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『後悔』
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お題 うどん 君 月
題『後悔』
「――私『月』が好きなんです」
それは突然の出来事だった。
その一言で分かった。
俺は振られたのだと……。
「――だから、ごめんなさい」
俺はやるせない気持ちでいっぱいになった。
よりによって、どうして『君』を好きになったのだろう……。
よりによって、どうして『あいつ』のことが好きなのだろう……。
俺はその場から動けなかった。否、動いてはいた。ただ、生まれたての子鹿のように歩き方が分からないような感覚だった。
『君』はそっとこの場から徐々に離れていく。後になってから気を遣ってくれたことに気付くが、今はそんな簡単なことすらも分からないほどに、思考が停止していた。
――しばらく経った。授業に行く気力もなくただ、体育館の壁にもたれ掛かり……寝ていた。日が暮れかけてきた頃、俺の肩が誰かによって揺すられた。
「――やっと起きた。その様子だと振られちゃったの? もう下校時間だから帰ろう?」
こいつだ。『君』が好きなのは『こいつ』で、俺はこいつの親友。
こいつさえいなければと思うが、俺はそんなちっぽけな人間でありたくない。だから言うのだ。
「『君』は、お前のことが、好きなんだって……」
俺は親友の顔を見れなかった。否、見たくなかったから目を背けた。現実に向き合いたくなかったから、ひとときの夢で遭って欲しかったから。
だから、相手の目を見ず下を向いたまま言ったのだ。「俺はお前が憎い」と。
親友は「……そっか」とひとこと、たった一言で済ませ俺を家まで送ってくれた。
「――と言う夢を見たのかい?」
「ッ! ゴホッ、ゴホッ。ちげぇよ!」
途中まで聞き終えたそいつは盛大にやらかしてくれた。俺は喉に月見うどんを詰まらせむせてしまった。
「おま、ゴホッ、えな……」
「悪い悪い」と親友は笑いながら謝ってくる。
俺達は今、家の庭に面している廊下で2人並んで月見うどんを食べている。今日は十五夜、満月の日はなぜか親友の家に1泊する事にっているのだ。
「それで? おまえはどうしたいの?」
親友の雰囲気が変わった。どうやら真面目に話を聞いてくれていたみたいだ。
「俺は…………?!」
突然「ドン!」という壁を叩いたような音が聞こえた。俺達は驚いて後ろを振り返った。特に変わった様子は無い。親友の家族は先に寝たので、今起きているのは俺と親友だけのはずだ。
俺達はゆっくりと立ち上がり、さっき音が聞こえたふすまに近寄っていった。俺はゆっくりと手を掛け……勢いよく横にスライドして開けた。
「バン!」と、勢いよく開けすぎて夜中だというのに、近所迷惑レベルの音を立ててしまった。
「なにも……いない、な?」
俺は確認するように親友に訊いた。親友も何も居ないのを確認すると、唾を飲みながら頷いた。俺達は「2階で猫が何かを落としたのだろう」と言うことで結論付け、お月見を再開した。
「なんか、さっきまでと雰囲気違うような気がするんだけど?」
この妙な感覚が、さっきまでの楽しい雰囲気と打って変わって、怖い雰囲気を醸し出していた。今にも除夜の鐘が鳴りそうなくらいの静けさだ。時刻は真夜中、心霊現象でもポルターガイストでもいいくらいの時間帯だ。付け加えて言うなれば、親友の家はかなりしっかりとした和風な家だ。庭に盆栽もあれば鯉がいる池もある。
俺達はお互い顔を見合わせどうしようかと悩む。……結局答えは出ず、とりあえず寝ようかと言う結論に至った。その後はほとんど何も起こらずあまり怯えずにすんだ。――ポルターガイストのような現象が多々あったので。何かが動くたびに俺はビクビクしていた。ああ、一つかなりでかいのがあったな。
壁に掛けてあった親友のタペストリーが勢いよく音を立てて落ちて、元の場所に戻った。「ドンッ!」とでかい音を立てて落ちたかと思えば、そのあと何事もなかったかのように、巻き戻しされるかのように壁に掛かった。
驚きすぎて親友のドッキリか疑ってしまった。まあ、そもそもの問題、親友のドッキリとかならば良かったなと後になって後悔した。もう、悔やむことは出来てもやり直す事なんて出来やしないのに……
