抱かれたい男No.1だけど抱かれたい

おもちDX

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 きゅんっと心臓が跳ねた。クヴェルはいつも、最後はイーリスの気持ちを尊重してくれる。
 イーリスはわくわくしながら新しい服に袖を通した。肌に当たる感触がいつもの服とまるで違って、繊細そうな生地は少しでも魔物と戦えば破れてしまいそうだと不安になったけど。

 素敵な服を着ると、魔法使いに変身させられたような心地になる。クヴェルが手放しで褒めてくれるから余計に浮かれて、(もしかして、すっごく高いんじゃないか……!?)と思い至ったときにはもう外へ連れ出されていた。

 上質なシルクは滑らかにイーリスの肌を包んでいる。確かにこれなら、ちょっとお洒落なレストランにだって違和感なく溶け込めるに違いない。
 というか、そう信じるしかないところまで来てしまった。道中に感じた視線はクヴェルが男前だからだよな?

 クヴェルが店員に声をかけチップのようなものを渡すと、人目につきにくい奥の方の部屋へ案内された。個室ではないものの、手前の空間と比べてテーブルの数が少なく、広々としている。
 こんな部屋があることや利用の仕方など、イーリスの知り得ないことばかりクヴェルは知っている。

 格の違いを感じながらも、人の目につかないのは素直に嬉しかった。マナーも知らないから、クヴェルに恥をかかせてしまうんじゃないかと恐れていたのだ。
 彼はそこまで考慮してくれているに違いない。

 その割に、ワインを注ぎにきた給仕の前で困ることを言ってくる。

「本当によく似合ってる。惚れ惚れするな。ここへ来るまでもイーリスのことをみんなが見てたから、連れ帰って隠してしまいたかったよ」
「も~褒めすぎだって! それに見られてたのはクヴェルの方だろ? 久しぶりにそんな格好見たけど、気品に溢れてるっていうか、色気たっぷりっていうか……」
「へえ? そう思ってくれてるんだ」

 まさに貴公子然としたクヴェルに印象を伝えると、すっと目を細めて見つめられる。イーリスの身体は恥ずかしさでじわじわと熱くなった。
 給仕はにっこりと微笑み「お二人とも素敵ですね」と言い残して去っていく。もう顔を見ることもできなかった。

「こっ、こんなの羞恥プレイじゃないか!」
「ほー、そんな言葉も覚えたんだね」
「クヴェルぅ……」

 クヴェルがおもしろがってまた揶揄ってくるから、イーリスは正面にすまし顔で座る男を恨めしげに睨んだ。

 なにしろ性的な話――特に独特な言語――に関して、入団するまでイーリスの知識はかなり少なかった。しかし遠征中の夜営などで、若い団員たちは猥談で盛り上がることが度々ある。

 イーリスはしばしば話題についていけず「シックスナイン? て、なんですか?」などと尋ねて相手を固まらせてしまったり、意味を聞いて自分が赤面してしまったりした。
 それが面白いのかみんなに揶揄われたり可愛がられたりするようになったおかげで、知識もどんどん増えていっているのだ。

 知らないよりいいことだとは、思うけれど。

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