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【リーンハルト:11歳】
第529話 そっちか
翌日、我が家にアポなしでナンパ男が来た。
図々しさには呆れるが、堂々とスーベリア王国の第2王子と名乗ったため、無下に追い返すわけにはいかない。
今後、他国が真似して我が家に来ないとも限らないから、私は王都にいない方がよさそうだ。
そのためにも、目の前の方との件は今日で決着をつけたい。
しかし私の目の前で優雅にお茶を飲んでいる。
私が話し出すのを待っているように感じて、心の中でため息をつく。
「昨日は存じ上げず、私の連れが大変失礼をしましたこと、申し訳ありませんでした」
座ったままだが私は頭を下げた。
私が頭を上げてナンパ殿下を見ると、彼は自分の正体を知っていたくせにという思わせぶりな視線を、私に投げかけながら、笑顔で話し始める。
「こちらも名乗っていないし、気にしなくていい。だが人によっては気分を害する者もいるだろう」
「寛大なお心、ありがとうございます」
なら、なぜ来たんだと、私は心の中でツッコミを入れる。
ナンパ殿下改め―スーベリア王国の第2王子エイダン殿下は話し始める。
昨日話した4人の妃とは白い結婚で、野心家の貴族が遠縁の娘を養女にして、国王に進言して決まった縁組だそうだ。
そしてみんな仲の良い婚約者がいたため、自分の領地に元婚約者たちを呼び寄せて一緒にさせたと話してくれた。
「私は側室の子で、立場的に弱いんだ。でも優秀すぎて何か欠点がないと、殺されかねないからね」
そんな事実は知らなくていいです。
私をスーベリア王国のゴタゴタに巻き込まないでいただきたい。
確か以前、ラファエルが、王位継承争いの激しい国だと言っていたような気がする……。
「セシリア嬢なら、微妙な立場の私に嫁いでも対処できると、昨日の件で確信したんだ。だから結婚を前提に私のことを知ってもらいたい」
セシリアへの結婚の申し込み?
いやいや彼女はドラゴンです!
しかしもうセシリアの名前を知っているのか。
殿下の部下は優秀なようだ。
「殿下、彼女は貴族ではありません。あなた様のお立場を考えれば、結婚は難しいかと思われます」
「何を言う。君が国王陛下に合わせられるくらいだし、所作も素晴らしかった。信じられないね」
殿下は昨日のチャラさはなく、鋭い視線を私に向ける。
どうやってセシリアがドラゴンだと言わずに納得させる?
もしドラゴンだと知ったら、余計にセシリアを追いかけて求婚しそうな気がするのは、私の考えすぎか?
「昨日、国王陛下とお会いしています。内容はお話し出来ませんが、本当に彼女は貴族ではないのです!」
「貴族の令嬢でないとしても、養女になれば解決する。だから私が彼女と毎日話す時間がほしい」
私がどうやってエイダン殿下を説得しようかと、考えを巡らせていると、ドアがバン!と開き、セシリアが入ってきた。
「セシリア嬢、お会いしたかった。昨日も美しかったが、今日のドレスもあなたに似合っていて、さらに美しい」
殿下は立ち上がってセシリアに近寄ろうとするが、セシリアは私のソファの後ろに立ち、殿下が来ることを拒否する。
「ふん、自分の立場を利用して、強引に進めようとするなんて、私が一番嫌いなタイプだね」
話しながらセシリアは、腕を組み、仁王立ちして殿下を睨んでいる。
アトレとルーカスは部屋には入ってこないで、こっそりとこちらを見ている。
君たち、のぞき見ですか?
「やはり私が思った通りの人だ。あなたは身分に囚われずに私自身を見てくれる」
エイダン殿下は嬉しそうにセシリアを見ていた。
メンタルが強くないですか?
セシリアは嫌いなタイプだとはっきり言っていますよ。
「ところでセシリア嬢、扉は閉まっていたはずなのに、我々の会話が聞こえたのですか?」
エイダン殿下は鋭いことを聞いてきた。
「そんなのは、あそこにいるドラゴンが通訳してくれた」
セシリアは顎でルーカスを指す。
セシリア、誤摩化し方はナイスだが、扉の外にはエイダン殿下の同行騎士たちもいたはず。
本当にルーカスが喋ったんだろうね。
「セシリア、殿下に対して不敬だよ」
私はこれ以上セシリアが失礼な態度を取らないように諌めた。
「・・・・なるほど、流石はドラゴンですね」
えっ?!セシリアがドラゴンだと見抜いたのかと思いドキッとする。
殿下が見ていたのはルーカスだった。
あー、そっちか、よかった。私は内心安堵した。
「あんた、本来の目的はあっちではないのかい?」
セシリアがアトレとルーカスの方を片手で示す。
「なぜ、そう思われるのですか?」
「貴族ではない私にこだわるのは、ウエストランドと仲がいい私から落とせば、ハルトたちとも仲良くなれると踏んでのだろう?」
あぁー、セシリアが直球勝負をしてしまった。
私は頭を抱えたいが、相手にそんな姿を見せるわけにはいかない。
セシリア、相手は祖国で苦労していそうな人だから、かなりの曲者だと思うよ。
「私の本国での立場は非常に微妙だ。だから私と一緒になる人はあなたみたいな人がいいと思っていた。あなたの信頼を得るために私は正直に話しているのです」
いつものチャラさはまったくないエイダン殿下の言葉に、セシリアの怒り口調がトーンダウンした。
「・・・・悪いが私は貴族になりたくないし、面倒ごとも嫌いだ。それから今後、この屋敷に押しかけてくることもやめてほしい」
しばらく、セシリアと殿下はお互いをじっと見ていたが、殿下の方が一度目を閉じて目を開けると話し出した。
