セフレの恋は難しい(同僚ならなおさら)

おもちDX

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 クリスマスほど独り身の社会人にとって意味のないイベントはあるだろうか。

「クリスマスイブが週のど真ん中……ククク……世のカップルたちよ、苦しめ、滅べ!」
「魔王中本、チキン食べながら言うなよ」

 上司がフードデリバリーを使って営業部に差し入れてくれたチキンは、俺たちのランチを豪華にしてくれた。チキンに巻かれている赤と緑の包装紙や、ジャンキーな衣の味がクリスマスを実感させてくれる。

 会社ビルの外にあるベンチは冬の日差しが降り注ぎ、空気は冷たいものの意外に温かい。今年もホワイトクリスマスには程遠いな、とどうでもいいことを考えていると、唇をチキンの脂でツヤツヤさせた中本はキッと俺を睨んだ。

「笹原ぁ。今夜は帰らせんからな~?」
「はいはい、仕事片づけるまでは帰るつもりないって」
「エッ、嘘。彼女に振られたん……?」
「……すんごい嬉しそうな顔するね……」

 年末進行は漏れなく俺たちを巻き込み、休暇前にやらなければならない仕事はたんまりとある。特に今年の年末年始はカレンダーの関係上九連休となるため、そのための調整が大いに俺たちを苦しめているのだ。
 正直、九連休なんてあっても何をすればいいのかわからないし、三回くらいに分けてほしい。

 クリスマスだからといって特別にすることもない俺は、当然のこととしてがっつり残業していくつもりだった。今日明日がんばれば、最終日くらい遅くならずに帰れるだろう。

(日曜は純希に誘われてるし……体調万全で行かないと)

 中本は誤解に誤解を重ねつつ俺に探りを入れようとしてきたが、今回も曖昧に流しておく。たぶん来年も、飲み会帰りの逢瀬はあるはずだ。
 営業部のあるフロアに戻ると、メンバーの行動予定を示すホワイトボードを見た中本が「あ!」と声を上げた。

「萬造寺、外出からの直帰だと~~~!? あの噂、本当やったんか……!」
「噂って?」

 俺たち営業部にとって外出はなんら不思議なことではない。外出先から戻ってくるまでに定時を越える場合、直帰することもままある。
 中本がただ文句を言っているのかと思ったが、純希の噂と言われて気になってしまった。知らないの? と驚いた顔をしつつも、嬉々として中本は俺に教えてくれた。

「喜久川のお孫さんと付き合っとるらしいぜ? ほら、部長の峯さんが連れてきとった子……横田さんやっけ? 打ち合わせで萬造寺に一目惚れしたらしくてなぁ」
「え……」

 確かに横田さんが取引先の社長のお孫さんであることはあとから聞いた。でもまさか、純希を狙っていただなんて思いもしなかった。今思えばあれは純希へのアピールだったのか?

 わざわざ峯部長からうちの部長へ「くれぐれもよろしく」と連絡があったらしく、そのとき一緒にいた中本も知ってしまったのだという。
 会社を通してくるあたり、本気さを感じてぞっとする。峯部長は良くも悪くも古い人間だ。

 時代錯誤なお願いにうちの部長は困っていたらしいが、仕事の縁もあるため純希には「当たり障りなく。でも、無理するな」と伝えたそうだ。

 純希なら断るにしても上手くやるだろうと、その後の進捗は誰も聞いていなかった。ただ、純希に彼女がいると聞いたと、女性たちがつい先日騒いでいたらしいのだ。

「このタイミングやったら、横田さんしかないやろ~~? 可愛かったよなぁ、しかも上手くいけば逆玉の輿! くっそ~、リア充爆発しろ!」
「すごいなあ……」

 ――失恋って、こんなにあっけなくするものなんだ。

 悲しみより驚きと納得が順番にやってきて、意外と冷静に自分が事実を受け入れていることを知る。いつか来ると思っていた日がやってきただけだ。
 むしろ考えていたより遅かったかもしれない。どう見ても引く手数多ないい男が、ずっとフリーでいるはずもないのだから。
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