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朝、何気なくつけたテレビのニュース。
慌ただしくマンションを出入りする警察官達や鑑識が映し出されている。
マンションの付近は規制線が張られ、通行人や見物人達が何事かとざわめいている。
『この家に住む加……也さん45歳が……っていた所を……によって……れました』
男性レポーターがカメラに向かって何か言っているが良く聞こえない。
目の前の視界が揺らいだ気がして椅子に座る。
「本当に……」
上手く息が出来ずに胸を抑えながら呼吸を整える。落ち着きを取り戻した所で感情が湧き上がってきた。
思わず溢れる笑みを止められなかった。
『部屋には争った形跡はなく、警察はー』
テレビの画面が暗くなる。リモコンをテーブルに置いて、時計をちらりと見た。針は既に8時を少し回っていた。
数回深呼吸をして椅子から立ち上がる。傍に置いていた鞄を手に取り玄関へと歩く。
「行ってきます」
パンプスを履いて扉を開ける。戸締りを確認すると前を向いた。目の前に広がる景色はいつもと変わらないがどこか清々しい。
新生活を始めた社会人のような気持ちに似た感情のまま、エレベーターへと向かった。
歩き慣れた道を進み交差点で信号待ちをしていると、ビルに付けられた大型ビジョンから声が聞こえてきた。
『尚、現場には凶器などはなく警察は事件と事故の両面で捜査をしているとの事です』
少しドキリとしたが、あの時に言われた事を信じるしかない。
ー分かるように目印付けてあげるー
まだ意味は分からないがその内知る事になるのだろう。あまり深く考えていては日常生活に影響が出るかもしれない。
心の中でぐるぐると考えを巡らせたがすぐに止めた。
いつものように振る舞い、仕事をすればいいだけの話。
前方から人が歩いて来る。いつの間にか信号は青になっていた。慌てて横断歩道を渡り人並みに沿って歩いて行く。
大丈夫。上手くやれる。あの時覚悟は決めたから。きっと大丈夫。
自分にそう言い聞かせて会社の扉を開けた。
「あ、花澤さん。おはようございます」
コピー機で作業していた部下の桐島悠人が笑顔を向ける。軽く挨拶を返してから自分のデスクに座った。
鞄の中から用意していた資料を取り出して、パソコンを起動する。
「花澤さん、ちょっとこれ見て欲しいんですけど……」
向かいのデスクに座っていた田所歩美が隣に駆け寄り、作成途中の資料を見せてくる。
「このアイデアいいんじゃないかな。進めて大丈夫よ」
「良かった。少しだけ修正したんです。じゃあ、このまま進めますね」
「えぇ、よろしくね」
嬉しそうに向かいのデスクに座る田所を見て無意識に笑みを浮かべてしまう。
入社したばかりの彼女は不安げな表情をしていたが、数ヶ月経った今は資料の作成も板に付いてきた。
「おはよう」
会社の扉が開いて社長の木本紀之が入って来る。皆、挨拶と一礼して椅子から立ち上がる。
「揃ってるね。じゃ、朝の朝礼するか」
ここは株式会社 ノア。社長の木本を中心にファッションに関するデザインや雑誌の作成、発行を行っている。様々な部署に分かれており、ここ数年で業績も知名度も獲得し、中でもファッション雑誌の部署から発行される物は知名度も上がり、日々の業務が忙しくなりつつある。
花澤里穂は、そんなファッション雑誌の部署に所属している雑誌編集者である。
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慌ただしくマンションを出入りする警察官達や鑑識が映し出されている。
マンションの付近は規制線が張られ、通行人や見物人達が何事かとざわめいている。
『この家に住む加……也さん45歳が……っていた所を……によって……れました』
男性レポーターがカメラに向かって何か言っているが良く聞こえない。
目の前の視界が揺らいだ気がして椅子に座る。
「本当に……」
上手く息が出来ずに胸を抑えながら呼吸を整える。落ち着きを取り戻した所で感情が湧き上がってきた。
思わず溢れる笑みを止められなかった。
『部屋には争った形跡はなく、警察はー』
テレビの画面が暗くなる。リモコンをテーブルに置いて、時計をちらりと見た。針は既に8時を少し回っていた。
数回深呼吸をして椅子から立ち上がる。傍に置いていた鞄を手に取り玄関へと歩く。
「行ってきます」
パンプスを履いて扉を開ける。戸締りを確認すると前を向いた。目の前に広がる景色はいつもと変わらないがどこか清々しい。
新生活を始めた社会人のような気持ちに似た感情のまま、エレベーターへと向かった。
歩き慣れた道を進み交差点で信号待ちをしていると、ビルに付けられた大型ビジョンから声が聞こえてきた。
『尚、現場には凶器などはなく警察は事件と事故の両面で捜査をしているとの事です』
少しドキリとしたが、あの時に言われた事を信じるしかない。
ー分かるように目印付けてあげるー
まだ意味は分からないがその内知る事になるのだろう。あまり深く考えていては日常生活に影響が出るかもしれない。
心の中でぐるぐると考えを巡らせたがすぐに止めた。
いつものように振る舞い、仕事をすればいいだけの話。
前方から人が歩いて来る。いつの間にか信号は青になっていた。慌てて横断歩道を渡り人並みに沿って歩いて行く。
大丈夫。上手くやれる。あの時覚悟は決めたから。きっと大丈夫。
自分にそう言い聞かせて会社の扉を開けた。
「あ、花澤さん。おはようございます」
コピー機で作業していた部下の桐島悠人が笑顔を向ける。軽く挨拶を返してから自分のデスクに座った。
鞄の中から用意していた資料を取り出して、パソコンを起動する。
「花澤さん、ちょっとこれ見て欲しいんですけど……」
向かいのデスクに座っていた田所歩美が隣に駆け寄り、作成途中の資料を見せてくる。
「このアイデアいいんじゃないかな。進めて大丈夫よ」
「良かった。少しだけ修正したんです。じゃあ、このまま進めますね」
「えぇ、よろしくね」
嬉しそうに向かいのデスクに座る田所を見て無意識に笑みを浮かべてしまう。
入社したばかりの彼女は不安げな表情をしていたが、数ヶ月経った今は資料の作成も板に付いてきた。
「おはよう」
会社の扉が開いて社長の木本紀之が入って来る。皆、挨拶と一礼して椅子から立ち上がる。
「揃ってるね。じゃ、朝の朝礼するか」
ここは株式会社 ノア。社長の木本を中心にファッションに関するデザインや雑誌の作成、発行を行っている。様々な部署に分かれており、ここ数年で業績も知名度も獲得し、中でもファッション雑誌の部署から発行される物は知名度も上がり、日々の業務が忙しくなりつつある。
花澤里穂は、そんなファッション雑誌の部署に所属している雑誌編集者である。
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