泥棒ネコの娘

猫枕

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19 1部完結


 ソニアの退学処分の話はクラスはもちろん学校全体に衝撃を与えた。

 盗み聞きをして告げ口した生徒達もまさか退学処分にまで話が大きくなるとは思っていなかったらしく、少しばかりバツが悪そうにしていた。

 いつも皆と一線引いているくせに誰がが困るとスッと手助けしてくれる。
 何でもそつなくこなすソニアを見ていると自分の無能を思い知らされるようで気にくわなかった。
 だけど一方で不遇な境遇にいながらも努力を続ける彼女を尊敬してもいた。

 ちょっとばかり痛い目に遭わせようと思っただけなのに、やり過ぎてしまった。

 それでもいつもソニアに試験の成績で負けてソニアの悪口ばかり言っていた子は、これで自分が推薦入学できると喜んでいて、皆は口にこそ出さなかったが彼女の人間性の欠如に引いていた。

 彼女はローラが自分にラッキーをもたらしたと見なして、それ以後なにくれとなくローラに親切にしてくれたが、ローラにとってはそれが苦痛だった。

 ソニアがどうしているのかローラには知る術が無かったが、さすがにラウルも怒っているだろうと思うと彼に尋ねる勇気は出なかった。

『もう関わるな』

 何度も言われたのに。


 その頃ベラトール家ではケイトが落ち着かない気分で家の中をウロウロしていた。

 ソニアが早退してきたその日の夕方。
 突然サルテラ学園から使いが来て、ソニアの自宅謹慎が告げられた。

「おそらく退学処分は避けられないでしょう。

 来週明けにでも告知があるでしょうからそれまで待つように」

『あの時のあの子の顔ときたらね』

 急転直下ソニアが名門校サルテラ学園を退学処分になり嬉しいニュースに気分は上昇しそうなものなのに、反面不安がケイトの胸に広がるのだった。

 気に食わないと思って辛く当たってはいたが、心のどこかで認めてもいた。
 少し泣き言を言うくらいの可愛い気があればもう少し優しくしてやったものをと思う気持ちもあった。

 ソニアの退学の事実を知った夫はどう反応するだろう?ソニアを叱責するだけで済めば良いが芋蔓式に自分の日頃のソニアに対する仕打ちもバレやしないだろうか?
 
 なんだかんだ言ってもベラトールの「血」が一番大切なあの人だもの。

「所詮は他人」の私よりあの子の味方をするかもしれない。

 ケイトはどうにかして今回の事はあくまでもソニア個人に問題がある、という方向に話を収めなくては、と長期不在の夫が帰宅する前に家政婦達に臨時ボーナスで余計な発言をしないように釘を刺そうか?などと考えを巡らせていた。

 

 その時ベラトール家を抜け出したソニアは山の上の病院にいた。

 痩せ衰えた母親は老婆のようで、とても溌剌としたラウルの母親と同い年には見えない。

 クレアは長く伸びた髪を根元から毛先まで指で挟んでしごく動作を永久に繰り返しながら歌を歌っていた。

 床には抜けた髪の毛が散らばっていてクレアの髪は薄くなっていた。

 「お母さん」

 ソニアの声に反応することなくクレアは髪をいじりながら歌っている。

 「お母さん。私どうしたらいいの?」

 「ねぇ、お母さん」

 「答えてよ、お母さん」


 「お母さん!」

 白い壁の中で歌声とすすり泣きが混ざり合っていた。



 そしてソニアは姿を消した。



(これで学園編は終わりです)




【今後の展開】

 数年後、故郷から遠い都市でソニアは働いていた。
 イケメン若手実業家の片腕として信頼を得ているソニアは仕事上だけでなくプライベートでも共に歩むことを求められていた。
 そこへまたしても運命の歯車がローラを引き寄せてしまう(なんなんコイツ)。 

 従兄弟の双子も登場させて、いい働きしてもらおうかな、とか思っています。

 いつになるかは未定ですが、気が向いたら続き書くつもりです。

 その時はよろしくお願いします。

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