【誰も知らない拳で、世界をひっくり返す――最底辺高校生、無双ランクアップ物語】

第4章「闇の試練」

第2話「闇の闘技場」

東京の郊外、
一見して廃工場のような古びた建物が、
蓮の前にそびえていた。

蓮はその場で立ち止まり、
その建物に向けて不安な視線を送る。

「これが…『闇の闘技場』か？」

その言葉を呟いた瞬間、
背後から声が聞こえてきた。

「おい、蓮か？」

振り返ると、
そこには以前から知っている顔、戸田が立っていた。

「お前、こんなところまで来たのか？」

戸田は不敵に笑いながら、
蓮に歩み寄ってきた。

「もちろんだ。
　俺の試練だろ、戦いが待ってるんだからな」

戸田は無表情で言うが、その目の奥には
何か確信めいたものが漂っている。

「でも、蓮、お前が来るとは思ってなかったな。
　どんな覚悟でここに来たのか、楽しみだよ」

戸田はそう言いながら、
建物の中に足を踏み入れる。

「準備はできてるか？」

蓮はその言葉に応じるように、
しっかりと深呼吸をして、
「俺はもう準備できてる。
　試練を乗り越えてみせる」

その声には迷いがなかった。
この戦いがどれほど危険で、
どれほど強い相手が待ち受けているのかを、
しっかりと理解しているからこそ、
その覚悟は揺るがなかった。

⸻

「行こうか」

戸田がその言葉を口にし、
二人はその建物の中へと足を踏み入れる。

建物の中は暗く、
ひんやりとした空気が漂っている。
その中を進むと、
広大な闘技場が広がっていた。

「ここが、闘技場か…」

蓮はその光景に息を呑んだ。

周囲は観客席が整備され、
中央には大きなリングが広がっている。

「お前も知っている通り、
　ここはただの戦いの場所じゃない。
　この場所で勝ち続ければ、
　名を馳せることができる」

戸田がその場に立ち、
リングの中央に向かって歩いていく。

「だが、その代償も大きい。
　ここで戦うということは、
　ただ勝つだけじゃダメだ」

「どういうことだ？」

蓮はその問いに真剣に答える。

「勝ったら、それだけじゃ済まない。
　相手を倒すだけじゃ、
　次の相手に対する信頼や期待を裏切ることになるんだ。
　戦いには、それなりの代償が伴う」

戸田の言葉は、
蓮にとっても少なからず衝撃的だった。

だが、
その言葉の意味が徐々に蓮の中で形を成してきた。

⸻

その時、
アナウンスが流れる。

「次の試合、参加者が登場します。
　準備ができたらリングに上がってください」

「来たか」

戸田は冷静に言い、
そのままリングに向かって歩いていく。

「お前は、どうする？」

蓮が戸田に声をかけると、
戸田は振り返り、軽く微笑んだ。

「俺が戦う相手は決まっている。
　お前は、次の試合だ」

その言葉に、
蓮は深く頷いた。

⸻

リングの中央に立つと、
蓮は次の戦いに向けて準備を整えた。
周囲の観客の声が大きくなる中、
蓮は自分を高めるために戦う覚悟を固めていった。

その時、
目の前に現れたのは、
見覚えのある男だった。

「お前か…」

蓮はその男を見て、
少し驚いた。

「久しぶりだな、蓮。
　これから戦う相手は、俺だ」

その男の名前は、
『黒田裕一』。

以前、蓮が戦った相手で、
その実力は並大抵ではなかった。

「また、戦うことになるとはな」

蓮は、
その黒田の目を見つめながら、
心の中で再び決意を固めた。