異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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【リーンハルト:11歳】

第530話 誰に聞く?

翌日から、セシリア宛に分厚い手紙と花束が、殿下から贈られてくるようになった。

宝石とか贈ってきていたら、セシリアはブチ切れていただろうから、いい選択だ。

殿下はちょっとの会話で、セシリアの性格を掴んでいるようだ。

殿下自身のうぬぼれではなく、本当に優秀な人なのだろう。


この数日、セシリアは使者から自分で受け取り、使者の前で手紙を読む。

「手紙は読んだ、お疲れ様」と言って使者を追い返すの繰り返しだ。

どちらかが折れるまでの根比べになってきた。


私は一度セシリアに、このままでいいのかと尋ねた。

「奴の滞在期間は決まっている。それまでの根比べだ」

ただセシリアは私たちに迷惑がかかるような事態になれば、自分の縄張りに戻って、しばらくは人間界に行かないから心配するなと言う。

セシリアの正体が知れ渡るのはよくないが、どうにかして殿下には諦めてもらわないといけない。



『セシリア、よく相手をしてあげているね』

「まったくだ、我なら祖国を滅ぼすぞと脅して終わるな」

アトレとルーカスは、私の部屋でクッキーを食べながら、セシリアの件を私と話している。


「あのね、今のセシリアは人間なの。脅して終わりはできません」

アトレとルーカスは、人間ってめんどうだねと言うが、みんなが好き勝手に生きていたら、国は乱れるだけだから。


「ところでセシリアがエイダン殿下に、ルーカスの通訳で知ったと話していたが、ルーカスは本当に説明したんだよね」

「当たり前だ、我に抜かりはない!!」

『違うよ』


アトレの話だと、セシリアが途中、ドアの前ですごい形相になり始めたらしい。

ドアで待機していたエイダン殿下の護衛騎士が、訝しげに見ていたのに気づいたアトレが、ルーカスに護衛騎士が疑っているから、セシリアに説明するようにと言ったそうだ。


「もしかして、アトレもルーカスも今までドアの外からでも全部聞こえていたってこと?」

『近くならね。ボクたち耳がいいから』

今回、エイダン殿下はドラゴンだからと納得していたが、アトレや他の高位魔獣もドア1枚隔てただけだと、会話が筒抜けだと王家とかに知られると面倒になりそうなんだ。

これは隠しておこう。

この問題を早く終わらせたい、そうなるとまずは殿下についての情報収集かな?



手紙を送った翌日、ラファエルがフローリアのご機嫌伺いと称して屋敷にやって来た。

ラファエル、昨日、しかも夕方に届けた手紙だよ。

「父上からリーンハルトが困っていそうだと、あとフローリアにも話があってね、どのみち訪問しなくてはいけなかったんだよ」


ラファエルが提供してくれた情報は、我が国の王家が掴んでいる情報ではないか?

しかし私がラファエルを頼ると、宰相閣下たちが読んで用意している方も怖い。

あまりにも詳しい内容のため、読むのを途中でやめてラファエルを見る。

「まぁ、リーンハルトの考えは正解かな?」


宰相閣下からの伝言は、色恋沙汰だから、国家間の争いにまでの発展にならないだろうと。

ただ相手を挑発するのは、やめて欲しいとのことだった。

「しかしSランク冒険者殿か。リーンハルトにはいつも驚かされるが、今回は違った驚きだよ」

私が報告書をひととおり読み終わると、ラファエルが口を開いた。


「ラファエル、セシリアの素性は・・・・」

「わかっている。各国はSランク冒険者を囲いたいはずだ。知られない方がいい」

クロンデール公爵閣下は、ラファエルにセシリアがドラゴンだとは話していないようだ。

でもラファエルが疑問に思うから、Sランク冒険者のほうだけ話したとみた。



「ラファエル、昼食を食べる時間ある?」

「新作料理かい?父上が美味しかったと言っていた、母上には内緒でこっそり教えてくれたよ」

どうやらラファエルは期待して午前中に来たみたいだった。


昼食は、リアやセシリア、アトレ、ルーカスが加わる。

セシリアがラファエルに会うのは驚きだ。


「ハルトの親友で、フローリアの従弟だというのだ。信頼できる者だろう?」

「ありがとうございます。その信頼を裏切らないようにしたいです」

ラファエルの返事に、セシリアは満足げだ。

セシリア…ドラゴンだから仕方ないけれど、上から目線の言い方は、ラファエルに正体がわかってしまうよ。


昼食は黒ソースを使った料理、お好み焼き、トンカツ、エビフライ、アジフライ、カツサンド・・・・全部少しずつだからいいだろう。

ソースは2種類、お好み焼きソースと中濃ソースをテーブルに置いてある。

「ソースは同じように見えるのだが、2種類なのか?」

ラファエルが戸惑っていた。


「お好み焼きにはこちらの甘いソース、フライはこちらの甘さ控えめがおすすめね。カツサンドは味付けしてあるから、そのまま食べられるわ」

リアが自分の好みで説明していたので、私が補足する。

「甘いソースも、甘さ控えめも、好みだからどれでも合うよ」


私、リア、アトレは、お好み焼きはお好み焼きソース、フライ系は中農ソース。

ルーカス、セシリアはどちらもお好み焼きソースだから、ウスターソースまでは出していない。

ラファエルは、私やリアと同じにして、味を比べるようだ。


「どちらでもいいが1つでもこの黒ソースが、我が領内のダンジョンドロップ品であれば、民の食生活が豊かになるのにな」

両方の味を確認したラファエルが残念そうな口調だ。

「ここは王都の展覧会で、新しいソースがあることを期待しよう」

内心私もラファエルと同じ意見だが、黒ソースは今のところ再現方法不明だ。

神様は近くにあるよと言っているから、早めに領都に戻って探したい。

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