異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

文字の大きさ
496 / 496
【リーンハルト:11歳】

第550話 食堂で

私とジェラ兄上はクリス兄上と別れ、アトレ、ルーカス、リプカがどこにいるのかと、そばにいた侍女に声をかけたら食堂に案内された。

食堂にはセシリアも一緒にいて、おはぎ、おかき、お汁粉、枝豆、お餅ピザなど、この領地の特産お菓子兼料理がテーブルにたくさん置かれていた。


アトレ、ビアンカはテーブルの高さに合う専用椅子にいて、ルーカスとリプカはビアンカやアトレに近い場所のテーブルに座って食べていた。

「この椅子はいいな。リプカ専用に作ればリプカもテーブルの上に立たずに一緒に食べることができる」

ジェラ兄上もアトレとビアンカの椅子に目に留まったようで、私に話しかけてきた。


この椅子はクリス兄上が、ビアンカと一緒に食事するために作らせたらしい。

アトレが使っているのはビアンカ用に改良した最新椅子で、椅子の高さが調整できるのだとか。

場所によってはテーブルの高さが違うためらしい。

ビアンカが今使用している椅子は、以前使っていた物だそうだ。


私もこれはいいと思った。

これなら一緒のテーブルで食べられるから、帰ったら私もみんなの分を作ろう。

テーブルにたくさん料理があるのにもかかわらず、座った私とジェラ兄上の前に一皿が置かれる。


「新作お菓子でして、感想を聞きたいと料理人が申しております」

私たちの目の前に置かれたものは、餅を丸めた一口サイズのものの上に枝豆で作った餡子が乗ったものだった。

これが新作?

不思議に思ったが、フォークに刺して食べる。


この食感、お餅のように伸びずに食べやすい、そしてなめらかだ。

これは・・・・団子に近い食感?

「餅もいいが、このお菓子も食べやすくていい」

ジェラ兄上はすでに完食していた。


「餅は固くなるのが早いが、こちらはどうなのだろう?」

私の問いに侍女さんが答えてくれる。

「1日は柔らかい状態が続きます」

これを作った料理人すごいな。


「お味はいかがでしたでしょうか?」

「美味しいよ。どうせなら餡をこの餅で包んでもいいかもね」

「リーンハルト様、その案を詳しく教えてください!!」


急に後ろの方から声がしたので振り向くと、20代半ばの若い料理人だった。

もしかしたらこの料理を作った人かもしれないが、いつの間に食堂内にいたの?

びっくりしたが私は、見た目は奇麗だが、このままだと外で食べたりするには食べにくいこと。

2、3口で食べられる大きさにして、このお餅で餡子を包み、藁半紙などに包んで渡せば1個売りから販売できるのではないか。

中身の餡子を変えれば3種類できる。


「どうせならこのお餅に色がついたらいいね」

話している途中で、前世の3色団子が頭の中に浮かんだ。

餡子を使わない分、安くなると思う。


緑色なら抹茶が手っ取り早いけれど、お菓子が高価になる。

草団子・・・ヨモギが頭に浮かぶがこの世界にあるのか?

「抹茶は合うと思う。あと野菜とか、薬草を混ぜてみてもいいかも?」

「野菜?薬草ですか?」

メモを必死でとっていた料理人が顔を上げて私を見た。


「ハーブティーに使用されているお茶に使える薬草とかはどう?手に入りやすくて安価なもので試してみてもいいかもね」

ヨモギの説明が難しいなと思ったが、ヨモギ茶があったから言ってみた。

あと野菜はおやきを思い出したから。

ただおやきの皮は餅ではなく小麦だと話した後で思い出し、内心しまったと焦ってしまう。

だから全部失敗で終わったらごめんと先に心の中で謝った。




「大変参考になりました。助言本当にありがとうございました」

料理人は90度に頭を下げてからさがったけれど、顔はワクワクしているのがわかった。

残業はあまりしないで欲しいから、侍従長に一声かけておこう。


「ハルト、早速この地の温泉の名物作りか?」

ジェラ兄上はからかう様に声をかけてきた。

「こんな新作を出されると、こんなのがあればいいなと思いついたから。でも料理人の人たちって、みんな研究熱心な人が多いのですね」

「みんなハルトの案に作ってみたいと触発されるのだろう。料理人だけでなく他の職人たちもだ」


私とジェラ兄上が他の料理やお菓子を食べ始めるとセシリアが話しかけてきた。

「ルーカスたちが食べられるかなとコソコソと話していたのが聞こえたから、強引についてきてよかった」

私たちがここに来る前、また面倒ごとに巻き込まれるかもしれないからセシリアには、ウエストランドに両親たちと戻ることを勧めていた。

セシリアがウエストランドに戻らずに、私たちについて行くと言い張ったのは、リアもまだ王都だし、一人で暇を持て余すからかもと考えたのだが違ったようだ。


私がルーカスたちを見ると、ルーカスは食べるのを一旦やめて話し出す。

「枝豆は今の時期だろう。ハルト、買えるだけ買って帰るぞ。あとお菓子や料理もたくさんな。シエルやルアンたちも食べたがっていたから頼むぞ」

なるほど……やけにあっさりとここへ来ることを承知したと思ったら、王都の展覧会の料理よりも、こっちのお菓子や料理が食べたかったということか?


頼むとなると量がたくさんいるな。

王都でクロンデール公爵家、宰相閣下にも迷惑かけたから渡すとして、あとは我が家と、アルラウネに渡す分もいるな。

あっ、神様たちの分もある。

料理人に残業させないように侍従長に話そうと思っていたのに、無理を言わなくてはいけなくなった。


クリス兄上に頭を下げてお願いしよう。

私がため息をつくのを見たジェラ兄上が笑っている。

「俺も一緒に兄上にお願いするから」

私の肩をポンと叩かれた。
感想 34

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(34件)

ふくのすけ
2026.03.14 ふくのすけ

誤解が深まっていく…w
従魔たちが協力し合ってやらかしたのかなぁ?
自白剤はセシリアが持ってたとか、誰かのスキルとかありそうだし…。

解除
マキ
2026.02.25 マキ

つまりパーティは開いたけど強制的に参加させられてフローリアを含むこちら側の要人達を、
全く守れなかったあげく実際に守ったリーンハルトやミニョン達にやり過ぎだと文句を言い、
自分たちが守れなかった責任を棚に上げ騒動を起こした側よりも捕まえた側に筋違いの嫌味を言い、
さらに主催側として後始末をしなければならない事にまで文句を言っている宰相閣下達大人勢は、
責任を取る気があるのだろうか?

解除
ふくのすけ
2025.12.18 ふくのすけ

ドラゴンがため込んだ財宝(?)がザクザクですね(笑)
冒険者ギルドや商業ギルドには笑いごとではないけども…。

2025.12.20 葉月ゆな

ありがとうございます。
「高価品は~」とハルトが先回りした意味があまりなかった。
ドラゴンがしれっと高価品も放出しているのに、量に圧倒されて指摘するのを忘れていたハルトでした。
引き続きよろしくお願いいたします。

解除

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』

まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」 ​五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。 夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。 生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。 ​冷淡な視線、姉と比較される日々。 「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」 その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。 ​しかし、彼女が消えた翌朝。 カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。 そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。 そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。 ​――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」 ​真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。 だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。 ​これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。