脅されて香水屋αのおもむくままに愛される不良Ωくん

市川

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事後

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「オメガのフェロモンが混じってるね…………」

 首元に吐息がかかり、俺は「ぁ」と喘いだ。
 男根は抜かれていたが、絶頂の余韻がまだ残っていて、足先がヒク、ヒクと揺れていた。

「果実みたいな匂いだよ。わかる? むかしよりずっと深みがある。熟れ始めの匂いだ」

 調香師として分析されている。今度はモルモット扱いだ。
 そして「ヒートを起こしているのか」と、かすんだ頭なりに思った。

「よくせいざい…………」
「ヒートは起こしてないよ。汗をかいたから一時的に香りが立ち上ってるだけ」

 なら、シャワーを浴びるしかないのか。

「俺のアルファのフェロモンがついてるから、かなり紛れてるけど――」

 言いながらミカエルはチェストに手を伸ばした。

「これ、話してたプレゼント。ベータの男の匂いをイメージして作った香水でね?」

 見上げた先にあるのは、携帯できるサイズの小さな小瓶だ。装飾もないシンプルなものだ。

「材料はね。干からびたチーズと、痛み始めたハム、猫のフン、ロバの精液、あとお酢」

 からかわれているのか。

「そりゃ、モテそうだな…………」

 嫌味で嘲ったが、ミカエルは全く動じたところがなく落ち着いていた。

「それをエッセンスにして、シトラスやウッドや麝香やペパーミントで整えてある。今から使うね」

 え、と焦ったが、ミカエルはしずくをハンカチに取り、俺の首筋や耳や腹や足や性器につけてくる。その刺激で俺はまたしても快楽に襲われた。ビクッビクッと恥辱を噛みしめながら悶える。

「こんなもんだね」

 ミカエルは俺の陰茎を撫でてから言った。
 俺の肌から漂っているのは――
 俺は思わず混乱した。自分からベータの男くさい汗の匂いがする。
 名前をつけるなら「ゲスの冒険者」だ。

「チェスの匂いを隠せたらと思って作ったんだよね。どう? 体も少しは落ち着いたんじゃない?」

 言われてみて、気休め程度に落ち着いた気がした。
 マシになったのは体というより、頭だ。
 俺の頭を陶酔させていたミカエルの香りが、ベータの匂いで上塗りされている――
 これは、魔法の香水だ。ハッとしてミカエルを見ると、奴は自信たっぷりに小瓶を揺らした。

「欲しいでしょう?」

 確かに、欲しい――。人の多い場所、密閉された場所、特に今度働く予定の訓練所では、絶対に役に立つ。
 だが、これで恩を着せられてはたまらないとも思う。

「…………金を払う」

 するとミカエルは眉を下げて、おかしそうにわらった。

「プレゼントだって」
「てめえからもらえるかよ」
「もう、強情だねえ」

 香水の値段ってのは一体いくらくらいするのか。特注なら猶更。いや、素材の汚物の原価は安いだろうが。
 ひとまず服を着ようと腕ずくで起き上がる。
 ミカエルはゆったりとベッドに寝そべりながら微笑んだ。

「気に入ってくれてよかった。俺が勝手に用意しただけだから、費用は受け取らないよ。あ、でも俺のとこに来る日は付けて来ないでね」
「なんだって?」

 服を着ようとしていた手を止めて振り返ると、ミカエルは今更のようににっこりと微笑んだ。

「まだまだ満足してないし。今日一回で終わるはずないでしょ」

 俺は間抜けに口を開けて絶望した。

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