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26.※

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 ぐ、ぐるしい……
 いつの間にか仰向けになってテルルに抱きしめられていた。半分以上僕の上に乗った筋肉の塊は重いけど、気づけば拘束が解かれていたから、腕を彼の広い背中に回す。
 幸せがキュウッと胸に迫ってきて、僕は行為のあいだずっと、こうしたかったことに気づいた。手を縛られるのは興奮するけど、当分いいかもしれないなぁ。

 窓の外は月が隠れてしまったようで、宵闇に包まれている。まだ真夜中だ。
 深い寝息を聞きながら、暗い中でも輝く銀白色の髪に頬を擦り寄せ、僕は数時間前の出来事を思い返した。

 あの……奥を抜かれたあと。一瞬意識を飛ばしていた僕はその間も嬌声を上げ続けていたらしい。
 テルルがぐぽぐぽと窄まりを出入りするたび、達してしまう。白濁を出し切った僕のペニスからは、透明の水っぽい粘液がとろとろ、勢いなく漏れ続けていた。

 彼がもう一度達したとき、イキ続けた身体は泥のように疲れ、息も絶え絶えで……そのまま眠ってしまったのだ。
 いまはシーツも身体も不快感はないから、テルルがなんとかしてくれたのだろう。尻の違和感はやっぱりすごいけど。

 指でテルルの髪を梳きながら、ひとりごちる。

「正面から顔見ながら、したかったなぁ……」

 後ろは入れやすいし良いところに当たるから好きだけど、振り向かないと顔が見えないのが難点だ。キスもしにくい。

「もっとキスしたかった……」

 僕はどうやらキスが好きなようだ。家族とするチュッと軽いやつじゃなくて、愛情を一心に注ぎ込まれるようなやつ。
 恋人とのキスはすごい。唇を合わせるだけで、あんなに幸せになれるものだったなんて……。うちの両親が僕たちの目を盗んで頻繁にチュッチュしていた理由がやっとわかった。

「テルル……すき」

 もっと行為のあいだもテルルに愛を伝えればよかった。なにも考えられなくて、碌なことを言ってない気がする。
 あーあ、もう嫌ってくらいお腹いっぱい貪られたのに、馬鹿みたいな後悔をしている。ひとり目が冴えてしまって、テルルはぐーすか寝てるし、ちょっと淋しい。
 寝てると思って、ひとりごとをぐだぐだ喋ってる訳だけど。

 僕の胸の上でうつ伏せに寝ているテルルがあまりにも静かで、あれ、息してる? と疑問に思ったときだった。

「ぴゃぁっ!?」

 ピチャ、と濡れたもので乳首を覆われて、奇声をあげてしまう。まだ敏感なそこは、舌でぐりぐりと転がされ、あっという間にぷっくりと立ってしまった。

「あんまり、可愛いこと、言うなよ……」
「て、テルル起きてたの!?」
「んー……幸せすぎて、寝ちまったら今日が終わる気がして……」
「~~~!」

 あんまり可愛いこと、言わないでよ……! ぎゅうっと抱きしめたら鳥の悲鳴みたいな声が聞こえたけど、構わずヨシヨシと撫で回した。なんだか猛獣を手懐けた気分だ。
 いつもオールバックで固められている髪は、毛質が少し硬いけどサラサラだ。癖がなく、僕みたいにうねうねじゃないから羨ましいなぁ、なんて思いながら指通りの良さを楽しむ。
 テルルも上半身をちょっとだけ起こして、僕の髪を撫でてくる。お互いの髪を撫で合ってるなんて、まるで愛情表現の毛繕いじゃない?
 
「……下ろした髪、俺以外には見せないでくれ」
「え~、どうしよっかなぁ」

 テルルが僕のローズブロンドの髪を指先に巻きつけながら、難しい顔をして呟く。もともと家でしか髪を解かないのに念押ししてくるのは、独占欲みたいなものだろうか。そんなところも可愛くて意地悪に答えてみたけど、僕の口角がどんどん上がっていくからすぐに冗談だとバレた。

「こら。素直にうんと言え」
「痛いいたい!」

 鼻にいたずらっぽく歯を立てられて、痛くもないのに抗議する。あははっと笑ったら唇にもガブっと噛みつかれた。他愛のない応酬が楽しくて幸せだ。
 一瞬の間があって、僕はサファイアブルーを見つめながら、顔を傾けてテルルの舌を迎え入れた。

「んっ……ぅぅん」

 すぐに舌を絡めてくれると思ったのに、焦らすように歯茎をなぞられて背筋が震えた。テルルの舌に翻弄され、口内をあちこち優しくくすぐられると、声が抑えられなくなってしまう。あまりにも気持ちいいからお返しにテルルの舌を吸ったら、ふいに上顎のざらざらしたところを撫でられて脳天から快感が駆け下りた。

「んぁーっ!」
 
 口の端から唾液がこぼれ、びくびくと身体が痙攣する。え。いま、イった……?
 未知の甘イキに混乱しながらも、腰の奥に甘だるい感覚があって、ナカを擦られたときの快感まで思い出してしまった。思い出すと……どうしよう。欲しい……