題『後悔』
「――私『月』が好きなんです」
それは突然の出来事だった。
その一言で分かった。
俺は振られたのだと……。
「――だから、ごめんなさい」
俺はやるせない気持ちでいっぱいになった。
よりによって、どうして『君』を好きになったのだろう……。
よりによって、どうして『あいつ』のことが好きなのだろう……。
俺はその場から動けなかった。否、動いてはいた。ただ、生まれたての子鹿のように歩き方が分からないような感覚だった。
『君』はそっとこの場から徐々に離れていく。後になってから気を遣ってくれたことに気付くが、今はそんな簡単なことすらも分からないほどに、思考が停止していた。
――しばらく経った。授業に行く気力もなくただ、体育館の壁にもたれ掛かり……寝ていた。日が暮れかけてきた頃、俺の肩が誰かによって揺すられた。
「――やっと起きた。その様子だと振られちゃったの? もう下校時間だから帰ろう?」
こいつだ。『君』が好きなのは『こいつ』で、俺はこいつの親友。
こいつさえいなければと思うが、俺はそんなちっぽけな人間でありたくない。だから言うのだ。
「『君』は、お前のことが、好きなんだって……」
俺は親友の顔を見れなかった。否、見たくなかったから目を背けた。現実に向き合いたくなかったから、ひとときの夢で遭って欲しかったから。
だから、相手の目を見ず下を向いたまま言ったのだ。「俺はお前が憎い」と。
親友は「……そっか」とひとこと、たった一言で済ませ俺を家まで送ってくれた。
「――と言う夢を見たのかい?」
「ッ! ゴホッ、ゴホッ。ちげぇよ!」
途中まで聞き終えたそいつは盛大にやらかしてくれた。俺は喉に月見うどんを詰まらせむせてしまった。
「おま、ゴホッ、えな……」
「悪い悪い」と親友は笑いながら謝ってくる。
俺達は今、家の庭に面している廊下で2人並んで月見うどんを食べている。今日は十五夜、満月の日はなぜか親友の家に1泊する事にっているのだ。
「それで? おまえはどうしたいの?」
親友の雰囲気が変わった。どうやら真面目に話を聞いてくれていたみたいだ。
「俺は…………?!」
突然「ドン!」という壁を叩いたような音が聞こえた。俺達は驚いて後ろを振り返った。特に変わった様子は無い。親友の家族は先に寝たので、今起きているのは俺と親友だけのはずだ。
俺達はゆっくりと立ち上がり、さっき音が聞こえたふすまに近寄っていった。俺はゆっくりと手を掛け……勢いよく横にスライドして開けた。
「バン!」と、勢いよく開けすぎて夜中だというのに、近所迷惑レベルの音を立ててしまった。
「なにも……いない、な?」
俺は確認するように親友に訊いた。親友も何も居ないのを確認すると、唾を飲みながら頷いた。俺達は「2階で猫が何かを落としたのだろう」と言うことで結論付け、お月見を再開した。
「なんか、さっきまでと雰囲気違うような気がするんだけど?」
この妙な感覚が、さっきまでの楽しい雰囲気と打って変わって、怖い雰囲気を醸し出していた。今にも除夜の鐘が鳴りそうなくらいの静けさだ。時刻は真夜中、心霊現象でもポルターガイストでもいいくらいの時間帯だ。付け加えて言うなれば、親友の家はかなりしっかりとした和風な家だ。庭に盆栽もあれば鯉がいる池もある。
俺達はお互い顔を見合わせどうしようかと悩む。……結局答えは出ず、とりあえず寝ようかと言う結論に至った。その後はほとんど何も起こらずあまり怯えずにすんだ。――ポルターガイストのような現象が多々あったので。何かが動くたびに俺はビクビクしていた。ああ、一つかなりでかいのがあったな。
壁に掛けてあった親友のタペストリーが勢いよく音を立てて落ちて、元の場所に戻った。「ドンッ!」とでかい音を立てて落ちたかと思えば、そのあと何事もなかったかのように、巻き戻しされるかのように壁に掛かった。
驚きすぎて親友のドッキリか疑ってしまった。まあ、そもそもの問題、親友のドッキリとかならば良かったなと後になって後悔した。もう、悔やむことは出来てもやり直す事なんて出来やしないのに……
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