自分よりも若いこの娘が本当に哀れで、見ているこっちが辛くなってしまう。

「第一に、『聞き従ふ』。第二に、『仁導のけしきを損なはせず』。第三に、『仁導をこの上なく思へる事を体を使ひて伝ふ』。第四に、『目所狭く甘ゆ』(第一に、『聞き従う』。第二に、『仁導の機嫌を損なわせない』。第三に、『仁導をこの上なく愛している事を体を使って伝える』。第四に、『目一杯甘える』)。第五に…」

その時、彼女は黙り込んだ。

「薌(薌さん)?」

「仁導が帰り来たりよかし(帰って来たさね)」

「!!!!!!!!!!?」

鈴はドキッとし、下唇を噛み締める。

「『うたてき顔せず』事ぞかし(『嫌な顔をしない』事さね)」

襖が引かれると、薌は顔を向けた。

「疾かりしには無しや(早かったじゃないか)」

「無能な人間を拝見するのは面白ゐ。犯人を懸命に追とはゐる。白鳥にへばりつゐておる男は、『鬼』の存在を信じて疑わず怯ゑておる(無能な人間を見るのは面白い。犯人を懸命に追っている。白鳥にへばりついている男は、『鬼』の存在を信じて疑わず怯えている)。くっふっふっふっふっふっ。うつけ者な男じゃ(バカな男だ)」

「をかしきが見ゆべからずや。我こそ帰らせさすれ(面白いのが見えて良かったじゃないか。私は帰らせてもらうよ)」

そう言い歩き出すと

「報告を忘れておる。それがしが居なゐ間、正室(忘れている。俺が居ない間、妻)は『大人しか』ったか?」

鈴の瞳が揺れ、彼女をジッと見続ける。

「なんぢの思へる以上に、良き子なりきよかし。この子は美しき子ぞかし。なんぢ守らずと、この子。生きえいかねばぞ(あんたが思っている以上に、良い子だったさね。この子は可愛い子さね。あんたが守ってあげないと、この子。生きていけないからね)」

そう言い、歩いて部屋から出て行った。

「………………………………………」

彼は顔を向け、疑いを掛ける。

「仁導」

仁導は顔を向けると、彼女はこう、口にした。

「すがらに待ちたれば。抱き締めばや。抱き締めさせて(ずっと待ってたから。抱き締めたい。抱き締めさせて)」

第4条!『目一杯甘えるべし』!

すると彼は後頭部に腕を回すと、抱き締めて上げた。

この歳になり申して(なっても)。

正室(妻)が愛おしくてときめく。

「口吸いせばや(キスしたい)」

好きでもない、愛しても居ない夫に目一杯甘えるのは本当に自分の身を削るようなもの。だが、薌の伝授通り、嫌な顔は一切せず、甘える。

「口吸いがしたいでござるとか(キスがしたいのか)?」

「うん」

小さく頷いた妻の唇に唇を押し当て、舌を差し込めば絡ませ合い、その舌を包むようにして交互に吸い合う。唾液を垂れ流し、愛おしくて愛おしくて堪らず、妻からの愛を受ける。

ダメでござる(ダメだ)。

とろけてしまうで(しまいそうな)程。

正室(妻)が愛おしくて。

堪らん♡

しんしんと冷える冬の夜道が豪華な星空に彩られる。居室に蝋燭を立ててテーブルに頬杖をつくナガレは、うとうとしていた。

「………………………………………」

ふと頭が落ちた時

「はびこびずむ!」

ゴツッ!と額をぶつけてしまう。

「痛ゐは畜生(痛えなチキショー)!」

上体を起こして額に触れる。

そもそも『かごめ』とはどんな戯れじゃ(ってどんな遊びだ)?

それがしが独身には無くてわらしが居たら分かるに(俺が独身じゃ無くて子供が居たら分かんのにな)。

明日、村を度とは(回って)聞くか。

『鬼』と『かごめ』。

どんな結び付きがあとは(って)。

左様な(そんな)噂が?

そんな中薌は、布団の上で寝る弟の爻を見ていた。栗色の髪のヤンチャ系な少年であり、顔は全く似ていない。

「………………………………………」

我とて、畏しよかし(私だって、怖いさね)。

なんぢが弟と同い年なれば(あんたが弟と同い年だから)こそ。

尚更畏く、せむかたなしよかし(怖くて、仕方がないさね)。

定めて(必ず)。

定めて生くるぞ(生きるんだよ)?

鈴。

弟に腕を伸ばすと抱き寄せ、揺れる瞳を、閉じた。

「さふ(そう)か。鬼か」

囲炉裏に焚べた薪がパチパチと燃えており、お猪口に注がれた日本酒を飲む男前の顔をしており、黒髪を保っている、中肉中背の60代後半程のおっちゃん、千葉徳四郎はそう口にした。

「なにか、ご承知でござろうか(ご存知ですか)?」

向き合って座る湊は正座をしており、長年生きて来た千葉なら分かると思い夜遅くだがここへ尋ねて来た。

「うつけ者せがれを引き取った頃、左様な噂は既に流れておりき(バカ息子を引き取った頃、そんな噂は既に流れていた)」

彼の息子は、崗絛だ。

「鬼は、なににても美しき息女が好きにて高名じゃ。見た事はござらんが、左様な噂も広まとはおりき。わらし達の間ならば、恐れらるておりき(なによりも美しい娘が好きで有名だ。見た事は無いが、そんな噂も広まっていた。子供達の間では、恐れられていた)」

噂は一つでは無い。聞いた事の無い噂も出て来た。

「そとかごめと申すのは、どんな戯れゆえ(そのかごめと言うのは、どんな遊びなので)?」

「真ん中にひい人しゃがみ、輪になり申して囲み、歌と共に度る。しかして、歌ゐ終ゑた後に、己の後ろにゐる相手を当ておったら勝ち。単純な戯れじゃ(一人しゃがみ、輪になって囲み、歌と共に回る。そして、歌い終えた後に、自分の後ろにいる相手を当てたら勝ち。単純な遊びだ)」

