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『キメラ(chimera)』
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お題 臓器 誤解 嘘
題 キメラ(chimera)
そういえば最近、豚の心臓の移植に続いて腎臓移植も成功したらしいね。
「――へぇ~」
俺は特に気にするでもなく相づちをうった。
ニュースでやっていたらしいのだが、最近はあまりテレビを見ていないのでそんな情報は俺には入ってこない。
「やっぱ遺伝子操作って、なんかおもしろそうだと思わないか?」
「……いやべつに?」
特に興味もないので素っ気なく返す。
相変わらず俺はスマホを操作しながら帰宅路についている。さっきから話しかけてる友達も同じ帰り道なので一緒に帰っているだけだ。
「いや、遺伝子操作すれば理論上はクローン人間だって人体改造とかだって出来るかもしれないんだよ?」
「実際にはされてないってことは法で縛られてるからだろ?」
「ああ~、まあそうなんだけどさ……」
事実を言ってしまったからだろうか、最期の方声がだんだん小さくなっていた。すると友達は、そういえば。と言いながらまた話を振ってきた。
「一時前に流行ったアニメあっただろ、ハガレンって」
「……あ~、名前だけなら」
確か正式名称は『鋼の錬金術師』ちょくちょく名前を聞くだけなので見たことはない。
「まあ、それにな“人体錬成”ってあるんだよ。えっと、主人公と弟が死んだ母親を生き返らせるために人体錬成をしようとした話があるんだけどさ……」
俺は横目で聞きながら手慣れた操作でウィキを開けた。
「……ああ、あった。これか……ってたった二行で錬成の話し終わってるし。この話が?」
「人体錬成のほうは置いといて、キメラを造った話があってな」
置いとくのかよ……というか人体錬成の話持ち出してきておいてその話はしないのかよ、まあいいか。
「キメラっていうと、あれか? ライオンと蛇と……もういっこなんか動物が合わさったやつ」
「羊な、あとそれはギリシャ神話のほうのキマイラだから。自分言ってるのは生物学とかで使われる“キメラ”……簡単に言うと同じ個体の中に全く違う遺伝子が混ざってる状態のこと。かな」
なるほど分からん。サッカーで例えるなら一つのチームはみんな同じ色のユニフォームを着てるけど、キーパーだけユニフォームの色が違うってことかな。
「それで?」
「ハガレンで造ったキメラはイヌと女の子のキメラだったんだけど……完全に女の子の意識がイヌの中に残ってるんだよね!」
「お、おう……」
「いやぁ、なんというかさおもしろそうじゃない? してみたくない?」
俺は言葉では返さずジト眼で睨んだ。友達は一瞬キョトンとした後なにかを理解したのかこう続けた。
「あぁ~嘘、嘘。冗談、ほんとにするはずないじゃん。あはっ」
「……既に前科持ちだろ?」
あえて小声で言った。まわりに誰も居ないとは解っているが、それでも本当に小さな声で俺でさえも聞き取りにくいような微かな声で言った。
「んっん~? なんか言った~?」
絶対聞こえていただろうが聞き流してくれたらしい。
ふとスマホから目線を離し友達の方を向いた。
――顔があった。いやそりゃ隣で歩いているんだから顔があるのは当たり前だが、横顔ではなくやや上から目線の顔が俺の僅か頭上数センチの距離にあったのだ。
そしてものすごくドスの効いた、低い声で、威圧的に、嘲うかのように言った。
「読者に誤解されるようなこと言ったらダメだよ?」
題 キメラ(chimera)
そういえば最近、豚の心臓の移植に続いて腎臓移植も成功したらしいね。
「――へぇ~」
俺は特に気にするでもなく相づちをうった。
ニュースでやっていたらしいのだが、最近はあまりテレビを見ていないのでそんな情報は俺には入ってこない。
「やっぱ遺伝子操作って、なんかおもしろそうだと思わないか?」
「……いやべつに?」
特に興味もないので素っ気なく返す。
相変わらず俺はスマホを操作しながら帰宅路についている。さっきから話しかけてる友達も同じ帰り道なので一緒に帰っているだけだ。
「いや、遺伝子操作すれば理論上はクローン人間だって人体改造とかだって出来るかもしれないんだよ?」
「実際にはされてないってことは法で縛られてるからだろ?」
「ああ~、まあそうなんだけどさ……」
事実を言ってしまったからだろうか、最期の方声がだんだん小さくなっていた。すると友達は、そういえば。と言いながらまた話を振ってきた。
「一時前に流行ったアニメあっただろ、ハガレンって」
「……あ~、名前だけなら」
確か正式名称は『鋼の錬金術師』ちょくちょく名前を聞くだけなので見たことはない。
「まあ、それにな“人体錬成”ってあるんだよ。えっと、主人公と弟が死んだ母親を生き返らせるために人体錬成をしようとした話があるんだけどさ……」
俺は横目で聞きながら手慣れた操作でウィキを開けた。
「……ああ、あった。これか……ってたった二行で錬成の話し終わってるし。この話が?」
「人体錬成のほうは置いといて、キメラを造った話があってな」
置いとくのかよ……というか人体錬成の話持ち出してきておいてその話はしないのかよ、まあいいか。
「キメラっていうと、あれか? ライオンと蛇と……もういっこなんか動物が合わさったやつ」
「羊な、あとそれはギリシャ神話のほうのキマイラだから。自分言ってるのは生物学とかで使われる“キメラ”……簡単に言うと同じ個体の中に全く違う遺伝子が混ざってる状態のこと。かな」
なるほど分からん。サッカーで例えるなら一つのチームはみんな同じ色のユニフォームを着てるけど、キーパーだけユニフォームの色が違うってことかな。
「それで?」
「ハガレンで造ったキメラはイヌと女の子のキメラだったんだけど……完全に女の子の意識がイヌの中に残ってるんだよね!」
「お、おう……」
「いやぁ、なんというかさおもしろそうじゃない? してみたくない?」
俺は言葉では返さずジト眼で睨んだ。友達は一瞬キョトンとした後なにかを理解したのかこう続けた。
「あぁ~嘘、嘘。冗談、ほんとにするはずないじゃん。あはっ」
「……既に前科持ちだろ?」
あえて小声で言った。まわりに誰も居ないとは解っているが、それでも本当に小さな声で俺でさえも聞き取りにくいような微かな声で言った。
「んっん~? なんか言った~?」
絶対聞こえていただろうが聞き流してくれたらしい。
ふとスマホから目線を離し友達の方を向いた。
――顔があった。いやそりゃ隣で歩いているんだから顔があるのは当たり前だが、横顔ではなくやや上から目線の顔が俺の僅か頭上数センチの距離にあったのだ。
そしてものすごくドスの効いた、低い声で、威圧的に、嘲うかのように言った。
「読者に誤解されるようなこと言ったらダメだよ?」
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