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キャンピングカーで始める異世界スローライフ
第12話「リーシャーとグリーンドラゴン」
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「とにかく貴様……この御方に指一本触れてなどいないだろうな?」
「滅相もない!」
鼻先にナイフを突きつけられ、姿勢を正した。
エクラのオーナーは俺だ、車内では一番偉いはずだが、その程度の権威は切っ先ひとつでひっくり返ってしまう。
テーブルには無造作に銃も置かれている。銃口はこちらに向けられ、無機質で鈍い光を放っていた。
「リーシャーやめなさい」
ルミは穏やかながら、命じるように言った。
「しかし」
「ハンゾーさまはわたしを助けてくれたのです」
この世界では、メイドよりもシスターのほうが、立場が上なのだろうか。ふたりに主従関係を感じた。
「お言葉ながら。あなたを助けるのは、我々の義務です」
やはりルミは良家のお嬢様なのだろう。
リーシャーという名のメイドが言った「我々」に、俺は含まれていないだろう? 大層なご身分だな。
刃物を突き付けられるのは生まれて初めての経験だが、最悪の気分だ。はやく閉まってほしい。
「リーシャーしまいなさい」
「……承知しました」
女は渋々といった様子で従った。だが、ほとんど表情は崩れていない。
ルミは童顔気味だと思うが、このメイドは、ただただ整っていた。
しかし、美形が過ぎて欲情する隙がない。
パッと見た感じでは年下に見えるが、この長い耳……褐色の肌……ダークなエルフってやつなのでは。
ダークエルフでメイドかよ……盛ってんねぇ。
そんなことを考えていると、ナイフは消えてしまった。一瞬だったと思う。
銃も無くなっている。どこにどうやって隠したんだ?
「ハンゾーさま、申し訳ありません。この者はリーシャー。わたしの身の回りの世話をしてくれています」
ルミは俺に向かって頭を下げた。
「ルミレーゼ様! こんな下賎の者に頭を下げるなど!」
「下賎で悪かったな……」
ずいぶんな言い様じゃあないか。
「そんなに大事な娘なら……ちゃんと見張っていれば良かっただろう?」
リーシャーは黒目をカッと見開いた。
瞳孔の部分ではない。本来、白いはずの部分が黒い。で、真ん中の部分が赤いのだ。
彼女をただの美人として片付けることができない要因のひとつかもな。
「こっちは散々な目に遭わされたんだ」
この台詞も言うべきじゃなかったと思う。
今日は色々とありすぎて余裕がなくなっている。
結果的にルミを責めることになった。
「貴様……」
リーシャーは言葉を詰まらせた。
ルミも目を伏せ、申し訳なさそうにしている。
「すまない……言い過ぎたよ」
この言葉はなんとか捻りだした。頭を下げるまではしなかったが。
「ルミレーゼ様。オレと一瞬にお戻り頂きます。捜索隊および聖堂騎士団の面々もじきに到着します」
「……ですが」
「ですが……は無しでお願いします」
リーシャーはルミの返事を切った。
明らかに主はルミのほうだが、従のリーシャーは従うだけではないようだ。
家庭教師みたいな感じだろうか。
それにこのエルフ。オレって言ってたよな。属性盛りすぎじゃないだろうか。
「貴様に許可を得るまでもないが、ルミレーゼ様は連れていくぞ? いいな?」
本当に聞くまでもないことだと思った。
「好きにすればいいだろう」
俺の返事に、ルミは表情を曇らせる。
気のせいではない、リーシャーと違って彼女は表情が豊かだ。
曇らせた理由はわからん。
「参りましょう。姫様」
リーシャーは踵を返した。
ルミはソファーに座っていて、彼女はずっと立っていた形だった。
振り向けばすぐにドアがある。
彼女はガチャガチャと取っ手を鳴らした。
「むぅ……開かないぞ。どうなってるんだ」
「鍵」
「ソレを早く言え」
俺の短い返事に、リーシャーは偉そうに文句をつけつつツマミを回した。
開けられるんだなと思った。
まぁ、そりゃそうか。異世界だって鍵はあるだろう。
「……」
リーシャーがステップに足をかけ、車外に出ても、ルミは座ったままだった。
「ルミレーゼ様。急ぎませんと」
急かされた瞬間、ルミは俺の目を見た。
なにか訴えている様子だが、わからない。
いくら表情豊かでも、ソレだけじゃあ伝わらない。
「あの……」
彼女は口を開きかけたが、遮るようにリーシャーが口を開いた。
「キサマも死にたくなければ、この場から離れることだ。ここは森の主……グリーンドラゴンの住処だ」
「なんて?」
男の子がみんな大好きな異世界用語が聞こえた気がした。
まだまだ、異世界は出尽くしていない。
「ちっ……いいか? よく聞け? ここはグリーンドラ――」
リーシャーは舌打ちをひとつ。同じことを二度言おうとした――が、突如、地面が揺れた。
「姫様っ!」
リーシャーはすぐに車内へ戻り、勢いよくルミの手を引いた。
「でたぁあああ‼」
俺は叫びながら、反射的に扉を閉めた。
「阿呆っ! キサマ! 開けないかっ!」
「開けるかよ!」
俺とメイドは扉を開ける開けないで揉め始めた。
彼女は俺と同じ背丈。頭半分高く見えるのはきっとヒールのせいだ。
「はやくにげるんだ!」
「だったら座ってろ!」
ものすごい力だ。
体幹がしっかりしていると言えばいいのか。
俺が押してもリーシャーはビクともしない。
ゴゴゴゴゴッッッッ‼
地鳴りとはこういうものなのか。
胸とか腹とか、音が俺を揺さぶってくる。
フロントガラスの向こうに見えるのは……巨大な蛇だった。
「アレがドラゴンだって!」
「そうだ! 森の主だっ!」
「蛇だろ、アレは⁉」
「あんなデカい蛇がいるものか!」
もっともだ。
よく見ると、体中が鱗に覆われている。
岩のようにも見えるが、ビッシリと幾何学的で、明らかに鱗だ。
顔もいわゆるドラゴンのものだ。
口が裂けていて、二本の大きな角がある。手足はない。
どれくらい大きいかって?
小さな島くらいだよ。
なんせ湖の真ん中にあった岩場がなくなっている。
歩いて渡ったあの場所は、小島なんかじゃなかったんだ。
この蛇みてーなドラゴンが、トグロを巻いて寝てたんだ。
体中から血の気が引くのを感じた。
「シートベルトしめとけっ!」
渾身の力でリーシャーを押しのけ、運転席に座った。
「キサマ! なにを考えてる!」
「逃げるんだろ⁉」
キーを回すとエンジンが掛かった。
今回も一発だ。エクラは俺の期待に素直に応えてくれる。
「なにをするつもりなのか聞いている!」
このメイドは素直じゃない。
邪魔ばかりしやがる。だが、いまは構ってなんかいられない。
「逃げるぞ!」
そう叫んだのが先か、アクセルを踏んだのが先か、それは今はどうでもいい。
ギャリギャリとタイヤが空転し、車体の後部が流れたあとにエクラは急発進した。
「ハンゾーさま! ダメです!」
なにがだよ!
