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『コロコロかわる』 5
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ミリアは俺から返事を聞くと一拍子開けて離れ、ワンピースの裾をつまみ上げながら軽く膝を曲げるようにしてこう言った。
「お久しぶりです。おにいさま」
満面の笑みで俺の義理の妹、ミリアは微笑んだ。
「――おい、ミリア様って確か王族の二女じゃなかったか?」「――ユキがミリア様の兄ってどういうことですの?」
また、観衆達からは様々な声が飛び交っていた。
(……こうなると思ったから学校では会わないようにしてたんだけどな……起こってしまったものはしょうがないか)
俺が発するより早く、ミリアは俺だけに聞こえるよう小声で言った。
「おにいさま。今晩ミハルおねえさまがおにいさまに会いに来ると言っていましたよ」
「ミハルが?! ……今日は早く帰らないとだな」
驚き、つい声を上げてしまい慌てて口を手で覆った。
俺はやれやれといった感じで頷きその場を後にしようとした。が
「要件はそれだけか? 俺はこの辺で……って、おい! こんなところで抱きつくな」
そう簡単にミリアが俺を離してくれるはずもなく、俺の腕にしがみついてきた。
周囲からはまた様々な声が聞こえてくる。
俺はため息交じりにミリアを睨んだ。
「で、まだ何かあるのか? そろそろ周囲の目が痛いんだが……」
「おにいさま、たまには帰ってきてほしいの」
ミリアはうるうるとした瞳で上目遣いで俺を見てきた。ここのところ休みの日もカイ達と遊んでばかりで全く家に帰っていないのだ。そろそろ顔を出しに行かないとと思ってはいたのだが、すっかり忘れていたな。
「……今晩ミハルが来るんだろ。だから――」
「そうではなくて……何もなくても、ミリアに会いに来てほしいの」
ミリアは俺に詰め寄り、あたかもキスでもするかのような体勢で呟くように吐き捨てた。
(仕方ない。か)
「わかったよ、今日はそっちで泊まるからそれでいいだろ?」
俺はミリアの耳元に顔を近づけ、他の人に聞こえないよう呟いた。
ミリアは俺の返事を聞くや否やパッと俺のもとから離れ「ありがとうございます。おにいさま」とだけ満面の笑みで言うと俺に背を向け校舎へ向かって歩き出した。
群がっていた群衆はすぐさまミリアの通る道を造り、その背を目で見送った。
「……さて、俺も学校に行くか。カイ! ……て、あれ?」
悲報、同居人が消えた。
ついさっきまで俺の隣に居たはずなのにどこ行ったんだ。というかすごく注目を集めてしまっている。なんなら俺の周囲三メートル以内に誰もいない。
と、俺がキョロキョロしていると人混みの中から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「――いや、俺がミリアちゃん苦手なの知ってるだろ?」
「あー、そういやそうだったな。いい加減慣れろよ」
なぜかは分からないが俺達の発言で周囲から驚いたような声が聞こえてきた。俺達は特に気にすることもせず普通に会話した。
「そう言われてもな~。なんていうか裏の顔とかありそうだし、外面はもちろん文句なしに可愛いんだけどさ……」
「なら何がダメなんだ?」
俺は少し苦笑しながら訊いた。
カイとはもう十年以上の付き合いだが、どうしてミリアが苦手なのかいまだに分からない。
「なんとなく? 感、みたいな?」
本人はいたって真面目なのだろうが、なぜ身を隠す必要があるのかも俺には理解できなかった。
「……ま、そんなことより教室行こ」
カイが話の腰を折ったのでそのまま教室に向かうことにした。
「お久しぶりです。おにいさま」
満面の笑みで俺の義理の妹、ミリアは微笑んだ。
「――おい、ミリア様って確か王族の二女じゃなかったか?」「――ユキがミリア様の兄ってどういうことですの?」
また、観衆達からは様々な声が飛び交っていた。
(……こうなると思ったから学校では会わないようにしてたんだけどな……起こってしまったものはしょうがないか)
俺が発するより早く、ミリアは俺だけに聞こえるよう小声で言った。
「おにいさま。今晩ミハルおねえさまがおにいさまに会いに来ると言っていましたよ」
「ミハルが?! ……今日は早く帰らないとだな」
驚き、つい声を上げてしまい慌てて口を手で覆った。
俺はやれやれといった感じで頷きその場を後にしようとした。が
「要件はそれだけか? 俺はこの辺で……って、おい! こんなところで抱きつくな」
そう簡単にミリアが俺を離してくれるはずもなく、俺の腕にしがみついてきた。
周囲からはまた様々な声が聞こえてくる。
俺はため息交じりにミリアを睨んだ。
「で、まだ何かあるのか? そろそろ周囲の目が痛いんだが……」
「おにいさま、たまには帰ってきてほしいの」
ミリアはうるうるとした瞳で上目遣いで俺を見てきた。ここのところ休みの日もカイ達と遊んでばかりで全く家に帰っていないのだ。そろそろ顔を出しに行かないとと思ってはいたのだが、すっかり忘れていたな。
「……今晩ミハルが来るんだろ。だから――」
「そうではなくて……何もなくても、ミリアに会いに来てほしいの」
ミリアは俺に詰め寄り、あたかもキスでもするかのような体勢で呟くように吐き捨てた。
(仕方ない。か)
「わかったよ、今日はそっちで泊まるからそれでいいだろ?」
俺はミリアの耳元に顔を近づけ、他の人に聞こえないよう呟いた。
ミリアは俺の返事を聞くや否やパッと俺のもとから離れ「ありがとうございます。おにいさま」とだけ満面の笑みで言うと俺に背を向け校舎へ向かって歩き出した。
群がっていた群衆はすぐさまミリアの通る道を造り、その背を目で見送った。
「……さて、俺も学校に行くか。カイ! ……て、あれ?」
悲報、同居人が消えた。
ついさっきまで俺の隣に居たはずなのにどこ行ったんだ。というかすごく注目を集めてしまっている。なんなら俺の周囲三メートル以内に誰もいない。
と、俺がキョロキョロしていると人混みの中から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「――いや、俺がミリアちゃん苦手なの知ってるだろ?」
「あー、そういやそうだったな。いい加減慣れろよ」
なぜかは分からないが俺達の発言で周囲から驚いたような声が聞こえてきた。俺達は特に気にすることもせず普通に会話した。
「そう言われてもな~。なんていうか裏の顔とかありそうだし、外面はもちろん文句なしに可愛いんだけどさ……」
「なら何がダメなんだ?」
俺は少し苦笑しながら訊いた。
カイとはもう十年以上の付き合いだが、どうしてミリアが苦手なのかいまだに分からない。
「なんとなく? 感、みたいな?」
本人はいたって真面目なのだろうが、なぜ身を隠す必要があるのかも俺には理解できなかった。
「……ま、そんなことより教室行こ」
カイが話の腰を折ったのでそのまま教室に向かうことにした。
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