5 / 9
事後
しおりを挟む「オメガのフェロモンが混じってるね…………」
首元に吐息がかかり、俺は「ぁ」と喘いだ。
男根は抜かれていたが、絶頂の余韻がまだ残っていて、足先がヒク、ヒクと揺れていた。
「果実みたいな匂いだよ。わかる? むかしよりずっと深みがある。熟れ始めの匂いだ」
調香師として分析されている。今度はモルモット扱いだ。
そして「ヒートを起こしているのか」と、かすんだ頭なりに思った。
「よくせいざい…………」
「ヒートは起こしてないよ。汗をかいたから一時的に香りが立ち上ってるだけ」
なら、シャワーを浴びるしかないのか。
「俺のアルファのフェロモンがついてるから、かなり紛れてるけど――」
言いながらミカエルはチェストに手を伸ばした。
「これ、話してたプレゼント。ベータの男の匂いをイメージして作った香水でね?」
見上げた先にあるのは、携帯できるサイズの小さな小瓶だ。装飾もないシンプルなものだ。
「材料はね。干からびたチーズと、痛み始めたハム、猫のフン、ロバの精液、あとお酢」
からかわれているのか。
「そりゃ、モテそうだな…………」
嫌味で嘲ったが、ミカエルは全く動じたところがなく落ち着いていた。
「それをエッセンスにして、シトラスやウッドや麝香やペパーミントで整えてある。今から使うね」
え、と焦ったが、ミカエルはしずくをハンカチに取り、俺の首筋や耳や腹や足や性器につけてくる。その刺激で俺はまたしても快楽に襲われた。ビクッビクッと恥辱を噛みしめながら悶える。
「こんなもんだね」
ミカエルは俺の陰茎を撫でてから言った。
俺の肌から漂っているのは――
俺は思わず混乱した。自分からベータの男くさい汗の匂いがする。
名前をつけるなら「ゲスの冒険者」だ。
「チェスの匂いを隠せたらと思って作ったんだよね。どう? 体も少しは落ち着いたんじゃない?」
言われてみて、気休め程度に落ち着いた気がした。
マシになったのは体というより、頭だ。
俺の頭を陶酔させていたミカエルの香りが、ベータの匂いで上塗りされている――
これは、魔法の香水だ。ハッとしてミカエルを見ると、奴は自信たっぷりに小瓶を揺らした。
「欲しいでしょう?」
確かに、欲しい――。人の多い場所、密閉された場所、特に今度働く予定の訓練所では、絶対に役に立つ。
だが、これで恩を着せられてはたまらないとも思う。
「…………金を払う」
するとミカエルは眉を下げて、おかしそうにわらった。
「プレゼントだって」
「てめえからもらえるかよ」
「もう、強情だねえ」
香水の値段ってのは一体いくらくらいするのか。特注なら猶更。いや、素材の汚物の原価は安いだろうが。
ひとまず服を着ようと腕ずくで起き上がる。
ミカエルはゆったりとベッドに寝そべりながら微笑んだ。
「気に入ってくれてよかった。俺が勝手に用意しただけだから、費用は受け取らないよ。あ、でも俺のとこに来る日は付けて来ないでね」
「なんだって?」
服を着ようとしていた手を止めて振り返ると、ミカエルは今更のようににっこりと微笑んだ。
「まだまだ満足してないし。今日一回で終わるはずないでしょ」
俺は間抜けに口を開けて絶望した。
20
あなたにおすすめの小説
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)
かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。
ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる