アルファの僕が、最強のベータにお尻を狙われている!

おもちDX

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 急激な吐き気に襲われた僕は、玄関先で粗相しかけた。即座に気づいたテルルが僕を抱え上げバスルームに直行する。「どこだ!?」と聞かれたけどバスルームが玄関から一番近い場所で助かった。
 僕が戻しているあいだにテルルは我が物顔でうちを歩き回り、キッチンから水を持ってきてくれる。うがいして水を飲んでやっと、僕は現状に気づいてサァッと青褪めた。

 や、やばい……すぐに帰さないと!

 寝台の横には今夜使おうと思っていたコレクションが鎮座している。狭い部屋だから寝室が見えたかもしれないけど、暗いからセーフのはずだ。
 こいつにだけは知られたらまずい! 天啓のようにしびびと危機を感じたが、もはや勘なんてなくとも普通にやばかった。

「ごめん。か、帰って」
「まだ顔色が悪い。寝台まで運んでやるって」
「うわぁ! ちょ、ちょっと……もういいから!!」

 テルルが僕の言うことを聞いてくれるなんて、一瞬でも考えた自分が馬鹿だった。思えばこれまで仕事を除けば全て、こいつは僕の嫌だという行動を起こしてきたのだ。
 あっけなく僕は抱え上げられ、――しかもお姫様抱っこだ――これまたあっけなく開いていた扉から寝室を見つけられ、僕はふわっとシーツの上に着地した。病人扱いなのか、今日に限って優しいのが恐い。
 
 僕を下ろしたテルルの背中側に、いつも使っている張り型が見える。この男がその横にあるランプを点けようとするのは想像に容易い。僕は言い訳なんて思いつかないまま、テルルの腕をグイッと自分の方へ引いた。

「ん? 積極的だな」
「ち、ちが……!」

 次の瞬間、なぜか僕はテルルの腕の中に包まれていた。あったかい……ドキドキする……ドッ、ドッ、ドドドッ、ドドドドド!
 正直な心臓が、動悸で危険信号を出していた。体温にウッカリ癒やされかけたけど、状況はなにも変わっていないどころか悪化している。そもそもテルルと抱き合う理由なんてないはずだ。
 僕は声を張り上げた。

「ちがーう! もう、大丈夫だから。ここにいる理由なんてないでしょ?」
「んー?」

 テルルは身体を起こして今度こそ帰るのかと思いきや、僕のシャツのボタンを上からプチプチ外しはじめた。いや、確かに寝るなら脱ぎたいんだけど……
 なにを言っても生返事で、どうしても着替えさせたいのかと呆れて、僕は自分でシャツのボタンを下から外していった。時短作戦だ。

「……積極的だな」
「もういいから。そこのガウン取ってよ」
「え、着るのか? ……て、これ…………」

 さっさと着替えてしまおう。そう思って椅子に掛けてあったガウンを持ってくるよう指示した僕は、テルルがガウンを探して周囲を見渡すことにまで気が回っていなかった。
 上半身を晒しているせいか、急に寒気を感じてブルっと震える。え、なんか急に気温下がった……?

「アウローラ……これ、使うんだ?」
「は? ――あ、ああ~~~!! そ、そ、それは」
「本当に恋人がいたのか。で、使う予定だった?」
「いいいいや、違うっ。それは僕ので……」
「はぁ!? お前が使われてるのか!?」
「ひぇっ。僕がひとりで使うんだって! なんで怒ってるんだ!」
「……へぇ」
「あ」

 怒り狂った表情から驚いた顔になり……最終的にニヤリと笑った男の顔を見て、僕は恐れのあまり口を滑らせたことを悟った。

「ちちちち違う!」
「張り型と……これは、目隠しか? これを、アウローラがねぇ。こんな趣味が……」

 今日初めて使ってみようと思っていた絹のアイマスク。なぜか嬉しそうにその肌触りを確かめているテルルに、沸々と怒りがわいてきた。

「別にっ、いいじゃないか! 確かに変な趣味かもしれないけど……ひとのプライバシーを踏みにじらないでよぉ!!」
「悪いなんてひと言もいってないぜ。むしろ……興奮してきた」
「へ? こうふん?」
「なぁ、使ってるところ見せてくれよ」
「え……」

 白い月明かりが窓から差し込み、テルルの銀髪を幻想的に照らしている。僕を見下ろすサファイヤの瞳には、薄暗い中で嗜虐的な光が宿って見えた。
 逆光で冷酷にさえ見える顔で、テルルは僕を脅迫した。

「皆に黙っててほしいだろ? 見せてくれたらこの秘密は守ってやろう」

 ひくっと喉が引きつる。僕はいま、このおもちゃを使って自慰しているところを見せろ、と命令されているのだ。
 身体の芯から震えが沸き起こり、全身に伝ってジンとした快感を残した。興奮で視界が潤む。

 テルルは分かってか、僕のどうしようもない性癖をぶち抜きにきていた。まるで催眠術にかけられているかのように立ち上がり、バスルームへと向かう。水で身を清めても、僕が冷静になることはなかった。期待で気が急いて、身体が熱い。
 ガウンだけを着て寝室に戻ると、ヘッドボードに背を預けて座っていたテルルが僕を手招きした。ランプは点けられている。

 なんか、自分の家なのに変な感じ……テルルはこの部屋の主のように存在感を主張している。呼ばれるがまま寝台に腰掛けると、後ろからまだ湿っていた髪をわしゃわしゃと拭かれた。

「髪下ろすと……ぜんぜん雰囲気違うな」
「えっ? あぁ、うん。基本結んでるからね」

 ローズブロンドの髪は癖で波打っていて、短くする方が広がって大変だ。だから肩下まで伸ばした状態で、いつもひと括りにしている。それは活発に走り回るようになった幼少期からずっとで、下ろしているのを家族以外に見せたのは初めてかもしれない。
 
 なぜ髪を拭かれているのかは分からないが、優しく地肌を揉まれると気持ちよくて不思議な心地だった。背中にテルルの体温を感じる。
 酔いの醒めた状態でここまで他人と接触しているなんて、普段なら絶対に避けたい事態だ。けれど頭の中はいま、テルルの命令を早く遂行することでいっぱいだった。

 テルルが布をサイドテーブルに置き、アイマスクを手に取る。その手を見守っていた僕は、突然後ろから抱きしめられて、ビクッと身をこわばらせた。

「さぁ……始めようか」


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