スキル素潜り ~はずれスキルで成りあがる

葉月ゆな

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第72話 滞在記(5)

「水はどうやって撒くのかしら?あとなぜこの辺りの木々は葉がついていないのでしょうね?」

王女様が説明をするナディーヤに次々と質問を投げかけいるが、ナディーヤは丁寧に答えていく。

「水を撒くのはこれから実際に見ていただきます。あとこのあたりの木は似ていますが違う木のようです。一部の枝を切ってみて枯れいないことも確認しています」

専門家ではないため、今後年間を通して確認しようということみたいだ。


島内の生態系や芋虫などは、セドやナディーヤに任せきりだったから申し訳ない。

2人は糸の価値を下げないように色々試してくれたのだろう。

今から私でできることといえば専門家を呼ぶ手配だが、子爵領にいるかどうかわからない。

戻ったら商業ギルドに確認してみようか。


ナディーヤの説明中に、セドがマジックバッグから道具類を取り出し準備していた。

目についたのは水が入った大きな樽と見たことがない魔道具だった。

直径30センチくらいの樽を魔道具に改造していて、水を入れて使う物らしい。


樽に差し込んだ丸みを帯びた柔らかい物の先端には、ジョウロの取っ手のようなものがついていた。

どうやらジョウロを魔道具化したもので、ジョージさんが作ったものだそうだ。

また丸みを帯びた部分は、中が空洞で樽の水がそこを通ってジョウロの取っ手部分から出てくる仕組みとのこと。


丸みを帯びた柔らかい部分は、チューブという名称で、ジョウロの取っ手を自由に動かすことができ、高いところや少し奥でも水やりを可能にした。

農作業で水や農薬を撒く作業時間が大幅に短縮されたとのことだった。


「セド、話を聞く限りすごく便利そうな魔道具だけれど・・・・」

「ヘレンが特許申請して販売すると大喜びしていたから、近いうちに領内で手に入るようになると思う・・・思います」

セドは私が質問したので、いつもの話し方をしたが、最後で王女様がいることに気づいて慌てて言い直していた。

ごめん、私もついセドと呼んでしまった。


王女様がチューブ部分を触りたいといい、セドが王女様の近くへ魔道具を持っていく。

「柔らかいといっても、触ると固めなのね」

王女様の感想にセドが答える。


「馬車の車輪に巻いているゴムの材料を使っていると聞いています」

なるほど、馬車の振動が小さくなるクッションの役目をしているゴムか。

ゴムの材料はスパイラの粉だ。


スパイラというのは、ダンジョンの洞窟タイプの下層にいる、黒色の丸い玉の魔獣の名前だ。

ジャンプ力がすごく、岩や岩壁、地面を蹴って冒険者たちに体当たりしてくる。

1つ1つは手のひらサイズで小さいし、剣で簡単に倒せるが、数で襲ってくるため、前進するのが大変だと聞いている。


そのスパイラを倒したドロップ品が、スパイラの粉だ。

10年くらい前までこの粉は使い道がなく、冒険者たちは誰も拾わなかった代物だった。

だが馬車の車輪に巻くゴムの材料として使われるようになり、今は人気の素材となっている。


セドが実際に作業を始める。

まず、魔道具の樽についている幅の広い紐を肩にかけ樽を持ち歩いて水を撒いていた。

糸に水が十分に染み込むと、セドの近くにいたアウローザのメンバーが糸を丁寧に剥がしていく。

そして剥れないところは、セドがまた水を撒いていた。


「最初のころはもっと木々に糸が絡まっていたのですが、最近は特定箇所に集中して糸が塊になっているため取りやすくなりました」

「いつ頃から変化が?」

王女様の質問にナディーヤが答える。

「はっきりとは言えないのですが、ミリアが同行し始めてからだと思います」

ミリアが芋虫の所へ同行し始めてから、徐々に今みたいな糸が増えたようだという話だった。


ミリア、すごいじゃないか!」

私がミリアを褒めるが、ミリアが浮かない顔をしている。

「ミリア、どうかしたのか?」

「ダニエル様、痛い痛いという声が聞こえるの」


「どこから聞こえるのかしら?」

王女様が私たちの話に加わるが、柔らかくミリアに微笑み、優しい声で尋ねていた。

ミリアは来た道とは反対の方角を指している。


「確認に行きましょう」

「王女様、危険かもしれませんから、行かれることは承知できません」

「私も同行責任者として反対です」

護衛騎士のリーダーとマクファーソン伯爵が、王女様を止めた。


「私たちが確認をして参ります」

私の提案に、王女様は残念そうな顔でうなずかれた。

話し合いで、リカード隊長と隊員の半分、王女様、アイリス、マクファーソン伯爵、護衛の騎士たちは、最初ミリアが芋虫たちを呼びかけた場所で野営の準備をしながら待機。

そして私、セド、ナディーヤ、ミリア、アウローザ、アラン副隊長と隊員の半分が確認に行くことになった。


ミリアの案内で、また垂れ下がった葉っぱをかき分けて進んでいくと、2匹の小さめの芋虫、私たちがここに来て最初に見た芋虫の半分サイズが、体をくねらせながら転げ回っていた。

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