「其れはどんな歌でござろうか(それはどんな歌ですか)?」

「かごめかごめ。かごめの中の鳥は、いついつ出会う。夜明けの晩に、鶴と亀が滑った。後ろの正面誰」

なんだか、その歌詞の意味も分からなければ、鬼と全く繋がらない。

「徳四郎殿ありがたき幸せにござる。様々と教ゑて頂き(さんありがとうございます。色々と教えて頂き)」

彼は、深々と頭を下げて礼をした。

「あぁ。油断せぬやう(気を付けて)帰りな」

泊まらせる気はないらしい。

「御意。お刻限を頂戴してちょーだいしまゐ、申し訳ござゐませぬであった。感謝申す(はい。お時間を頂戴してしまい、申し訳ございませんでした。感謝致します)」

そして頭を下げて立ち上がり、囲炉裏から降りて草履を履き、戸を開けて出るなり、再度こっちを向いて一礼してから、戸を閉めた。すると徳四郎は、囲炉裏に焚べた薪を消して立ち上がると、部屋へ向かった。襖を開けると、布団の上で横たわる息子は、眠っていた。

「鬼、か。存在致さぬ物を追うとは。警察も難儀じゃな(存在しない物を追うとは。警察も大変だな)」

そう言い、2枚敷かれた左側の布団の上に横たわるなり

「在り(居るよ)」

「?」

崗絛はそう、口にしたのだ。

「起きておったとか(たのか)?」

「鬼は、在り。存在するでござる。それがしは存じておる。鬼の存在。それがしは鬼を、お慕い垂き(居る、よ?存、在す、る。僕、は、知って、る。鬼の、存、在。僕は、鬼を、愛して、る)」

息子はやはり変わっている。たまに理解し難い言葉さえも出て来る。いつもの事なので気にはしていなかった。

「さふ(そう)か」

そして徳四郎は目を、瞑った。

「在り。鬼は在り(居る。鬼は、居る)。鬼は…」

そして彼も目を、瞑った。

「ん……………………ッ…」

鈴は目を、覚ました。仰向けになって眠る仁導の手首と自分の華奢なくびれた手首を赤い縄で繋げられており、彼女は、その横顔を見詰める。上体を起こすと、ムチュッと、唇に唇を押し当てた。

「思へるぞ(愛してるよ)。仁導」

ソッと離れて言い、鈴は横たわり目を瞑った。すると、彼は目を、開けた。今仁導は、何を思っているのだろうか。

愛おしき(い)♡

明けたばかりの空が、朝の冷気とともに新鮮に輝く。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

仰向けになる自分は美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になって、片方の手でカップル繋ぎしており、もう片方の手で胸を鷲掴まれて膣に大きい陰茎を差し込まれて子宮を突き上げられていた。

「はぁ。かは良き(これは良い)。挿入易くて、直ぐに繋がり合ゑる♡」

唾液を垂れ流し、突き昇ってくる熱の魅力に抗えず、欲望を燃え上がらせどくどくと全身の血が滾り、締め付けられるその快感に身体がゾクッとし、勃起して太く猛々しくそびえ、びくんびくんと脈打つ陰茎から、ビュクビュクと我慢汁が溢れる。

「ん、はぁ!はぁはぁはぁはぁはぁ」

ギッチギチに締め付けて咥え込み、快楽の海に溺れて這い上がる事が出来ず、体がバラバラになるほど愛され、一度からだにこびりついた快感はどこにも出ていかず、元々が、誰もが満足の行く大きさであり、それが興奮して勃起する事によって更に人間離れした大きさになる。それで突き上げられているので、大いに体が満足する。

「あっ!ん、はあぁっ!」

唾液を垂れ流し、失神しそうな程のエクスタシーが体を駆け抜け、ビクビクと腰を痙攣させパシャアァッと、潮を吹き出した。

「ん………………………ッ…」

釘に縄を引っ掛ければ、妻は両腕を上に伸ばして拘束され吊し上げられる。

「行とは(って)来る」

「行きておはせよ(行ってらっしゃい)」

彼はキスをして挨拶し、歩いて部屋から出て行った。真下にはタライが置かれている。尿を受け止める為に役立たせている。

「………………………………………」

暫くして、戸の開く音が。そして、閉まる音。鈴は目を、瞑った。

「正室がひい人じゃ(妻が一人だ)。世話しろ」

「休むべきには無しや(休めば良いじゃ無いか)」

玄関の前に立つ仁導にそう言われ、薌は口に手を添えて軽くあくびをする。

「何奴が正室を食べしめてやるんじゃ?大切な正室を餓死しめる訳にいかぬ。参れ(誰が妻を食べさせてやるんだ?大切な妻を餓死させる訳にはいかない。行け)」

「分かれりよ。行くよかし(分かったわ。行くさね)」

そして、彼は歩いて警察長野に向かう。

「徳四郎殿が申すには、かように遊興さふでござる(徳四郎さんが言うには、このように遊ぶそうです)」

ナガレは真ん中に一人でしゃがんでおり、湊の他に黒髪の爽やか系な、顔が整った美形の主であり、片方の前髪が長いのが特徴的な男、甲斐田純也と黒髪で、25歳には見えない程童顔であり、仲間たちからは彼が子供っぽく、顔も可愛い印象であり、しかも身長が153センチ程しかない事から『可愛い』と、男性にとって屈辱的な言葉を浴びる事があり、いつも泣かされている伊村尊。そして、栗色のソバージュが毛先に掛けられた唇にさしている紅が良く似合う高身長の女、奈良和美嘉と、黒髪を一つに結えて色気のある顔をしており、170センチ以上はあるであろう高身長で胸の大きい女性。大橋ミクが立っており、取り敢えず輪になって囲んでいた。

