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『月夜の始まり』
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月 ぬいぐるみ 信号
題 月夜の始まり
――今宵、月の沈まぬ頃にまた参上します。
置き手紙にはそう書かれていた。ひょいっと片手で持ち上げるとパタパタと揺らして……ゴミ箱に捨てた。
「……あ゙あ゙ぁぁ!! 俺の渾身の一撃、いや一枚上どうして捨てるんだ!!?」
「いや、家に帰ってきて自分の部屋にこんな紙が机の上にあったら誰だって捨てるでしょ」
平然と人の家に入っているこいつは私の幼なじみで家が隣だからって毎日のように私の部屋に上がり込んで来ている。
「そんなこと言わずにさぁ、俺たち幼なじみだろ? 最後まで読んだんならなにか言ってくれよぉ……」
「というか、私ちゃんと戸締まりしてるはずなんだけど? いっつもどこから入ってくるの……」
「……質問に質問で返された……」
「……なんか言った?」
あえて聞こえないふりをしておく。
私はおもむろに立ち上がって(既に立っているので立ち上がる振りをして)ベットに腰を置く。
「はぁ……私は恵まれてないのかな、こんな幼なじみなんか」
「なんかって……というか、相変わらずそれ好きだな~。何年? もう5年か?」
「そうだよ~。あんたが初めてくれた誕生日プレゼントなんだよ」
私はちょっと懐かしみながら言う。そしてこのぬいぐるみ抱きしめながら足をパタパタさせた。
「あ、そうだった。ちょっとコンビニ行ってくる」
「俺バニラ!」
「はいはい」
私は軽く返事してから部屋を後にした。
最寄りのコンビニまで徒歩往復5分。スマホ片手に歩いて行った。
――信号が赤に変わった。
足を止め、車が過ぎ去るのを待つ。その間にツイッターを開け適当に流し見る。
そろそろ信号が変わる頃合いなので顔を上げ信号と車を交互に確認する。
横断歩道を渡ればコンビニはもう目の前だ。数歩で店内へ。
「さて、新刊は。と……」
目当てのものとさっき頼まれたバニラアイスを買うとコンビニを後にした。
「『月夜のシャングリラ』か……今回もまた格好いいタイトル」
――後悔する暇があるのなら過去を捨てろ。
誰かが言っていた言葉だ。
……つまり、もう事後だ。
シャングリラは日本語で「理想郷」
突如として私のスマホが鳴り出した。私は慌てて電話に出る。
「……残念だけど、この理想郷は俺たち月人がいただく」
私は、いや、私たちは忘れていた。彼らが地球を狙って来ていたことだけはなんとなく思い出せる。
だが、まさかこんな形で戦争が再会するとは思ってもみなかった。
――月は全ての始まりであり、全てが終わる日だ。
私に向けられた指は、無音の発砲音とともに私の脳天を貫いた。
前と後、脳天に空いた穴から血が勢いよく吹き出た。血が出終わると、私はゆっくりと地面へ倒れた。
題 月夜の始まり
――今宵、月の沈まぬ頃にまた参上します。
置き手紙にはそう書かれていた。ひょいっと片手で持ち上げるとパタパタと揺らして……ゴミ箱に捨てた。
「……あ゙あ゙ぁぁ!! 俺の渾身の一撃、いや一枚上どうして捨てるんだ!!?」
「いや、家に帰ってきて自分の部屋にこんな紙が机の上にあったら誰だって捨てるでしょ」
平然と人の家に入っているこいつは私の幼なじみで家が隣だからって毎日のように私の部屋に上がり込んで来ている。
「そんなこと言わずにさぁ、俺たち幼なじみだろ? 最後まで読んだんならなにか言ってくれよぉ……」
「というか、私ちゃんと戸締まりしてるはずなんだけど? いっつもどこから入ってくるの……」
「……質問に質問で返された……」
「……なんか言った?」
あえて聞こえないふりをしておく。
私はおもむろに立ち上がって(既に立っているので立ち上がる振りをして)ベットに腰を置く。
「はぁ……私は恵まれてないのかな、こんな幼なじみなんか」
「なんかって……というか、相変わらずそれ好きだな~。何年? もう5年か?」
「そうだよ~。あんたが初めてくれた誕生日プレゼントなんだよ」
私はちょっと懐かしみながら言う。そしてこのぬいぐるみ抱きしめながら足をパタパタさせた。
「あ、そうだった。ちょっとコンビニ行ってくる」
「俺バニラ!」
「はいはい」
私は軽く返事してから部屋を後にした。
最寄りのコンビニまで徒歩往復5分。スマホ片手に歩いて行った。
――信号が赤に変わった。
足を止め、車が過ぎ去るのを待つ。その間にツイッターを開け適当に流し見る。
そろそろ信号が変わる頃合いなので顔を上げ信号と車を交互に確認する。
横断歩道を渡ればコンビニはもう目の前だ。数歩で店内へ。
「さて、新刊は。と……」
目当てのものとさっき頼まれたバニラアイスを買うとコンビニを後にした。
「『月夜のシャングリラ』か……今回もまた格好いいタイトル」
――後悔する暇があるのなら過去を捨てろ。
誰かが言っていた言葉だ。
……つまり、もう事後だ。
シャングリラは日本語で「理想郷」
突如として私のスマホが鳴り出した。私は慌てて電話に出る。
「……残念だけど、この理想郷は俺たち月人がいただく」
私は、いや、私たちは忘れていた。彼らが地球を狙って来ていたことだけはなんとなく思い出せる。
だが、まさかこんな形で戦争が再会するとは思ってもみなかった。
――月は全ての始まりであり、全てが終わる日だ。
私に向けられた指は、無音の発砲音とともに私の脳天を貫いた。
前と後、脳天に空いた穴から血が勢いよく吹き出た。血が出終わると、私はゆっくりと地面へ倒れた。
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