私の日常

林原なぎさ

文字の大きさ
39 / 50
過去のお話 -夫婦編-

波乱(最終編)

しおりを挟む



「ちょっ、何するの!?」


顔を歪め、大声で私を叱りつけるように発する彼女を綺麗だとは思えない。

歪んだその表情と一緒で彼女の心も歪んでいる。


「お金目当てのデキ婚狙いが見え透いてるのよ!小切手でもまだ足りないと言うの?いやね、貧乏人は!」


周囲からの視線を気にしていないのか彼女はヒートアップする一方で、罵倒は止まらない。


「お金だけじゃ飽き足らず、私から秀一を奪った泥棒猫が!」


そして水瀬さんは水の入っているコップを持ち。


「恥を知りなさい!」


掛けられる。

え。


掛けられる筈の水は私に降りかからず。


「どうして?」


水瀬さんの驚いた声が店内に響き渡った。

私も驚いた。


どうして、ここへ?

だって、秀一さんが私の目の前に立っているのだ。


私に掛けられる筈だった水は秀一さんに掛けられ上半身は濡れている。


「歩、大丈夫か?」


「…あ、はい。でも秀一さん、服が…。」


「大丈夫だ。それより…。」


秀一さんは視線を私から水瀬さんへ移す。

今は背中しか見えないが、秀一さんは物凄く怒っているのだ。

イライラが抑えられないといった雰囲気がびしびし伝わってくる。


「秀一…どうして?どうして庇うの?おかしいわ!」


「何がおかしいんだ。」


「だって、貴方は私と結婚してくれる筈だったんでしょう?なのにその女を庇うなんておかしいわ!」


その言葉を聞いた瞬間、秀一さんの体はピクリと反応した。



「誰が…結婚するって?」


秀一さんの声は唸るように低い。

こんな怒気を見せたのは2度目で…私は怖いと思うのに、水瀬さんは怖いと思わないのか剣幕な姿勢を崩さない。


「私と秀一よ!なのにっ…子どもができた責任だけで、こんな泥棒猫と!」


秀一さんはテーブルを強く叩き、店内中にその音が響いた。


「勘違いするなよ。お前と結婚したいと思ったことなんか無い。」


「しゅ、いち…。」


「自分の意思で彼女と結婚しようと思ったんだ。歩以外のやつと結婚するつもりは無い。」


秀一さんの低くい声で、こう告げられた水瀬さんは声も出ない程愕然としている。

今もなお、鋭く尖った声で秀一さんは。


「お前を選ぶつもりも、歩と別れるつもりも無い。関わるな。」


水瀬さんを真っ直ぐに見据え、そのまま私の手を引いて歩き出す。


「はいはい。じゃあ後は俺がやっときますよ。」


へらりと笑う宮園さんがいて、秀一さんに声を掛けたかと思えば、私に向かって。

気を付けて帰るんだよ!と言い私の視線に映る筈の水瀬さんの間に立つ。


彼女のことが気になるが。


「あんな女放っておけ。」


秀一さんに気にするなと釘を刺された。




部屋へ入るなり秀一さんは私を抱き締めて、深いキスをする。


濡れていた秀一さんの服は、乾いている、と思った。


満足してくれたのか唇が離れて、再び私を秀一さんの腕の中に閉じ込めるようにして抱き締められる。


「俺は…歩とだから結婚したんだ。」


秀一さんは、彼女の言った事を気にしてか珍しく言葉で伝えようとしてくる。


なんだか可笑しくて思わず笑ってしまうと、秀一さんはちょっと驚いた顔した後、綺麗なお顔で微笑んでくれた。




沢山、嫌な気持ちにはなったが終わり良ければ全て良しだ。





後日、湊音に報告すると大笑いされた。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...