「それがしのみにて私刑(俺だけリンチ)」

「ぶふっ!」

美嘉はつい、吹き出してしまう。

「其れから歌ゐながら度るさふござるが(それから歌いながら回るそうですが)」

しかも湊は説明するだけで必死なのか、話しを聞いてません。

「歌を是非に及ばぬのにて(知らないので)」

「えっ?歌知らずや(歌知らないんですか)?」

それを言ったのはミクだ。

「大橋。存じておるとか(知ってるのか)?」

「知れるもなにも(知ってるもなにも)」

ふと、彼女は一つ上の先輩である美嘉に顔を向けた。

「若ゐ時戯れませぬであったか(若い時遊びませんでしたか)?」

すると彼は顔を上げるとこう言った。

「世代間の食い違いと云おりきゐとか(ジャネギャって言いてえのか)?」

「いや喧嘩売れる訳ならぬぞ!?売れるはヤジなり(いやケンカ売ってる訳ではないですよ!?売ってるのはヤジです)」

「飛ばすと申すんじゃ其れは!拙者貴様ゑにつば飛ば致し候(飛ばすっつっーんだよそれは!俺はお前えにツバ飛ばしてやんぜ)!プププ」

「いぶせしよ止めたまへ(汚いですよ止めて下さい)!」

「げに飛ばし来たり(本当に飛ばして来た)!」

それにはミクもドン引き。

「止めて下されながれ殿。四参にもなり申して面目ないくないのであろうか(止めて下さいナガレさん。43にもなって恥ずかしくないんですか)?」

「全然」

この男は。

「かごめとは、男女混合とはいえ遊べるやつでござるな?『かごめ かごめ』でござるな(かごめって、男女混合でも遊べるやつだよね?『かごめ かごめ』だよね)?」

今まで喋れなかった尊がようやく話せた。ずっと会話に加わりたかっただろうに。

「あっ。さり(そうです)」

「尊は存じたるかな?いづこぞのツバ飛ばしくるおとなとは違ひて(尊さんは存じてるんですね?どこぞのツバ飛ばしてくるおっさんとは違って)」

「ププププププ!」

「ププププププ!」

唾の飛ばし合いが始まりました。

「いぶせし(汚い)!」

滅多に怒らないミクが今回ばかりは激怒した。

「では度りんすで候(じゃあ回りますよ)?」

「手繋ぎたまへ。回れば(手繋いで下さい。回るので)」

「あっ。さふなんじゃ(そうなんだ)」

湊は、左右にいるミクと尊の手を繋いだ。

「!!!!!!!!!?」

男の人と手を繋いだ事の無い彼女は、ドキッとしてしまう。

湊に手(湊さんに手)。

握られにけり(握られちゃった)。

「参るでござるで候(行きますよ)?かごめ かごめ」

手を握った状態でナガレは顔を向けたままジッとしている。

「目瞑りたまへ(目瞑って下さいよ)」

ふと、美嘉は立ち止まると皆も止まった。

「瞑るとか(のか)?」

「分からざらば真ん中ひとやりならでなやりそ(分からないなら真ん中率先してやるなよ)」

「先に云ゑで候(言えよ)」

「おほかた分からむ(大体分かるだろう)?」

気を取り直して遊び出す。

「だぁれ」

そして、皆は止まった。

「あっ?終わり?か(これ)難易度高くなゐ(くねえ)か?」

そう言い振り返った。

「当ててなゐからながれ殿(当ててないからナガレさん)の負っけー♪」

後ろにいたのは尊であり、指を刺してそう口した。

「あぁまふひい度まふひい度!か稽古稽古(もう一回もう一回!これ練習練習)!」

大の大人がかごめで遊んで楽しんでやがる。

「絶えてせむかたなしな(全くしょうがないな)」

これだからおっさんは。

「汗も滴る良き(い)女♪」

「えっ?」

純也は美嘉を見てにこやかに言い、少々気がゆるんでドキッとしたその矢先

「汗も引く不細工な面」

「なふざけそ(ざけんじゃねえ)!」

振り返ると、仁導が立っていたのだ。

「鬼賀乃」

「あははは!あははははは!ぶはははははは!」

腹を抱えて笑うナガレに、彼女は牙を剥き彼は両手首を掴んで防ぐ。

「暴力反対(暴力はいかんとです)!」

「大の大人が揃ゐも揃とは戯れに参ったとか(揃いも揃って遊びに来たのか)?」

「否!仁導殿(違います仁導様)!」

「我らはまこと実検を(私たちは事実確認を)!」

「御意(はい)!」

湊とミクと尊は、本当に彼を恐れている。それがひしひしと伝わり、仁導はそれが快感で、仕方がなかった。

「戯れに事実確認もなにもござらんであろう(遊びに事実確認もなにも無いだろう)?」

「この遊びに『鬼』がわらはぐし去ぬるなり(この遊びで『鬼』が子供を連れ去るんです)!」

「いかがぐし去ぬるかの検証を(どう連れ去るのかの検証を)」

美嘉も加わるなり

「であるとしたでござるらひい人は(だとしたら一人は)鬼をやれ」

あぁ確かに。言われてみればそうだわ。鬼役も居ないでこんなことをやってたらただの本当のサボりだよ。

「なにしておるんじゃ(なにしてるんだ)?」

そこへ、綝導が来て声を掛けた。双子の弟、仁導とは違って性格がとても良くて優しく、それが顔に滲み出ていて笑顔がとても似合う人。

「綝導(綝導様)」

「今、かごめに関わる一大事(事件)を」

尊が説明をしようとした矢先

「かごめ?かごめとは(って)、『だーいけいちゃー やうちゃうてぃー てぃーたぁー中にやうざういちー けあらけあらばいけいちゃ ばいらいばいらい ちゃいたおに ちゃいたおかいたおなんちゃーぶー とってぃーらおばい ばいらい』か?」

皆は、ぽかんとしてしまう。今綝導が日本語で歌ったのか分からない。全く持って聞き取れなかった。

「失せろ!」

仁導は、不機嫌な表情を浮かべてそう言い放ち歩いて行ってしまう。

「全く」

彼は、呆れて言うよりかは、可愛い弟の発言に心から許し、笑みを浮かべて首を振る。

「それ方言なりや(それ方言ですか)?」

美嘉は聞くと、綝導は頷いた。

「あぁ。それがしたちが生を得た鶴賀の幕府の端に、『ゐーどぅーざゐ語』を申す集落があとは、その云葉にて歌とはおりきじゃ(俺たちが生まれた鶴賀の国の端に、『いーどぅーざい語』を話す集落があって、その言葉で歌っていたんだ)」

「さる国、あるかな(そんな国、あるんですね)?」

ミクも興味を示し話しに加わる。

「同じ意味かの?村にそれゆえはちがうらしき(同じ意味かな?村によっては違うらしい)」

興味を示した尊はこう言った話しになると詳しくなる為、自信を持って話せる。

「へ~。村をもちて違ふなり(村によって違うんだ)」

「綝導の歌ひし歌詞も違ふやな(綝導様が歌った歌詞も違うのかな)?」

「同じにてあとはも聞きたいでござる(同じであっても聞きたいです)」

ナガレは立ち上がり、興味を示した。

「こっちの村と同じさればかたじけない(同じだったらごめん)。消えた娼婦 どこ行った 部屋の中に閉じ籠り いついつ出て来る 夜明けが来た 誰か誰か侵入者 後ろで刺したの だあれ」

