三十歳になったので離縁を提案したら旦那様の様子がおかしい

おもちDX

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本編

9.

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 大きな手がレーシュの腕を掴み、今出てきた部屋まで連れ戻される。久方ぶりにレーシュの私室に足を踏み入れた男は、鏡の前まで問答無用でレーシュを連れて行って立たせた。

「こんな時代遅れのカボチャパンツをどこから持ってきた! こんなもの、俺はクローゼットに入れてないぞ!?」
「結婚前に自分で買ったものですけど……。え、時代遅れでもよくない?」
「よくない! というか組み合わせが終わってる。ダサいなんてもんじゃない。こんなの道化師と同じだ」
「えええー……僕の格好なんて、誰も見てないって」
「はぁ~~~……」

 散々な言われようだ。レーシュは逆にラツィエルの格好をまじまじと見てみるも、洗練されているっぽい、ということしか分からなかった。
 彼はいつも見た目に気を遣っているし、昔からセンスがよくてお洒落という評判であることは同じ学園を出たレーシュも知っている。

 ラツィエルはレーシュのクローゼットへとずかずかと入り、「上はこれ、下はこれ、コートはこれ」と服を投げ寄越した。
 めんどくさいなあ、と内心考えながらもレーシュはその場で服を脱ぎ、言われた服に着替える。

「お前なぁ、人前で躊躇ためらいなく脱ぐなよ」
「???」

 着替えてみると、途端に自分も垢抜けて見えるのが不思議だ。
 ネイビーのドレスシャツにホワイトのパンツ。コントラストの強い色の組み合わせは、白い髪と濃い色の瞳をもつレーシュによく似合っている気がする。

 隣に立つラツィエルも、ブラウンとグリーンを差し色に使っていて全身の調和が取れている……気がする。多分これがお洒落というものなのだろう。

「はあ、お洒落だねぇ」
「当たり前だろ」

 ふん、と満足そうな表情を見て、やっと出かけられそうだとレーシュは歩き出す。だが「あ、ちょっと待て」とすぐに引き止められ、彼はレーシュの髪をピンク色の宝石がついたピンでシニヨンにまとめた。器用なことだ。
 
 最後に帽子を被せられ、いつもの眼鏡を掛けてようやく満足したらしい。帽子と眼鏡はひとりで出かけるときも必須なのだが、ここまでするのならお洒落はやっぱり必要ないのでは? と思ってしまう。
 言ったら反論されるからしないけど。

 部屋を出たときも、待たせていた御者に謝ったときも、家令を含め使用人たちには生温い視線を向けられたのは何だったのだろう。
 とにかく、レーシュはついに休日デートの一歩を踏み出したのだった。

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