センパイがロリ化しました

氷室ゆうり

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前編

センパイがロリ化しました

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僕の所属するテニスサークルは、俗にいう、ヤリサーである。
「アンッ、きてっ、きてえっ!アアンッ!」
高校時代からのセンパイを追いかけて同じ大学に入った僕は、そこで現実を知った。
桜田先輩とエッチがしたいとは思った。でも、こういうことがしたかったわけじゃない。
だから、僕は大学に来なくなった。



さて、時系列を今に戻そう。場所は僕のアパートだ。

「桜田さん」
「…」
返事がない。ふむ、この外見は間違いなく俺の大学のセンパイ、桜田手毬(さくらだ てまり)さんだと思ったのだが。違うというなら、答えは一つだ。
「ようし、不法侵入者だな、警察に通報…」
「待って!桜田!桜田です!認めるから!…お願い、通報はやめて…」
消え入りそうな声ではあるが本人確認が取れたので通報はキャンセルする。やはり俺の知る桜田先輩だった。そのあふれんばかりの巨乳、男ならむしゃぶりつきたくなるらしい体つき、大人びた美人系の見た目。うん…心底どうでもいい。
僕は、あらかじめ撮影していたビデオを再生する。ビデオに写っているのは、小学校くらいの俗にいうロリっ子である。うむ、こんな子が現実にいればと思うようなまごうことなきロリっ子だ。
『勉(つとむ)お兄ちゃん絵本読んで?ああ、お兄ちゃんの膝の上、とろーんってなるぅ』
『お兄ちゃん、おなかさすってー』
うむ、当然何一つとして合法なビデオ、実にいい…はあ、さあ、現実へと戻るお時間だ。
ちらり、
「ひっ、見、見ないでっ///」
「いいや、見てもらいます。正気に戻って自分がやった恥ずかしいことの数々を二人でじっくり完勝しましょう。二人っきりで。」
「い、いやああああ!」
そう、皆さんお気づきだとは思うがこのビデオカメラのぺったんこのロリっ子、現在目の前でみっともなくおびえている桜田さんです。家の鍵を開けたらそこには幼女がいた。手厚くもてなした僕の前で変身が解除され、あえなく御用、というわけだ。
…訳が分からない?まあ、それもそうか。順を追ってご説明しよう。
…え、そんなのいいから桜田さんをもう少し追い詰めてほしい?うーん、その気持ちも分かるなあ。
「よし、なら間を取って、桜田さんに辱めを与えつつ、いったい何があったのかを最初からご説明しよう。」
アパートの一室に、ひときわ大きい悲鳴が上がったのだった。



3年前、何事もなかった僕たちの町に、一人の男が空から落っこちてきた。
自殺か事故か、台風にでも吹き飛ばされたか。そのあたりは分からない蹴れど、誰もが間違いなく思ったのは、ああ、この人死んだな、だろう。
だが男はまるで漫画のようにさっと地面に着地した。衝撃音の一つも残さなかった男は自らをピストル神と名乗った。最初は何らかの手品かと思ったが、男の巻き起こす数々の神秘に、誰もが目を奪われたのは事実だ。
そして男は、突然帰ると言い出して、この街に何らかの魔法をかけた。
曰く、自分の力に町が耐えられるように、とのことだ。
そうして何事もなく出発した男の後には、魔力に包まれた街だけが残った。
この街を訪れた者には、それぞれ固有かつ何らかの魔法の力が手に入る。ただし、あくまでも魔法は街の中だけだ。町の外へ出ると、自分が魔法を使えることさえ忘れてしまい、いかなる情報伝達手段も情報が町の外へ出ていくことはない。
故にこの町は、誰にも知られることがなく、だけど確かに、魔法使いの町として成り立っていた。はい!世界観説明おわり!
面倒なのが苦手な人は、魔法も一応ある世界だよと思ってください!

