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新しい魔導具の研究は順調だ。近いうちに孤児院で、実際に試作品の運用を開始してみる予定になっている。
魔力がなくても動く魔導具、というと違和感があるかもしれないが、要は魔力を貯める機能を魔道具に持たせることが肝となる。
これまで魔力を貯めておけるのは一部の鉱石や宝石のみという認識だったが、魔導具に特殊な加工を施すことで空気中の微弱な魔力を貯めていくことが可能になったらしい。
魔力のない人はごく少数だからその声もなかなか届かず、彼らのための研究は今までほとんど行われていなかった。
パートナーを持つ魔法師たちが研究を進めようとしたこともあるのだが、魔法師には常に多種多様な要望が届き、日々の研究もあってかなり多忙な職業なのである。
それにパートナーになってしまえば、みんなそれ以降は相手に不自由させないため研究が後回しになってしまうという内情もあった。
セレスが特殊なのだ。思ったことは即行動、そしてそれを実現できるだけの優秀さがある。
こんなにもすごい人と恋人だなんて、しかも彼の行動のきっかけになったのは僕だなんて……やっぱり不思議だし、もはや畏れ多くもある。
僕なんかで本当にいいのかな、と思うことはたびたびあった。セレスが有名人なのもあって、僕たちの関係は王宮内ですでに公然の秘密だ。
仕事中歩いていると、ただ興味津々に見てくる人もいれば、僕のことを良く思っていないことが丸わかりな突き刺さるような視線を感じることもある。
セレスやロディー先生がいないときなんかは、あえて聞かせているんだろう、実際に陰口が聞こえることもあった。身分がなきに等しい僕に対する陰口なんて、聞きなれている。王宮の人は市井の人間より言葉が上品なぶん優しく感じるくらいだ。
だけど、セレスのパートナーとして貶されていると感じると途端に落ち込む。僕のせいでセレスまで悪く言われてしまうのは……すごくつらい。
僕は胸元のペンダントを握りしめた。そこには、親指の爪よりも大きな涙型の宝石がぶら下がっている。
魔力を使い切って貯めるためにセレスが嬉々として買ってくれたのは、彼の瞳の色によく似たアメシスト。受け取るのにもひと悶着あったものの、ちょうど僕の誕生日が近かったのもあり、何より実用的なものだと言われてしまえば断れなかった。
いまや僕の宝物だ。
僕が周囲に認めてもらうには、仕事で実績を残すとか? うーんさすがに難しい。それに、有名人の相手は変に目立たないほうが良いだろう。
もし……子どもができれば……。
セレスの研究で再現した古の魔法を使ってもらって、僕も妊娠してしまえば誰も表立って文句は言えまい。セレスの家族が僕たちの結婚を認めていないっぽいのも気になっているのだ。
ああ駄目だ! 子どもは大好きだしいつかは欲しいと思っているけど、こんな、子どもを利用するような考えで作ろうなんて思っちゃ駄目だ。そんなの顔も知らない、僕のことを捨てた親とどう違う?
一瞬でもそんな考えが浮かんでしまった自分が、ひどく卑怯な存在に思えた。ぐるぐると自己嫌悪に陥る。
気分が上昇したり下降したり。僕はロディー先生やポロスに「マリッジブルー?」と心配されながら、日々を過ごしていた。
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お読みいただきありがとうございます!
ついに……明日、このお話は完結します。
いつもと違って、朝と昼の更新ですのでよろしくお願いいたします。
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