「恐ろしき(恐ろしい)!」

湊はそれを聞いてゾクッとし、身震いした。

「あなおそろし。歌詞が全然否!(怖~い。歌詞が全然違う)」

その隣で純也もブルッと身震いしてしまう。

「何故女郎(なんで娼婦)?」

「それがしの幕府ならば、かごめは『女郎』としてちょーだい歌とはおりき。幼ゐ時でござったから意味も分からずに遊みておりきが、大人になるに連れて意味が分かとは(俺の国では、かごめは『娼婦』として歌っていた。幼い時だったから意味も分からずに遊んでいたが、大人になるに連れて意味が分かって)、恐ろしく感じた」

「なれどやはり、鬼とは結び付きませぬ(けどやはり、鬼とは結び付きませんね)」

尊の言う通り、確かに『鬼』とは全く結び付かない。かごめの歌詞には『鬼』なんて言う歌詞は存在しない。ならなぜ、鬼が関係するのだろうか。

「されば、その噂を広めしは誰(そもそも、その噂を広めたのは誰)?」

その噂を広めた人は、『鬼』の存在を知った。それによって人の手では出来ないような惨い死に方を現に子供達がされたので、結び付くのも馬鹿馬鹿しい噂では無い事も証明されている。

「当時、あの神隠しに仲柄するでござるわらしが広めたと致したら、鬼を見たで御座ると申す事になる(あの行方不明に関係する子供が広めたとしたら、鬼を見たと言う事になる)」

「とはいえあの当時、わらしは皆の衆うなを斬らるておった。生きてる子は神隠しに成り申した子しか居なゐであろう(んでもあの当時、子供は皆首を斬られてた。生きてる子は行方不明になった子しか居ねえだろ)?」

ナガレの言う通り。あの事件は囲むようにして子供たちの死体が置かれていた。だとすればその行方不明になった子しか『鬼』の存在を見ていない。なので、噂を広める事は決して出来ない。

「神隠しに成り申したのは、当時漆歳でござった愛道鈴。其れにて先日、愛道夫婦(めおと)がなに者かに殺させた(行方不明になったのは、当時7歳だった愛道鈴。んで昨日、愛道夫婦がなに者かに殺された)」

「鬼であると存じまする(鬼だと思います)」

尊ははっきりそう口にした。なんせあんな残酷な死に方をしたのだがら、誰もが人間の仕業では無いと、『鬼』の存在を信じるのもおかしくはない。

「とはいえ存念しても見ろで候。鈴が神隠しになり申して陸年経った。今更夫婦(めおと)を×す事は無かったんでないのか(んでも考えても見ろよ。鈴が行方不明になって6年経ったんだぜ?今更夫婦を×す事は無かったんじゃねえのか)?」

確かに。行方不明になってからこの6年間、夫婦は生きていた。娘の帰りを待ち続けていた。それなのにこの6年を経て『鬼』に殺された。鬼の目的は全く分からない。何故生かしていたのかも分からない。

「其れを云われてしまうと(それを言われてしまうと)…」

「愛道屋敷と鬼。なにが仲柄するでござるんだろうな(愛道家と鬼。なにが関係するんだろうね)?」

分からない。全てに対して全く結び付かない。綝導はその間ずっと、黙り込んでいた。

「鬼は、美しき(い)物が好き」

ふと、湊のその言葉を聞き、皆は顔を向けた。

「あっ?」

「徳四郎殿が申すには、なににても美しき息女が好きにて高名と申す噂もあったでござるとも申しておった。其れにて、わらし達の間ならば、恐れらるておりきさふでござる(さんが言うには、なによりも美しい娘が好きで有名と言う噂もあったそうです。それで、子供達の間では、恐れられていたそうです)」

その時、ナガレは何かに気付いてこう口にした。

「さふ云ゑば徳四郎殿て、わらし在りな(そーいや徳四郎さんて、子供居るよな)?」

「確か。せがれの名は(息子の名前は)、『崗絛』?」

徳四郎の子供は皆知っている。と言うのも、保護施設と警察に許可を入れる必要があるので、保護施設とは繋がりがある。尊はそれを覚えていた。

「あっ!あからさまに待ちて我閃きもこそ(ちょっと待って私ピンと来たかも)」

「美嘉(美嘉さん)?」

「かごめに遊ぶと『鬼』が来。こは結構有名なれど、その噂、聞きしためし無し(かごめで遊ぶと『鬼』が来る。これは結構有名だけど、その噂、聞いたことが無い)」

「なら、そのわらしがいずこかにてひい部始終を拝見しておりきと致したら、その噂を広めたのはせがれとは事になるのう(んなら、その子供がどこかで一部始終を見ていたとしたら、その噂を広めたのは息子って事になるよな)?」

「うえっ!?あっ!確かに!其れであると徳四郎殿が知とはてもおかしうないやもしれませぬ!崗絛が拝見して云ゐふらしたでござると致したら、その噂が度とはもおかしくござらん(それだと徳四郎さんが知っててもおかしくないかもしれません!崗絛が見て言いふらしたとしたら、その噂が回ってもおかしく無い)!」

「さふ云ゑば崗絛殿て、心外を受けてから云葉が詰まったとは、徳四郎殿が申してた気がするでござる(そう言えば崗絛くんて、強いショックを受けてから言葉が詰まったとも言ってた気がする)」

更に純也は加えて、前に徳四郎の家に言ってお茶を飲んでた時、そんな話しも出ていたのを思い出した。

「鬼の正体、存じておるやもしれぬ(知ってっかもな)」

仁導は、馬に跨って走らせていた。

「唯子!飯にするでござる(する)ぞ!」

「はい」

白髪混じりの中肉中背で、昔は男前でモテていたであろう、今でもカッコ良い風貌をした男、篠田八郎は、妊婦のように腹の突き出た元服を迎えた15歳の乙女であり、黒髪を一つで結んで、鮮やかな緑色の着物が良く似合うが、際立ったところのない平凡な顔立ちをしている唯子は、縁側に座っており、返事をした。鉄鍋で煮られた雑炊を御玉で掻き混ぜており、食後のデザートは八郎特製の『干し柿』。彼女は立ち上がり背を向けたとたん

「豚!」

「?」

振り返るなり、馬に乗っている仁導の姿が。

「八郎は在る(居る)か?」

「父を、飼ふおつもりなりや(飼うおつもりですか)?」

「ぐっふっふっふっふっ!」

俯き、笑っている顔を覆い隠す。

「男は好まぬ。拙者美しき物を好む(男は好まない。俺は美しい物を好む)」

顔を向けるも、まだニヤけていた。

「八郎を出せ。そのくらゐは役に立て豚」

「豚は、寝る事に人の役に立つなり(寝る事で人の役に立つんです)」

「ぐっふっふっふっふっふっ!」

俯き、笑いが止まらない。

「出荷が早う(早く)なるからか。ぐっふっふっふっふっふっふっ!」

背を向け、彼女は歩いて父の元へ向かった。

「父。仁導(父さん。仁導様)」

「今?」

ぐつぐつぐつぐつぐつぐつと煮える雑炊。

「今」

掻き混ぜていた御玉を、止めた。

「かごめ かごめ 籠の中の鳥は いついつ出会う 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面 だあれ?」

