私の日常

林原なぎさ

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*届けに行きまして(後編)

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笑顔の宮園さんは。


「秀一ならもうすぐで来るよ。」


と、教えてくれるが。


え?向かってるんですか?


言葉を発しなくても彼には十分伝わる様で、うん、と軽い調子で返された。

わざわざ自分で取りに来る程重要な書類が入っていたのか。

受付のお姉さんに渡さなくてよかった。


そんなに重要な書類が入っているのならば、宮園さんに渡して一刻も早く届けて頂いた方が良いだろう。


「わざわざお手数おかけしますが、秀一さんに届けて頂いて、よろしいですか?」


「なんで?秀一は歩ちゃんに会いたいだけだよ。」


その書類なかみはどうしても今日必要な物じゃないんだよ。

重要な書類でもないしね。


誰にも聞かれないよう、私の耳元で宮園さんが囁く。


…なぜ?届けに来た私の労力は??



まぁ、すぐにわかるよ。

また微笑まれた。


「身重な歩ちゃんがずっと立ちっぱは良くないよね。向こうで座って待ってようか。」


考えてもわからないので、秀一さんに書類を届けるという目的まで、おとなしく待つ事にしよう。

周囲からの視線をびしびし感じるが、気にしない。


「あの、宮園さん!そちらの方は…?」


受付のお姉さんのその言葉に、全員耳を傾けている。


宮園さんはとてもいい笑顔で


「歩ちゃんはね。秀一の…西園寺専務の。」


あぁ…また余計なことを言うつもりか。


思った矢先。


「歩。」


秀一さんが来て、宮園さんの言葉は遮られた。

しかし秀一さんも目立つので、周囲からの視線はより一層こちらに向けられる。

そんな中でも。


「西園寺専務、待って下さい。どちらへ…。あら?…貴女は?」


秀一さんの後を追う様にこちらへ来た可愛らしい女性は…おそらく秘書の方で。

私に向けられる鋭い視線と、表情で。

秀一さんへ好意を寄せているだろう女性ひとだとわかる。


なんとなく、私がここへ呼ばれた意味がわかった。



「妻だ。」


その一言で。


あの人が、西園寺専務の。


と、ざわつき始めた。



「それより君は何しにここへ?まさか俺をなんて、言うつもりか?」


「…いけませんか?…その方が、西園寺専務の奥さま。」



秀一さんの心底迷惑だとわかる、うんざりした声になんとも思わないのか、彼女の視線は私を捉えいる。

そんな彼女の態度を見てか、秀一さんは私の肩を抱き寄せて。


「宮園。妻は体調が悪いようだからこのまま俺も帰る。」


そんなは無いが、話を合わせた方が良いと判断した私はおとなしくする。


「そんなっ!まだお仕事が!!」


慌てて止めに入る彼女には目もくれず。


「妻以上に。」


その言葉を聞いた彼女は目を見開き、驚いている。


「社長には俺から連絡する。」


「はい。」


宮園さんは、軽い調子で返事して私と秀一さんを見送ってくれた。


彼女を遠ざける為に私が呼ばれたのだと納得した。

秀一さんといると、よくあることなので特に気にせず。








「ま、そういうコトだから秀一のことは諦めな。菊川きくかわのお嬢さん?」





後に宮園さんから聞かされたことだが。

彼女の名前は菊川さんといい、父親が上役らしい。

そして彼女は、目み麗しい秀一さんの妻にどうしてもなりたいと望み、父親もまた自分の地位を確実なものにしたいが為、父娘おやこの間で、秀一さんをどうにか手篭めにしてやろう。

そんな中、わたしが妊娠していることを知りちょっかいをかけるなら今だ、と。

あの日の夜は、菊川父娘との食事会を無理矢理セッティングされたようだ。

父親である菊川氏の今までの働きを考えると無下にもできず、困った秀一さんは私を呼び出し…あの状況になったということらしい。


そして何故か秀一さんに付き纏うのは辞めたらしい。


宮園さんがで、なんでだろうねぇ?と。


聞き返すのよそう、と思った数日後のお話。



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