ルミにも構っていられない。早く逃げなければ。
「主を刺激してはいけません!」
グォオォオオオオオオオンッ!
それが唸り声なのか、動いた音なのか、判別がつかなかった。
ただ、森の意思が生み出したような、腹の底にズンと響くものだった。
ズゴォオオオオン!
とんでもない衝撃だった。
エクラの倍はありそうな頭部での頭突き。
サイドガラス越しにドラゴンと目があった気がした。
「きゃあ!」
「ルミレーゼ様っ!」
座席の向こうでふたりの声が聞こえる。
なにかしらが散乱する音も同時に聞こえてきた。
「ッ⁉」
だが、それだけだった。
思わずアクセルから足を離して、止まってしまった。ただそれだけだったんだ。
「エクラっ! オマエ!」
窓には傷ひとつない。
なのに、ガラスの向こうでドラゴンが動くたび、大きな木々がなぎ倒されていく。
「うぁ! やめろって!」
またドラゴンと目があった。
今度こそと言いたげな表情で、奴は頭を振りかざした。
ズドォーーーーンッ!
次は上から来た。
釘でも打ち込もうとしているのかってくらいの真上からだ。
「エクラぁ⁉」
また無傷だった。天井に凹みひとつない。
車内も揺れを感じるが、せいぜい足元がグラついて物が散らかる程度だ、なんの支障もない。
ブオオオオオオオオンンンンッ!
「怒ってます」
「俺もそう思う!」
ルミの言葉に同意した。怒っているとしか考えられない大きな声だった。
シャッ! シャッ! シャッ!
エクラの窓にはプライバシー用のカーテンが備え付けられている。
遮光性も高い代物だが、自動で開け締めするような機能はない。
なのに勝手に閉まった。
「エクラぁ⁉」
もう一度、愛車の名を呼ぶと同時に衝撃が来た。
ドン! ドン! ドン! ドン!
何発も何発も。
ドン! ドン! ドン! ドン!
いよいよ釘でも打っているかのようだ。何発も何発も。
「いったいなんなんだ⁉」
リーシャーが驚いた理由はハッキリしないが、エクラに対してだと思う。
なぜなら俺もそうだからだ。
ドラゴンの頭突きで死んだと思った。ふたりもそうだろう。
それほどまでに、グリーンドラゴンは圧倒的で、超越的で、滅茶苦茶だった。
なのにどうだ。車内にいる俺らになんのダメージもない。
「転生技能か⁉」
女神様は《絶対守護》だとか言っていた。
あまりに名前どおりで逆に驚く。
「これなら逃げ切れるぞ!」
衝撃で俺の体は助手席まで放り投げられていた。
慌てて運転席に戻ると、カーテンを開くこともせずにアクセルを踏んだ。
ギュウウウンッ!
駆動音は聞こえる。タイヤが回っている感覚もある。
だが、前に進んでる気はしない。
「なんだってんだ!」
すぐにカーテンに手を伸ばした。
「なんだよこれ! 埋まってんのか⁉」
目線が地面と同じ高さにある。
水槽に作られた蟻の巣穴でも見るように、土の断面が見えた。
釘みたいに打たれたから、釘みたいに地面に埋まってしまっている。道理だ。
「まずい! これじゃ逃げられない!」
「なんだと!」
俺の言葉にリーシャーが反応した。
こんな状況で相手にしたくないが、詰め寄って来る。
「荷馬車なのか知らんが動くんだろう⁉ 早く動かさないか‼」
「できないんだよ! 埋まってるんだ!」
「這い出せ!」
「ああそうしたいね! できるならな!」
俺の肩をつかみガクガクと揺らすリーシャー。
その腕を振りほどこうとする俺。ふたりで言い争う。
「ふたりとも落ち着いてください!」
ルミが割って入ってくる。
キャンピングカーとはいえ車内は狭い。
胸を押し付けてくるものだから、顔に柔らかい感触が伝わってくる。
いまはラッキースケベしてる場合じゃない! 邪魔だっ!
「外に出られないのか⁉」
「出られるもんならな‼」
リーシャーの質問に、ドアへ目をやりながら答える。
フロントガラスと同じ景色で、半分は土に埋まっている。
「ちっ! あっちはどうなんだ!」
彼女はキョロキョロと車内をみまわしたあとに天井を指さした。
「開くには開くが……」
陽を取り込む天窓だ。
もうひとつの機能として、ドラゴンに襲われた際の緊急脱出に使える。
「ルミレーゼ様! オレが囮になる! 隙をみて脱出してください! 来た道を戻ればいずれ他の者に合流できます!」
テーブルに駆け上がって天窓に手を伸ばしたリーシャーを、ルミはレスリングのタックルみたいに押し倒した。
「ダメッ!」
「姫様っ⁉ ぬぁ‼」
そのまま寝技に持ち込むような形で、ルミはリーシャーを抑え込む。
車内で暴れるなよ!
「なにをなさいます!」
「死ぬつもりですか⁉ そんなの許しません‼」
オマエが言うんかい。
口には流石に出さない。そんな状況じゃないのは分かっているからな。
「この中にいれば安全なのです! この場所は言わば城! 転生者ハンゾーさまの領地!」
俺ってそんな話しただろうか。
なにか飛躍している気はするが、おおむね事実と言える。
転生車エクラの転生技能は《絶対守護》――絶対無敵の要塞なのだ。
そうだよな転生の女神様! そうじゃないと困るんだよ⁉
「くっ……しかし!」
「リーシャー!」
ルミの一喝は揺るぎないものに聞こえた。
普段の気品に溢れる口調とは違って、圧倒し物を言わせぬ迫力がある。
こうと決めたら一途で頑固そうだ……そんな女の子のような気がした。
「わかりました。たしかにこの中は安全なのかもしれません」
リーシャーの葛藤が見て取れるようだった。
だが、どれほどの攻撃を受けようともビクともしないエクラ。
この事実を覆す考えは浮かばなかったのだろう。
「ルミレーゼ様の仰られる通り篭城しましょう。なに……じきに他の者が合流します。ドラゴンはその者達に任せて、その隙に……」
リーシャーが言い終わるや否や、ルミは「そうでした!」と叫んだ。
その勢いでリーシャーは地面に頭を打ち「ぐぁっ」と声をあげた。
「他の者が犠牲になってしまう……また、わたしのせいで……」
ルミは何やら良くない表情で……曇っているというか……なんというか……。
とりあえず、ワナワナと肩を震わせている。
「ルミ……?」
声をかけた瞬間に、ルミは俺に向かって振り向いた。
「ハンゾーさま! お世話になりました! わたしが囮になります! ふたりはその間に逃げてください!」
「なぁに言ってんだよ⁉」
その話、何回目なんだろうか。
そもそも、いまリーシャーが主役で同じシーン演じてたよな。
「ルミレーゼ様っ!」
そりゃ、リーシャーも驚くだろう。
しこたま怒っていながら、同じことを自分でやると言い出したのだから。
「離しなさい!」
「離しません! おいっ! キサマも手伝え!」
天窓が開いて、ルミの上半身が外にでている。
リーシャーが腰元に抱きつき、必死に引っ張り込もうとしていた。
「くそっ! なんだってんだよ!」
リーシャーに加勢するため、運転席から降りた。
とりあえずどこかを掴もうとルミに近寄ったが、脚をバタつかせるせいで、ロングスカートがふわりと舞った。
俺はスカートの中に頭を突っ込む形になった。
小柄な割に張りがあって、しっとりと汗ばむ尻に顔が……。
「だから! それどころじゃねーんだよ! ド阿呆っ‼」
パシィンッ!