囲炉裏に座って紙風船で遊んでいた友坂千鶴は、口ずさんでいた。栗色の髪を三つ編みにし、子供っぽい愛らしい顔をしており

「千鶴」

その一方で、双子の妹の千華夏が入って来て声を掛けた。のほほんとした姉とは違い、性格は冷めていて、綺麗ではあるけれどそれほど印象的ともいえない女。

「鬼はげに居るやな(鬼って本当に居るのかなぁ)?」

「(居る訳ないじゃ無いですか。そんな事を信じて)」

「(でもさ千華夏。その噂が流行してから遊ぶ子供が居なくなったのは事実でしょう)?」

「(子供も大人も、人は噂が好きなものです。伝説を信じてしまうのも無理はありません)」

「(そう言う物なのかなぁ)?」

そしてまた、遊び始めた。

「『さふ云ゑば徳四郎殿て、わらし在りな?』『確か。せがれの名は「崗絛」?』『あっ!あからさまに待ちて我閃きもこそ。かごめに遊ぶと「鬼」が来。こは結構有名なれど、その噂、聞きしためし無し』『なら、そのわらしがいずこかにてひい部始終を拝見しておりきと致したら、その噂を広めたのはせがれとは事になるのう?』『確かに!其れであると徳四郎殿が知とはてもおかしうないやもしれませぬ!崗絛が拝見して云ゐふらしたでござると致したら、その噂が度とはもおかしくござらん!』『さふ云ゑば崗絛殿て、心外を受けてから云葉が詰まったとは、徳四郎殿が申してた気がするでござる』『鬼の正体、存じておるやもしれぬ』。と申す経緯があり参った(っつー経緯があって来ました)」

「前置きが長ゐ。経緯くらゐ『かくかくしかじか』等にて書ゐとけで候(前置きが長えよ。経緯くらい『かくかくしかじか』とかで書いとけよ)」

囲炉裏に座る徳四郎は不満を口にする。

「て申すか貴様等多ゐで候(て言うかお前ら多いよ)」

そして目の前に座るのは、ナガレと湊と純也と尊。そして美嘉とミクの6人で押し寄せたようだ。

「押し寄せにすまず(押し寄せてしまいすみません)」

ミクは、健気にも後ろの方で正座しており、頭を下げる。

「待たれよ(待ってろ)。今、崗絛連れて来っから」

そう言って重たい腰を上げて囲炉裏から出るなり

「徳四郎殿と捌郎殿て、どっちが上であると思うておる(徳四郎さんと八郎さんて、どっちが上だと思う)?」

ナガレはそう聞くと、徳四郎は答えた。

「八郎は八陸じゃ(86だ)」

「ほら聞おりき!?捌郎殿捌陸じゃとは(うっそ聞いた!?八郎さん86だって)!」

単純で純粋な43歳は、それを聞いて驚愕してしまう。と言うのも80代に見えない程若いので、それを聞いて本当に『驚いた』のであろう。

あぁ。

『ハチロー』、なればか(だからか)。

その隣で美嘉は冷静にそう感じた。

「あはははは!白鳥可愛ゐ♡」

「ながれ殿のさふ申す所、好いております(ナガレさんのそう言う所、好きです)」

純也と湊はナガレのそう言った、たまに出て来る純粋で単純な子供心に惹かれる中

「見ゑないでござるよのう捌陸(見えないですよね86)には!」

「でござるな!見ゑなゐのう(だよな!?見えねえよな)!?」

ここにも居たよ信じてる単純野郎。尊の場合は納得が出来る。

「待たせたな」

徳四郎は入って来ると、その後ろから崗絛も入って来た。

「よぉ崗絛!少々貴様に聞きたいでござる事がござる(ちょっとお前えに聞きてえ事がある)」

言い方よ。警察とは思われない言い方をするのはよしなさい。

「あぁ。なっ。あっ」

瞳を揺らし、俯いてしまう。

「鬼の色につきてなになれど(存在についてなんですが)」

黙っていたミクは彼では言葉が乱暴なので優しく問い掛けて上げた。

「鬼、は、存在、する、で、ござ、る。それが、しは(鬼は。存在する。僕は)、見、た。彼、を」

一つ一つの言葉を出すのも、精一杯だ。

「彼?」

崗絛から、『彼』と言う言葉が出て来た。鬼は男である事が分かった。

「彼、は。人間、ではない(じゃない)。か、れは。金色の、髪の、おなご(女の、子)、を。連れ去っ、た」

「金髪のおなご(パツキンの女の子)!」

「行方不明になりし愛道鈴と一致せり(行方不明になった愛道鈴と一致してます)!」

額に汗をかく美嘉の瞳が揺れ、警察たちの心がざわめく。

「輪になり、申し、て、遊みてた。子の、うなを(なって、遊んで、た。子の、首を)…」

「おゐ崗絛!」

すると彼は立ち上がると駆け寄り、崗絛の肩を掴んでこう言い放った。

「鬼はどんなきゃつでござったか!?どんな面をしておった(どんな奴だったんだ!?どんな顔をしてた)!?」

肩を揺さぶってまでも吐かせようとし、強引になってしまう。彼は鬼の存在を見た重要な目撃者。6年間も鬼は雲隠れしており、つい昨日は、その行方不明になった両親が襲われた。これはなんとしてでも犯人の顔や特徴を知りたいものだ。