さて!今の話を聞いてもなお、桜田さんがなぜあんなことをしたのか疑問に思う方も多いだろう。それではこれより、今日の僕と桜田さんの間に、いったい何があったのか。その詳細を、丁寧に説明していきたいと思う。
桜田さんが幼女に化けていたのは、彼女の魔法の『年齢操作』が原因だ。うんうん、そんなことが聞きたいんじゃないよね。
僕と桜田さんの間にいったい何があったのか、今日はその痛々しい事件を、目の前で涙目になっている桜田さんと一緒に、しっかりと振り返っていきたいと思います。
ああそうそう、僕の名前は白石勉(しらいしつとむ)大学2年生の19歳だ。普通でも平凡でもない、魔法使いの大学生です。





僕が家に帰ると、そこには幼女がいた。おかしいな、我が家のセキュリティは完璧だ。幼女ホイホイを買った覚えもないし。うーん、お菓子でも買いすぎたから寄り付いちゃったのかな?
そんなことを考えながらも、もしも迷子ならば親のところへ送り届けないといけない。幼女に手を出すなどもってのほか、紳士的な対応を心掛けねば。
そういうわけでとりあえず警察に連絡をしようと思ったのだが、
「つとむおにいちゃん」
その子に名前を読んでもらったことで、僕の思考は一時的に停止した。
―僕の名前を知っている?僕がこんな可愛らしいこの名前を忘れるなど考えづらいが、どこかで知り合った?それで遊びに来たのか?とにかくそういうことなら通報は一時的に中止だ。僕には彼女を厳重にもてなす必要がある。
「勉お兄ちゃん、わたし、シュークリームが食べたい」
今の僕がすべきこと、それは急いでシュークリームを作ることだった。





「うんうん、『わたし、シュークリームが食べたい』かわいいですね、桜田ちゃんは。」
「お願い、勉君、もう許して//その監視用ビデオを消して//」
可愛らしくシュークリームをほおばるビデオの幼女と、顔を真っ赤にして懇願する大人の女性。この二人が同一人物であるということを知った今ではなんだろう、胸に来るものがあるよね。一時停止して見比べても、やっぱり全然違う、見た目も違うし、何よりセンパイがあんなキャラを演じていたことがすごいよね。
当然、ビデオを消すわけにはいかない。逃げ出そうとする桜田先輩の手をつかみ、照れたところを座らせる。
「さあ、いきますよ。これはセンパイへの罰でもあるんですから。赤面シーンはまだまだありますからね。最後までしっかり見てもらいます。」
「やめ、やめてぇ//」
当然、そんな選択肢は用意していない。最後の抵抗を軽く無視して僕はビデオの再生ボタンを押した。








「シュークリームすきー」
「よかったね」
「でも、お兄ちゃんもすきー」
そういうと、僕の体によじ登ってくる幼女、そういえば、どこで知り合ったか以前に僕はこの子の名前すら知らない。覚えていないと思った。だからその時の僕は悪いと思いつつも、彼女に名前を聞いたんだ。
「ねえ、自分の名前、言えるかな?」
「んーとねー、まい!まいだよ!」
今思えば、あらかじめ名前を聞かれるところまでは想定内だったのかな?桜田さんは僕の目を全く見ようとしない。思い切って顔を近づけてみても、泣きそうになりながらふるふると顔を左右に振るばっかりだ。
「せんぱい、このまいちゃんのセリフ、今ここで再現してみてくださいよ。」
「おねがい//私が悪かったから…お願い、もう許して///」
恥ずかしがるセンパイはやはり、ビデオの中とはかけ離れていた。

その後もセンパイの恥ずかしい行動、いな、まいちゃんの可愛らしいしぐさは続く。一緒にゲームをしたり、指相撲をしたり、お話をしたり。
…別に変身しなくてもできることじゃないか。
「だって…」
桜田さんはそこで黙り込む。だっての先が非常に気になるが、もうすぐラストシーンだ。
「詳しいことは後です、さあ、ここからが貴重なシーン、魔法が解けるまで一揆ですよ。ほら、目をつむらないで、自分がどれだけ恥ずかしいことをしたか最後まで見届けてもらいますからね。」
「ん!んー!」
もはや声にすらならず顔を布団にうずめようとする桜田さん、しかし、そんな逃げは僕が許さない。」
「んむっ!んー!んー!」
強引に目をこちらに向けさせる。おびえた表情の桜田先輩と二人、僕たちはビデオのラストシーンへ向かっていた。



