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ミリアムとダニエルは王都から馬車で半日程の郊外の森に居を構えた。こじんまりしているが居心地の良い家だ。
そこで二人は畑を耕したり小川で姫鱒を飼ったりして田舎生活を楽しんだ。
そして気が向いた時に社交界に顔を出した。
ダニエルはダニエル・ロイドになった。
一応ロイド家の仕事も手伝うが、基本は現当主のミリアムの父が運営しミリアムが男の子を生んだらその子を当主として教育するということで合意した。
ただし、本人の意思を尊重する、ということで。
ミリアムの父ナサニエルは涙を流してこの結婚を喜び、母ナタリーはダニエル・ショーンと結婚って、と笑っていた。
ダニエル・ショーンとマダム・シャノアールの結婚は大々的に報じられ結婚式にはたくさんの人が参列してくれた。
ロベルトも来てくれた。
「汝に幸いあれかし たとい我が心 破れ失うとも」
・・・重い。
「ありがとうございます。ロベルト様がお許しくださるならこれからも友達でいてください」
「もちろんだ」
変人だけどミリアムには誠実に接してくれた大切な友人だ。
シャイニーの話によるとミリアムがロベルトを断ったという話を聞いたシンシアが当然自分は受け入れられるつもりでロベルトに挑んで玉砕したらしい。
「申し訳ないが私は面食いなのだよ」
他に言い様がないのか、というセリフでロベルトに撃退されたシンシアは怒髪天を衝く形相で周囲にロベルトの悪口を言いまくったらしい。
「なにアイツ!目が悪いの?頭がおかしいの?目と頭が壊れてんの?」
当のロベルトは
「ああいう手合いはハッキリ言ってやらないとしつこいから」
と涼しい顔をしていたそうだ。
シンシアも結婚式には来てくれたが、
「ナサニエル伯父様といいロベルト様といいダニエル様といい、ご自分が美しい人はそうでない相手を求めるのかしらね。
遺伝子がそうさせるのかしらね」
まったく悪気がないのが清々しい。
どこで知り合ったか最近はシンシアとカトレア様が意気投合してつるんでいるという。
絶対近づきたくない。
ダニエル曰く、「ミリアムのスタイルの良さを際立たせるデザインのウェディングドレス」はシンプルながらも上質な素材で最高に美しかった。
ミリアムはドレスにあまり関心がなかったので概ねダニエルの嗜好に異論はなかったが、
「ここは斬新に罰当たりな黒でいかない?」
という提案は全力で拒否した。
西域地方から取り寄せられた珍しい食材やパトリックのワインなどで招待客は大いに楽しんだ。
お産が重なったシャイニーが出席できなかったのは残念だったが。
シャイニーが男の子を生んだ。
ルークス(光)と名付けられたその赤ちゃんはグリッターそっくりの超絶美しい子だ。
それにしてもグリッター、シャイニー、ルークスなんてキラキラネーム一家だ。
グリッターは次に女の子が生まれたらグロリアにしようとか言っていた。
「ミリアムが女の子を生んだら結婚させたいな」
「気が早いよ。
シャイニーと親戚になるのは嬉しいけど、スローン様はちょっと・・・」
「なにを?!
ボクだってボクそっくりな息子がオヌシそっくりな娘と結婚なんてゾッとするわい」
「それはオレも嫌だなー」
とダニエル。
シャイニーが授乳しているとグリッターが恨めしそうにじっと見てきて、
「それはあくまでも一時的に貸しているだけでボクのだからな」
と赤ちゃんに毎回言うのでシャイニーはいい加減イライラしているのだそうだ。
「乳離れするのにカラシを塗る人もいるらしいよ」
とダニエルがニヤニヤ。
「グリッターの乳離れ」
皆で笑ったらグリッターが拗ねてしまった。
それからミリアムとダニエルには、ダニエルそっくりの男の子ハロルドが生まれた。
それから今度はミリアムそっくりの女の子パメラが生まれたが、ダニエル譲りのスッキリした輪郭でエラは張っていなかったので、ミリアムは胸を撫で下ろした。
パメラはダニエルの秘蔵っ子でいつも抱っこして歩いていた。
その頃ダニエルの父親が亡くなった。
ミリアムは未亡人となったダニエルの母ナディアを森の我が家へ招待した。
「ここは心の落ち着く場所だわ」
ナディアは孫の相手や畑の土いじりを楽しんでいるようだった。
夫亡き後、血の繋がらない息子の世話になっているのは気を遣うのだろう。
「こんな田舎の何も無い所ですが、よかったら一緒に暮らしませんか?」
ミリアムの提案に最初は遠慮していたナディアだったが居心地の良さに結局は居着くことになった。
邸は建て増しされ、中庭のある家になった。
家族たちは何かにつけて中庭に集まってくると、ごはんを食べたりお茶を飲んだりハンモックで本を読んだりブランコで遊んだりする。
穏やかで平和な日々が流れていく。
ミリアムの書いた本で、田舎暮らしがブームになりつつある。
夏休みにはグリッター一家が滞在したり、ミリアムの両親が来ることもある。
皆が思い思いにのんびり過ごしていく。
いたずらっ子の孫を追い回すナディアを見つめていたダニエルがミリアムに、
「あんなに楽しそうで安心した母の顔を見たことがないよ。君には感謝している。愛してる、ありがとう」
ミリアムはダニエルの涙を初めて見た。
かつてミリアムはステキな良い物は全部他の誰かのもので、自分には縁の無いものだと諦めていた。
でも今は自分でいるのも悪くない、と思っている。
(おわり)
読んでくださってありがとうございました。
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感想ありがとうございます