高身長くんは抱かれたい!

こまむら

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高身長くんを抱きたい!第1話

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遠くの方で音が鳴っている
ぼやっと漂っている意識を手繰り寄せていくと
どんどん音が近くなってきた
カチャカチャと食器が当たる音
コポコポとお湯が沸く音
それに伴って瞼が明るくなる
ここはどこや?
昨日、よっさん家で寿司食おおもて買ってって、
それから……。
それから。
急激に意識が浮上する。
せや、よっさんを抱いたんや
パッと目を開けると真白の天井。
胸下を見ると自分は持っていない灰色のTシャツに黒いジャージの半ズボン
夢かと思っていた音は現実で鳴っていた
よっさん起きてるのか
「んあぁ…」
大きなあくびを1つ
喉がカラカラで引っ付いた。
体を伸ばせば強ばっていた筋肉が解れた。
「あれ、起きたんか。おはよう」
開いていた寝室からひょっこりと顔を覗かせ、低く心地よい声を響かせたのは背の高い男だった
「ん、おはようよっさん。はやいなぁ」
「お前が寝坊助なんや。もう11時やぞ」
ふんわりと柔和に笑う男は髪型はかっちりと決め直してボーダーのワイシャツに薄いベージュのカーディガンを羽織っていて、いつも俺が見てるラフに佇んでる姿ではなくてよそ行きの姿だった。
笑顔以外は。
イ、イケメンおるー!
こんなん女の子から見たら100点満点やないか
心でそうぼやき、立てた左膝に頬杖を付いた
「なんや、その不服そうな顔は」
困ったように笑うその顔は自分が女だったらイチコロだろうなぁと思う
その顔があんなに卑猥に歪むんだもんな
なんだか世界中の女に勝ったような気持ちが湧いた
「別にぃ」
口を尖らせてそう言うと寝室に足を踏み入れベッドに片膝ついて四つん這いで顔を近づけてきた
「な、なんやの」
「別にぃ」
再び柔和に笑うと大きな手のひらで頭を撫でられる
カァっと顔が熱くなるのが分かる
「飯食わんの」
「飯あるん?」
あるよ、とリビングの方を指さしよっさんはベッドから離れた
身長差はそこそこ。
ベッドに座ってる状態で見下ろされると背の高さに惚れ惚れする
神様って残酷や。身長もいい声もカッコイイ顔も家事力も仕事力も全部こいつに渡したんちゃうかな。
ポーっと顔を見つめてると再度、なんや?と怪訝な顔をされる
「何でもないよ…」
1人傷ついてるだけだから気にせんといてや…
これで女の子にモテないとか絶対嘘だ。
困ったような笑顔で傷付けないようにお断りしてる姿が目に浮かぶ
「はよ食いや。冷めるで」
怪訝な顔のままリビングに踵を返す後ろ姿はガッチリとまではいかないものの多少筋トレしてますよーと言っているかのよう。
肩幅は広く、黒いスキニーを履いた足は細すぎもせず太すぎもせず。おしりはキュッと丸く上についている。
かたや自分は…と考えそうになった所で頭を左右に振りベッドから降りる。
アカン、ごはん食べよ
小さくため息を吐いてリビングに足を向けた。