「止めろ!せがれはひどく心外を受けてるんじゃ(息子はひどくショックを受けてるんだ)!」

「白鳥落ち着ゐて!」

「ながれ殿(ナガレさん)!」

純也と湊は立ち上がり、2人してナガレを引き離せば

「あぁっ!うああああああああぁ!」

崗絛は頭を抱えて叫び出し、膝から崩れ落ちてしまう。徳四郎は息子を抱き締め、こう口にした。

「すまなゐな白鳥。犯人を捕まゑたゐこころもちは分かる。なれど、せがれはその存在を見たで御座るせゐにて、かくなり申してしもうた。今分かったでござるよ。何故せがれが卒爾(そつじ)云葉が出て来ござらぬなったり、出たと思ゑばつっかゑてしまうしにて、陸年前は様々障害が出た事の由が。『鬼の存在』は良くせがれから聞ゐてはゐたが、わらしの妄想であると思とは聞き流してござった。それがしの腹を切ってでもござる。もっとせがれの云葉に、耳を傾けるべきでござったか(すまないな白鳥。犯人を捕まえたい気持ちは分かる。だが、息子はその存在を見たせいで、こうなっちまった。今分かったよ。なんで息子が突然言葉が出て来なくなったり、出たと思えばつっかえてしまうしで、6年前は色々障害が出た理由が。『鬼の存在』は良く息子から聞いてはいたが、子供の妄想だと思って聞き流していた。俺の責任でもある。もっと息子の言葉に、耳を傾けるべきだったんだ)」

血の繋がりがなく、子供など育てた事がない自分は、自由に崗絛を育てて来た。親としての責任と言うのを、あの当時はもしかすると、軽く見ていたのかもしれない。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

その時、カーッとなっていた心が落ち着き、ナガレはこう口にした。

「悪しかった(悪かった)」

家から出、6人は馬に跨る。

「いかがすや(どうしますか)?」

ミクはそう聞いた。犯人の手掛かりは掴めてないまま、どう捜査をするか。

「特徴は掴めなゐ。鬼は男。しかもあの当時に起きた神隠し一大事の眼撃者。むっちゃくっちゃ、重要な眼撃証云なんでござるのにな(特徴は掴めてねえ。鬼は男。しかもあの当時に起きた行方不明事件の目撃者。むっちゃくっちゃ、重要な目撃証言なんだよなぁ)」

ナガレは俯き、惜しい人物を後にする事が本当に勿体無くて勿体無くて、心が物足りなさにかき乱される。

「致し方ない。鬼を誘き寄しめるか(仕方ねえ。鬼を誘き寄せるか)」

「うえぇ!?」

「誘き寄すとて、いかで(誘き寄せるって、どうやって)?」

波瀾万丈な言葉にミクは目を見張り聞くと、彼は前を向き一か八かの勝負に掛ける。

「鬼は美しき物を好む!なれどなれど!鬼は至極におぼこ好き!じゃから!美しき美しくなゐ仲柄無しに!貴様(美しい物を好む!だがしかーし!鬼はひっじょーにロリコンヤロー!んだから!美しい美しくない関係無しに!お前ら)!鬼に襲われろ!」

「うたてし(やだああぁ)ーーーーーー!」

「無茶苦茶ならむおとな(だろおっさん)!」

ナガレの前に立つのは鮮やかな水色の着物を身に付け、水色の長い髪をツインテールに、あどけない可愛い顔をしているのだが、目付きがキッとしている10歳の女の子、朧月夢と、その隣に立つのは赤(せき)だ。赤い着物を纏った細身で低身長の、ブロンドの髪を二つ結びに結えた女の子で、彼女とは違った美人系の顔をしているが目付きがキッとしており、上品な女性の言葉遣いは一切使わず、口調はとても男勝り。

「ナガレあんまりぞ。わらはを使ふなど(ナガレさんあんまりですよ。子供を使うだなんて)」

無茶苦茶切羽詰まっているようで、美嘉は呆れてしまう。

「それがしが防護するでござる(俺がガードする)!」

「捜査のし過ぎに頭にも狂ひきや(捜査のし過ぎで頭でも×っちまったのか)?」

「陸年も雲隠れしておるんじゃ!捕まゑねば何時捕まゑるんでござる(6年も雲隠れしてやがる!捕まえなきゃいつ捕まえんだよ)!」

間が開き

「などか夢ども怒られし(なんで夢たち怒られたの)?」

「知らず!六年も雲隠れしたらば村よりいでゆくともけしうはあらざらむ(知らねえよ!6年も雲隠れしてんなら村から出て行っちまっててもおかしくねえだろ)?」

その時、彼はバッと顔を向けた。

「やっべ。忘れておった。でござるな?陸年も雲隠れしておったら村に在る可能性は少ねえのう(忘れてた。だよな?6年も雲隠れしてたら村に居る可能性は少ねえよな)?」

「先日!先日の一大事を思ゐ出して奉り候!陸年越しのあの惨ゐ由々しき事態(昨日!昨日の事件を思い出して下さい!6年越しのあの惨い事件)!」

「鬼は未だこの村に居候で候(まだこの村に居ますよ)!」

この男の冷静さを取り戻させるには、ひたすら話し掛ける必要がある。湊と尊は気を遣って言うと

「検非違使なり(警察だ)」

「なにか、騒動にもありけりや(事件でもあったんですか)?」

そこへ、村の娘であるあどけない愛らしい顔をしたスタイルの良い女、大原芽衣と、冴えないと言うか、大人しい、清楚系、だが、顔に対しての悪い印象はなく、どちらかと言えば美人系な顔をしている安藤雪が歩いて来たのだ。

「六年前におどろきし『かごめ』騒動に、鬼の正体を暴く料に捜査しせる所(6年前に起きた『かごめ』事件で、鬼の正体を暴く為に捜査をしてる所)」

美嘉も含めてこの3人は仲良し同い年組。

「鬼は美しき物を好むらしきから(美しい物を好むらしいから)」

純也が説明をしているその矢先

「いかがせむ!芽衣美人なれば鬼に襲はれぬ!助け美嘉!芽衣は美人なれば日ごろ感ずるかの殿方の目差の畏き(どうしよう!芽衣美人だから鬼に襲われちゃう!助けて美嘉!芽衣は美人だからいつも感じるあの殿方の視線が怖いの)!」

「長所、積極的(ポジティブ)。短所、自信過剰」

ナガレの言葉に尊は吹き出し、ミクはその自信にドン引きしてしまう。

「その騒動に巻き込まれしは(事件に巻き込まれたのって)確か」

「この村にゐる愛道鈴。すなはち七歳の女の子(住む愛道鈴。当時7歳の女の子)」

「生きたらば十三歳(生きてたら13歳)、か」

雪の瞳が揺れ、胸を痛める。

「まあ。おとなの言ふ通り、誘き寄するもをかしげなり。徒然凌ぎにはならむ。乗るぞ。遊びに(まぁ。おっさんの言う通り、誘き寄せんのも面白そうじゃねえか。退屈凌ぎにはなりそうだぜ。乗ってやんよ。お遊びに)」