「てるる……これ、いれて?」
「仰せのままに」

 テルルの中心が存在を主張していることには、当然気づいていた。僕たちには普通の人の何倍も体力がある。さっきは許容を超えた快感にギブアップしたけど……ひと眠りして多少回復してしまった。
 テルルが香油の瓶を手に取って、自分の陰茎に塗り広げる。その手で確認するように後孔の縁をヌルリと撫でられ、蕾はひくっと震えた。ずっとなにか挟まっている感じがしていたけど意外にもちゃんと閉じていたそこは、まだ柔らかい。

「顔見ながら、な……」
「ふぁ~っ。ん、てるる……ッ!」

 ぴと、と熱くて硬いものが当たった感触がして、すぐにグッと押し込まれる。毎回少しずつ大きくなっているんじゃないかと思うほど、大きくて苦しい。
 それでも、テルルの顔を見上げて、情欲に染まっていく瞳を見ながら屹立に貫かれる感覚は、例えがたい悦楽を僕にもたらした。数時間まで居座っていたテルルの分身が僕のなかに戻ってきてくれて、嬉しい。大好きな人とひとつになれる行為に……これまでとは別の意味で夢中になってしまう。

 もっと奥までいっぱいに埋めてほしい。思わずテルルの腰に脚をまわして腰を揺らすと、ふっと笑ったような息を吐いてテルルが唇を合わせてきた。ぶわ、と多幸感が身体全体に広がって、肉筒は雄を甘く締め付けた。クチュクチュと舌を卑猥に絡ませながら、テルルが腰をゆっくりとストロークさせる。
 
 たまらなく気持ちいい。テルルのは大きいから常に前立腺が押されている。ずっとじんわりした快感が生み出されているのに、雁首がダメ押しのように刺激してくるのがまずい。丸い先端に奥を捏ねられると、さっき抜かれた結腸がまた疼いた。
 
「はぁ、あ。あんっ。~~~っすごい、きもちぃ……。てるる、テルル……だいすき」
「あぁ……俺も大好きだ、アウローラ」
「~~~!!」

 大好きだって言われるのもまずい。テルルに全てを明け渡して、めちゃくちゃにしてほしくなってくる。言葉に反応してキュンとナカが反応したことに気づいたのか、テルルは「かわいいやつ」と囁いて、鼻の頭にキスを落とした。
 そのまま顔全体にキスのスタンプを押されて、うっとりとした心地になった。たっぷり愛されるって、こういうことかも……

 顔に落ちてくるテルルの髪を耳に掛けてあげたら、男臭い笑みを浮かべたテルルが僕の胸元に顔を寄せた。視線を繋ぎながら、舌を伸ばして……ペロ、と乳首を舐め上げる。

「んっ、あ……あぁっ」

 とろとろに唾液をまぶしてからもう片方へと顔を寄せたテルルは、ツンと立って刺激を待ちわびていた乳首を口に含んだ。吸い上げながら舌で擦られ、喘いでいるうちに唾液で濡らされた乳首も指で転がされる。
 敏感になりすぎて痛いほどだったところが、ヌルヌルになるだけで快感しかもらたさないなんて聞いてない。あっちもこっちもぬるぬるで、おかしくなりそうだった。

 テルルが腰の動きを早め、結合部が熱をもつ。許容を超えた快楽に、びくんびくんと跳ねる身体が制御できない。僕はどこかに飛んでいきそうな恐怖を感じて、両手両足でテルルにしがみついた。

「るるっ。んん~っ、もうだめ。あ、あ、、イっちゃう……!」
「ローラ、おれも……っ」

 お腹の中でもう一段階膨らんだ気のする熱塊が、グッと強く、最後のダメ押しで一番奥に押し込まれる。くぽんっと今度は可愛い音がして、また奥の窄まりを抜けてしまった。

「っあ゛~~~~~!!」

 頭が真っ白になって、そんな中でもドクドク、奥に熱い欲望が注がれているのを感じる。僅かに現実を取り戻したころには、腹の上で精液まみれになったペニスがくったりと萎んでいた。
 アルファのそれなりに立派なものが、まるで役に立ってないのが可笑しい。いつの間にか出さずとも後ろの刺激だけで達せるようになっていたことに、僕は大満足だった。
 テルルのおかげで、成長著しい!

「テルル、ありがとう!」
「……なんだかな~……」

 どうしてあまり嬉しくなさそうなんだろ? 遠い目をされたことを不思議に思いながらも、テルルの頭を撫でながら甘い余韻に浸っていた。
 
 外では空が白み始めている。ほぼ一晩中行為を続けてしまったことに気づいて、さすがに重い疲労感が襲ってきた。ふああ、眠い……
 今日はお互い夜勤になる。僕につられて欠伸をしているテルルとのろのろ後片付けをして、寄り添い合って眠った。やっと素直になれたかな……――そう思いながら。


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