良いものは全部ヒトのもの

猫枕

文字の大きさ
41 / 42

41

   島を離れる日、たくさんの島民がミリアムとダニエルを見送りに来てくれた。

 色とりどりの紙テープが二人と島民を繋ぎ、やがて切れていった。

 船が岸壁を離れ遠ざかる島を名残惜しみながらミリアムが呟く。

「ここの人たちは新しい情報からは隔絶されていたけど、生きていくのに必要な知識と知恵はしっかり持って生きているのよね。
 いつも流行や噂話に踊らされて人目を気にして生きてきた私にとっては得ることの多い島の生活だったわ」

「あの密造酒どぶろくは絶品だったな」

「ダニエル様はすっかり島に溶け込んでましたよね。短パンとゴム草履でペッタンペッタン歩いてるの見たときはギョッとしましたよ」


「君だって何あれアッパッパーっていうの?ずぼって頭から被るワンピースみたいなヤツ。『この柄が良か~』『それは私が先に目ばつけとったと!』とか言ってベイビーちゃん達と奪い合ってたじゃない」

「あれ、ものすごく楽なんですよ。
・・・ 皆、良い人たちでしたね」

「校長や村長が『新しいトリックを考えたから聞いてください』ってしょっちゅうやって来るのには参ったけどね」

「ダニエル様の役に立ちたいんですよ・・・フフ」

「またいつか戻って来ようね」

 
 ダニエルはミリアムの手をしっかり握って言った。




 二人は本島で一泊してから本土に渡った。

 ロザリンとパトリックの結婚式まで二人はロザリンの家に滞在した。
 ロザリンはミリアムとダニエルの婚約を知って、驚きながらも心から祝福してくれた。

 「シャイニーはおめでたで来られないんですって。
  後で手紙見せるけど、すごく残念がってたわ」

「他のエアーズは?」

「みんな来るわよ」

「?エアーズ?って何?」

「居てもいなくても気づかない地味でつまんない女達のことですよ」

ダニエルが遠慮なくハハと笑っているところにパトリックが現れる。

「君のお陰で凄いことになってるよ。
 ワインが馬鹿売れだよ」

 差し出したワインは細身の瓶にアウレア・ヴィア(黄金の道)と書かれた素敵なラベルが貼ってある。

 「俺たちの進む道が輝いているようにこの名前をつけたんだ」

 パトリックがロザリンに微笑むとロザリンもとても嬉しそうだ。

「旅行者も増えててね、うちの領地だけでなく周りの地域も潤ってるよ。新しい特産品の開発もしているよ」

 それは良かったと喜び合っていると、他のエアーズも到着した。
 卒業以来の再会に喜び合う面々。
 ダニエルを紹介すると黄色い歓声を上げ、ミリアムはエアーズの希望の星よと喜んでくれた。

 その夜は社交に引っ張りだこのダニエルを置いて女子だけで盛り上がった。



挙式は海の見渡せる岬の白亜の教会で執り行われた。
 純白のウェディングドレスに身を包んだロザリンは最高に美しかった。
 鐘の音が鳴り響き白い鳩が青空を舞った。
 
 見とれるミリアムに

「王都に帰ったら最高にイカすウエディングドレス作ろうな!純白の超ミニとか」

 ミリアムが睨むとダニエルはイタズラっぽく笑った。
 
 
感想 95

あなたにおすすめの小説

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

恋の終わりに

オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」 私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。 その時、私は 私に、できたことはーーー ※小説家になろうさんでも投稿。 ※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。 タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。

断罪された薔薇の話

倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。  ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。  とても切ない物語です。  この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。   

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。 初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。