「戯れにてはござらぬ真剣じゃ(遊びじゃねえ本気だ)」

「芽衣襲はるる畏ければ見たり(襲われるの怖いから見てる)」

「自信過剰過ぎんぞ先刻(さっき)から!」

「我もやる(私もやります)!」

すると雪は率先して手を挙げた。

「せむかたなしよかしー。夢もやるよ(しょうがないわねー。夢もやるわよ)」

赤を初めに次々と加わってくれた。

「感謝つかまつる(有難い)!」

湊とナガレと純也と尊は刀を手にして女たちに背を向けて構えており、真ん中にしゃがむのは赤であり、夢とミクと美嘉と雪は囲んで手を繋ぐ。

「かのみにて良きおなごたちが揃とはくれたでござるから、誘き寄しめる事が出来そうでござるね(これだけ良い女の子たちが揃ってくれたから、誘き寄せる事が出来そうだね)?白鳥」

「あぁ」

こんな、命懸けの守備は久々だ。

「行くぞ?」

美嘉は合図すると、回り出した。

「かごめ かごめ 籠の中の通りは」

カァー!カァー!バササササササと、真上を飛び交うカラスたち。黒い羽が抜けて何本か落ちる。

「いついつ」

グシャッ。その時、何かが落ちて来た音が。

「あぁ?」

ナガレは振り返って見ると

「退却せよ(逃げろ)!」

「!!!!!!!!!!?」

女たちは止まり、ミクもある物に気付いた。

「きゃああああぁ!」

地面に落とされたのは、片方の切り落とされた腕。

「鬼じゃ(だ)!鬼が出たぞ!」

夢と赤は直ぐ様逃げ出し、芽衣も走って逃げ出した。美嘉たち警察は直ぐ様刀を抜いて回りを警戒する。

いずこじゃ(どこだ)!?

いずこから拝見して嘲笑っとるんじゃ(どこから見て嘲笑ってやがんだ)!?

「畜生!出て来られよ!壱対壱にて手合せ致し候(チキショー!出て来いやゴラァ!サシで勝負してやんぜぇ)!」

鬼は居る。存在する。それはとても遥身近に感じさせられた。捕まえたいと願う警察たちの心を嘲笑う鬼は、見ていて滑稽であった。

「仁導がいまころ帰り来よかし(もう時期帰って来るさね)」

「憂し(辛い)…」

鈴は、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流しており、薌は目の前で立っていた。その時、玄関の戸が開くと走って来る脚音が。ドッタッタッタッタッタッタッ!

「!!!!!!!!!!?」

襖を開けるなり、綝導が入って来たのだ。

「綝導(綝導さん)?」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

ぶら下がっている彼女が目に入ったとたん、膝から崩れ落ちた。

「舎弟でないでござる事を、信じたかった。冷酷非道な舎弟にてあとはも、かのような事を致すとは思とはも無かった(弟でない事を、信じたかった。冷酷非道な弟であっても、こんな事をするとは思っても無かった)」

疑っていた。だが、家族である弟を疑う事は出来なかった。事実確認の為、仁導の家に来た。案の定、鈴が居た。

「綝導。口惜しけれど、まことぞかし。仁導が誘拐しし、『鬼』の色広め、その間に人を娶りしぞかし(綝導さん。残念だけど、事実さね。仁導が誘拐をして、『鬼』の存在を広めて、その間に彼女を娶ったんさね)!」

彼は立ち上がると

「解放しめてあげござらぬては。舎弟が帰とは来る前に(解放させてあげなくては。弟が帰って来る前に)!」

走って来るなり、彼女は前に来て引き留めた。

「無用!無用ぞかし(ダメ!ダメさね)!」

「薌殿(薌さん)!」

「この子が逃げば!我も、弟も殺さるよかし!仁導には誰も、え逆らはずよかし(逃げたら!私も、弟も殺されるさね!仁導には誰も、逆らえないさね)!」

薌は俯き、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流してそう言い放った。いつも怯えていた。仁導からの圧力に勝つには、聞き従うしかなかった。だが、弟が居るのでヘマしたら確実に始末されてしまう。鈴は、下唇を噛み締めた。

「薌殿…」

その時、ドサッと聞こえた。

「?」

2人は見るなり、彼女は畳の上に落ちていたのだ。

「鈴氏(ちゃん)!」

「なんぢいかで逃げいだしけるかな(あんたどうやって逃げ出したんだい)!?」

「終はらす(終わらせる)!全てを!」

仁導は、馬に跨って走らせていた。

「おぉゐ仁導ぉ!」

その時、馬に跨って走って来たナガレたちの姿が。

「由々しき事態じゃ由々しき事態(事件だ事件)!」

「例の遊びしたらば腕落ち来けり(例の遊びをしていたら腕が落ちて来たんだ)!」

そして美嘉も加わり訴えた。もうこの人間たちが本気で鬼の存在を信じきっている事が滑稽過ぎて、仁導は俯き、肩を震わせる。笑いを堪えるので必死になってしまう。

「現場へ向かう!」

彼は前を向いたとたん、見覚えのある金髪の女が地面に倒れている姿が。

「!!!!!!!!!!?」

鈴!

「うえええぇ!?女の人が倒れて候(ます)!」

「取り敢ゑず止まるぞ!」

手綱を手に引くと馬を制御し、ナガレは馬から降りて駆け寄った。

「おぉゐ!如何した(どうしたんだ)!?」

その時だった。鈴は顔を上げた際、パァン!彼の腹部を貫く、銃弾。

「!!!!!!!!!!?」

ナガレは血を吐き出し、腹部を抑える。

「仁導殿(様)!!」

銃を手にした仁導はこう、口にした。

「か以って上、正室(これ以上、妻)に近付くなぁ!」

鬼の存在。そして、妻と呼ばれた女が、間違い無く行方不明になった愛道鈴である事が分かった。と言うのも、6年前から顔立ちや髪色が、変わっていなかったからだ。

「左様な、仁導殿が(そんな、仁導様が)…」

尊たちは、ボー然としてしまう。この6年間ずっと共に働いて来た。それがまさか。行方不明事件の『鬼』だったなんて、誰もが思わない。

そこへ、綝導と薌が走って来た。

「仁導!拙者貴様の屋敷に訪れたでござる!貴様がかどわかししたでござる『鬼』であるとは、疑おりきく無かった!終わらせてくれ!彼女には生きる希望がござる!解放してちょーだいあげてくれ(俺はお前の家に訪れた!お前が誘拐した『鬼』だとは、疑いたく無かった!終わらせてくれ!彼女には生きる希望がある!解放してあげてくれ)!」

