異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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【リーンハルト:11歳】

第520話 差し入れ

冒険者ギルドからリーンハルト様たちがいなくなり、ギルド長室のソファに3人座り込む。

「まさか、青バラのセシリアがドラゴンだったとは・・・・」

私―マックベリーはソファの背もたれに寄りかかる。


「ギルド長、この話も秘密案件ですか?いえ、魔法契約してください。誰かに追及されて、しゃべってしまうのを防ぎたいです」

メビウスが訴えてきた。

「そうだな、しかし倉庫2つ分のドロップ品、どうやって片付けようか?」

「正直に話せばいいのでは?ドラゴンだと言わなければいいのですから」

私がため息交じりに話すと、ギャビンも疲れた様子ではあるが、通常モードで返答した。


「あと、これもなぁー」

私は箱に入れた冒険者用のネックレスの束を見る。

これも処分しておいてとセシリア殿から渡されたのは、過去名乗っていた冒険者の名前入りのネックレスだ。

ドラゴン様だ、こちらに拒否権はない。


「過去のSランク名簿に載っている名前ばかりだ。知らない名前は記録前のものだろう」

「女性で青髪のSランク冒険者は、初代Sランクの子孫ではないかと噂されていましたが、すべて同一人物だったとは!」

メビウスが言いたくなる気持ちもわかる。


ドラゴンが人型になって冒険者として、各国のダンジョンを制覇しているなんて、誰も思わないだろう。

今回はルーカス殿を訪ねてやって来たのではないかと思うが、今後もあるのだろうか?



「昨日、上空を飛んでいたのを、かなりの方が目撃しています。放置でよろしいのでしょうか?」

メビウスから聞かれた。

「それでいい。我々に被害があったわけでもないし、気まぐれで飛んでいたと思わせたい」

ギャビンとメビウスから、無理ですよと突っ込まれるが、わからないと白を切るしかない。


感のいい人間は、ウエストランド家に行ったと思うだろうから、我々が関わることはやめた方がいい、というか関わりたくない。

でも王都のギルド長から極秘に、どういうことなんだと問い合わせがありそうだ。

想像できて、ため息しか出ない。




翌日、リーンハルト様の使いだというウエストランド家の侍女がやって来た。

ギルド長室で対応すると、どら焼きの箱と思われるものが5つテーブルに積み上がった。

「冒険者ギルドにリーンハルト様からのお詫びの品です。皆様でどうぞ」

侍女は淡々と話しているが、どら焼きの箱から目を逸らさない。


「どら焼きか、昨日からみな残業しているから、ありがたく頂戴するよ」

「ギルド長、これはどら焼きではありません!!」

侍女が凄い剣幕で否定した。

「これはクリームパンであります!!」


そのあと小声で「私たちの分だったのに・・・・」と聞こえた。

詳細を聞くと、今度新街に店を出す人の新作パンらしい。

このクリームパンで店を新街に出したいと、リーンハルト様に直談判して認められたパンだという。

ウエストランド家の皆様も絶賛した味らしい。


「私たちの分だったのに……とは?」

私はどうしても気になったので、侍女に尋ねる。

侍女はバツが悪そうな顔をしたが教えてくれた。


どうやらパンに入っているクリームを、ウエストランド家で大量に買い付けしたらしく、料理人たちがクリームパンを焼き始めたのが今日からだったそうだ。

本当なら今日の分は、ウエストランド家に使える者たちが食べられる番だったとか。

それをリーンハルト様に頭を下げられて、明日になってしまったとのことだった。


「それは悪かったな」

「ギルド長、私も申し訳ありませんでした。食べられないわけではなく、1日延びるだけなのですが、すごく楽しみにしていたこともありまして……」

侍女さんが申し訳なさそうに、頭を下げた。


「数が多いから1つ、ここで食べていくか?」

侍女さんの目がキラリと輝き、嬉しそうな顔を一瞬見せるが断られた。

「同僚たちに知られたら、どうなるか。お気持ちだけでいただきます」

侍女さんはこれから商業ギルドにも行くらしく、ギルドを出ていった。



私は残業時間・・・・倉庫内にギルド職員のみとなった時に、クリームパンを皆に配った。

最初は不思議そうにしていた職員たちに言う。

「ウエストランド家からの差し入れだ。しかも新作パンだ。味わって食べるように」

職員たちから歓声があがった。


私もパンを配り終わり、クリームパンを一口かじる。

これはまた・・・・どら焼きとは違う甘さだが、甘さもちょうどよく、クリームが口の中で溶け、パンとも合う。

参ったな、誰も食べたことのない新作パンを差し入れされたら、頑張るしかないではないか。


商業ギルドも同じだろう。

リーンハルト様の我々をやる気にさせるやり方が上手すぎる。

あと残りが8個・・・・争奪戦が始まるな、しかしここは負けるわけにはいかない。

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