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本編
10.
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下履きを脱いだ彼を見たとき、気が遠くなって後悔しかけたけど……準備の甲斐もあってなんとか受け入れることができた。
シルヴァは夢中でノーナを抱いた。大事にしたい、でも我慢できないという感情があらわに伝わってくる。
そんな葛藤が可愛くて、嬉しくて……ノーナは自分の流している涙が、感情によるものなのか快感によるものなのか分からなかった。
シルヴァは言葉こそ少ないものの、愛おしむみたいにノーナの肌の輪郭をなぞり、髪を撫で、あらゆるところにキスを落とした。
ときおり感情が溢れ出してしまったみたいに「好きだ」「かわいい」と告げられて、まるで自分がかわいくて愛されるべき生き物なんだと勘違いしてしまいそうになる。
彼は若さゆえなのか、何度もノーナを求めた。体力だって常人の何倍もあるだろう。対してノーナは、仕事で地味に走り回っているくらいしか運動もしない。
体格差ゆえの揺さぶられる激しさや、どう考えても大きすぎる逸物に貫かれる衝撃は、あっという間にノーナの体力を奪っていく。
シルヴァが満足そうに息をつき動きを止めたとき、ノーナはこれ以上ないくらい疲れて気を失うように眠ってしまった。
月明かりが目元に差し込んで目を覚ます。まだまだ眠かったけど、なぜか寝坊したような焦りが心のなかにあった。
くっつくまぶたをこじ開けて、ノーナは「え……」と小さく声を上げる。その声さえ掠れていて、喉が痛い。しかしそれに違和感を感じるまでもなく、驚いた理由は目の前にあった。
薄く日に焼けた肌、隆起する筋肉。おそるおそる垂涎ものの身体の主を確認して、ノーナは全てを思い出す。そして大いに焦った。
(何時間経ってる!?)
シルヴァは髪と同じ銀色の睫毛を伏せて、深く眠っているように見えた。寝顔に年相応の初々しさを感じて、ノーナはつい見入ってしまいそうになる。
目を閉じていてもバランスが良い、きれいな顔……。
でも駄目。いまのうちに帰らなきゃ!
息をひそめて背中に回る重い腕から抜け出そうとしていると、突然ノーナは仰向けに転がされ、押さえつけられた。
「誰だ!」
頭をガツンと殴られたような厳しい声だった。シルヴァのような騎士に四肢を押さえられてしまえば、抵抗なんてできるはずもない。
気づけば喉元に短剣を当てられていて、「ひっ」と喉を引きつらせる。どこからこんなもの!?
「し、シルヴァ……」
「気安く名前を呼ぶな! お前……刺客か?」
彼は憎き敵を見るような目でノーナを見据えた。こんなシルヴァ、知らない。魔法が切れたんだろうが、いまや赤の他人よりも悪い状況だ。ギリギリと強く握られた腕が痛い。
しかしシルヴァは自分たちが一糸纏わぬ姿であることに気づいて、途端に狼狽えた。
それはそうだろう。彼の記憶が抜け落ちているのなら、知らない男と裸で寝ていたことは相当衝撃的なはずだ。
ノーナは彼の拘束が緩んだことに気づいた瞬間、奇跡的な反応で身体を捻ってベッドから飛び降りた。情けないことに、脚に力が入らずへにゃんと一歩目で転んだけど、ちょうど目の前にあった自分の服を掴んで立ち上がる。
そのまま振り返らず、ふらふらの足を叱咤してノーナは寝室を出た。
居間で慌てて服を身につけていくと、後孔からトロリとしたものが溢れ出てきて「ぁっ」と動きを止めてしまう。
だがシルヴァが追いかけてきてコレを見たら今度こそ絶望するだろう。男の、こんなところに突っ込んで精を吐き出したと知ってしまったら……。
駄目だ! 絶対に。
なんとか最後まで服を着て、ノーナは転がり出るように部屋を出る。シルヴァが本気を出せばあっという間に捕まってしまっただろうが、運良くそのまま王宮を出ることができた。
外に出て空を見上げると、明るい月がノーナを見下ろしている。月の位置的にまだ真夜中ではないようで、違和感を抱いた。六時間も経っていない……?
