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21.※
ふわ、と頭が覚醒して朝だと悟る。久しぶりに夢も見ずに眠って、爽やかな目覚めだ。
しかし瞼を上げてギョッとしてしまった。目の前に……肌色が広がっている。でも一緒に寝た記憶はないものの、相手はテルルしかあり得ないことに気づいたら、身体から力が抜けた。
僕の身体が一瞬強張ったことに気づいたのか、テルルが腰をグッと引き寄せ、背中を撫でてきた。
「んっ……」
いつの間にか下履きとガウン一枚になっていた僕は、その薄布越しの感覚に快感を得てしまった。
こんなの……気付くのは今さらかもしれないが、テルルだからこそだ。肌を合わせて安心したり、些細なことで気持ちよくなったりするのは、他の人じゃ考えられない。かつて妄想していた相手やどこぞのご令嬢なんて、いまは想像するだけで、ぞっとする。
顔を上げると、すやすや気持ちよさそうに眠っているテルルがいた。長い銀色のまつ毛が日に透けて、目元に幻想的な影を落としている。
はじめて会った頃、なんて綺麗な子なんだろうと幼いながらに感動したことを思い出す。いまや見た目も中身も成長して、すっかり“男”になってしまったテルル。彼に薄着で抱きしめられていることを実感すると、ぶわ、と顔に熱が上った。
(あ。なんか、やばいかも……なんで、恥ずかしい……!)
心臓が大暴れで、どっくんどっくん飛び跳ねている。挙句の果てには下半身が反応しはじめてしまい、僕は慌てた。腰を引き寄せられているせいで、テルルの大腿に押し付けているような形になっている。
身体を引こうとしても、意外にも頑丈な檻は僕が離れることを許さなかった。だからといって無理やり離れたら起こしてしまうだろう。さすがにこの状態がバレるのは、恥ずかしすぎる。
こっそり背中を向けて、収まるのを待つ……? ああなんか、無理な気がする。幸いにも、手の届く範囲にちり紙はある。
むくむくと欲望が育つのを感じながら、僕はごろんと身体を反転させた。背中がテルルの身体に沿う形になり、両手は腹に回されている。
頭の中が煩悩でいっぱいになってしまい、僕は自分の中心に手を伸ばした。目を閉じて、ついついお得意の妄想を始めてしまう。
――僕は寝ているふりをしているのに、テルルの手が僕の身体を触りはじめる。
下履きの上からペニスを撫で、もう片方の手は胸元に伸ばす。途端にわかりやすい快感が湧き上がって、「はっ」と漏れた息に甘い声が混じる。慌てて口を噤み、それでも好き勝手に動き回る手を想像した。
(だめ、だめなのに……きもちいいっ)
上向いた欲望から先走りが滲み、下履きを濡らす。後ろに刺激が欲しくなったけど、あえて焦らして触ってもらえない、なんてのもいい。テルルの手の下で、お腹の奥がキュンと疼いた。
ガウンの下に手を滑り込ませ、乳輪をすり、と撫でる。簡単にぷくっと育つ乳首が我ながらいやらしい。甘い言葉責めをされたい……いやらしい身体だって低い声で囁いて、痛いくらいの愛撫を……
「目の前で一人遊びなんて、いやらしいな? アウローラ」
「ひッ」
僕の妄想力が爆発して、やけにリアルな声を作り上げてしまったのかと思った。でもお腹にあったテルルの手は上下に動き、意地悪な声を紡ぎ出した唇は後ろから僕の耳を挟む。
耳の後ろをツウッと舌が這って、強い悦楽が身体を突き抜ける。背を逸らしてビクビクとあからさまに反応してしまった。
「っああ!」
「もうこんなに濡らして……我慢できなかったのか? ほら、あちこちビンビンだ」
「ま、って、テルルぅ……」
あっという間に下履きの中まで手が滑り込み、陰茎を握り込まれる。先端のぬめりに指先で触れ、硬さを確かめるように扱かれて、もう達してしまいそうだった。テルルの右手は僕の左の乳首を捉え、コリコリと転がす。偶然かわざとか右の乳首にも手首あたりが当たって、とてつもなく気持ちいい。
思わず腰が引けて、ゴリッと大きなモノが後ろにあることに気づいた。これ……こんな状況はもう、二度目だ。あのとき、後ろの熱に奥まで貫かれたことを思い出して、くらくら、状況に酔ってしまう。
テルルが腰を押し付けてきて、尻の狭間にぴったりとペニスが当たる。
「これが欲しいのか?」
「ぁっ、ほし……!」
「じゃあ、そろそろ素直になってくれ」
「ん……?」
ぐずぐずに蕩けた頭ではテルルがなにを言いたいのか分からない。振り返って顔を見ても、情欲を押さえたセクシーな瞳が見返してくるだけだ。
「てるる、お願い……」
「はぁ、不合格だ」
「あっ。だめ、すぐ……んん~~~!!」
テルルの左手が動き出し、一気に絶頂への階段を駆け上る。あっけなくイかされてしまった僕は、涙目で後ろの男を睨んだ。バキバキに勃たせているくせに、余裕そうな表情なのが悔しい。ちょっと前まで童貞だったくせに!
