異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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【リーンハルト:11歳】

第528話 思惑

私はアランフィスの王城で与えられた部屋に入り、ソファに腰を下ろした。

部屋で待機していた侍従が、お茶を出してくる。

「エイダン様、お疲れ様でした。噂の彼はどうでしたか?」

「相当な手練れの美女を連れて、王城を闊歩していたよ」

「ではエイダン様お得意の、女性口説きから入ったのなら、警戒心は弱まったのではありませんか?」

侍従は容赦ない言い方をするが、私は彼に何度も助けられているので、気にせずに話を続ける。


「私の処世術を今更批判されてもね」

私はエイダン。

スーベリア王の第2王子で、側室の子供である。

私は自分でいうのもなんだが優秀すぎるため、私を警戒するハロルド-第3王子の取り巻きや、兄上の側近の一部から、あと野心家の貴族たちからも自身を守るために考えた対策だ。

私の方からも優秀だが女にだらしがない、王族の品位を落としているという評判を流してもいる。


私は王位など興味もないし、第1王子である兄上が王にふさわしいと思っている。

ハロルドが王位につくと、現王妃の実家の公爵家の傀儡になり、国が混乱してしまうと思うからだ。

だから何としても兄上に王位を継いでいただき、割れた国を早急に立て直さなければならない。


そのためにドラゴン、フェンリルの主である、ウエストランドの嫡男と親しくなりたくて、今回この国に来ることにした。

まぁ、私を警戒している兄上の側近の一部は反対したが・・・・。


この国で情報収集をしている者たちからの報告書を見ると、ウエストランドの嫡男であるリーンハルト君は、気に入った人物には、利益になる事業などの知恵を与えるらしい。

実際、彼と親しい貴族は、新しい事業を興し、相当な利益を享受していた。


そして今回のアランフェス王家肝煎りの展覧会。

これはウエストランドが領内で行った真似だという。

しかも民間人だけでなく、下位のやる気のある貴族にも恩恵がある。


基本的には王城の政務官たちが動いているようだが、リーンハルト君がアドバイスをしていると、この国で情報収集を行っている者からの報告だった。

ただあまりに頼り過ぎて、アランフェス王家は彼から一度報復されたという内容の報告もあり、扱いが難しい人物でもあることはわかっている。


この展覧会の視察・・・我が国で出来ないか検討したいと、アランフェス王国には申し出をしているが、現状の我が国ではできないだろう。

兄上とハロルドのお互いの陣営が足を引っ張り合いして、失敗することが目に見えている。


だから侍従が本来の目的である、リーンハルト君との接触について聞いてきたのだ。

私は侍従にリーンハルト君と手練れな美女とのやりとりを話した。


「全然仲良くなれていない上に、女性に投げ飛ばされたのですか?」

侍従が笑いをこらえている。

私が女性から反撃されるのはめずらしいからだろう。


「正直に5番目の妃と言わなくてもよかったのでは?実際、誰も宮殿にはいないのですから・・・・」

しばらくしてこらえている笑いが収まった侍従が言った。


私の妃たちは、野心家の貴族が遠縁の娘を養女にして送り込んだ者たちばかりだ。

4人とも仲が良い婚約者がいたのに解消させられて・・・という者たちばかりだった。

娘がいる有力な貴族は、兄上や弟の第3王子狙いだし、あと私の噂を信じてというのもある。


ただ兄上が王位につけば、第1王子派である私もそれなりに力を持つため、縁をつなぐために体裁を整えてというものだ。

だけど妃たちは、私が任されている領地で元婚約者と一緒になって暮らしているから、私の宮殿には誰も住んでいない。

貴族たちは女性を口説くために、押し付けられた妃たちを領地の屋敷に閉じ込めていると思われているがね。

いずれは彼女たちを解放してあげたいと思っている。


「私もこの設定を続けるのがしんどいし、縁談話をいい加減なくしたい。彼女なら、野心家貴族どもをぶった切ってくれそうで、面白い存在になると思ったが、残念だ」

私は侍従がテーブルに置いたお茶を飲んだ。


「エイダン様、目的はウエストランドの嫡男と接点を持つことですよ。目的がずれていませんか?」

侍従が言っていることは、第3王子であるハロルドが失敗した、ウエストランドとの縁を私が持つことだ。

「ずれていないさ。ウエストランドの嫡男が、王城に連れて来ているということは、親戚だろう。しかも国王とも会っていたようだから、この国の有力貴族の令嬢ではないか?」

貴族の令嬢にしては破天荒だが、面白い逸材だった。


「どこの令嬢が探ってくれ」

「もしかして本気の嫁取りですか?」

私のいつもとは違う対応に、侍従が目を輝かせていた。


ウエストランドの親戚なら、兄上陣営が勢いに乗る可能性は高い。

結婚式にウエストランドの嫡男がくれば、さらにいい。

……真剣に考えてもよいかもしれない。
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