家に帰って時計を見ると、やっと五時間経つというところだった。魔女の言っていた効果時間も厳密ではないということだろう。
シルヴァと肌を重ねていた時間の感覚は曖昧で、どれだけ眠っていたのかも見当がつかなかった。一瞬のようで、逆に何時間も寝てしまったような気もした。
シルヴァは夢中でノーナを抱いた。大事にしたい、でも我慢できないという感情があらわに伝わってくる。
そんな葛藤が可愛くて、嬉しくて……ノーナは自分の流している涙が、感情によるものなのか快感によるものなのか分からなかった。
シルヴァは言葉こそ少ないものの、愛おしむみたいにノーナの肌の輪郭をなぞり、髪を撫で、あらゆるところにキスを落とした。
ときおり感情が溢れ出してしまったみたいに「好きだ」「かわいい」と告げられて、まるで自分がかわいくて愛されるべき生き物なんだと勘違いしてしまいそうになる。
彼は若さゆえなのか、何度もノーナを求めた。体力だって常人の何倍もあるだろう。対してノーナは、仕事で地味に走り回っているくらいしか運動もしない。
体格差ゆえの揺さぶられる激しさや、どう考えても大きすぎる逸物に貫かれる衝撃は、あっという間にノーナの体力を奪っていく。
シルヴァが満足そうに息をつき動きを止めたとき、ノーナはこれ以上ないくらい疲れて気を失うように眠ってしまった。
月明かりが目元に差し込んで目を覚ます。まだまだ眠かったけど、なぜか寝坊したような焦りが心のなかにあった。
くっつくまぶたをこじ開けて、ノーナは「え……」と小さく声を上げる。その声さえ掠れていて、喉が痛い。しかしそれに違和感を感じるまでもなく、驚いた理由は目の前にあった。
薄く日に焼けた肌、隆起する筋肉。おそるおそる垂涎ものの身体の主を確認して、ノーナは全てを思い出す。そして大いに焦った。
(何時間経ってる!?)
シルヴァは髪と同じ銀色の睫毛を伏せて、深く眠っているように見えた。寝顔に年相応の初々しさを感じて、ノーナはつい見入ってしまいそうになる。
目を閉じていてもバランスが良い、きれいな顔……。
でも駄目。いまのうちに帰らなきゃ!
息をひそめて背中に回る重い腕から抜け出そうとしていると、突然ノーナは仰向けに転がされ、押さえつけられた。
「誰だ!」
頭をガツンと殴られたような厳しい声だった。シルヴァのような騎士に四肢を押さえられてしまえば、抵抗なんてできるはずもない。
気づけば喉元に短剣を当てられていて、「ひっ」と喉を引きつらせる。どこからこんなもの!?
「し、シルヴァ……」
「気安く名前を呼ぶな! お前……刺客か?」
彼は憎き敵を見るような目でノーナを見据えた。こんなシルヴァ、知らない。魔法が切れたんだろうが、いまや赤の他人よりも悪い状況だ。ギリギリと強く握られた腕が痛い。
しかしシルヴァは自分たちが一糸纏わぬ姿であることに気づいて、途端に狼狽えた。
それはそうだろう。彼の記憶が抜け落ちているのなら、知らない男と裸で寝ていたことは相当衝撃的なはずだ。
ノーナは彼の拘束が緩んだことに気づいた瞬間、奇跡的な反応で身体を捻ってベッドから飛び降りた。情けないことに、脚に力が入らずへにゃんと一歩目で転んだけど、ちょうど目の前にあった自分の服を掴んで立ち上がる。
そのまま振り返らず、ふらふらの足を叱咤してノーナは寝室を出た。
居間で慌てて服を身につけていくと、後孔からトロリとしたものが溢れ出てきて「ぁっ」と動きを止めてしまう。
だがシルヴァが追いかけてきてコレを見たら今度こそ絶望するだろう。男の、こんなところに突っ込んで精を吐き出したと知ってしまったら……。
駄目だ! 絶対に。
なんとか最後まで服を着て、ノーナは転がり出るように部屋を出る。シルヴァが本気を出せばあっという間に捕まってしまっただろうが、運良くそのまま王宮を出ることができた。
外に出て空を見上げると、明るい月がノーナを見下ろしている。月の位置的にまだ真夜中ではないようで、違和感を抱いた。六時間も経っていない……?
家に帰って時計を見ると、やっと五時間経つというところだった。魔女の言っていた効果時間も厳密ではないということだろう。
シルヴァと肌を重ねていた時間の感覚は曖昧で、どれだけ眠っていたのかも見当がつかなかった。一瞬のようで、逆に何時間も寝てしまったような気もした。
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