「セシリア嬢の気持ちが変わるのを待ちましょう」と言って帰っていった。
図々しさには呆れるが、堂々とスーベリア王国の第2王子と名乗ったため、無下に追い返すわけにはいかない。
今後、他国が真似して我が家に来ないとも限らないから、私は王都にいない方がよさそうだ。
そのためにも、目の前の方との件は今日で決着をつけたい。
しかし私の目の前で優雅にお茶を飲んでいる。
私が話し出すのを待っているように感じて、心の中でため息をつく。
「昨日は存じ上げず、私の連れが大変失礼をしましたこと、申し訳ありませんでした」
座ったままだが私は頭を下げた。
私が頭を上げてナンパ殿下を見ると、彼は自分の正体を知っていたくせにという思わせぶりな視線を、私に投げかけながら、笑顔で話し始める。
「こちらも名乗っていないし、気にしなくていい。だが人によっては気分を害する者もいるだろう」
「寛大なお心、ありがとうございます」
なら、なぜ来たんだと、私は心の中でツッコミを入れる。
ナンパ殿下改め―スーベリア王国の第2王子エイダン殿下は話し始める。
昨日話した4人の妃とは白い結婚で、野心家の貴族が遠縁の娘を養女にして、国王に進言して決まった縁組だそうだ。
そしてみんな仲の良い婚約者がいたため、自分の領地に元婚約者たちを呼び寄せて一緒にさせたと話してくれた。
「私は側室の子で、立場的に弱いんだ。でも優秀すぎて何か欠点がないと、殺されかねないからね」
そんな事実は知らなくていいです。
私をスーベリア王国のゴタゴタに巻き込まないでいただきたい。
確か以前、ラファエルが、王位継承争いの激しい国だと言っていたような気がする……。
「セシリア嬢なら、微妙な立場の私に嫁いでも対処できると、昨日の件で確信したんだ。だから結婚を前提に私のことを知ってもらいたい」
セシリアへの結婚の申し込み?
いやいや彼女はドラゴンです!
しかしもうセシリアの名前を知っているのか。
殿下の部下は優秀なようだ。
「殿下、彼女は貴族ではありません。あなた様のお立場を考えれば、結婚は難しいかと思われます」
「何を言う。君が国王陛下に合わせられるくらいだし、所作も素晴らしかった。信じられないね」
殿下は昨日のチャラさはなく、鋭い視線を私に向ける。
どうやってセシリアがドラゴンだと言わずに納得させる?
もしドラゴンだと知ったら、余計にセシリアを追いかけて求婚しそうな気がするのは、私の考えすぎか?
「昨日、国王陛下とお会いしています。内容はお話し出来ませんが、本当に彼女は貴族ではないのです!」
「貴族の令嬢でないとしても、養女になれば解決する。だから私が彼女と毎日話す時間がほしい」
私がどうやってエイダン殿下を説得しようかと、考えを巡らせていると、ドアがバン!と開き、セシリアが入ってきた。
「セシリア嬢、お会いしたかった。昨日も美しかったが、今日のドレスもあなたに似合っていて、さらに美しい」
殿下は立ち上がってセシリアに近寄ろうとするが、セシリアは私のソファの後ろに立ち、殿下が来ることを拒否する。
「ふん、自分の立場を利用して、強引に進めようとするなんて、私が一番嫌いなタイプだね」
話しながらセシリアは、腕を組み、仁王立ちして殿下を睨んでいる。
アトレとルーカスは部屋には入ってこないで、こっそりとこちらを見ている。
君たち、のぞき見ですか?
「やはり私が思った通りの人だ。あなたは身分に囚われずに私自身を見てくれる」
エイダン殿下は嬉しそうにセシリアを見ていた。
メンタルが強くないですか?
セシリアは嫌いなタイプだとはっきり言っていますよ。
「ところでセシリア嬢、扉は閉まっていたはずなのに、我々の会話が聞こえたのですか?」
エイダン殿下は鋭いことを聞いてきた。
「そんなのは、あそこにいるドラゴンが通訳してくれた」
セシリアは顎でルーカスを指す。
セシリア、誤摩化し方はナイスだが、扉の外にはエイダン殿下の同行騎士たちもいたはず。
本当にルーカスが喋ったんだろうね。
「セシリア、殿下に対して不敬だよ」
私はこれ以上セシリアが失礼な態度を取らないように諌めた。
「・・・・なるほど、流石はドラゴンですね」
えっ?!セシリアがドラゴンだと見抜いたのかと思いドキッとする。
殿下が見ていたのはルーカスだった。
あー、そっちか、よかった。私は内心安堵した。
「あんた、本来の目的はあっちではないのかい?」
セシリアがアトレとルーカスの方を片手で示す。
「なぜ、そう思われるのですか?」
「貴族ではない私にこだわるのは、ウエストランドと仲がいい私から落とせば、ハルトたちとも仲良くなれると踏んでのだろう?」
あぁー、セシリアが直球勝負をしてしまった。
私は頭を抱えたいが、相手にそんな姿を見せるわけにはいかない。
セシリア、相手は祖国で苦労していそうな人だから、かなりの曲者だと思うよ。
「私の本国での立場は非常に微妙だ。だから私と一緒になる人はあなたみたいな人がいいと思っていた。あなたの信頼を得るために私は正直に話しているのです」
いつものチャラさはまったくないエイダン殿下の言葉に、セシリアの怒り口調がトーンダウンした。
「・・・・悪いが私は貴族になりたくないし、面倒ごとも嫌いだ。それから今後、この屋敷に押しかけてくることもやめてほしい」
しばらく、セシリアと殿下はお互いをじっと見ていたが、殿下の方が一度目を閉じて目を開けると話し出した。
「セシリア嬢の気持ちが変わるのを待ちましょう」と言って帰っていった。
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