「ひゃんっ⁉」
あまりにムカつき、尻に一発入れた。ビンタのことだから勘違いしないようにしてくれ。
そしてすぐにスカートを押さえ込み、リーシャーと同じく腰あたりに手を回して、引き込もうと力を込めた。
「なんだこの娘っ! 力強すぎないかっ⁉」
どこから湧いてくるんだこの力。リーシャーも大概だったが、それでも人知の及ぶ感じはした。
だが、こっちは重機と腕相撲でもしてるのかってくらい、ビクともしない。
「わたしが贄になれば、一時を稼ぐことができます! その間に、あなた方と、他の者全員で森から離れてください!」
「おいっ! このお嬢ちゃん生贄とか言い出しやがったぞ!」
「分かっている! 手を離したらオマエを代わりに差し出してやる! 離すな!」
そんなの冗談じゃない。
このエルフはやりかねない。全体重をルミに預けた……が、そんなの関係なかった。
スポンッ
と、音でも聞こえてきそうなくらい、ルミは綺麗に抜けた。
俺とリーシャーは支えを失って尻もちをついた。
「姫様っ‼」
リーシャーの声に聞く耳を持たず、天窓から外に踊りでたルミは、両腕を天に掲げた。
「主さま! こちらです! 怒りをお納めください! わたしが贄となりましょう!」
ドラゴンの気を引きながら、エクラと俺らから距離を取るように、ルミは離れていった。
「くそがぁ!」
リーシャーも、もの凄いスピードで、一足飛びに天窓から抜けて行った。
両どこから取り出したのかわからない二振りのナイフを手にしている。
「おいおいっ、なんなんだよ! ふたりともっ‼」
穴ぐらから引っ張り出されるモグラのように、俺も半身を乗り出した。
目の前にヒラヒラのスカートを履いた背中がある。メイド服だ。
つまりリーシャーの背中だが、固まったように動かない。
当たり前のように、黒タイツ越しの縞パンが見え隠れしているが、戦闘中のラッキースケベがこんなに腹立たしいとは思わなかった。
異世界にも縞パンあるんかい。そういうの履くタイプなんかい。
「中に戻れよ! ふたりとも――」
リーシャーの背中を避けるように、ぐいっと上半身を横に傾ける。
視線が通って、三十メートルほど先にルミの姿が見えて……いた。
ゴキュンッ!
喉を鳴らす音が低く響いた。
ルミが立っていた場所は、スプーンですくったみたいに大穴が空いていた。
彼女は消えた。
「喰われ……た……⁉」
一秒か二秒、時が止まった気がした。
「うぁああああっっ!」
俺を正気に戻したのは、リーシャーの絶叫だった。
「あっ、おい! いくなっ! リーシャー!」
俺の声など届くはずもない。
メイドは一陣の風となって駆け出した。
「その娘はオレのだっ! 返せっ!」
湖に半身を沈めたままのドラゴン。
地上に露出した部分を垂直に持ち上げて、ビルの三階か四階か……いやそんなもんでは済まない。
十階分はありそうな高さだが、メイドは鱗を蹴って駆け上っていく。
「なんだそりゃ! どうやってるんだよ⁉」
高さをビルで例えたのは正解だった。
階段もエレベーターも使わずに、外壁を駆け登っているのをイメージすればいい。
あのメイドは、それをそのまま再現している。人間業じゃねえ……。
ギィン! ギィン! ギィン!
駆け抜けた跡には火花が散った。
登ってるだけじゃない、両手に持ったナイフで攻撃までしている。
「ますます人間じゃねぇ!」
あの女も女だが、ドラゴンもドラゴンだ。
蚊に刺されたとも思ってないに違いない。
大きな目だけギョロっと剥いて、女を待ってる。
「おぁああああッッッ‼」
遂に頭まで登りきったリーシャーは、ドラゴンの鼻の上、マズルみたいな場所に立った。
高い、高すぎる……俺の視線はほとんど真上に向いてる。
ギギギギギギギィッッッ‼
腕が消えたのかと思った。
スカートがなびく動きだけで、斬っているのだと、解った。
もの凄い手数、溶接でもしているのかって思うほどに、火花が散っている。
「……」
ドラゴンはうんともすんとも言わない。
まったく効いていないらしい。
「眼だっ! 眼を狙えっ‼」
思わず叫んだ。リーシャーに声は届いてないと思う。
だが、申し合わせたように、彼女はドラゴンの眼に向かって行った。
バスケットボールよりもはるかに大きい眼だ。
外しようがない。
ギィン!
「くぅ⁉」
リーシャーが顔を歪めた。この位置から見えるわけがないが、きっとそうに違いない。
ドラゴンは瞼を閉じて、眼を守った。
眼は生物にとって万国共通、異世界含めて、弱点だ。そうに決まっている。
その弱点を狙われて、ドラゴンは怒ったらしい。
バクンッ――と、音がして。リーシャーの姿も消えた。
「うっそだろ!」
背中に冷たいものが押し付けられたような感触を感じた。
「~~~ッッッ⁉」
まずい。まずいまずいまずい。
この感情はまずいんだ。
手が震えてる、脚が竦む。
歯がカチカチとなって止まらない。
これ以上、考えるな。
この震えが脳にまで届いたら、動けなくなる。
俺は転げるように車内に戻った。
それからすぐに運転席に滑り込んで、アクセルをベタ踏みした。
グォン、グォンとタイヤが土を削る音はするが、前には進まない。
当然だ、埋まっているんだからな。
「スーハースーハースーハースーハーッッッ‼」
深呼吸が止まらなかった。
腹の底から湧き上がってくる「死ぬかも」って考えが、脳に届かないように息を吐いてた。
「スーハー! スーハー! スーハー!」
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ。
だがエクラは埋まっちまってる、動けない。
だれかに掘り起こしてもらいでもしなきゃ動けない。
「スーハー! スーーー! ハーーー!」
そのとき、俺に電流が奔った。
死の感覚が、脳に達しないように頭を巡らせていた。だからだ、ひとつの考えに至った。
「アイツは咀嚼してない! 飲み込んだんだっ!」
バックミラーに視線を向けた。鏡には青ざめた男の顔が映った。
「ここから動けないなら同じことだっ!」
外に出て喰われるか、ここにずっと隠れたまま餓死でもするか。いずれにしろ、死ぬ。
「エクラっ! オマエを信じていいか!」
ブウウウウンッと、エンジン音が鳴った。
アクセルは踏んでいない。
「一回死んでるんだ! ダメだったとしても夢だったと思えばいい!」
不思議と体の震えは止まっていた。
俺は、俺が思う以上に勇敢なのかもしれない。
「エクラっ! 派手にやれっ!」
ハザードが短く点滅するのが横目に見えた。
「おーい! 蛇野郎っ!」
天窓から半身を晒して、手を振った。
豪華客船を見送るみたいに、できるだけ目立つようにだ。
実際に見送ったことはないが、大体そんなイメージだ。
「おい! いつまでママのスカートに隠れてるつもりなんだよ! このミミズ野郎!」
見送りの言葉ではなく。挑発できてるのかできてないのか、よくわからない台詞が口から出た。
パラリラパラリラパラリラパラリラッ!
ブッブー! ブッブッー!
パラリラパラリラパラリラパラリラッ!
生まれ育った田舎でよく聞いたあの音と、なにか不正解したのかなっていう音と、あとはエンジン音とか、ワイパーのガタガタ音とか、とにかくドラゴンの気を引くように、俺とエクラは騒いだ。
ついでに車内にあった空き缶とかも投げてみたりしたが、全然届きもしなかった。
結局、奴の興味を引いたのは、エクラのクラクションだった。
ブーーーーーーーーーーーーッッッ‼
リズムもなにもない。ただずっとしつこく鳴らし続けるのか正解だったようだ。
最初はジッとコチラを見つめてたドラゴンが、ユラユラと体を揺らし始めた。
揺れるたびに木々がざわめいて、いますぐやめるようにと忠告してくるみたいだった。
やめてやるかよ。はやく喰らいやがれ!
「きたぞぉっ! エクラぁ‼」
デカくてブッとい牙が並んでいた。大きく裂けるように開いた口が迫ってくる。
おそろしくなって、車内に逃げ込んだあとは、目を伏せてテーブルの下に隠れた。
車外は闇に包まれたように暗くなって、天井のライトだけが、中を照らしていた。
ズゴゴゴゴゴゴォッ!
浮遊感と共に、掃除機みたいに物を吸い込む音が聞こえる。
ガギン! ガギン! ガキンッッ!
「おい! 噛むなよ! 話が違うだろ! エクラぁ! 大丈夫なのかっ⁉」
何度も何度も鋭い牙がエクラを襲った。
耳をつんざくような金属音に生きた心地がしなかった。
だが、エクラはそのすべてを耐えた。
「うおおおぉ! 落ちるぅ!」
急に車体が傾いて、俺はフロントガラスに向かって落ちた。
しこたま背中を打ちつけて息が詰まったが、ガラスは割れない。
「丸呑みかよぉ⁉」
それを狙っていたんだが、いざそうなると、口にせざるを得なかった。
地面ごと噛みつきに来たから、大量の土といっしょに、俺とエクラは食道を滑り落ちて行った。
ベチャ、ベチャ、ベチャ、ベチャッ!
黄土色の粘膜が、窓にへばりつく。ピクピクと脈動して、気持ち悪い。
二度と踊り食いなんてしないと誓った。
可哀想だろ。生きたまま喰われる身にもなれ!
ドンッとエクラの正面から地面に着地した。
そのまま横転することなく着地できたのは運が良かったと思う。
俺の体はフロントガラスから、車内最後尾にあるベッドルームまで吹っ飛んでいたが、寝るにはまだ早い。
「エクラぁ! ライトだ! 照らせっ!」
俺の指示にエクラはすぐさま応えた。
ハイビームが、胃カメラでしか見ることのない、あの滑った感じの空間を照らした。
ルミとリーシャーの姿が見えた。
「大丈夫かぁ⁉ うぉっ‼」
車外に飛び出した途端に鼻を覆った。
「うっぷ! ヒデェ匂いだ!」
地面は柔らかくブヨブヨで、だが踏みしめるのと同じ力で押し返してくる。
「胃液かよっ!」
ゲロと同じ匂い。俺の胃からも同じ匂いが登ってくるのを感じた。
靴はジュウジュウと煙を出している。
「ハンゾーさま!」
ふたりに駆け寄った。
リーシャーはうつ伏せに倒れて意識が途切れかけているようだ。
メイド服は焼け爛れたように、所々に穴が空いている。
先に飲み込まれたはずのルミはピンピンしていた。
なんでだ、これが神のご加護ってやつなのか?
「俺が抱えるから、早く中に!」
リーシャーを米俵みたいに肩に担ぐ。
乱暴に扱うことになるが許せ。重みを感じるが動けないほどじゃない。
火事場のクソヂカラってのはコレのことか。
彼女を車内に放り込むと、胃液のかさが増してるのに気づいた。
さっきは、足の裏だけだったのに、いまはスニーカーのソールの部分が丸々浸かっている。
「キミも早く乗れっ!」
入口の淵に手をかけて、反対側の手を伸ばした。
視線の先にはルミがいる。
「ですが……わたしは……」
俯き、肩を落として、彼女は止まっていた。
「早く‼」
俺は声を荒げた。
この小娘は、蛇の腹の中に残ると言い出すのだろう。
「わたしはここに残ります……それがみなにとってよいこと――」
「俺にとってよくはないっ‼」
「ッ⁉」
なんのために助けに来たと思っている。
俺は俺が助かりたいだけだ、それは間違いない。
でも、ふたりを助けたいって気持ちも本当だ。
「なぜ……?」
「ここを出たら教えてやるっ!」
理由なんてあるわけがない。目の前に泣いてる人間がいるから、手を差し伸べただけだ。
「ダメです! 離してください!」
もの凄い力で抵抗するルミを、ムリヤリ車内に押し込んだ。
俺の火事場はまだ続いてる。
「エクラ閉めろ!」
車体の真ん中、エントランスのドアが勝手に閉まり、ルミを閉じ込めた。
「エクラ開けろっ!」
ぐるっと外から回りこんで運転席のほうに向かう。到着すると同時にドアは開いた。完璧なタイミングだった。
「吐き出させてやる! エクラぁ! 外でやったことをもう一度っ!」
ブーーーーーーーーーーーーという音がドラゴンの胃の中で反響した。
「うああああっっ⁉」
バカみたいに五月蝿くてたまらない。
ほとんど自爆行為だが、辞めろとは言わなかった。
グォンクォンと肉壁が迫って来ては離れて……俺らは胃の中でシェイクされた。
閉じた空間が液体で満たされた。間違いなく胃酸だろう。
フロントガラスに付着した分をワイパーで払おうとしたが、油が混じっているのかべっとりへばりつき、ますます広がっていく。
そもそも水位はフロントガラスの付近まで上がっていて、拭き取る意味はなかった。
「ハンゾーさま!」
「黙ってろ! 舌噛むぞっ‼」
このままだと完全に水没してしまう。
いまのところ、胃液が車内に入ってきている様子はない。
雨漏りの一滴もないが……それもいつまで持つかわからない。
吐き出されるのを待つ時間はないかもしれない。
胃までは食道を通って入ってきた。しかし、いま食道は頭上のはるか上、とても届きそうにない。
「前から入って来たなら! 後ろから出ればいい!」
意を決して、ギアをローに入れた。
肉と胃酸を掻き分けていくなら、馬力がいる。
「エクラぁ! 出るまで止まるなぁ! まっすぐ進めぇ!」
俺に呼応するようにエンジンが吠えた。
「滅相もない!」
鼻先にナイフを突きつけられ、姿勢を正した。
エクラのオーナーは俺だ、車内では一番偉いはずだが、その程度の権威は切っ先ひとつでひっくり返ってしまう。
テーブルには無造作に銃も置かれている。銃口はこちらに向けられ、無機質で鈍い光を放っていた。
「リーシャーやめなさい」
ルミは穏やかながら、命じるように言った。
「しかし」
「ハンゾーさまはわたしを助けてくれたのです」
この世界では、メイドよりもシスターのほうが、立場が上なのだろうか。ふたりに主従関係を感じた。
「お言葉ながら。あなたを助けるのは、我々の義務です」
やはりルミは良家のお嬢様なのだろう。
リーシャーという名のメイドが言った「我々」に、俺は含まれていないだろう? 大層なご身分だな。
刃物を突き付けられるのは生まれて初めての経験だが、最悪の気分だ。はやく閉まってほしい。
「リーシャーしまいなさい」
「……承知しました」
女は渋々といった様子で従った。だが、ほとんど表情は崩れていない。
ルミは童顔気味だと思うが、このメイドは、ただただ整っていた。
しかし、美形が過ぎて欲情する隙がない。
パッと見た感じでは年下に見えるが、この長い耳……褐色の肌……ダークなエルフってやつなのでは。
ダークエルフでメイドかよ……盛ってんねぇ。
そんなことを考えていると、ナイフは消えてしまった。一瞬だったと思う。
銃も無くなっている。どこにどうやって隠したんだ?