日が傾きだした、子供は家に帰った方がいい時間だ。
それにしても、しばらく遊んでもこのまいちゃん、面識が全くない。これ以上ほおっておくわけにもいかないし、自分一人で帰れるのかな?けなげに僕はまいちゃんに尋ねる。
「まいちゃん、自分の家、分かる?一人で帰れる?」
「うん、大丈夫!そろそろ帰るね!」
そういって帰ろうとするまいちゃん。本当にしっかりした子だとは思った。この年頃の子は、自分の魔法で好き勝手遊ぶことも多くて手がかかることも多いがこの子は全くそんな素振りすら見せなかったのだ。
ふと、僕は気になった。ひょっとして気づかないところで何かしらいたずらされたかな?と。
僕の魔法は『一葉知秋(いちようちしゅう)』まあ、本質を暴くと考えてくれればいい。
僕は、本当に何気なく、魔法を展開した。半径4メートルしか効果のない魔法だ。別に攻撃的な魔法でもないし、まいちゃんがいたずらするとは思えない―




で、現在に至るというわけだ。
「ほんと、本当になんというかびっくりしましたよ。急に体つきが変わり始めて、僕としてもこんな事態は初めてだからゆっくり観察する暇もなかったし。」
「ううっ、ご、ごめんなさい。」
正座で謝る桜田さん。まあ、僕としても別にそこまで怒っているわけではない。気になることこそいくつかあるが、とりあえず。
僕はセンパイに背を向け、台所へ向かう。
「え、あの、勉君、あの、ごめんなさい、でも、でも・・・」
はあ、まったく、そんな顔をされたらこっちが悪者に思えてくる。
そうでなくても正直こんなシリアスなノリは得意じゃないんだ。
「ご飯」
「へ?」
「ごはん、食べていきますか?」
「え?ええと、はい。」
一言でセンパイを黙らせ、僕は台所へ向かった。チャーハンくらいならすぐにできそうだ。




桜田先輩とは高校の時からの付き合いだ。高校時代僕は彼女に告白して、振られた。桜田先輩には好きな人がいた。
まあ、持ってる魔法がこんなものだったなんて知らなかったけど。きれいな人には違いないが、それでも彼女の知らない一面がいろいろあるんだなーとか、そんなことを思っていた。
そして今日、僕は新しい桜田さんの一面を次々と知ることになった。幼女の桜田さん、涙目の桜田さん、そして今、怒られるのか困惑してビビりまくっている桜田さん。
失恋からもうずいぶん経って自分ではすっかり立ち直ったつもりだったけど…
…まったく、すこしかわいいじゃないか。
正直言ってそれほど怒りの感情は沸いてこない。なんでこんなことをしたのかはじっくり聞きたいところだけど、怖がらせるつもりもないんだ。平和な世界だけで生きていきたい。魔法が存在する街だけど、不思議なくらい事件は少ないのだ。だから、桜田さんのこともちゃんと知りたいと、そう思った。









「卵チャーハンです。あと、お茶も。」
「…はい。」
まさかこんなことでセンパイを家にあげることになろうとは。世の中何があるか分からない。そんなことを言ったら魔法使いが来た段階でいろいろおかしいけど。
恐る恐る卵チャーハンを口に運ぶセンパイ。いつも大学で見せる大人の余裕はもうそこにはなく、説教前のおびえる子供のような印象を受けた。こういうところだけはすこしまいちゃんの面影を感じる。」
だから、シリアスにならないように、僕は言葉を選んだ。
「そういうところは、まいちゃんみたいですね。」
「ぶぐっ、ごほ、こほっ!」
失敗した!聞くタイミングを間違えた!
自分が作ったものを吐き出させるのも嫌だし、そもそもむせさせるつもりもなかった。
「ああ、ごめんなさい、聞くタイミングを間違えた。大丈夫ですか?」
慌ててセンパイの背中をさする。
「こほっ、だ、大丈夫…ありがとう」
「ごめんなさい、怒ってないから安心して食べてください。」
けっきょく無言のまま夕食は終わってしまった。










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