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愛の日には苦い薬を……

【12】

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***

「小雪ちゃん、超おひさしぶり」
 例のクラブに連れて行くと、陽太が二人の方にやってくる。

「つーか、相変わらず可愛いなぁ」
 素で言う陽太に、小雪ちゃんは顔を赤くして、パシンと陽太の背中を叩くふりをする。

「小雪、可愛くなんてないもん。陽太君すぐ褒めるから困る~」
 くすくすと恥ずかしそうに笑う小雪を見て、慈英は、いやマジで可愛いし。とかつい思ってしまう。

「踊る? それとも何か取ってこようか?」
「うんー。小雪踊るの下手だし、ジェイさんと一緒にお話したいし。だから小雪もジェイさんと一緒に飲み物取りに行くね」
 潤んだ黒目がちな瞳でじっと見つめてくる。慈英のトパーズ色の瞳と出会うと、ふっとそらされる。なのに微かに頬が赤くて……。

(騙されても、いいかも、って思ってしまうよな)
 そう思いながら、小雪の手を取ってカウンターに向かう。二人で飲み物を持って席に着くと、気を使ってくれたのか、陽太はフロアで知り合いとしゃべり始めている。

「乾杯」
 日本酒ベースのカクテル、なんてちょっと変わったものを口にして、小雪は美味しそうに瞳を細める。
「小雪ちゃん、もしかして日本酒が好きなの?」
 慈英の言葉にうんうん、と頷いた。

「もうすぐバレンタインデーだね」
 日本酒が好きだけど、あまり強くなさそうな小雪はぽおっと火照った顔で慈英の事を顔を見上げる。
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