10 / 12
10
グレイス、リリー、ローラと共に学食に行くとエリック殿下が学食の従業員ジェフと揉めていた。
ジェフはエリック殿下の幼馴染で、エリック殿下にとってジェイムズ殿下が弟ならジェフは兄のような存在である。
「てめえ、ふざけんなよ」
と、ジェフ。
相手はエリック王子だ。
「どうしたんですか?」
「あ、ローズ様こんにちは。
コイツ・・・殿下がおかわり自由のタダのパンだけ持ってきて、それにミートソースかけろとか言いやがって」
「いいじゃないか。余ってるヤツをちょっとかけてくれって言ってるだけだろう?」
「余ってないし。それにパンだって、おかわりが自由なだけで無料なわけじゃないですからね」
「ケチ」
「どっちが!」
「貴様、不敬だぞ!」
「敬われる要素が1個も無いだろうが」
心の中で激しくジェフに同意していると、ジェイムズ様がやってきた。
「お、いいところに来た。
ジェイムズ、金貸せ」
「・・・今まで返していただいたことが無いのですが」
「出世払いだよ」
「兄上が出世する未来がまったく見えないのですが」
「そのうち10倍にして返すから」
「それ、ギャンブル依存症の人の常套句ですから」
「おい、ジェフ!スペシャルランチ!
ジェイムズが払うから」
「いいんですか?ジェイムズ様」
「仕方ないですね」
「おう!ローズも友達も奢ってやるから、みんなスペシャルでいいか?」
「奢ってやるって・・・」
その日のランチを私達はジェイムズ殿下にご馳走になった。
私は王妃様から呼び出された。
テラスにはお茶とお菓子が用意されていて、ジェイムズ殿下もおられた。
お二人に挨拶をすると、
「呼び立てて悪かったわね。今日はエリックのことで聞きたいことがあって」
王妃様のお声は少し元気がなかった。
「ジェイムズに聞いたのだけど、ローズにも随分迷惑を掛けているようで申し訳ないことをしました」
「?・・なんのお話でしょうか」
「私はエリックに小遣いを渡していなかったようなのよ」
「・・・殿下は壺の弁償をしないといけませんので・・・」
「・・・壺のことだけど、あれはレプリカなのよ。本物は王家の宝物庫に入ってるの」
「・・・・・」
「レプリカといっても本物ソックリに作るのだから値は張るのよ。
エリックはお調子者でいつか取り返しのつかないことを仕出かしそうだから、お灸を据えるつもりで弁償しなさい!・・・って言ったのだけど・・」
王妃様はしょんぼりしながら話を続けた。
しょんぼり顔がエリック殿下に似ていて笑ってしまいそうになる。
「エリック付きの事務官に対応を任せてしまって、私がきちんと指示を出していなかったのが悪いの。
まさか、何年もほとんどの小遣いを没収していたなんて・・・・」
「・・・まあ、殿下もそれなりに楽しんでおられるようですから大丈夫じゃないですか?」
「そうなのよ!あの子も ちっとも文句を言わないから気づかなかったのよ」
「私はてっきり母上がご存知のうえでのことだと思っていました」
とジェイムズ殿下。
「ジェイムズから、エリックがアレクの私物を売ったり、妙な商売をするのは充分な小遣いを貰えていないからだって言われて初めて知ったの。
ジェイムズはエリックに小遣いを分けていたらしいけど、もしかしてローズにもたかっていたのかしら?」
王子が たかるって・・・。
「いいえ、オカズを取られることはありましたけど、殿下は決して私にお金を出させることはありませんでした。
・・・ キノコ狩りに行って市場に売ったお金の配分がおかしいってことはありましたけど・・・」
王妃様がなんとも形容し難い表情になった。
「エリックはローズにまともなプレゼントもしてこなかったんでしょう?」
「・・・パン屋さんで貰えるお皿とかですかね」
「いいじゃん、お皿。私の誕生日プレゼントはセミの脱け殻でしたよ」
とジェイムズ殿下が笑う。
「・・・でも、なんだかんだ楽しかったですよ。
殿下はどこに生えてるイチジクが美味しいとか、そろそろ校舎裏の金柑が食べ頃だとか、どの草が食べられるとか、そういうことには詳しいですわね。
たまにはお洒落なカフェに行きたいと私がワガママを言ってしまいました時は、
『そんなつまらないものより、最高に美味しい湧き水を飲ませる』、とおっしゃって崖を登らされたのも良い思い出です」
王妃様は頭を抱えている。
「本当にすまなかったわね」
そうおっしゃった王妃様がお菓子とお茶を勧めてくださった。
美味しいお菓子をエリック殿下の所にも持って行きたくて、
「あの、余りを頂いて帰ってもいいですか?」
私がそう言うと、
「だんだん兄上に似てきてない?」
とジェイムズ殿下が笑った。
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
断罪するならご一緒に
宇水涼麻
恋愛
卒業パーティーの席で、バーバラは王子から婚約破棄を言い渡された。
その理由と、それに伴う罰をじっくりと聞いてみたら、どうやらその罰に見合うものが他にいるようだ。
王家の下した罰なのだから、その方々に受けてもらわねばならない。
バーバラは、責任感を持って説明を始めた。
【完結】婚約解消ですか?!分かりました!!
たまこ
恋愛
大好きな婚約者ベンジャミンが、侯爵令嬢と想い合っていることを知った、猪突猛進系令嬢ルシルの婚約解消奮闘記。
2023.5.8
HOTランキング61位/24hランキング47位
ありがとうございました!
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?