4人の女

猫枕

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管を巻く

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「うわっ、今日もご出勤ですよ」

「皆勤賞じゃね?」

 ボーイ達にバカにされているのはジルベールだ。

  「お客さん ご注文は?」

「クラリス」

「そんなのメニューにありません」

「じゃ、ピンキーちゃんで」

「ウチは そういう店じゃありません」

「じゃ、せめてテーブルの担当をクラリスにしろよ!」

毎晩飽きもせず繰り返される押し問答。


「よっ!にいちゃん!また来たのか?

 ピンキーちゃんは諦めろ。

 ありゃオーナーの子猫ちゃんだからな」

「ナニっ?!」

 聞き捨てならんと目を剥くジルベール。

「にいちゃん落ち込むなよ。

 まあ、オレほどじゃないけど、にいちゃんもなかなかハンサムなんだしさ」

 歯の欠けたオヤジに背中をバシバシ叩かれる。

「知り合いにぃ~、いい女いっから紹介してやろうか?
 
 42才なんだけどさぁ、スゲェ色っぽいんだよ~ 」


 そんなやり取りを離れたテーブルからクスクス笑いながら見ているのはカトリーヌ、イネス、ミレイユ。

「あれで変装してるつもりなのかしらね」

 三人はジルベールのいかにもな中産階級スタイルを馬鹿にしている。


「毎晩来てるらしいですわよ」


 久しぶりに来店したミレイユにカトリーヌとイネスが説明する。

「それでバカみたいに沢山注文してクラリスが運んで来ないとブチキレるんですって」

 「クラリスが 

『こちら枝豆です~』

 とか言って皿を置くとさっさといなくなるのよね。

 ジルベール様が必死で引き留めようとしてるのが傑作よ」


「おつまみとか色んなもの頼むくせに全然手をつけないから

『お気に召しませんか?』

 って店の人が聞いたのよ。
 
 そうしたら

『衛生的に不安だ』

 とか答えたらしいわよ」


「最低~失礼~」

「グラスに口つけるのも汚いからイヤなんですってよ」

「田舎に連れて行って泥田んぼに突き落としてやりたいわよね」

「『バイ菌が~バイ菌が~』とか泣き叫ぶんじゃないの?」

 三人はキャハハと笑う。


「美味しいわよね、枝豆」




「42で~、子供は3人・・・4人だったっけな?
 いや、みんな良い子達でさ~。

 大丈夫大丈夫」

 何が大丈夫なのか分からないがオッサンはジルベールの向かいに腰掛けて勝手に皿の上のサラミを摘まんでいる。


『おつまみ全部やるから あっち行けよ』

 ジルベールは忌々し気にオヤジを見る。

「お前さん友達いないだろ」

オヤジのでかい声に、 離れた席から吹き出す音が聞こえる。


「まあ、飲めや」

 オヤジはジルベールに無理矢理グラスを押しつけるとウイスキーを飲ませた。

 ハンカチで狂ったように唇をこするジルベールに既に酔っ払ったオヤジが

 
「自分に自信を持つのは良い事だ~。

 若いってのは良いよなぁ、なんだって出来る気がするもんな~。

周りは皆馬鹿に見える。

オレだってそうだった。

この世で一番賢いのは自分なんじやないかと思ったもんさ~。

 だけどさあ、心ってもんはな、誰にだってあんだぞ。

 自分だけじゃないんだ。

 誰でも持ってんだ」


 オヤジはへらへらしながらジルベールのグラスにウイスキーを継ぎ足した。

「ほれ、乾杯~!」

 ジルベールは飲んだ。

 オヤジも飲んだ。

 常連が加わって、大人数になってワーワー騒ぎながら飲んだ。


「どんどん持ってこい!

 全部オレの奢りだ~!!」


「凄いなダンナ様!」


「なにを~!?オレは公爵様だぞぉ~ケケケ・・・」

「おおっー!公爵様ー?」

「じゃ、オレ王様~」

 「おれは教皇様だぞぉ~!」


「おおっ!罪深き我に免罪符を~!」

「じゃ、乾杯するぞ!」

「乾杯だ乾杯だ!」





 正体を無くすほどにベロンベロンに酔っ払ったジルベールが翌日二日酔いの痛む頭を抱えて目覚めた場所はジュールのアパートだった。




 

 





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