「ハンゾーさま、申し訳ありません。この者はリーシャー。わたしの身の回りの世話をしてくれています」
ルミは俺に向かって頭を下げた。
「ルミレーゼ様! こんな下賎の者に頭を下げるなど!」
「下賎で悪かったな……」
ずいぶんな言い様じゃあないか。
「そんなに大事な娘なら……ちゃんと見張っていれば良かっただろう?」
リーシャーは黒目をカッと見開いた。
瞳孔の部分ではない。本来、白いはずの部分が黒い。で、真ん中の部分が赤いのだ。
彼女をただの美人として片付けることができない要因のひとつかもな。
「こっちは散々な目に遭わされたんだ」
この台詞も言うべきじゃなかったと思う。
今日は色々とありすぎて余裕がなくなっている。
結果的にルミを責めることになった。
「貴様……」
リーシャーは言葉を詰まらせた。
ルミも目を伏せ、申し訳なさそうにしている。
「すまない……言い過ぎたよ」
この言葉はなんとか捻りだした。頭を下げるまではしなかったが。
「ルミレーゼ様。オレと一瞬にお戻り頂きます。捜索隊および聖堂騎士団の面々もじきに到着します」
「……ですが」
「ですが……は無しでお願いします」
リーシャーはルミの返事を切った。
明らかに主はルミのほうだが、従のリーシャーは従うだけではないようだ。
家庭教師みたいな感じだろうか。
それにこのエルフ。オレって言ってたよな。属性盛りすぎじゃないだろうか。
「貴様に許可を得るまでもないが、ルミレーゼ様は連れていくぞ? いいな?」
本当に聞くまでもないことだと思った。
「好きにすればいいだろう」
俺の返事に、ルミは表情を曇らせる。
気のせいではない、リーシャーと違って彼女は表情が豊かだ。
曇らせた理由はわからん。
「参りましょう。姫様」
リーシャーは踵を返した。
ルミはソファーに座っていて、彼女はずっと立っていた形だった。
振り向けばすぐにドアがある。
彼女はガチャガチャと取っ手を鳴らした。
「むぅ……開かないぞ。どうなってるんだ」
「鍵」
「ソレを早く言え」
俺の短い返事に、リーシャーは偉そうに文句をつけつつツマミを回した。
開けられるんだなと思った。
まぁ、そりゃそうか。異世界だって鍵はあるだろう。
「……」
リーシャーがステップに足をかけ、車外に出ても、ルミは座ったままだった。
「ルミレーゼ様。急ぎませんと」
急かされた瞬間、ルミは俺の目を見た。
なにか訴えている様子だが、わからない。
いくら表情豊かでも、ソレだけじゃあ伝わらない。
「あの……」
彼女は口を開きかけたが、遮るようにリーシャーが口を開いた。
「キサマも死にたくなければ、この場から離れることだ。ここは森の主……グリーンドラゴンの住処だ」
「なんて?」
男の子がみんな大好きな異世界用語が聞こえた気がした。
まだまだ、異世界は出尽くしていない。
「ちっ……いいか? よく聞け? ここはグリーンドラ――」
リーシャーは舌打ちをひとつ。同じことを二度言おうとした――が、突如、地面が揺れた。
「姫様っ!」
リーシャーはすぐに車内へ戻り、勢いよくルミの手を引いた。
「でたぁあああ‼」
俺は叫びながら、反射的に扉を閉めた。
「阿呆っ! キサマ! 開けないかっ!」
「開けるかよ!」
俺とメイドは扉を開ける開けないで揉め始めた。
彼女は俺と同じ背丈。頭半分高く見えるのはきっとヒールのせいだ。
「はやくにげるんだ!」
「だったら座ってろ!」
ものすごい力だ。
体幹がしっかりしていると言えばいいのか。
俺が押してもリーシャーはビクともしない。
ゴゴゴゴゴッッッッ‼
地鳴りとはこういうものなのか。
胸とか腹とか、音が俺を揺さぶってくる。
フロントガラスの向こうに見えるのは……巨大な蛇だった。
「アレがドラゴンだって!」
「そうだ! 森の主だっ!」
「蛇だろ、アレは⁉」
「あんなデカい蛇がいるものか!」
もっともだ。
よく見ると、体中が鱗に覆われている。
岩のようにも見えるが、ビッシリと幾何学的で、明らかに鱗だ。
顔もいわゆるドラゴンのものだ。
口が裂けていて、二本の大きな角がある。手足はない。
どれくらい大きいかって?
小さな島くらいだよ。
なんせ湖の真ん中にあった岩場がなくなっている。
歩いて渡ったあの場所は、小島なんかじゃなかったんだ。
この蛇みてーなドラゴンが、トグロを巻いて寝てたんだ。
体中から血の気が引くのを感じた。
「シートベルトしめとけっ!」
渾身の力でリーシャーを押しのけ、運転席に座った。
「キサマ! なにを考えてる!」
「逃げるんだろ⁉」
キーを回すとエンジンが掛かった。
今回も一発だ。エクラは俺の期待に素直に応えてくれる。
「なにをするつもりなのか聞いている!」
このメイドは素直じゃない。
邪魔ばかりしやがる。だが、いまは構ってなんかいられない。
「逃げるぞ!」
そう叫んだのが先か、アクセルを踏んだのが先か、それは今はどうでもいい。
ギャリギャリとタイヤが空転し、車体の後部が流れたあとにエクラは急発進した。
「ハンゾーさま! ダメです!」
なにがだよ!
