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5.※

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 耳に低い声が吹き込まれる。その声が熱を帯びているせいで、僕の身体にも火が灯った。
 問答無用でアイマスクをつけられ、次はどうすると問われる。僕はガウンの紐を解きながら、すでに自身が兆し始めているのを感じていた。

「こ、香油を」

 右手を差し出すと、一瞬の間のあとガラス瓶が手のひらに置かれた。中身をそうっと左手に垂らし、瓶をハイと突き出す。
 先に見えなくしたのはテルルなんだから、手足のように使うのは許してほしい。今度は間を置かずに回収されたから、僕は手のひらで香油を温めた。

 途端にはちみつの香りが僕たちの周りに広がって、またひくんと身体が震えた。僕は愛用のこの香りを嗅ぐだけで、いらやしい気持ちになる身体なのだ。

 視界を覆われた僕は少しだけ気が大きくなっていた。
 背は完全にテルルに預け、両脚も膝立ちで広げてしまう。ガウンはほとんどはだけているはずだ。やりやすい体勢に変えただけなんだけど、耳の後ろでハッと息を呑むのが聞こえた。
 
 香油を甘勃ちしているペニスから垂らし、そのまま奥の蕾に塗り込めた。周囲をぬめる指で撫でるだけで、腰がビクビクと反応してしまう。

「ふ。んっ……」
 
 身体がいつもより敏感になっているのを感じる。アイマスクは、自分で目を閉じているのとはやっぱり違った。視覚を奪われると、自然に他の感覚が鋭敏になる。
 期待にヒクついている後孔は、さっき準備したから指くらい簡単に入るはずだ。

「待て」
「え……」

 あっさりと侵入させようとした手を止められて、僕は不満の混じった声を上げてしまった。

「ちゃんと見てるから、ゆっくり入れてくれ」
「!」

 テルルが、見てる。
 分かっていたはずなのに改めて言われると、羞恥に一段と体温が高くなる。はちみつの香りがまた広がって……僕の顔は真っ赤になっていること間違いなしだった。

 ほら、と唆されて指を一本挿入する。

「あ……」
「そのまま……奥まで」

 自分の指なのに、指示されるとすごく異物感がある。
 言われるがまま隘路を進んでいくと、腹側がわずかに膨らんだ箇所を指が通り抜けた。

「あ、あっ」

 いつもなら散々慣らしてやっと快感を得はじめるのに、もう気持ちいい。腰が一瞬浮き、ぎゅうっと指を締め付ける。
 欲望のまま、にゅくにゅくと指を動かせば、甘い悦楽が腰から全身に広がってたまらなかった。

「それで? いつこれを使うんだ」
「ひゃぁ! ま、まって、もっと慣らさないと……」

 張り型をピト、と頬に当てられて過剰にびっくりしてしまう。男性器を模したそれは長年の愛用品で、一般的な大きさらしいが慣らさずに挿入できるものではない。
 さっそく僕が指を増やそうとしたところで、テルルが僕の手を退かして邪魔をしてきた。もう、何がしたいんだ! ひとりのときと違って思い通りにできないのがもどかしい。

「え……」
「手伝ってやるから早く見せてくれ」

 テルルが僕の右手を、彼の右手首に誘導する。大事なところに触られたのを感じてビクンと震えてしまった。テルルは……いつの間にか香油で濡らしていた指を、僕の後孔に添えていたのだ。
 これって、そういうこと? と戸惑っているあいだに会陰をくすぐられて「ひゃあ」と声が出る。

「早く」
「う。あ……」

 低い声で急かされ、慌てて手を動かした。僕が少し手に力を加えるだけで、テルルは意思を汲みとってくれる。つぷ……と挿入された指は、おそらく二本。
 僕の指より太く、節立っている気がする。その圧迫感と、初めて他人が挿入っている感覚。あまりもの興奮にめまいがした。

 首を逸らす。こめかみに何かが触れチュッと音がしたけど、そのことについて考える間もなくテルルの指が前立腺を掠め、強い快楽が全身を突き抜けた。

「あぁ! ま、あっ……だめ……!」
「ここか?」

 ポタ、と下腹部に濡れた感覚があって、自分のペニスが完勃ちしていることを悟る。テルルの指は先ほどよりも膨らんだであろう場所をいとも簡単に見つけ、指の腹で撫でるように刺激してきた。
 
 テルルは全然僕の言うことを聞いてくれない。手首を引っ張って指を抜こうとしたのに、少し引いた指はまた奥へと進み、クチュ、と卑猥な音をさせながら動きを繰り返しはじめた。

「あっ、あ、あぁ……ひゃ!」
「敏感だな、ローラ……慣れてきたか?」

 こんなの、慣れるはずない!
 指はいつの間にか増やされているようで、中を広げられている感覚がある。それに加え耳殻を柔らかいもので――息がかかるから唇だろう――挟まれ、その擽ったさに身をよじった。

 背中側からがっちりとテルルに抱きしめられている僕はそのとき、腰に当たる硬いものに気づいた。

「て、テルル……」
「ん? そろそろいけるだろう。ほら、自分で持って」

 中から指を抜かれ、添えるだけになっていた手に張り型を持たされる。今度は僕の手の上からテルルが手を添え、柔らかくほぐれた蕾に張り型を押し付けてくる。
 それはテルルがずっと持っていたおかげか、無機物なのにぬくかった。

 思わず腰元の……テルルの熱が入ってくる想像をしてしまったのは、僕だけのせいじゃないはずだ。こんな状況、いくら僕の妄想力を以てしても想像できなかった。
 
「んっ。ん~……はいって、く、る……」
「すごい、上手に飲み込んでる……妬けるな」

 自分で押し込んでいるのに、テルルの大きな手が添えられているだけでペースを乱されている気がした。いつもより性急に入ってしまった張り型が前立腺を押しつぶし、指では届かなかった奥地まで到達する。
 ただでさえ気持ちいいうえ「上手」と褒められ、なぜか喜んだ身体はキュンと張り型を締めつけた。

 なんか……いつもより…………
 テルルの手に促され、張り型を抜けるギリギリまで抜くとその排泄感にも甘い声が漏れる。また奥に押し込むとき、追い打ちをかけるように耳に濡れた……テルルの舌が挿入された。

「ひゃあんっ、それ……だ、だめ……ぁッ!」

 クチュリと濡れた音に聴覚を支配され、張り型の動きに合わせて耳の中まで犯される。耳の擽ったさが快感に変わるまではあっという間だった。
 こんなの自慰じゃない。怖いくらい気持ち良くて、全身がぴくぴくと痙攣した。
 
 もうイきたい……! ペニスは見なくてもパンパンに張り詰めているはずだった。

 ――しかし、僕はいつもの癖で、空いていた左手を自分の乳首に伸ばした。

「へぇ、そっちか」
「あっ、いや! ちが……ッ」
「違わないだろ。触ってもないのに……硬く尖ってる」

 手伝ってやると言わんばかりに、テルルの手が左から伸ばされ右胸に到達した。薄く膨らんだ胸筋ごと揉まれて、固い掌に乳首がこすれる。

「あ……」

 どうしよう。その触り方すっごい気持ちいい……。
 働いていない思考のまま、僕はテルルの手の動きをまね、左の胸を揉んだ。尖った乳首がコリコリと掌で押しつぶされる。

「んんっ。てるるぅ……きもちぃ……」
「ん゛ん゛っ」


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