「薌。何ゆえに正室を見張とはゐのうこざった?貴様はいかんともし難い無能女じゃ(何故妻を見張っていなかった?お前はどうしようもない無能女だ)!」

銃口を向け、パァン!と撃った。彼は、彼女を押すと肩を貫いた。

「ぐっ!」

「綝導(綝導さん)!」

馬を走らせると飛び降り、妻を抱いて走り出した。

「うたてし(やっ)!」

「止まれ!」

ナガレは銃を手にし、脚を狙って撃った。見事命中したが、それでも走り続けた。

「待たれよ(待て)!」

彼は走り出して追い

「追うぞ!」

「逃すや(逃すか)!」

湊たちは続いた。純也とミクと尊は残り、彼女は馬から降りて手拭いを手に綝導の肩の傷口に当てて止血させる。仲間として裏切られたよりも、遥かに綝導は傷付いてる。この事件の犯人がまさかの弟。彼は、一筋の涙を流した。

「皆の衆すまなゐ。兄上のそれがしが、不甲斐なゐばかりに(皆すまない。兄の俺が、不甲斐ないばかりに)…」

すると薌はアゴを掴んで向けさせると、キスをしたのだ。

「わぁ」

「うえええええぇ~!!?」

尊は、カアァッと顔が熟れすぎたトマトみたいな色になり、両手で顔を覆うも指の間から覗く。

「!」

ふとし(大胆)。

彼女はドキッとし、頬を染めてしまう。

「綝導こそ悪しからね。気を落とさずよかし。かたじけなし。助けて(綝導さんが悪いんじゃないよ。気を落とすんじゃないさね。ありがとう。助けてくれて)」

ギュッと抱くと、彼も抱き締めた。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

草むらを這う鈴は、少しでも遠くまで逃げていた。

「鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!」

撃たれた脚の傷口は深かった。立つ事も出来ないのであろう。仁導は仰向けになって呼び叫んでいた。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

自由だ。自由になれた。6年間の監禁生活の悪夢から今、自由になる瞬間だ。

「鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!」

ガサッ。這っていた、その体を止めた。

「鈴!鈴!鈴!鈴!鈴!」

「………………………………………」

彼女の瞳が揺れ、ふと、声のする方向に顔を向けた。前を向いたが

「鈴!」

呼び掛けてくる声に気を取られてしまい、自分の体が自分を裏切り、仁導の元へ行かせようとする。

「くっ!!」

ギリッと歯を食い縛り、草を握り締める。

「鈴。鈴…」

前髪から覗く目は、空を見上げていた。ガサガサ。鈴は、這い蹲って戻って来た。

「脚が痛む。止血してちょーだいくれ(止血してくれ)」

彼女は、自分の着物の袖を引き千切り、傷口に縛り付ける。

「それがしのなにがゐけのうこざったんじゃ?ただに拙者、貴様を慕い申しておりきのみにてじゃ。拙者間違とはおらぬ。それがしの愛し方に、相違はのうこざった(俺のなにがいけなかったんだ?ただ俺は、お前を愛していただけだ。俺は間違っていない。俺の愛し方に、間違いはなかった)」

「我は両脚を切断されき。監禁よすぎをすがらにし来たり。両親も殺され、孤独を感じたりき(私は両脚を切断された。監禁生活をずっとして来た。両親も殺されて、孤独を感じてた)」

「それがしがゐるに何ゆえに孤独を感じたんじゃ?それがしにはひい切の不満も無かった手筈じゃ。いやはや、それがしに対するでござる不満を持つ事の由は、いずこにもござらん(俺がいるのに何故孤独を感じたんだ?俺には一切の不満も無かったはずだ。いや、俺に対する不満を持つ理由は、どこにも無い)」

「仁導!きみのやりしためしは誘拐にあひて、殺人ぞ!何人の人を殺し来しや覚えたり(あなたがやった事は誘拐であって、殺人だよ!何人の人を殺して来たか覚えてる)!?」

「さぁな。殺したでござる数など、魂底興味の無き(殺した数など、心底興味が無い)」

分かってる。この人に求めるだけ無駄だと。

「まふ時期無能な人間共が来る。なれど拙者死ななゐ。貴様(もう時期無能な人間共が来る。だが俺は死なない。お前)の側に居て、生涯愛し続ける」

「………………………………………」

鈴は、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流し、グシッと手の甲で涙を拭った。

「鈴。それがしたちは、夫婦(めおと)じゃ。夫婦(めおと)らしく、旦那様を愛せ(俺たちは、夫婦だ。夫婦らしく、夫を愛せ)」

すると彼女は、髪を耳に掛け、唇に唇を、押し当てた。今まで一番、妻からの愛を、感じた。

「ここにて、待機してちょーだいろ(ここで、待機してろ)」

馬から降り、銃を手に走って草むらを進む。血はここまで辿っていた。湊と美嘉は、言われた通り待機する。

仁導ぉ!

貴様はまことに(お前えは本当に)!

大馬鹿下郎じゃ(大バカヤローだ)!!

ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ!辿り着けば、鈴は小刀を手にしており、夫の心臓に突き刺していた。深く深く。突き通す。

「仁導。御免(ごめん)!」

「それがしに娶らるて、恭悦至極でござったか(俺に娶られて、幸せだったか)?」

その言葉に、彼女は頷き、こう口にした。

「幸せなりき。かたじけなし。果報をくれて。かたじけなし(幸せだった。ありがとう。幸せをくれて。本当にありがとう)」

「良かった」

誰もが、見た事も無い穏やかな笑みを浮かべた後に、真顔になり、目を開けたまま息を引き取った。鈴は、ギュッと抱き締め泣きじゃくった。

「鈴」

ナガレはその隣に来てしゃがみ、彼女の肩に腕を回して抱き寄せた。6年間の監禁生活と悪夢が、幕を閉じる。

「かごめ かごめ 籠の中の鳥は」

縁側に座って歌う鈴を、ナガレは娶った。妊娠7ヶ月に膨らんだお腹を抱き、瞳が揺れる。

「鈴」

夫は隣に座り、横から肩に腕を回して抱き寄せた。

「ナガレ…」

彼女は瞳を揺らし、自らも寄り添った。

「思へり(愛してる)」

「それがしもお慕い垂き(俺も愛してる)」

なれど(だが)。

か以って上(これ以上)は。

なにも出来ぬ(ねえ)。

常にそれがし(俺)の後ろの正面に。

鬼が、見張とはゐるから(見張ってっから)。

刀を手にし、ナガレの背後から突き付けた。

正室(妻)を返せ!
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