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『コロコロかわる』 9
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「ユキ様、ミハル様がお越しになりました」
「あ、はい。すぐ行きます」
タイミング良くノックされ俺の思考は中断された。ミクに「じゃ」とだけ言うと部屋を後にした。部屋から出るといつの間に帰っていたのかクオリアがメイド服で立っていた。
「業務おつかれ」
「仕事の内ッスから。ささ、ミハル様が待っているッスよ」
俺はクオリアの後を着いていった。一階に降りると玄関へと到着した。そこにはミハルと見知った人物が一人居た。
「……サラ姉さん」
「朝ぶりだね、おにいちゃん? ……ちょうどミハルちゃんが通りかかってね。私助かったよ~」
そう言いながらサラ姉さんは左側、もといミハルの方を向いた。
ミハルは両手をお腹辺りで重ねて佇んでいる。サラ姉さんに振られたことでミハルは目を開き、ゆっくりと口を開いた。
「……ひっさしぶり~! ユキく~ん!」
「わわっ、ちょ。ミハル~……もう、いきなり飛びつかないでって言ってるだろ」
「ええ~? だってユキくんかわいいんだも~ん。全然会えなくて寂しかったんだからね!」
「ごめんごめん」
あの佇まいからは全く予想の付かないテンションの高さで俺の名前を呼んだ。ミハルは俺に抱きつくと手を俺の腰に回し、頭を胸元辺りに擦りつけてくる。
あっ……良い匂い……。
俺は思わず顔がとろけてしまった。
「…………お取り込みの途中ごめんね。私二人の邪魔にならないよう部屋にいるね」
少しニヤニヤしながらサラ姉さんはそう言ってきた。チラッと下を見るとミハルがちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめていた。恐らく俺も顔が真っ赤になっているだろう。太陽の前にいるのかってぐらい熱い。
「あっ、いやっ、邪魔って事はナイトオモウヨ?」
「そ、そうですよ……サラお姉ちゃんがいても別に全然デスヨ?」
「二人とも片言になってるよ~。ふふふ」
それだけ言うとサラ姉さんは何も言わず、二階へ消えていった。残った俺とミハルはちょっと気まずそうにしながら、一旦離れた。
「……なんか、いつになっても慣れないんだよな」
「あははっ、ユキくん顔真っ赤だよ~。あはは」
「み、ミハルこそ……耳まで真っ赤になってるし」
「……」
「……」
ミハルも抑えきれなくなったのかひとしきり笑った。俺も笑みを零しながら頬を紅潮させ笑い合う。
――この家には俺たちの部屋以外に親の寝室、召使いさんやメイドさんなどの個室が設けられている。それ以外にも部屋はたくさんあり、今でさえもどこが何の部屋なのかたまに間違えてしまうことがある。
一階が基本的には客人用の部屋や台所、食卓、応接間などの部屋がある。
二階のほとんどは皆の個室になっている。玄関入ってすぐの肖像画が飾ってある階段を右に上ると、右手側に等間隔で扉が並んでおりこれらが俺たち子どもの部屋。先の階段を左に上ると、左手側に等間隔で扉が並んでいる。こちらが親の部屋、そして召使いさんやメイドさんなどの部屋となっている。
俺とミハルは右に階段を上り手前から五番目の扉に入った。
ちなみに兄妹の部屋割りは以下の通りだ。
手前から順にミリア、サラ姉さん、ミク、俺。そしてミハルだ。
部屋に入ると俺はあたかも自分の部屋かのようにソファーに腰を下ろした。
部屋の間取りはどの部屋も同じはずなのにこの部屋だけはなぜだか広く感じる。それもそのはず、家具が必要最低限しか揃っていないのだ。泊まった時用の寝具、化粧台に椅子、小さめのクローゼットしかない……それと場違いなほどに真ん中に置かれた大きめのソファー。
ミハルはベットに腰を下ろすと伸びをしながら上半身を後ろに倒した。
「んん~、いつ来てもこのベットふかふかで気持ちい~」
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