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『コロコロかわる』 6
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俺達がこの場を後にして歩き出すと周囲の人たちはなぜかキョトンとしてあ然としていた。
カイが特に気にする素振りもしなかったので俺も気にせず歩いた。
「……これ明日から、いや今日からまずくね?」
教室に着くと同時にそう言われた。俺は一瞬意味が分からず「なにが?」と返した。
カイはそう返されると解っていたのか間髪入れずに一言付け加えた。
「今朝のあれ。さすがにあんな大勢の前でミリアちゃんと話したのはまずかったと思うんだが」
「…………やべ」
言われた事の大きさにようやく気がつき一瞬で考えを巡らせた。
(……つまり、俺がミリアの兄だということも、貴族のそれも王族の人間だってことも)
カイの席、もとい隣の席を見るとすでに両腕を枕代わりに机の上に敷き気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「……はぁ」
俺はカイを見ながらため息をついた。まだホームルームまでには少し時間がある。俺も寝ようと思い前傾姿勢になろうとしたが誰かに名前を呼ばれた。
「ユキくん?」
その声に聞き覚えがあった、僕は間髪入れずすぐ後ろを振り返った。
「……サラ姉さん。どうしたの? 学校で話しかけてくるなんて珍しいね」
「んん~!」
僕が普通に話しかけたのになぜかサラ姉さんはほっぺを膨らませて唸った。それもそのはず……
「……確かに、同じ日に生まれたけどサラ姉さんの方が少し早――」
「いいの! 私がお兄ちゃんって呼びたいだけだから」
「……というか、さきにユキくんって言ったのはサラ姉さんじゃなかったか?」
「あ、あれは学校だからで~……むぅ」
「あ、そうそう。今日ミハルが来るんだろ? そっちに泊まるよ」
「あれ、誰から聞いたの? 私、言ったっけ?」
僕は苦笑しながら応えるとなるほど、だから校門前があんなに賑わっていたのねと納得していた。
――と、話が一段落したところで予鈴が鳴った。
サラ姉さんは「じゃあ」というと自分の席に戻っていった。俺は未だ寝ているカイを起こそうと右を向いた。すると真っ先にカイのジト目が僕の目に飛び込んできた。
「……どした?」
「……いや、どしたじゃねえだろ……ユキ、ここが教室なの知ってる?」
「知ってるよ」
もうすでに予鈴が鳴っているのでみんなは自分の席に着席している。先生ももうすぐ来るだろう。俺たちは小声で話し合っている。
「……今の会話いったい何人が聞いてたんだろうな~?」
カイは再び目を細めるとあからさまな言い草をした。ただし小声で。
俺はすぐさま顔を周囲に巡らせた。が、特に変わったことはなかった。するとカイが顔を寄せてきた。
「ま、みんな寝てたから誰も気付いてないよ。姉さんも確認した上で話してたんだとは思うけどな」
「はぁ、~驚かすなよ……」
俺は安堵のため息をついた。少しすると担任が教室の戸を開けながら入ってきた。
……なぜか苛立っているように見える。おかしいな、心なしか怒りマークが薄らと見える気がしてくる。俺は目線を窓の外に向けた。
「HR始めるぞ――」
明らかに声のトーンが上がっている。俺は一瞬担任の顔色を窺った。
(あー、うん。怒ってるな、主に俺に……)
HRが終わる頃、担任の無言な圧力により俺は廊下へ呼び出された。
「――どうして呼ばれたか分かるな?」
「……朝の件、ですね……はい」
この人には隠しても無駄だろうしそれに、俺のことを学校で一番理解しているといっても過言ではないのだ、つまり隠し事をすることすら無意味なのだ。
「おまえ自分の立場分かってんのか? 一つ間違えれば大惨事だぞ?」
「ですね……」
俺はしょんぼりと肩を落として落胆して見せた。
(先生の言っていることは正しい。んだけどな~抑えれてたら俺も苦労してないんだよ……)
俺は心の中でため息をついた。
「ま、これっきりにしろよ。いつまでフォローしきれるか分からん」
先生からの寛大な言葉に俺は安堵のため息をついた。もう話は終わったものだと思い教室へ戻ろうとすると、肩を掴まれた。
「放課後。いつもの場所で待ってるからな」
(うわ~、嫌な予感しかしねぇ……)
