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【リーンハルト:11歳】
第504話 新街散策(4)
次に来たお店は、露店部門1位、ココットの衣焼きのハンスさんの店だ。
露店部門1位の副賞は、露店市場の1年使用料無料だが、ハンスさんは実店舗を構えた人だ。
店の前で売っているココットの衣焼きは1種類だけで、S、M、Lのサイズ別で販売していた。
販売員の女性が、こちらは食べ歩き用のもので、露店市場で売っているものと同じ味だと教えてくれた。
このココットの衣焼きは、味が衣についているからソースなしで食べられるものだそうだ。
他の味のソースで食べるココットの衣焼きは、店内へどうぞとのことで中に入る。
店内にいた若い女性が、私の顔を見た途端話し出す。
「リーンハルト様、主人を呼んできますからお待ちください」
急いで調理場から出てきたのは店主のハンスさんだった。
ハンスさん、婚約者さんと結婚したんだね。
「リーンハルト様、お久しぶりです」
「ハンスさん、お久しぶり。弟子2人がやっている露店は順調そう?」
「おかげさまで。ここも露店も売れています。しかも弟子たちは、この店の案内をしているらしくて、他の味も食べたくて来ましたとよく言われます」
はにかみながらハンスさんが、現状を話してくれた。
店内での販売は、Lサイズで味が3種類をセットにした1箱を、1人1セットまでだそうだ。
最初は1人2セットにしていたらしいが、家族で買えるだけ購入する人が多く、上限を下げざるを得なかったらしい。
「料理なのに?」
時間停止機能のないマジックバッグだと、あとで食べるにしても料理が冷めて美味しくないだろう。
私の疑問にハンスさんが教えてくれる。
「時間停止のマジックバッグを、借りて来ている人が多いようなんです」
「貸出料金高いよね」
「話を詳しく聞くと、知り合いや親戚に買ってくるように頼まれているからとか。あとほとんど無料旅行なんだから貸出料金ぐらいケチるなとか。一部マジックバッグの資金を負担してもらった人もいるらしいです」
そこまでして欲しいかと思ったが、私も同じ立場なら「食べたいからついでに買ってきて」と同じように言うわ。
自分たちはいつ行けるかわからないし、「料理代を出すから買ってきて」はありそうだ。
新街を本格的に稼働させても、同じ状況がしばらく続きそうな気がする。
これは対策を考えるように、レイラたちに指示しておいた方がよさそうだ。
あとこちらもハンスさんの好意で、護衛や付き添いも購入の人数にカウントしてよいと言ってくれたので、人数分私とラファエルも買った。
「従魔様たちにも3種類の味を、ぜひとも食べていただきたいですからね」
ココットの衣焼きの箱を渡してくれながら、ハンスさんが言った言葉にアトレたちが大喜びしていた。
ハンスさんに伝わるように、アトレ、ビアンカ、カムイ、レビンは尻尾を振り、リプカ、シエルは羽を広げ、ルアンルチア、ミニョンは片手をあげて、チェリーはハンスさんの周りをくるっと1周して戻ってきた。
「お主、よくわかっているではないか!!」
ルーカスは私の肩に止まってハンスさんに話しかけていたが、エマさんの時には何も言わなかったのに今回はどうしてだ?
もしかして従魔様たちと言われたことで、気をよくしたとか。
ルーカスが急にハンスさんに語りかけたので、ハンスさんは驚いていたが、アトレたちのお礼を見て、笑顔で見送ってくれた。
ハンスさんの店を出ると、ラファエルが私に話しかける。
「彼の話を聞いて納得だよ。料理屋が店舗前のテーブルに、お弁当というものを積み上げていたのがわかったよ」
ラファエルが言ったお弁当とは、料理屋の店主さんたちから油料理の箱を改造して、料理を持ち帰りできないかと相談があったから作ったものだ。
ラファエルだって、色々な店のお弁当をしっかり買い込んでいたのに・・・・。
まぁ、私も食べたいし、アトレたちからもおねだりされたから同じように購入している。
話はそれたが、ここは観光地。
現地の人が食べに来るよりも、観光客が圧倒的に多くなる。
だから旅行者が、新街からの帰りの途中で食べられるものや、夜食用、つまり持ち帰り販売したいと、食堂を営む店主たちから相談を受けたのだ。
初めての観光客は、どうしても展覧会入選者の店へ行きがちだし、食べ歩きをしていたら、昼ご飯、夕飯をしっかりと食べたい人は少なくなる可能性がある。
ならば新街から帰る道中や、宿に持ち帰って食べられるように使い捨ての箱が欲しいと言われたのだ。
この世界には、使い捨てのお弁当箱はない。
ソースや、他の料理と味が混じらないようにするお弁当の仕切りカップなどはない。
だから仕切りカップの代用品として、考えたのは竹の皮だった。
油料理で使う箱を改良してお弁当箱にして、竹の皮をお弁当箱の幅にピッタリになるサイズで箱型を作り、竹の皮の箱が1つのお弁当に3つ入るようにした。
私は、2つおかずとパン、または3つともおかずの2種類のお弁当でどうかと店主さんたちに提案し、この催しで試していたのだ。
どうやら冒険者たちから美味しいと好評が広まり、まとめ買いをする人もいるらしい。
まとめ買いする人たちは、時間停止のマジックバッグを持っているのだろう。
この街の人たちが自分たちで考え、街を盛り上げてくれるのだから、協力できることはしたい。
ただププラの液体が需要に間に合わない可能性が出てきたので、マリアの弟のロドニーさんと植木屋の店主さんに頑張って似たようなものを探し出してもらいたいと思っている。