僕は午後から仕事だけど、テルルは朝からだ。僕はぼさぼさの頭のままガウンをもう一度着込んで、さくっと身支度を済ませてしまったテルルを玄関まで見送る。
朝の時刻を知らせる鐘はずいぶんと前に鳴ったから、もう急いで行かないと間に合わないだろう。それなのにテルルは去り際、僕の髪を手で梳いて満足そうに頷いた。ゴミでもついてたのかな?
「よし、行ってくる」
「あ! 待って」
髪にゴミが、と言ってテルルの頭に手をのばす。少し屈んでくれたことで簡単に届くようになったテルルの唇に――思い切って――えいッとキスをした。
時が止まったかのように固まってしまったテルルから唇を離すと、チュッ……と可愛い音が鳴る。
顔が熱い。僕は真っ赤になってしまっているだろうなと思いながら、いまだ放心しつづけているテルルに精一杯の告白をした。
「昨日の夜は一緒にいてくれて……嬉しかった。あの、その、たぶん僕も……テルルのこと…………す、好きだと思う」
「………………まじか」
「ほらほら! 早く行かないと遅刻するから! 行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃいかぁ…………」
顔を見られたくなくて、なにかを噛みしめて僕の方を見つめているテルルの背中を押し、玄関から追い出した。あと半日早く言ってくれればなぁ、と去り際に聞こえたけど、バタンと扉を閉める。
そしてそのまま、扉を背にズルズルと座り込んだ。
(告っちゃった……)
あ~も~~っ、言ってしまった。負けたような悔しさもあるのに、やっとテルルにキスをできた喜びが、身体中を駆け巡っている。
天敵みたいな男を好きだと認めるのは、僕にとってかなり勇気のいることだったのだ。
テルルが異動してきてからの僕は、変だった。逃げたいのに傍に寄りたい。怖いのに安心する。相反する感情がぶつかり合って、泡みたいにはじけて、僕の中に新しい感情を生み出していった。
テルルは大好きな人たちの一人息子だ。だからこそこんな、僕みたいなアルファでいいんだろうかと何度も考えた。子どもだって産めないから、ご両親を悲しませてしまわないかな?
テルルは一本気な男に見えるし、僕にいたっては人見知りなせいで誰も寄ってこない。本来なら彼にはお相手候補もたくさんいるはずなのに……もう、譲れなくなってしまった。
告白されたときには戸惑いを隠せなかったけど、テルルが他の誰かと仲良く話したり言い寄られているのを見ただけで、僕の胸は面白くない感情で埋め尽くされた。
なんて自分勝手なんだろう。僕のことを一番に心配して、尊敬して、愛してくれるテルルのことを好きにならないなんて……無理な話だった。
だから……そう。ここは男らしく、腹を括ることにしたのだ。
ベータとアルファじゃ番にはなれないけれど、アルファとオメガの繋がりに負けないくらい、深く信頼しあえるパートナーに、僕はなるっ!!
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