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本編
8.
しおりを挟む翌朝朝食の席につくと、ラツィエルはいつもよりラフな服装をしていた。落ち着かないのか、ちらちらと何度もこちらを見てくるのが気になる。
昨日提案した離縁について進展があったのかとも考えたが、さすがに昨日の今日ではないだろう。
とりあえずレーシュは今日の予定を伝えておくことにした。ほぼ形だけの夫婦でも、休日に出かけるときくらいは報告している。
「今日ラツィエルも休み? 僕は昼から街に行ってくるから」
「ああ、前回は出てたからな。俺も今日は街に行くつもりなんだ。レーシュも買い物か?」
「うん。文具店に行きたくて」
「……一緒に行くか?」
ラフどころか顔を洗っただけでパジャマ姿のレーシュは、ぱちくりと目を見開いた。一緒に出かけるなんてゴットフリート家の屋敷に呼ばれるとき以外では年に一度あるかないかだ。
とはいえ屋敷の馬車を使うにしても、時間をずらして何度も往復してもらうなんて効率が悪すぎる。目的地が同じなのだから、一緒に屋敷を出て一緒に戻ってくるのが最善に思えた。
「じゃあ、そうしよっか」
「せっかくだ。昼も外で食べないか」
「ああ、うん」
とんとん拍子に話は進み、昼前に玄関ホール前で待ち合わせをすることになった。レーシュとラツィエルはお互いの部屋を行き来することも滅多にないため、家の中でも「待ち合わせ」と言う方がしっくりくるのである。
先に食事を終えたラツィエルが、家令のダアトに予定を伝えている。ラツィエルは心なしか楽しそうだ。そんなに買いたいものがあるのだろうか。
レーシュはマイペースに食事をとりながら、この展開を意外に思っていた。
現地では完全に別行動だと思っていたけれど、気づけば昼食も外で一緒にとることになっていた。二人で外食なんていつぶりだろう。レーシュはこのイベントに、少し心が浮き立つのを感じる。
(図らずも、ハニエル様が言ってた「デート」になってしまうかもしれないな)
恋人同士だったこともなく、結婚しているけどもう別れるのに、デートだなんておかしい。しかしこれは新体験ができそうだと、レーシュは今日もまたぼさぼさの髪を梳いてもらいながら思った。
数時間後、予定通り玄関ホールに向かうと、「や」と手を挙げるレーシュの姿を認めたラツィエルは声を張り上げた。
「~~~っやっぱり! お前その服のセンスどうにかしろ!!」
「へ?」
ラツィエルの視線の先を辿って自分の服を見下ろしても、言っていることがよくわからない。自分にセンスがないことは重々承知しているが、だからなんだというのだ。
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