露店部門1位の副賞は、露店市場の1年使用料無料だが、ハンスさんは実店舗を構えた人だ。
店の前で売っているココットの衣焼きは1種類だけで、S、M、Lのサイズ別で販売していた。
販売員の女性が、こちらは食べ歩き用のもので、露店市場で売っているものと同じ味だと教えてくれた。
このココットの衣焼きは、味が衣についているからソースなしで食べられるものだそうだ。
他の味のソースで食べるココットの衣焼きは、店内へどうぞとのことで中に入る。
店内にいた若い女性が、私の顔を見た途端話し出す。
「リーンハルト様、主人を呼んできますからお待ちください」
急いで調理場から出てきたのは店主のハンスさんだった。
ハンスさん、婚約者さんと結婚したんだね。
「リーンハルト様、お久しぶりです」
「ハンスさん、お久しぶり。弟子2人がやっている露店は順調そう?」
「おかげさまで。ここも露店も売れています。しかも弟子たちは、この店の案内をしているらしくて、他の味も食べたくて来ましたとよく言われます」
はにかみながらハンスさんが、現状を話してくれた。
店内での販売は、Lサイズで味が3種類をセットにした1箱を、1人1セットまでだそうだ。
最初は1人2セットにしていたらしいが、家族で買えるだけ購入する人が多く、上限を下げざるを得なかったらしい。
「料理なのに?」
時間停止機能のないマジックバッグだと、あとで食べるにしても料理が冷めて美味しくないだろう。
私の疑問にハンスさんが教えてくれる。
「時間停止のマジックバッグを、借りて来ている人が多いようなんです」
「貸出料金高いよね」
「話を詳しく聞くと、知り合いや親戚に買ってくるように頼まれているからとか。あとほとんど無料旅行なんだから貸出料金ぐらいケチるなとか。一部マジックバッグの資金を負担してもらった人もいるらしいです」
そこまでして欲しいかと思ったが、私も同じ立場なら「食べたいからついでに買ってきて」と同じように言うわ。
自分たちはいつ行けるかわからないし、「料理代を出すから買ってきて」はありそうだ。
新街を本格的に稼働させても、同じ状況がしばらく続きそうな気がする。
これは対策を考えるように、レイラたちに指示しておいた方がよさそうだ。
あとこちらもハンスさんの好意で、護衛や付き添いも購入の人数にカウントしてよいと言ってくれたので、人数分私とラファエルも買った。
「従魔様たちにも3種類の味を、ぜひとも食べていただきたいですからね」
ココットの衣焼きの箱を渡してくれながら、ハンスさんが言った言葉にアトレたちが大喜びしていた。
ハンスさんに伝わるように、アトレ、ビアンカ、カムイ、レビンは尻尾を振り、リプカ、シエルは羽を広げ、ルアンルチア、ミニョンは片手をあげて、チェリーはハンスさんの周りをくるっと1周して戻ってきた。
「お主、よくわかっているではないか!!」
ルーカスは私の肩に止まってハンスさんに話しかけていたが、エマさんの時には何も言わなかったのに今回はどうしてだ?
もしかして従魔様たちと言われたことで、気をよくしたとか。
ルーカスが急にハンスさんに語りかけたので、ハンスさんは驚いていたが、アトレたちのお礼を見て、笑顔で見送ってくれた。
ハンスさんの店を出ると、ラファエルが私に話しかける。
「彼の話を聞いて納得だよ。料理屋が店舗前のテーブルに、お弁当というものを積み上げていたのがわかったよ」
ラファエルが言ったお弁当とは、料理屋の店主さんたちから油料理の箱を改造して、料理を持ち帰りできないかと相談があったから作ったものだ。
ラファエルだって、色々な店のお弁当をしっかり買い込んでいたのに・・・・。
まぁ、私も食べたいし、アトレたちからもおねだりされたから同じように購入している。
話はそれたが、ここは観光地。
現地の人が食べに来るよりも、観光客が圧倒的に多くなる。
だから旅行者が、新街からの帰りの途中で食べられるものや、夜食用、つまり持ち帰り販売したいと、食堂を営む店主たちから相談を受けたのだ。
初めての観光客は、どうしても展覧会入選者の店へ行きがちだし、食べ歩きをしていたら、昼ご飯、夕飯をしっかりと食べたい人は少なくなる可能性がある。
ならば新街から帰る道中や、宿に持ち帰って食べられるように使い捨ての箱が欲しいと言われたのだ。
この世界には、使い捨てのお弁当箱はない。
ソースや、他の料理と味が混じらないようにするお弁当の仕切りカップなどはない。
だから仕切りカップの代用品として、考えたのは竹の皮だった。
油料理で使う箱を改良してお弁当箱にして、竹の皮をお弁当箱の幅にピッタリになるサイズで箱型を作り、竹の皮の箱が1つのお弁当に3つ入るようにした。
私は、2つおかずとパン、または3つともおかずの2種類のお弁当でどうかと店主さんたちに提案し、この催しで試していたのだ。
どうやら冒険者たちから美味しいと好評が広まり、まとめ買いをする人もいるらしい。
まとめ買いする人たちは、時間停止のマジックバッグを持っているのだろう。
この街の人たちが自分たちで考え、街を盛り上げてくれるのだから、協力できることはしたい。
ただププラの液体が需要に間に合わない可能性が出てきたので、マリアの弟のロドニーさんと植木屋の店主さんに頑張って似たようなものを探し出してもらいたいと思っている。
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