三題噺(ホラー)

転香 李夢琉

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『白は痛い』

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ゲーム 命令 景色
題 白は痛い

「――さあ、ゲームを始めよう」

 その声は突如として白の空間に響き渡った。
 その場には次々に人が送り込まれ皆混乱している様子だった。
 俺はこの場にいる人たちに声掛けするように言い放った。

「お前はなんだ! ゲームってなんなんだ!」

 俺の声は良く通り、一瞬にして場が静まりかえった。その数秒後喧噪が始まった。

「そうだよ! ここはどこなんだ!」「ここから出してくれ!」「お母さん……」

 俺は地面に胡座をかいて座った。
 ここは通称『白の空間』その名の通り見渡す限り白の部屋。
 なぜ俺がこんなにも詳しいかって……。俺がこの空間の主催者だからだよ!

『おまいらは知ってるか? 白いものを見続けると眩しすぎて目が痛くなるってよ……どうだ? この空間、さいこうだろ』

 突然モニター越しにしゃべり出した主催者はそう言った。

『とりあえずおまいらには……失明してもらう』

 我ながら話の内容が全く分からん。だがこれでいいだろう、多少は嘆くだろうな。
 こんな景色を見せられ、更には失明させられるというな。

「失明だと?!」「しつめいってなに?」「仕事が……」

『――点灯』

 その言葉とともに『白の空間』に光が差し込んでいく。天井、壁、床。

「うわっ……え?」

 一斉に放たれたライトは、あまりの電圧に一秒も持たずにブレーカーが落ちた。
 今度は闇が訪れた。なにも見えない、それどころか自分の手すら見えない。
 だが音は聞こえる。

 カタ、カタ。

 誰かがこの暗闇の中歩いているのか? とも思ったが、さすがに来たばかりのこの空間で照明なしで歩くなどほぼ不可能に近いだろう。
 改めて俺のあほさに驚いた。

 ――明かりが戻った。
 俺が真っ先に見たのは壁でも天井でも、ゲームの参加者達ではない。俺の、身体だ。なんてことない、首から上のない俺の身体が胡座をかいて座っているだけだ。

 地面に落ちると同時に俺の意識は彼方へ消滅した。
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