「タバコはベランダや。飯はテーブルに置いてある」
リビングに着いてそうそう電子タバコに手を伸ばした僕を見つけたよっさんはキッチンから開口一番そう言った。
「ほーい。まだ吸わんけどな、先に飯頂きます」
テーブルに目を配ると白飯に鮭と目玉焼き、味噌汁とお新香が添えられている。
ザ・ジャパン
「よっさんご飯派?」
「すまん、パン派やったか」
いやいや、と首を振り席に着いた。
「僕は昔からご飯派。でもこんな日本の朝ごはん!って朝飯食った事ないわ嬉しい。」
「もう昼食やけどな。」
確かに、とスマホを開いて思った。
もう12時手前。
昨日散々騒いだから疲れたんだろうか
久しぶりのエッチって訳でも無かったが、なんか盛り上がるものがあったんだろうな
「お茶とコーヒーどっちがええ?牛乳は無いで」
「お茶がええなぁ」
了承の返事と自分の頂きますが被る。
鮭を口に運びながらよっさんはいつも通りだなと目を向ける。
昨日散々あんなんになったんに
僕だったら恥ずかしくて目も合わせられない
しっかしエロい男だった、長い付き合いなのに全然知らなかった。
エロいは置いといて男が好きって言ってくれても良かったのに。僕そんなに偏見しそう?
誰が返事してくれる訳でもなく自問自答をする。
お茶を入れ終わりこちらを向いたよっさんと目が合う
「…あのさ、木元。」
「はっ。…なに?」
眉を八の字に下げシンクに両手を着いた。
「俺の事見すぎ。照れるからやめて」
「…僕そんなに見てた?」
息を1つ着いて首を縦に振った
「なんや思う所色々あるみたいやけどその凝視やめて?」
「すんまへん…」
いたたまれなくなって持っていたお茶碗で顔を隠す
お茶を持ってテーブルまで来ると向かいに胡座をかいて座る
「言いたい事あるならちゃんと言いや。百面相でじっと見られるとかなわんよ」
出た、女の子悩殺困り笑顔
「イケメンやなぁ、とおもて…」
「はぁ?1つ目がそれ?なんやねん…」
口では呆れているようだけど、顔は安堵していた。
俺に突き放されるのが怖かったんだろうな、と分かる
深夜のノリってよくあるし、それなんじゃないかって疑われてたんだと思う。
「僕がそんな男に見える?」
「なにが?宇宙と会話しとる?」
「よっさんと会話しとる。顔がそんなことで良かったって顔しとるから」
ボリボリと音を立ててお新香を噛みながら顔を見ると、顔にはバレたか。と書いてあった。
「僕はちゃんと自分の心とちんちんで会話しとるから、エッチしたあと後悔した事ないで。むしろ感謝しとる」
よっさんに向けて両手で拝むポーズをすると、安心したような笑顔でなんやねんと言ってくれた。
多分今までのよっさんはおもてなしの心で僕と接してたと思う。
嫌われないように、引かれないように。せめてもってやつ
「僕はよっさん抱けて良かったよ。こんなイケメンの裏の顔しれたんやで?しかも体の相性もいい。僕ラッキーやん。」
「俺の事イケメンやと木元は思うとるの」
「思うとる!危うく惚れかけた。あのくそえっちなよっさんと朝のよっさん。これこそギャップ萌えやな」
萌え~と言いながら指ハートをプレゼント
よっさんは苦笑を零すと指ハートを手で叩き落とす。
「そんなん言われた事ないわ。声が低くていいーは言われた事あるけど」
「いや、ちゃうねん。多分よっさん鈍感なだけだと思うわ。絶対会社でよっさんに心惹かれてる乙女おるよ」
嬉しないな、男がええわなんて悪態つきながら満更でもない顔でコーヒーを啜った。
そう、本当はそれも聞きたい。
なんで僕に男が好きって今まで隠してたのに言ってくれたのか。
昨日、ふと目に入った寝室の壁掛けカレンダー。
僕と会う日の全てに可愛い猫のシールが貼ってあった。
たまたまか、それとも。
悶々とするがこれはまだ聞かないでおこう
お味噌汁をすする。
「木元今日暇か?」
何でもない質問が飛ぶ。
でも緊張が解れた声質だった。良かった。
「暇やで」
「ほなちょっと仕事に付き合ってくれへん?」
「おん?ええよ、なにするん」
聞くと、スマホを手にし何かを検索しているよう
ご飯をモグモグ食べ進めていると検索結果を見せられた。
「これは…ゲームのコラボカフェ?」
「そ、ちょっと行かなアカンねん。木元も好きやろこのゲーム。遊びがてら付き合ってや」
「どっちの仕事なんそれ。よっさんで行くん?それともちゃう方で行くん」
よっさんは仕事が2つある。
1つは会社勤めのプログラマー
もう1つは…
「『みやび』で行かなやな」
人気のゲーム配信者
低くていい声!落ち着いたプレイング!関西弁がまたいい!なんて言われてる。
「ほーん。ええよ、女の子にキャーキャー言われとるの見てりゃええんやな」
「キャーキャーは分からんけど…まぁせやな、少しゲームしてプラプラしようや」
僕もこのゲーム好きでやってるし、楽しそう。
あ、だからかっちりキメてたのか。
そうか、このイケメン目当ての女の子に囲まれて笑顔振りまくの見てなきゃなのか。
「なんか、よっさんが女の子に囲まれてキャーキャー言われとるの見てなきゃアカンって想像したらモヤッとしたわ今」
なんやろう?とよっさんの顔を見ると目を丸くして僕を見ていた。
え。なに?
「…ヤキモチ?僕今ヤキモチ妬いとる?」
「知らん…けど俺はそう受けとった。から嬉しい。」
「え、嬉しいの?」
しばらく見つめ合った後、2人同時にテーブルに視線を落とした。
ヤキモチ妬いたのか?それが嬉しいってどういう…。
「なんかむしゃくしゃするから帰ったら抱かせてな…」
「意味わかれへん…。」
僕も自分の感情が意味わからへん…。
頭がこんがらがり、それを解きながらゆっくりとご飯を口に運んだ。


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