アルファの僕が、最強のベータにお尻を狙われている!

おもちDX

文字の大きさ
11 / 27

11.




 初めてアウローラに会ったのはほんの赤ん坊の頃らしく、さすがに覚えていない。でも年に一回ほどしか会えていなかったのに、俺はいつの間にかアウローラに会える日を心待ちにしていた。
 ふわふわのブロンドを遊ばせたアウローラは天使みたいに可愛くて、幼い俺にはべたべたに甘くて……初恋だった。

 正直、5歳頃までは女の子だと思っていたのだ。
 俺の母は男のオメガだが騎士団長をやっていた逞しい人で、父も副団長で同じくらい逞しかった。母の性格は誰もが認める男前だったし、父は母に心酔し崇め立てていたから、立場が逆だと思っていたくらいだ。
 母から乳を貰っていたと聞いたときはかなり驚いたなぁ。父は神々しくて目が潰れそうだったとか言っていて、ちょっと意味が分からなかった。

 そんな家族を見ていたから、内気で愛らしい見た目を持つアウローラを、勝手に女の子だと思ってしまったのは仕方がないと思う。
 会えないあいだに両親から男だと教えてもらって驚いたものの、好きという感情の前では些細なことだ。

 恋といっても幼かったし、寂しいとかよりも「会うのが楽しみだな~会えば遊んでもらえるかな~」と思っていた程度のものだ。五年の時を経て再会するときもわくわくしていただけだった。
 なのに、アウローラは成長した俺に怯えて逃げてしまったのだ。自分だって成長したくせに……。それは、思春期を迎えようとしていた俺にとって、雷に打たれたような衝撃だった。

 あんなに可愛がってくれてたのに……!
 
 だから両親に「嫌がっているのに追いかけるのはやめとけ」「押せばいいってもんじゃないぞ」と再三言われても、納得できなくて会うたびに追いかけてしまった。
 毎回アウローラに逃げられても、俺が長年めげなかったのには理由がある。家族は俺がずっと嫌われていると思っていたが、実はそうでもない。

 アヴェンティーノ伯爵家は広くて、年上のアウローラの足は速かった。けれど人見知りを発揮した彼が逃げ込む先はいつも同じ場所で。

 使用人が使う小さな小さな物置――アウローラが頻繁に来るから綺麗に整えられた居心地のいい空間だった――で見つけて、その端っこと端っこでぽそぽそと会話する。
 アウローラも自分のテリトリーで安心していたのか、その時だけは心を開いて話してくれたのだ。それが嬉しかった。
 
 頑張って距離を縮めても、次会うときに人見知りは復活してしまっている。それでも数年後にアウローラが騎士として入団してしまうまで、同じことを繰り返した。

 それからは勉強や騎士になるための訓練に邁進した。二次性判定はベータだったものの、アルファに劣らないくらい俺は強くなった。

 俺が入団してから戸惑ったのは、どこへ行っても両親の影がつきまとうことだった。周囲の期待に応えるための努力は欠かせない。しかし結果を出しても、二言目には「ま、当然か」と切り捨てられる。
 それを打ち破るくらいの結果を残すことが俺の目標で、色恋になんて目を向けないまま20歳になり、白騎士団への異動が命じられたのである。

 さすがにもう淡い恋心は消えたと思っていた。仕事を教えてもらうことになって、またいちいち逃げられるくらいなら、他の先輩の方がよかったとさえ思っていた。
 
 ――それなのに。

 『誰よりも努力家で……出自なんて関係なくこの子がすごいんです! テルル自身を評価してあげ、て……くださいよぉぉ~~~』

 酔っ払いの口上なんて聞き流せばよかったのだ。でもアウローラの言葉は深く俺に突き刺さり、心を強く揺さぶった。
 恋人がいるのかと勘違いしたときはめちゃくちゃ焦ったぜ……

 それに趣味。アウローラは後ろめたさを感じているようだったけど、あんなのが他人に知られてしまったらお相手希望者が殺到するに違いない。彼は自分の魅力に鈍感すぎるのだ。
 どうかあのまま他人との距離を置き続けて、趣味も徹底的に隠しておいてほしい。もう二度と他人の前で酒は飲ませらんねぇな。

 あーーー、早く俺のものになってくれよ…………

 たぶん俺との性行為をアウローラは気に入っていたし、忘れていない。性的快楽に弱すぎるのが問題だが、俺はそこに付け込もうとしている。
 童貞を卒業したばかりの俺にテクニックなんてものはないだろう。けれども、アウローラの望むことを汲み取れる自信ならある。伊達に長年追いかけ続けてはいないのだ。

 仕事ではアウローラに惚れ直すことばかりで、俺が良いところを見せられる場面もなかったしなぁ。結局俺もその他大勢と同じで、叶わない恋の餌食になっているだけの可能性は高い。
 唯一の希望は、俺の気持ちを知っても背中を押してくれた、ソル団長の言葉だった。

『アウローラが後輩を褒めるのはずっと見てきたけど、お前のことを褒める時が一番、熱が入ってたよ。昔から知ってるってのは大きいかもなぁ。泣くほどだし……くくっ』
『あれはただの酔っ払いでしょう』
『いや、実際酒には弱いが……あんな抱きついて泣いたり、負ぶわれて帰るなんてこと、今までなかったさ』

 無意識に心を許してくれているのかもしれない。どうせならちゃんと、意識してほしい。
 少しでも可能性があるのなら……いや。可能性が今のところゼロだとしても、やっぱり俺にはアウローラしか考えられない。
 どうしても、振り向かせたい。

 いいところを見せるチャンスが巡ってこねーかな。
 そんなことを考えていた俺に舞い込んできたのは、二年に一度全騎士団合同で開催される、剣術大会の知らせだった。


感想 7

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

人気者の幼馴染が俺の番

蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、 ※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。

【本編完結】黒歴史の初恋から逃げられない

ゆきりんご
BL
同性の幼馴染である美也に「僕とケッコンしよう」と告げた過去を持つ志悠。しかし小学生の時に「男が男を好きになるなんておかしい」と言われ、いじめにあう。美也に迷惑をかけないように距離を置くことにした。高校は別々になるように家から離れたところを選んだが、同じ高校に進学してしまった。それでもどうにか距離を置こうとする志悠だったが、美也の所属するバレーボール部のマネージャーになってしまう。 部員とマネージャーの、すれ違いじれじれラブ。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

αに軟禁されました

雪兎
BL
支配的なαに閉じ込められたΩ。だがそれは、愛のはじまりだった――。