ルミにも構っていられない。早く逃げなければ。
「主を刺激してはいけません!」
グォオォオオオオオオオンッ!
それが唸り声なのか、動いた音なのか、判別がつかなかった。
ただ、森の意思が生み出したような、腹の底にズンと響くものだった。
ズゴォオオオオン!
とんでもない衝撃だった。
エクラの倍はありそうな頭部での頭突き。
サイドガラス越しにドラゴンと目があった気がした。
「きゃあ!」
「ルミレーゼ様っ!」
座席の向こうでふたりの声が聞こえる。
なにかしらが散乱する音も同時に聞こえてきた。
「ッ⁉」
だが、それだけだった。
思わずアクセルから足を離して、止まってしまった。ただそれだけだったんだ。
「エクラっ! オマエ!」
窓には傷ひとつない。
なのに、ガラスの向こうでドラゴンが動くたび、大きな木々がなぎ倒されていく。
「うぁ! やめろって!」
またドラゴンと目があった。
今度こそと言いたげな表情で、奴は頭を振りかざした。
ズドォーーーーンッ!
次は上から来た。
釘でも打ち込もうとしているのかってくらいの真上からだ。
「エクラぁ⁉」
また無傷だった。天井に凹みひとつない。
車内も揺れを感じるが、せいぜい足元がグラついて物が散らかる程度だ、なんの支障もない。
ブオオオオオオオオンンンンッ!
「怒ってます」
「俺もそう思う!」
ルミの言葉に同意した。怒っているとしか考えられない大きな声だった。
シャッ! シャッ! シャッ!
エクラの窓にはプライバシー用のカーテンが備え付けられている。
遮光性も高い代物だが、自動で開け締めするような機能はない。
なのに勝手に閉まった。
「エクラぁ⁉」
もう一度、愛車の名を呼ぶと同時に衝撃が来た。
ドン! ドン! ドン! ドン!
何発も何発も。
ドン! ドン! ドン! ドン!
いよいよ釘でも打っているかのようだ。何発も何発も。
「いったいなんなんだ⁉」
リーシャーが驚いた理由はハッキリしないが、エクラに対してだと思う。
なぜなら俺もそうだからだ。
ドラゴンの頭突きで死んだと思った。ふたりもそうだろう。
それほどまでに、グリーンドラゴンは圧倒的で、超越的で、滅茶苦茶だった。
なのにどうだ。車内にいる俺らになんのダメージもない。
「転生技能か⁉」
女神様は《絶対守護》だとか言っていた。
あまりに名前どおりで逆に驚く。
「これなら逃げ切れるぞ!」
衝撃で俺の体は助手席まで放り投げられていた。
慌てて運転席に戻ると、カーテンを開くこともせずにアクセルを踏んだ。
ギュウウウンッ!
駆動音は聞こえる。タイヤが回っている感覚もある。
だが、前に進んでる気はしない。
「なんだってんだ!」
すぐにカーテンに手を伸ばした。
「なんだよこれ! 埋まってんのか⁉」
目線が地面と同じ高さにある。
水槽に作られた蟻の巣穴でも見るように、土の断面が見えた。
釘みたいに打たれたから、釘みたいに地面に埋まってしまっている。道理だ。
「まずい! これじゃ逃げられない!」
「なんだと!」
俺の言葉にリーシャーが反応した。
こんな状況で相手にしたくないが、詰め寄って来る。
「荷馬車なのか知らんが動くんだろう⁉ 早く動かさないか‼」
「できないんだよ! 埋まってるんだ!」
「這い出せ!」
「ああそうしたいね! できるならな!」
俺の肩をつかみガクガクと揺らすリーシャー。
その腕を振りほどこうとする俺。ふたりで言い争う。
「ふたりとも落ち着いてください!」
ルミが割って入ってくる。
キャンピングカーとはいえ車内は狭い。
胸を押し付けてくるものだから、顔に柔らかい感触が伝わってくる。
いまはラッキースケベしてる場合じゃない! 邪魔だっ!
「外に出られないのか⁉」
「出られるもんならな‼」
リーシャーの質問に、ドアへ目をやりながら答える。
フロントガラスと同じ景色で、半分は土に埋まっている。
「ちっ! あっちはどうなんだ!」
彼女はキョロキョロと車内をみまわしたあとに天井を指さした。
「開くには開くが……」
陽を取り込む天窓だ。
もうひとつの機能として、ドラゴンに襲われた際の緊急脱出に使える。
「ルミレーゼ様! オレが囮になる! 隙をみて脱出してください! 来た道を戻ればいずれ他の者に合流できます!」
テーブルに駆け上がって天窓に手を伸ばしたリーシャーを、ルミはレスリングのタックルみたいに押し倒した。
「ダメッ!」
「姫様っ⁉ ぬぁ‼」
そのまま寝技に持ち込むような形で、ルミはリーシャーを抑え込む。
車内で暴れるなよ!
「なにをなさいます!」
「死ぬつもりですか⁉ そんなの許しません‼」
オマエが言うんかい。
口には流石に出さない。そんな状況じゃないのは分かっているからな。
「この中にいれば安全なのです! この場所は言わば城! 転生者ハンゾーさまの領地!」
俺ってそんな話しただろうか。
なにか飛躍している気はするが、おおむね事実と言える。
転生車エクラの転生技能は《絶対守護》――絶対無敵の要塞なのだ。
そうだよな転生の女神様! そうじゃないと困るんだよ⁉
「くっ……しかし!」
「リーシャー!」
ルミの一喝は揺るぎないものに聞こえた。
普段の気品に溢れる口調とは違って、圧倒し物を言わせぬ迫力がある。
こうと決めたら一途で頑固そうだ……そんな女の子のような気がした。
「わかりました。たしかにこの中は安全なのかもしれません」
リーシャーの葛藤が見て取れるようだった。
だが、どれほどの攻撃を受けようともビクともしないエクラ。
この事実を覆す考えは浮かばなかったのだろう。
「ルミレーゼ様の仰られる通り篭城しましょう。なに……じきに他の者が合流します。ドラゴンはその者達に任せて、その隙に……」
リーシャーが言い終わるや否や、ルミは「そうでした!」と叫んだ。
その勢いでリーシャーは地面に頭を打ち「ぐぁっ」と声をあげた。
「他の者が犠牲になってしまう……また、わたしのせいで……」
ルミは何やら良くない表情で……曇っているというか……なんというか……。
とりあえず、ワナワナと肩を震わせている。
「ルミ……?」
声をかけた瞬間に、ルミは俺に向かって振り向いた。
「ハンゾーさま! お世話になりました! わたしが囮になります! ふたりはその間に逃げてください!」
「なぁに言ってんだよ⁉」
その話、何回目なんだろうか。
そもそも、いまリーシャーが主役で同じシーン演じてたよな。
「ルミレーゼ様っ!」
そりゃ、リーシャーも驚くだろう。
しこたま怒っていながら、同じことを自分でやると言い出したのだから。
「離しなさい!」
「離しません! おいっ! キサマも手伝え!」
天窓が開いて、ルミの上半身が外にでている。
リーシャーが腰元に抱きつき、必死に引っ張り込もうとしていた。
「くそっ! なんだってんだよ!」
リーシャーに加勢するため、運転席から降りた。
とりあえずどこかを掴もうとルミに近寄ったが、脚をバタつかせるせいで、ロングスカートがふわりと舞った。
俺はスカートの中に頭を突っ込む形になった。
小柄な割に張りがあって、しっとりと汗ばむ尻に顔が……。
「だから! それどころじゃねーんだよ! ド阿呆っ‼」
パシィンッ!
