良いものは全部ヒトのもの

猫枕

文字の大きさ
28 / 42

28

しおりを挟む
 夕食を済ませ寝る準備をする。
 ベッドのスプリングはいつも使ってるものより硬めでサイズも小さかったが、なかなか寝心地は良かった。

 キャロラインはミリアムの母とさほど変わらない年代だが、独りっ子のミリアムにとっては年の離れた姉のような親しみがあった。

 二人は各々のベッドに寝転んで色んな話をした。
 教師時代のエピソードや旅行社で働くようになってからの旅先の幽霊話などキャロラインは興味の湧く話を沢山持っていた。

 他人を面白がらせるエピソードなど何も思い付かないミリアムは、こんな薄っぺらな人生しか歩んでいない自分がよくも物書きなんかしているもんだな、と自分で呆れる思いがしたが、クロードを殴った話に腹を抱えて笑うキャロラインを見て、他人ひとって案外つまんないことを面白がるもんだな、と思った。

 時々カーテンをめくって走りゆく列車に置き去りにされる家々の灯りや追いかけてくる月を眺めていると、うまく言葉にできない胸の高鳴りを感じた。

 二人はキャロラインが隠し持っていた甘いカクテルのミニボトルをチーズをツマミに楽しんだ。

 いい気分になったミリアムは心地好い列車のリズムにいざなわれ、いつの間にか眠ってしまったようだ。

ミリアムが目覚めた時、既に太陽は高く登っていた。

「あと一時間くらいでインタミディエイト・ステーションに着くよ。燃料や水、食料の補給と列車の点検で約6時間あるから散策しよう」

「ああ、うん。楽しみ」

 ミリアムはまだハッキリしない頭で答える。
 ノロノロと着替えたり顔を洗ったりして身支度を整え、コーヒーを一杯飲んだあたりで汽車は駅に着いた。

 ミリアムは地図上でだけ知っていたセント・マルティンの町に降り立った。

「キャロラインはここに来たことあるの?」

「三度目かな」 

「何か名物とかある?」

「銀線細工は見事だよ。見にいく?」

 町並みは石灰石が多いのか全体的に白っぽくて王都と比べると植生も南国っぽい。 

「こういうの異国情緒って言うのかな?」

土産物屋が並ぶエリアに来るとレースのような見事な銀線細工が並んだ店が軒を連ねている。

「簡単なモチーフを手作り体験できるんだよ。観光客には人気なの」

 「へえ、やってみようか?」

 四つ葉のクローバー、ハート、六芒星の3つのモチーフから1つ選ぶように店主のオジサンに言われる。
 ペンダントかブローチにしてもらえるらしい。

「お弁当のお礼にダニエル・ショーンの為に作れば?」

 「それは妙案ですね」

ミリアムも乗り気であった。

 
 何をやっても平均以上のミリアムだから少々舐めてかかっていたのは否めないのだが、細い銀の糸をり合わせて形を作るのがなんとも上手くいかない。
 無難に四つ葉のクローバーを仕上げるキャロラインの横でミリアムの六芒星はなんとも不恰好だった。
  幸運のお守りとしてダニエルにあげようと思っていたが、

「これじゃとてもあげられないわ」

ガッカリするミリアムの横で

「そうかなー、喜ぶと思うよ」


キャロラインは面白そうに笑った。

 



    
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。 初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

側妃の愛

まるねこ
恋愛
ここは女神を信仰する国。極まれに女神が祝福を与え、癒しの力が使える者が現れるからだ。 王太子妃となる予定の令嬢は力が弱いが癒しの力が使えた。突然強い癒しの力を持つ女性が異世界より現れた。 力が強い女性は聖女と呼ばれ、王太子妃になり、彼女を支えるために令嬢は側妃となった。 Copyright©︎2025-まるねこ

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

処理中です...