マジメにやってよ!王子様

猫枕

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 グレイス、リリー、ローラと共に学食に行くとエリック殿下が学食の従業員ジェフと揉めていた。

 ジェフはエリック殿下の幼馴染で、エリック殿下にとってジェイムズ殿下が弟ならジェフは兄のような存在である。


「てめえ、ふざけんなよ」

と、ジェフ。
 相手はエリック王子だ。


「どうしたんですか?」


「あ、ローズ様こんにちは。
コイツ・・・殿下がおかわり自由のタダのパンだけ持ってきて、それにミートソースかけろとか言いやがって」


「いいじゃないか。余ってるヤツをちょっとかけてくれって言ってるだけだろう?」


「余ってないし。それにパンだって、おかわりが自由なだけで無料なわけじゃないですからね」


「ケチ」

 
「どっちが!」


「貴様、不敬だぞ!」


「敬われる要素が1個も無いだろうが」


 心の中で激しくジェフに同意していると、ジェイムズ様がやってきた。


「お、いいところに来た。
 ジェイムズ、金貸せ」


「・・・今まで返していただいたことが無いのですが」


「出世払いだよ」


「兄上が出世する未来がまったく見えないのですが」


「そのうち10倍にして返すから」


「それ、ギャンブル依存症の人の常套句ですから」


「おい、ジェフ!スペシャルランチ!
ジェイムズが払うから」


「いいんですか?ジェイムズ様」


「仕方ないですね」


「おう!ローズも友達も奢ってやるから、みんなスペシャルでいいか?」


「奢ってやるって・・・」


その日のランチを私達は殿ご馳走になった。




 
   



私は王妃様から呼び出された。

 テラスにはお茶とお菓子が用意されていて、ジェイムズ殿下もおられた。

 お二人に挨拶をすると、

「呼び立てて悪かったわね。今日はエリックのことで聞きたいことがあって」
 
 王妃様のお声は少し元気がなかった。

 「ジェイムズに聞いたのだけど、ローズにも随分迷惑を掛けているようで申し訳ないことをしました」


「?・・なんのお話でしょうか」


「私はエリックに小遣いを渡していなかったようなのよ」



「・・・殿下は壺の弁償をしないといけませんので・・・」


 「・・・壺のことだけど、あれはレプリカなのよ。本物は王家の宝物庫に入ってるの」


「・・・・・」


「レプリカといっても本物ソックリに作るのだから値は張るのよ。
 
エリックはお調子者でいつか取り返しのつかないことを仕出かしそうだから、お灸を据えるつもりで弁償しなさい!・・・って言ったのだけど・・」


 王妃様はしょんぼりしながら話を続けた。

 しょんぼり顔がエリック殿下に似ていて笑ってしまいそうになる。


「エリック付きの事務官に対応を任せてしまって、私がきちんと指示を出していなかったのが悪いの。
 まさか、何年もほとんどの小遣いを没収していたなんて・・・・」


「・・・まあ、殿下もそれなりに楽しんでおられるようですから大丈夫じゃないですか?」


「そうなのよ!あの子も ちっとも文句を言わないから気づかなかったのよ」


 「私はてっきり母上がご存知のうえでのことだと思っていました」

とジェイムズ殿下。

「ジェイムズから、エリックがアレクの私物を売ったり、妙な商売をするのは充分な小遣いを貰えていないからだって言われて初めて知ったの。
 ジェイムズはエリックに小遣いを分けていたらしいけど、もしかしてローズにもたかっていたのかしら?」

 王子が たかるって・・・。


「いいえ、オカズを取られることはありましたけど、殿下は決して私にお金を出させることはありませんでした。

・・・ キノコ狩りに行って市場に売ったお金の配分がおかしいってことはありましたけど・・・」

 
王妃様がなんとも形容し難い表情になった。



「エリックはローズにまともなプレゼントもしてこなかったんでしょう?」


「・・・パン屋さんで貰えるお皿とかですかね」


「いいじゃん、お皿。私の誕生日プレゼントはセミの脱け殻でしたよ」

 とジェイムズ殿下が笑う。

 
「・・・でも、なんだかんだ楽しかったですよ。
 殿下はどこに生えてるイチジクが美味しいとか、そろそろ校舎裏の金柑が食べ頃だとか、どの草が食べられるとか、そういうことには詳しいですわね。
 
たまにはお洒落なカフェに行きたいと私がワガママを言ってしまいました時は、

 『そんなつまらないものより、最高に美味しい湧き水を飲ませる』、とおっしゃって崖を登らされたのも良い思い出です」


 王妃様は頭を抱えている。


「本当にすまなかったわね」


そうおっしゃった王妃様がお菓子とお茶を勧めてくださった。

 美味しいお菓子をエリック殿下の所にも持って行きたくて、


「あの、余りを頂いて帰ってもいいですか?」


私がそう言うと、


「だんだん兄上に似てきてない?」

とジェイムズ殿下が笑った。

 

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