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過去のお話 -夫婦編-
波乱(最終編)
しおりを挟む「ちょっ、何するの!?」
顔を歪め、大声で私を叱りつけるように発する彼女を綺麗だとは思えない。
歪んだその表情と一緒で彼女の心も歪んでいる。
「お金目当てのデキ婚狙いが見え透いてるのよ!小切手でもまだ足りないと言うの?いやね、貧乏人は!」
周囲からの視線を気にしていないのか彼女はヒートアップする一方で、罵倒は止まらない。
「お金だけじゃ飽き足らず、私から秀一を奪った泥棒猫が!」
そして水瀬さんは水の入っているコップを持ち。
「恥を知りなさい!」
掛けられる。
え。
掛けられる筈の水は私に降りかからず。
「どうして?」
水瀬さんの驚いた声が店内に響き渡った。
私も驚いた。
どうして、ここへ?
だって、秀一さんが私の目の前に立っているのだ。
私に掛けられる筈だった水は秀一さんに掛けられ上半身は濡れている。
「歩、大丈夫か?」
「…あ、はい。でも秀一さん、服が…。」
「大丈夫だ。それより…。」
秀一さんは視線を私から水瀬さんへ移す。
今は背中しか見えないが、秀一さんは物凄く怒っているのだ。
イライラが抑えられないといった雰囲気がびしびし伝わってくる。
「秀一…どうして?どうして庇うの?おかしいわ!」
「何がおかしいんだ。」
「だって、貴方は私と結婚してくれる筈だったんでしょう?なのにその女を庇うなんておかしいわ!」
その言葉を聞いた瞬間、秀一さんの体はピクリと反応した。
「誰が…結婚するって?」
秀一さんの声は唸るように低い。
こんな怒気を見せたのは2度目で…私は怖いと思うのに、水瀬さんは怖いと思わないのか剣幕な姿勢を崩さない。
「私と秀一よ!なのにっ…子どもができた責任だけで、こんな泥棒猫と!」
秀一さんはテーブルを強く叩き、店内中にその音が響いた。
「勘違いするなよ。お前と結婚したいと思ったことなんか無い。」
「しゅ、いち…。」
「自分の意思で彼女と結婚しようと思ったんだ。歩以外の女と結婚するつもりは無い。」
秀一さんの低くい声で、こう告げられた水瀬さんは声も出ない程愕然としている。
今もなお、鋭く尖った声で秀一さんは。
「お前を選ぶつもりも、歩と別れるつもりも無い。俺たちに関わるな。」
水瀬さんを真っ直ぐに見据え、そのまま私の手を引いて歩き出す。
「はいはい。じゃあ後は俺がやっときますよ。」
へらりと笑う宮園さんがいて、秀一さんに声を掛けたかと思えば、私に向かって。
気を付けて帰るんだよ!と言い私の視線に映る筈の水瀬さんの間に立つ。
彼女のことが気になるが。
「あんな女放っておけ。」
秀一さんに気にするなと釘を刺された。
部屋へ入るなり秀一さんは私を抱き締めて、深いキスをする。
濡れていた秀一さんの服は、乾いている、と思った。
満足してくれたのか唇が離れて、再び私を秀一さんの腕の中に閉じ込めるようにして抱き締められる。
「俺は…歩とだから結婚したんだ。」
秀一さんは、彼女の言った事を気にしてか珍しく言葉で伝えようとしてくる。
なんだか可笑しくて思わず笑ってしまうと、秀一さんはちょっと驚いた顔した後、綺麗なお顔で微笑んでくれた。
沢山、嫌な気持ちにはなったが終わり良ければ全て良しだ。
後日、湊音に報告すると大笑いされた。
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