異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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【リーンハルト:9歳】

第286話 エインス村

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いつもお読みいただきありがとうございます。

次の投稿は本日の午後の予定です。

よろしくお願いいたします。

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バンブス村を出て次はエインス村へ行く。

この村は工芸品のお土産の部3位になった布バックの村だ。

端切れを帆布っぽいものに張り付けてあったバックだ。

パッチワークかと思ったけれど縫い目がなくて気になっていた商品だ。

どのように作られているのか見学するのを楽しみにしている。


エインス村で待っていた女性に見覚えがあるがどこで出会ったのだろうか?

展覧会の入賞授与にはいなかったと思う。

女性はサリーさんというらしい。



「何度かお屋敷でお目にかかっています」とサリーさんの方から教えてくれた。

なんとアイラさんのお店で働いているらしい。

ロゼッタの制服の採寸やアトレやルーカスたちのスカーフの採寸に来ていた人のひとりか。

「お店をお休みしてよかったの」

「オーナーが、クリスフォード様たちが村に来るのなら案内しなさいと言ってくれました」

「そう、アイラさんに会ったら私からもお礼を言うよ」


集会所の会議室に作った小物類、端切れを張り付けた生地など全部ひと通りそろえてくれていた。

端切れを張り付けた生地を手に取り見るがやっぱり縫い目はない。

「どうやって作っているか教えてもらってもいい」

「この硬めの生地に張り付けていますが、この生地はピーネという植物を糸や紙にできます。しかし生地としては硬いため服としては不人気でバックを作っています」

「見たことはないけれど」

「バックも頑丈とはいえど買い物袋として活用されますから竹籠程頑丈ではなくため、竹籠を持ち歩くのが嫌な方が購入される程度で無地で売っていました」

「無地で?」

「はい、ピーネのバックに端切れを付けることは昔からこの村ではしていたのですが、貼り付け作業が大変だったため数が出来ずに村内のみで使用していました」

「出来なかったと過去形で話しているということは」

「はい、このアイロン魔道具のおかげです」

実際にやって見せてくれた。


ピーネの生地に何か糊みたいなものを塗り、そこに端切れを張り付けアイロンをかけると奇麗にくっついていた。

「高温のアイロンでないと奇麗にくっつきません。しかし前のアイロンは重たいし、温度も一定ではないのですべて奇麗にできるのはごく僅かでした」

「この糊みたいなものは村で採れるものなのかな」

「はい、ピーネの実を潰して作ります」

「布を洗っても剥がれないの」

「一度くっついたものは剥がれません」


「今回の展覧会があったので出品しましたが小物以外にも何かに使いたくても思い浮かばなくて」

「竹籠の裏地に使うとか」

「裏地ですか」

ディーノさんにもらった竹籠を出し、端切れをピーネにくっつけている生地を竹籠の内側に充ててみた。

「竹籠が自分のオリジナルになるからちょっとした楽しみにならないかな?」

「竹籠の内側に布を貼るというか糸で留めるということですね。確かに面白いです。どうせなら表と内側に貼るのとを作ってみます」

バンブス村に協力してもらわないといけないですねと言ってくれるが、正直たくさん売れると自信を持っては言えない。

他には思いつかないしなぁー。


「そういえば先程紙にもなると言っていなかったか」とクリス兄様がサリーさんに尋ねる。

「はい、ただし紙の厚さがあることと、文字も書きにくいので使い道がありません」

「見せてもらってもいい」

「こちらになります」

どうやら用意してくれていたようだ。


ちょっと黄色っぽい色をした厚紙で表面もざらついている。

これでは文字は書きにくいわ。

厚紙か、何かに使えるかも。

あるだけもらって帰ろう。


端切れを使った小物類も神々様に奉納するため、ポーチや手提げバック、ランチョンマットを購入した。

鍋掴みや鍋敷き、花瓶敷はいらないのではないかと思い購入せずに、新街のお土産に回してもらうことにした。
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