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第4話 銀のペンダント
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勇者の死体はそのまま放置することにした。
「勇者とはこういう人間が選ばれるのか」
倫理感の欠如したような言動を思い出して本音をもらすと、ユリウスは苦味のある顔をした。
「勇者は、魔族を殺しても心のくもらない者が選ばれるからね」
「……なるほど」
妙にくもりのない瞳を思い出しながら納得する。
そしてユリウスを故郷の村に連れ帰る、と言うとヴォルチェは全力で反対した。
「ゆ、許さねえ! ぜってぇ許さねえぞ!」
「……そうか……」
この様子なら、村の住人たちも受け入れてくれないだろう。
しかし、ユリウスと離れたくない……と思う。
「なら……旅に出る。どこかに俺たちを受け入れてくれる場所があるかもしれない……」
「ええ……? そんなのあるわけ……」
ヴォルチェは眩暈がしたようだった。
しかしスナイデルは本気だった。
「一度母さんに挨拶しに戻る。出発はそれからだ」
至極真面目に話すと、ヴォルチェは瀕死のときよりも悪い顔色になった。
「そ……そんなことしなくていいから。それなら連れて帰ろう」
「いや……村の人たちが嫌がるだろう」
「いや、いいよ! 人間の一生なんてちっぽけだ。くたばるまでの辛抱だろう!」
そのとき、黙っていたユリウスの肩がピクリと揺れた。
スナイデルも胸に痛みを覚え、顔がわずかに強ばる。
けれど、ヴォルチェは気付いていないようだった。
「俺も、みんなの説得に協力するから!」
強く訴えられ、迷いを抱きつつ頷く。
村に帰ると、ヴォルチェが村人たちを説得してくれた。
勇者を倒した話などをすると許可してくれて、村の外れに家を建てて、ユリウスとふたりでの暮らしを始める。
ユリウスは毎晩のように体を求めてきて、最初は彼に必要とされているのが嬉しくて応えていたけれど、連日になり、いよいよ人間の性欲の旺盛さに根を上げてしまう。
ベッドの上で裸のままぐったりしながら、ふと思った。
「寿命のこと、焦っているのか……?」
「……そうかもしれないな……」
言いながらユリウスがスナイデルをそっと抱きしめてくる。
生肌の温もりを感じながら、スナイデルも「ユリウスが先に死んでしまったら……」と想像して恐ろしくなっていた。
「それなら……種族自体を変える魔法がないか探しに行かないか?」
落ち着いていられずに言うと、ユリウスが瞬いた。
「……え?」
「聞いたことは無いが……もしかしたらあるかもしれない」
ユリウスは徐々に瞳に力を強くし、「ああ……!」と頷いた。
きっとあるはずだ……と願うように思う。
一緒に老いることができたら……と希望を夢て見て、同時に、不安も芽生えた。
「……もし……俺が老いても、好きでいてくれるか」
ユリウスを見つめると、彼は真摯な眼差しで答えた。
「きみの生涯を守らせてほしい」
その言葉を聞いて、スナイデルは口元を綻ばせた。
これからも一緒にいられることを願いながら、彼の胸元に銀の髪をすり寄せた。
END
「勇者とはこういう人間が選ばれるのか」
倫理感の欠如したような言動を思い出して本音をもらすと、ユリウスは苦味のある顔をした。
「勇者は、魔族を殺しても心のくもらない者が選ばれるからね」
「……なるほど」
妙にくもりのない瞳を思い出しながら納得する。
そしてユリウスを故郷の村に連れ帰る、と言うとヴォルチェは全力で反対した。
「ゆ、許さねえ! ぜってぇ許さねえぞ!」
「……そうか……」
この様子なら、村の住人たちも受け入れてくれないだろう。
しかし、ユリウスと離れたくない……と思う。
「なら……旅に出る。どこかに俺たちを受け入れてくれる場所があるかもしれない……」
「ええ……? そんなのあるわけ……」
ヴォルチェは眩暈がしたようだった。
しかしスナイデルは本気だった。
「一度母さんに挨拶しに戻る。出発はそれからだ」
至極真面目に話すと、ヴォルチェは瀕死のときよりも悪い顔色になった。
「そ……そんなことしなくていいから。それなら連れて帰ろう」
「いや……村の人たちが嫌がるだろう」
「いや、いいよ! 人間の一生なんてちっぽけだ。くたばるまでの辛抱だろう!」
そのとき、黙っていたユリウスの肩がピクリと揺れた。
スナイデルも胸に痛みを覚え、顔がわずかに強ばる。
けれど、ヴォルチェは気付いていないようだった。
「俺も、みんなの説得に協力するから!」
強く訴えられ、迷いを抱きつつ頷く。
村に帰ると、ヴォルチェが村人たちを説得してくれた。
勇者を倒した話などをすると許可してくれて、村の外れに家を建てて、ユリウスとふたりでの暮らしを始める。
ユリウスは毎晩のように体を求めてきて、最初は彼に必要とされているのが嬉しくて応えていたけれど、連日になり、いよいよ人間の性欲の旺盛さに根を上げてしまう。
ベッドの上で裸のままぐったりしながら、ふと思った。
「寿命のこと、焦っているのか……?」
「……そうかもしれないな……」
言いながらユリウスがスナイデルをそっと抱きしめてくる。
生肌の温もりを感じながら、スナイデルも「ユリウスが先に死んでしまったら……」と想像して恐ろしくなっていた。
「それなら……種族自体を変える魔法がないか探しに行かないか?」
落ち着いていられずに言うと、ユリウスが瞬いた。
「……え?」
「聞いたことは無いが……もしかしたらあるかもしれない」
ユリウスは徐々に瞳に力を強くし、「ああ……!」と頷いた。
きっとあるはずだ……と願うように思う。
一緒に老いることができたら……と希望を夢て見て、同時に、不安も芽生えた。
「……もし……俺が老いても、好きでいてくれるか」
ユリウスを見つめると、彼は真摯な眼差しで答えた。
「きみの生涯を守らせてほしい」
その言葉を聞いて、スナイデルは口元を綻ばせた。
これからも一緒にいられることを願いながら、彼の胸元に銀の髪をすり寄せた。
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