「ひゃんっ⁉」
あまりにムカつき、尻に一発入れた。ビンタのことだから勘違いしないようにしてくれ。
そしてすぐにスカートを押さえ込み、リーシャーと同じく腰あたりに手を回して、引き込もうと力を込めた。
「なんだこの娘っ! 力強すぎないかっ⁉」
どこから湧いてくるんだこの力。リーシャーも大概だったが、それでも人知の及ぶ感じはした。
だが、こっちは重機と腕相撲でもしてるのかってくらい、ビクともしない。
「わたしが贄になれば、一時を稼ぐことができます! その間に、あなた方と、他の者全員で森から離れてください!」
「おいっ! このお嬢ちゃん生贄とか言い出しやがったぞ!」
「分かっている! 手を離したらオマエを代わりに差し出してやる! 離すな!」
そんなの冗談じゃない。
このエルフはやりかねない。全体重をルミに預けた……が、そんなの関係なかった。
スポンッ
と、音でも聞こえてきそうなくらい、ルミは綺麗に抜けた。
俺とリーシャーは支えを失って尻もちをついた。
「姫様っ‼」
リーシャーの声に聞く耳を持たず、天窓から外に踊りでたルミは、両腕を天に掲げた。
「主さま! こちらです! 怒りをお納めください! わたしが贄となりましょう!」
ドラゴンの気を引きながら、エクラと俺らから距離を取るように、ルミは離れていった。
「くそがぁ!」
リーシャーも、もの凄いスピードで、一足飛びに天窓から抜けて行った。
両どこから取り出したのかわからない二振りのナイフを手にしている。
「おいおいっ、なんなんだよ! ふたりともっ‼」
穴ぐらから引っ張り出されるモグラのように、俺も半身を乗り出した。
目の前にヒラヒラのスカートを履いた背中がある。メイド服だ。
つまりリーシャーの背中だが、固まったように動かない。
当たり前のように、黒タイツ越しの縞パンが見え隠れしているが、戦闘中のラッキースケベがこんなに腹立たしいとは思わなかった。
異世界にも縞パンあるんかい。そういうの履くタイプなんかい。
「中に戻れよ! ふたりとも――」
リーシャーの背中を避けるように、ぐいっと上半身を横に傾ける。
視線が通って、三十メートルほど先にルミの姿が見えて……いた。
ゴキュンッ!
喉を鳴らす音が低く響いた。
ルミが立っていた場所は、スプーンですくったみたいに大穴が空いていた。
彼女は消えた。
「喰われ……た……⁉」
一秒か二秒、時が止まった気がした。
「うぁああああっっ!」
俺を正気に戻したのは、リーシャーの絶叫だった。
「あっ、おい! いくなっ! リーシャー!」
俺の声など届くはずもない。
メイドは一陣の風となって駆け出した。
「その娘はオレのだっ! 返せっ!」
湖に半身を沈めたままのドラゴン。
地上に露出した部分を垂直に持ち上げて、ビルの三階か四階か……いやそんなもんでは済まない。
十階分はありそうな高さだが、メイドは鱗を蹴って駆け上っていく。
「なんだそりゃ! どうやってるんだよ⁉」
高さをビルで例えたのは正解だった。
階段もエレベーターも使わずに、外壁を駆け登っているのをイメージすればいい。
あのメイドは、それをそのまま再現している。人間業じゃねえ……。
ギィン! ギィン! ギィン!
駆け抜けた跡には火花が散った。
登ってるだけじゃない、両手に持ったナイフで攻撃までしている。
「ますます人間じゃねぇ!」
あの女も女だが、ドラゴンもドラゴンだ。
蚊に刺されたとも思ってないに違いない。
大きな目だけギョロっと剥いて、女を待ってる。
「おぁああああッッッ‼」
遂に頭まで登りきったリーシャーは、ドラゴンの鼻の上、マズルみたいな場所に立った。
高い、高すぎる……俺の視線はほとんど真上に向いてる。
ギギギギギギギィッッッ‼
腕が消えたのかと思った。
スカートがなびく動きだけで、斬っているのだと、解った。
もの凄い手数、溶接でもしているのかって思うほどに、火花が散っている。
「……」
ドラゴンはうんともすんとも言わない。
まったく効いていないらしい。
「眼だっ! 眼を狙えっ‼」
思わず叫んだ。リーシャーに声は届いてないと思う。
だが、申し合わせたように、彼女はドラゴンの眼に向かって行った。
バスケットボールよりもはるかに大きい眼だ。
外しようがない。
ギィン!
「くぅ⁉」
リーシャーが顔を歪めた。この位置から見えるわけがないが、きっとそうに違いない。
ドラゴンは瞼を閉じて、眼を守った。
眼は生物にとって万国共通、異世界含めて、弱点だ。そうに決まっている。
その弱点を狙われて、ドラゴンは怒ったらしい。
バクンッ――と、音がして。リーシャーの姿も消えた。
「うっそだろ!」
背中に冷たいものが押し付けられたような感触を感じた。
「~~~ッッッ⁉」
まずい。まずいまずいまずい。
この感情はまずいんだ。
手が震えてる、脚が竦む。
歯がカチカチとなって止まらない。
これ以上、考えるな。
この震えが脳にまで届いたら、動けなくなる。
俺は転げるように車内に戻った。
それからすぐに運転席に滑り込んで、アクセルをベタ踏みした。
グォン、グォンとタイヤが土を削る音はするが、前には進まない。
当然だ、埋まっているんだからな。
「スーハースーハースーハースーハーッッッ‼」
深呼吸が止まらなかった。
腹の底から湧き上がってくる「死ぬかも」って考えが、脳に届かないように息を吐いてた。
「スーハー! スーハー! スーハー!」
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ。
だがエクラは埋まっちまってる、動けない。
だれかに掘り起こしてもらいでもしなきゃ動けない。
「スーハー! スーーー! ハーーー!」
そのとき、俺に電流が奔った。
死の感覚が、脳に達しないように頭を巡らせていた。だからだ、ひとつの考えに至った。
「アイツは咀嚼してない! 飲み込んだんだっ!」
バックミラーに視線を向けた。鏡には青ざめた男の顔が映った。
「ここから動けないなら同じことだっ!」
外に出て喰われるか、ここにずっと隠れたまま餓死でもするか。いずれにしろ、死ぬ。
「エクラっ! オマエを信じていいか!」
ブウウウウンッと、エンジン音が鳴った。
アクセルは踏んでいない。
「一回死んでるんだ! ダメだったとしても夢だったと思えばいい!」
不思議と体の震えは止まっていた。
俺は、俺が思う以上に勇敢なのかもしれない。
「エクラっ! 派手にやれっ!」
ハザードが短く点滅するのが横目に見えた。
「おーい! 蛇野郎っ!」
天窓から半身を晒して、手を振った。
豪華客船を見送るみたいに、できるだけ目立つようにだ。
実際に見送ったことはないが、大体そんなイメージだ。
「おい! いつまでママのスカートに隠れてるつもりなんだよ! このミミズ野郎!」
見送りの言葉ではなく。挑発できてるのかできてないのか、よくわからない台詞が口から出た。
パラリラパラリラパラリラパラリラッ!