その後気の乗らぬまま一時間目を受けた。
後にカイに言われたが、俺は終始死んだ目をしていたそうだ。
カイが特に気にする素振りもしなかったので俺も気にせず歩いた。
「……これ明日から、いや今日からまずくね?」
教室に着くと同時にそう言われた。俺は一瞬意味が分からず「なにが?」と返した。
カイはそう返されると解っていたのか間髪入れずに一言付け加えた。
「今朝のあれ。さすがにあんな大勢の前でミリアちゃんと話したのはまずかったと思うんだが」
「…………やべ」
言われた事の大きさにようやく気がつき一瞬で考えを巡らせた。
(……つまり、俺がミリアの兄だということも、貴族のそれも王族の人間だってことも)
カイの席、もとい隣の席を見るとすでに両腕を枕代わりに机の上に敷き気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「……はぁ」
俺はカイを見ながらため息をついた。まだホームルームまでには少し時間がある。俺も寝ようと思い前傾姿勢になろうとしたが誰かに名前を呼ばれた。
「ユキくん?」
その声に聞き覚えがあった、僕は間髪入れずすぐ後ろを振り返った。
「……サラ姉さん。どうしたの? 学校で話しかけてくるなんて珍しいね」
「んん~!」
僕が普通に話しかけたのになぜかサラ姉さんはほっぺを膨らませて唸った。それもそのはず……
「……確かに、同じ日に生まれたけどサラ姉さんの方が少し早――」
「いいの! 私がお兄ちゃんって呼びたいだけだから」
「……というか、さきにユキくんって言ったのはサラ姉さんじゃなかったか?」
「あ、あれは学校だからで~……むぅ」
「あ、そうそう。今日ミハルが来るんだろ? そっちに泊まるよ」
「あれ、誰から聞いたの? 私、言ったっけ?」
僕は苦笑しながら応えるとなるほど、だから校門前があんなに賑わっていたのねと納得していた。
――と、話が一段落したところで予鈴が鳴った。
サラ姉さんは「じゃあ」というと自分の席に戻っていった。俺は未だ寝ているカイを起こそうと右を向いた。すると真っ先にカイのジト目が僕の目に飛び込んできた。
「……どした?」
「……いや、どしたじゃねえだろ……ユキ、ここが教室なの知ってる?」
「知ってるよ」
もうすでに予鈴が鳴っているのでみんなは自分の席に着席している。先生ももうすぐ来るだろう。俺たちは小声で話し合っている。
「……今の会話いったい何人が聞いてたんだろうな~?」
カイは再び目を細めるとあからさまな言い草をした。ただし小声で。
俺はすぐさま顔を周囲に巡らせた。が、特に変わったことはなかった。するとカイが顔を寄せてきた。
「ま、みんな寝てたから誰も気付いてないよ。姉さんも確認した上で話してたんだとは思うけどな」
「はぁ、~驚かすなよ……」
俺は安堵のため息をついた。少しすると担任が教室の戸を開けながら入ってきた。
……なぜか苛立っているように見える。おかしいな、心なしか怒りマークが薄らと見える気がしてくる。俺は目線を窓の外に向けた。
「HR始めるぞ――」
明らかに声のトーンが上がっている。俺は一瞬担任の顔色を窺った。
(あー、うん。怒ってるな、主に俺に……)
HRが終わる頃、担任の無言な圧力により俺は廊下へ呼び出された。
「――どうして呼ばれたか分かるな?」
「……朝の件、ですね……はい」
この人には隠しても無駄だろうしそれに、俺のことを学校で一番理解しているといっても過言ではないのだ、つまり隠し事をすることすら無意味なのだ。
「おまえ自分の立場分かってんのか? 一つ間違えれば大惨事だぞ?」
「ですね……」
俺はしょんぼりと肩を落として落胆して見せた。
(先生の言っていることは正しい。んだけどな~抑えれてたら俺も苦労してないんだよ……)
俺は心の中でため息をついた。
「ま、これっきりにしろよ。いつまでフォローしきれるか分からん」
先生からの寛大な言葉に俺は安堵のため息をついた。もう話は終わったものだと思い教室へ戻ろうとすると、肩を掴まれた。
「放課後。いつもの場所で待ってるからな」
(うわ~、嫌な予感しかしねぇ……)
その後気の乗らぬまま一時間目を受けた。
後にカイに言われたが、俺は終始死んだ目をしていたそうだ。
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