365通りのエッセイ vol.2

蒼井托都(あおいたくと)

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07.そろそろやっと旅に出ようと思え始めた

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10月末、とても久しぶりに仙台へ行ってみた。

前回は2019年末以来のような気がしている。

きっかけはなんてことない、周りで旅行に行き始めている人が増えてきたので、今なら行けると思った。

会社に所属し家族と一緒に生活をしている中で、いかに他人の都合を気にして身動きが取れなかった数年だったろうと今では思う。

久々の旅は、行き慣れていたはずの仙台にしてみた。

関東にも行ってみたかったけれど、旅のリハビリに選ぶには思い切り過ぎのように感じて次の機会にしてみたのだ。

それは正解だったと感じている。

行き慣れていたはずの仙台で、変わらない景色の数々を見ることができ、
大好きなお店も変わらず存在していることはよく分かった。

素直に楽しかったと思っている。

牛タンを食べに行った後は、書店を3店巡って仙台駅に戻り、前からオーダーしてみたかった改札向こうのカフェのラテを飲んでまったりと新幹線を待っていた。

自分の頭が、大量の久々な風景情報を処理しきれていなかったように感じたので、夕方までいる予定だったけれど早めの時間に帰宅することにした。

思った以上に脳疲労が短時間で爆増していて、それは何に対してだっただろうと考える。

ただ単に気圧の問題とかもあったかもしれないけれど、前の晩寝不足だったせいかもしれないけれど、唐突に決めすぎて心の準備が追いついていなかったかもしれないのだけど。

いかにこの数年、同じ景色をルーティンを繰り返し続けてきたのだろうと、ふと思った。

この数年別に家にこもりきりだったわけではない。

在宅勤務はできない仕事をしていたので、出社で通勤移動はほぼ毎日のようにしていたし、休日も図書館などにはよく行っていた。

今年になってローカル線に何度か乗る機会を作り、月1で電車にも乗る習慣はできていたのに。

新幹線の車窓から見える景色の懐かしさを見つめるまではよかった。

本当はこの段階で目や脳が疲れるだろうと思っていたのだけれど、

いざ降り立った旅先の土地の広さに、大きさに、都市感に、圧倒されるほうが強かった。

あんなに何度も行っていた場所であったはずなのに、だ。

いかに自分が認識する世界が小さくなっていたか、痛感した。

同じくらい、また価値観や世界が思考がどばーっと広がっていく感覚があった。

やけにえぐかった脳疲労はこのせいだったのだろうと感じている。

僕は別に地元が嫌いなわけではない。

先月はnoteのクリエイターフェス勝手に略しクリフェスで一ヶ月毎日更新していて、

最後の記事も地元について旅先から戻ってきて打ったものだ。

それでも、また「世界が広がっていく感覚」というものが、始まってしまったように思う。

行動範囲を制限された世界でもなんとか満足できるんだ、ということは、この数年いろんな方法で、たまに失敗しながらも毎日を楽しもうとしてきたことから実証済みだ。

それでも僕は、旅がしたいんだな、と改めて思った。

そして本当に住みたい土地というものも、もう定めてみたりしている。

そこに向かって少しずつ、本当は繋がりがないはずだった歩みを少しずつ続けてきて、だんだんに動きやすい世界というものへ向かい始めている。

ただ、最初から本当は世界もその土地も変わってはいなかったんだ、とも感じたりした。

変わってしまったのは僕の価値観だった。

世の中とか周りの、とは言わない。僕自身の価値観だった。

本当に旅をしたかったなら、さっさと所属を手放して誰にも気兼ねなく旅をすればよかった。

こっそりとでも行ってみればよかったのだ。

まあ家族には嫌な顔をされるかもとは思ったけれども。それも僕の勘違いだったかもしれないってことが、「これから関東とかにも行ってみたいと思っている」と告げたときの家族の反応で分かったりもしたけれど。

本当にそうしたかったなら、さっさとそうすればよかった。

どうしようもなく精神的に追い込まれて、何も手につかない時期も経験したからこそ、今ではそう感じる。

僕の世界を勝手に狭く捉えてしまったのは、僕自身なのだ。

それをすごく痛感したからこそ、これからは物理的にも精神的にも、旅に出ていこうと思う。

えっと精神的にもって意味分からないかもだけど、なんでかこう出てきた。たぶん僕はしにましぇん。思考ももっと広く旅立たせたい。

まだまだ目に見えないものとの闘いは続くのだろうけど、もともとそこは気にしていなかった僕がいる。

それだって捉えようだったし、それならなおさら見たい景色を見に行くことに躊躇う必要は無かったよなと思ったりするのだった。
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