ブッブー! ブッブッー!
パラリラパラリラパラリラパラリラッ!
生まれ育った田舎でよく聞いたあの音と、なにか不正解したのかなっていう音と、あとはエンジン音とか、ワイパーのガタガタ音とか、とにかくドラゴンの気を引くように、俺とエクラは騒いだ。
ついでに車内にあった空き缶とかも投げてみたりしたが、全然届きもしなかった。
結局、奴の興味を引いたのは、エクラのクラクションだった。
ブーーーーーーーーーーーーッッッ‼
リズムもなにもない。ただずっとしつこく鳴らし続けるのか正解だったようだ。
最初はジッとコチラを見つめてたドラゴンが、ユラユラと体を揺らし始めた。
揺れるたびに木々がざわめいて、いますぐやめるようにと忠告してくるみたいだった。
やめてやるかよ。はやく喰らいやがれ!
「きたぞぉっ! エクラぁ‼」
デカくてブッとい牙が並んでいた。大きく裂けるように開いた口が迫ってくる。
おそろしくなって、車内に逃げ込んだあとは、目を伏せてテーブルの下に隠れた。
車外は闇に包まれたように暗くなって、天井のライトだけが、中を照らしていた。
ズゴゴゴゴゴゴォッ!
浮遊感と共に、掃除機みたいに物を吸い込む音が聞こえる。
ガギン! ガギン! ガキンッッ!
「おい! 噛むなよ! 話が違うだろ! エクラぁ! 大丈夫なのかっ⁉」
何度も何度も鋭い牙がエクラを襲った。
耳をつんざくような金属音に生きた心地がしなかった。
だが、エクラはそのすべてを耐えた。
「うおおおぉ! 落ちるぅ!」
急に車体が傾いて、俺はフロントガラスに向かって落ちた。
しこたま背中を打ちつけて息が詰まったが、ガラスは割れない。
「丸呑みかよぉ⁉」
それを狙っていたんだが、いざそうなると、口にせざるを得なかった。
地面ごと噛みつきに来たから、大量の土といっしょに、俺とエクラは食道を滑り落ちて行った。
ベチャ、ベチャ、ベチャ、ベチャッ!
黄土色の粘膜が、窓にへばりつく。ピクピクと脈動して、気持ち悪い。
二度と踊り食いなんてしないと誓った。
可哀想だろ。生きたまま喰われる身にもなれ!
ドンッとエクラの正面から地面に着地した。
そのまま横転することなく着地できたのは運が良かったと思う。
俺の体はフロントガラスから、車内最後尾にあるベッドルームまで吹っ飛んでいたが、寝るにはまだ早い。
「エクラぁ! ライトだ! 照らせっ!」
俺の指示にエクラはすぐさま応えた。
ハイビームが、胃カメラでしか見ることのない、あの滑った感じの空間を照らした。
ルミとリーシャーの姿が見えた。
「大丈夫かぁ⁉ うぉっ‼」
車外に飛び出した途端に鼻を覆った。
「うっぷ! ヒデェ匂いだ!」
地面は柔らかくブヨブヨで、だが踏みしめるのと同じ力で押し返してくる。
「胃液かよっ!」
ゲロと同じ匂い。俺の胃からも同じ匂いが登ってくるのを感じた。
靴はジュウジュウと煙を出している。
「ハンゾーさま!」
ふたりに駆け寄った。
リーシャーはうつ伏せに倒れて意識が途切れかけているようだ。
メイド服は焼け爛れたように、所々に穴が空いている。
先に飲み込まれたはずのルミはピンピンしていた。
なんでだ、これが神のご加護ってやつなのか?
「俺が抱えるから、早く中に!」
リーシャーを米俵みたいに肩に担ぐ。
乱暴に扱うことになるが許せ。重みを感じるが動けないほどじゃない。
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「ッ⁉」
なんのために助けに来たと思っている。
俺は俺が助かりたいだけだ、それは間違いない。
でも、ふたりを助けたいって気持ちも本当だ。
「なぜ……?」
「ここを出たら教えてやるっ!」
理由なんてあるわけがない。目の前に泣いてる人間がいるから、手を差し伸べただけだ。
「ダメです! 離してください!」
もの凄い力で抵抗するルミを、ムリヤリ車内に押し込んだ。
俺の火事場はまだ続いてる。
「エクラ閉めろ!」
車体の真ん中、エントランスのドアが勝手に閉まり、ルミを閉じ込めた。
「エクラ開けろっ!」
ぐるっと外から回りこんで運転席のほうに向かう。到着すると同時にドアは開いた。完璧なタイミングだった。
「吐き出させてやる! エクラぁ! 外でやったことをもう一度っ!」
ブーーーーーーーーーーーーという音がドラゴンの胃の中で反響した。
「うああああっっ⁉」
バカみたいに五月蝿くてたまらない。
ほとんど自爆行為だが、辞めろとは言わなかった。
グォンクォンと肉壁が迫って来ては離れて……俺らは胃の中でシェイクされた。
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フロントガラスに付着した分をワイパーで払おうとしたが、油が混じっているのかべっとりへばりつき、ますます広がっていく。
そもそも水位はフロントガラスの付近まで上がっていて、拭き取る意味はなかった。
「ハンゾーさま!」
「黙ってろ! 舌噛むぞっ‼」
このままだと完全に水没してしまう。
いまのところ、胃液が車内に入ってきている様子はない。
雨漏りの一滴もないが……それもいつまで持つかわからない。
吐き出されるのを待つ時間はないかもしれない。
胃までは食道を通って入ってきた。しかし、いま食道は頭上のはるか上、とても届きそうにない。
「前から入って来たなら! 後ろから出ればいい!」
意を決して、ギアをローに入れた。
肉と胃酸を掻き分けていくなら、馬力がいる。
「エクラぁ! 出るまで止まるなぁ! まっすぐ進めぇ!」
俺に呼応するようにエンジンが吠えた。
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助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
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